ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

さて、船を借りましょう。

では、本編どぞ~。



第四百九十三話 動力は魔力

 

 

 

 

 

 ……見はらしの塔にアリア達を残し、アベルは再びルドマンの屋敷へ。

 

 

「では、炎のリングは私が預かっておこう」

 

 

 アベルが【炎のリング】をルドマンに見せると、彼は手を差し出し寄こせと威圧の目を向けて来る。

 

 アベルは 炎のリングを

 ルドマンに 手わたした!

 

 ……とはならず、アベルは黙ったまま【炎のリング】を渡すのを躊躇(ためら)っていた。

 

 そして意を決して口を開く。

 

 

「……この通り炎のリングを持って来ました。これは僕が預かっておきたいと思います」

 

「ほう……、では船は要らないと?」

 

 

 アベルが手にのせていた【炎のリング】を握りしめると、ルドマンは口を歪めてアベルを小馬鹿にしたような いやらしい笑みを浮かべた。

 

 どの世界でも気の良い中年男性だったというのに、この世界のルドマンは癖が強過ぎる。

 

 

「ぅ」

 

 

 ――ルドマンさん、こっちの足元見てぇ……!

 

 

 痛いところを突かれ、アベルは固まった。

 

 

「残りは水のリングだが……。水のリングというからには水に囲まれた場所にあるのかも知れんな」

 

 

 “な? な? どう思うかね?”

 

 

 ……アリアを連れ出したことを根に持っているのだろう。

 

 ルドマンのいやらしい笑顔がすぐ目の前まで迫り、下から見上げるようにアベルを煽る煽る。

 

 アベルはつい“チッ”と舌打ちをしてしまった。

 

 一縷の望みをかけ、プランB´を試みたがやはりダメらしい。

 

 

「……では、預けておきます……」

 

 

 ――これじゃ、別世界と同じじゃないか……!

 

 

 悔しいが仕方ない。

 やはりプランCで妥協するしかないのか……。

 

 

 ……アベルはルドマンに【炎のリング】を手渡した。

 

 

「よし! 町の外に私の船を泊めておくから自由に使うがいい」

 

 

 【炎のリング】を渡した途端、ルドマンは先程とは打って変わって穏やかな笑みを見せる。

 

 “これが本物か鑑定しておこう、アリアをしっかり守るんだぞ。船は大陸と島を結ぶ橋の側に泊めておくからな。”

 

 ルドマン、彼はそう付け加えアベルを送り出した。

 

 

「……はぁ……多少の違いはあったけど……これじゃ同じ展開じゃないか……」

 

 

 ――でも僕は諦めない……! アリアと絶対結婚するんだ……!

 

 

 ルドマンの屋敷を後にし、アベルは独り見はらしの塔へと向かう。

 

 ……ルドマンと対峙すると嫌な緊張感でドッと疲れるのだ。

 

 

 早くアリアの顔を見て癒されよう……、アベルの足取りは早かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、アベル~! おかえり~。待ってたよ~!」

 

「……ただいまっ! アリアっ!!」

 

 

 アベルがパトリシアを引き連れ見はらしの塔に到着すると、塔へと至る外構の階段にアリアが座って待っており、アベルに手を振り振り立ち上がる。

 

 愛くるしい笑顔でアベルを迎えてくれていた。

 

 アベルはそれが嬉しくて持っていた手綱を手放して駆け寄り、彼女を抱きしめる。

 

 

「わっ……!? ど、どしたの?(人前なのに……って、そういえば最上階にも兵士さんがいたわね……)」

 

 

 ――私、なんだかどんどん大胆になって来ているような……。

 

 

 人前でハグなんてあり得ないのに……。

 

 

 ……慣れとは恐ろしいものだ。

 

 アベルがいつでもどこでも構わずスキンシップを取って来るので、触れられる度にアリアの羞恥心は削られていた。

 

 アベルは恐らく旅の恥は掻き捨て……的思考なのだろう。

 いや、アリアにとにかく触りたいだけか。

 

 

 アリアを抱きしめながら「アリア可愛い、アリア好き、可愛い……」とぶつぶつ呟き頬を彼女の頭に摺り寄せている。

 愛しい彼女に会って瞬時に癒されたらしい。

 

 その様子がじゃれつく子犬(でかいけど)のようだ。

 

 

「……アベル犬みたい……」

 

 

 ――これ、大型犬かな……?

 

 

 アリアは手をそっと伸ばしてアベルの頭にそっと触れる。

 と、アベルが俯いていた顔を上げ一声。

 

 

「わんっ!」

 

「……プッ! ふふふっ、アベルってば面白いんだから……!」

 

 

 いいこ、いいこ……。

 

 

 アベルの犬真似にアリアは彼の頭を撫でてやると、アベルの瞳が嬉しそうに細くなった。

 

 

「あ~、アベル、カワイイんだぁ……♡」

 

 

 ――なにか良いことがあったのかな? とっても嬉しそうね……! アベルが嬉しいなら私も嬉しい……!

 

 

 アリアはアベルの機嫌が良さそうで嬉しくなる。

 優し気な瞳で背伸びしながらアベルの頭を撫でていた。

 

 

「……はははっ、でしょ? 僕は君の犬だよ。アリアの言うことならなんでも聞くんだ。アリアは僕になにして欲しい?」

 

「うふふ。そうなの? じゃあ……、今すぐ離れて欲しいなっ♡」

 

「え」

 

 

 ――アリア、ドユコトー……? 今の今までラブラブオーラが出てたよ、ね……?

 

 

 明るