これ、R15なんだけどw
では、本編どぞー。
「…………、……そいつがさっきの……?」
――アリアを傷付けた男か……!!
アベルの顔が瞬時に殺気立つ。
目は据わり、仄暗い感情が沸き立ちアベルの心の闇に火を点した。
「あっ、えと。あの人、実体がない人らしくてね……。前はアベルの姿だったんだけど、今回は違ったみたい。……髪の色は違うんだけど、知り合いによく似てたから私……、その、びっくりして……」
――えぇっ!? アベルの目が据わってるっ!? 正直に教えたのに、な、なんで……!?
アリアが話す間にアベルの瞳が険しくなり、睨まれた気がしたアリアはビクリと肩を揺らす。
男性に睨まれると前世の影響なのか、恐怖にどうしたらいいのかわからず固まってしまうアリアは、窺うように恐る恐るアベルを見上げていた。
その瞳には涙がじわりと滲んでいる。
「…………」
――そいつが、またアリアを傷付けた……? 一度ならず二度までも……、次会ったら絶対コロ……
アベルが“次会ったら絶対殺す”と考えている途中でアリアと目が合っていることに気が付いてしまい……、
「っ、アベル……?(怒ってるの……?)」
「っ、ぁっ。アリアはあいつに狙われてるの?」
――まずいっ! アリアが怯えてるっ!?
瞳を潤ませこちらを窺うアリアに、アベルは吊り上げた眉をスッと元に戻した。
「えと……、狙われているというか……、そうじゃないの……。私も……、今ちょっと混乱してて…………アベルっ」
アベルの目がいつもの優し気な瞳に戻ると、アリアは ほっとした様子でアベルの胸に飛び込んで来る。
ぎゅぅっ。
「あっ…………混乱?」
……アベルはアリアを受け止め、包み込む様に抱きしめると彼女の頭を反射的に撫でていた。
――ああ、僕のアリア可愛い……、この甘え上手め……! そんな風に甘えてこられたら僕は……。
「…………ごめん、アベル。近いうちにちゃんと説明するから、今は何も聞かないで……?」
「…………、アリアが話したくないなら……訊かないよ?」
アリアがアベルの胸元にすりすりと頬を寄せ、背に腕を回すと上目遣いで見上げて来る。
――ずるいよアリア! こういうことされたら、訊けないでしょうが!!
アベルはアリアを追及するなんて無理だと悟り、彼女を強く抱きしめた。
アベルとアリア、二人の後ろでピエールとプックルは既に察しよく広大な景色を眺めており、見張りの兵士だけが気まずそうな顔で ちらちらと二人を窺っている。
……アリアはすっかり兵士の存在など忘れているようだ。
「……たぶん また会うことになると思うから……その時はちゃんと話すね?」
「うん、わかった。話せる時が来たら教えて」
――ああ~♡ アリア可愛い……ずっとこうしていたい……♡♡
自分の腕の中に収まるアリアの頭頂にアベルは頬を寄せる。
彼女の甘く爽やかな香りに癒され、殺気立った心が落ち着いていくのがわかった。
「うん。……あ、ねえ、アベル」
不意にアリアがあざとく首を傾げる。
「ん?」
「アベル戻って来るの早かったね? ルドマンさんなんて言ってたの?」
「あっ! そうだった……! アリアごめん。炎のリングを貸して欲しいんだ。あれがないと船を借りられなくて」
アベルはハッとして用事を思い出し、アリアの両肩を掴んでそっと押し剥がすと、彼女の首元を見下ろした。
アリアの首にはネックレスが。
そのネックレスチェーンに通された【炎のリング】がぶら下がっている。
「炎のリング……あっ、これ……? ちょっと待ってね……、…………んと……」
「あ、僕が取るよ。髪上げてくれる?」
ネックレスを外そうとするアリアだったが、髪が邪魔らしく上手く外せないらしい。
アベルは自分が取るからと彼女の背後に回った。
「ん……」
アリアは両手で長い髪を軽く束ね、頭頂部へ上げる。
「あ…………っ…………」
――アリアのうなじ……好い匂い……舐めたい……。
滅多に見ることの無い白いうなじが晒されると、アベルはゴクリと唾を飲み込んだ。
汗でも掻いたのか、髪とは違い うなじからは甘酸っぱい香りが漂ってくる。
……うなじも彼女の頬や耳と同じように赤く色付くのだろうか。
今度、実験してみたい。
アベルの好奇心が疼くが、今は……と良からぬ妄想は抑えて覚束ない手指でネックレスの留め金を外した。
◇
「じゃあ、借りて行くね。すぐ戻るから……、ピエール、プックル。今度こそ頼んだよ……! アリアも! ここに待機ね!」
「は~い!」
アベルは【炎のリング】を手にして、見はらしの塔を後にする。
地上に下りたアベルは時々見はらしの塔を振り返りながら、何度も手を振り去って行った。
「……アベルって……過保護ね……」
――カワイイんだから……♡
アベルの行動に呆れつつも、アリアはそういう彼も大好きだ。
彼に合わせるように手を振り、笑顔を贈る。
……傍から見たら二人はバカップルかもしれない。
「ですね……。あの、アリア嬢、大丈夫ですか……?」
ピエールが訊き辛そうにおずおず訊ねるので、アリアは首を横に傾けた。
「ん? 大丈夫って……?」
「……アベル殿は……、アリア嬢がいないと病んでしまうのではないでしょうか……」
「えぇっ? 大丈夫だよ~、彼は主人公だもの。素敵な奥様が癒してくれるよ~!」
――アベルが病むなんてないでしょっ、主人公だよ……!?
ピエールの思わぬ発言にアリアは目を丸くする。
アベルが病むなんてあるのだろうか。
……彼はこの世界の主人公だ。
今はモブの自分を気に入ってくれてはいるが【原作の意志】が働けば、恐らくその強制力によって本来の流れに戻って行くはず。
自分のことなど、強制的に忘れることだって考えられる。
……美しく愛らしい花嫁候補が二人もいるのだから病むわけがないではないか。
「ですが……、先程の様子……いえ、今までもそうだったと思うのですが……アリア嬢に対する執着が何と言いますか、異常と言いますか……」
「……執着、か……されても、困るんだけどな……。アベルが結婚した後は私、なにもしてあげられないもの……」
――アベル、私に愛人になれなんて言わないよね……?
“主君であるアベル殿を悪く言うのはどうかとも思うのですが、あれはもう既に病まれている気もします”……と、ピエールの目から見た今のアベルはアリアに執着し過ぎているらしい。
確かにアベルはいつも
幼い頃は自分に依存してたと言われたし、またしても依存させてしまったのだろうか?
だが、もう依存してないとも言っていた気がするのだが?
自分と別れた後、ビアンカかフローラに癒してもらえるといいなと、願うばかりだ。
愛人に……なんて、バカなことを言い出さないよう、アリアは少しずつアベルとの距離をとって行こうと思った。
「アリア嬢……」
「三角関係なんて嫌だよ、私。不倫なんて……、健全なゲームなんだからね……! ……ふふっ、さ。もう少し景色を楽しんだら下で待ってましょ?」
――そうだそうだ! ドラクエで不倫劇なんてまっぴらごめんよ……!
“フリン……、アリア嬢は恐ろしい言葉を知っておられるのですね……”と驚きに固まるピエールにアリアは はにかみ、もう少ししたら下に下りようと誘う。
「がう……(アリアは主と別れる気なのか……? なぜだ?)」
アリアとピエールの傍で寛ぐプックルが目を閉じながら、耳をさっきからピクピクと動かしていた。
会話の意味はよくわからないが、アリアがアベルと別れようとしていることはなんとなく理解出来た。
……が、やっぱり意味が解らない。
アベルはアリアと結婚するために指輪探しをしていたはず。
――主は一貫してアリアのために動いているのになぜアリアは……。
アベルとアリアは喧嘩らしい喧嘩もせず、あんなにも仲が良いというのに、なぜ別れる必要が……?
……プックルにはよくわからなかった。
プックルがわかるのは、こちらも一貫してアリアの味が好いということだけである。
(主と別れたら、アリアを味わえなくなるではないか……。ええい、アリアの意思など知らん。こうなったら主に協力せねば……。)
プックルはチラッとアリアを見やり、アベルを全力で応援することに決めたのだった。
アベルとビアンカorフローラ&アリアの三角関係とかドロドロし過ぎてて書けないわ……。
オモシロソウ……www
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!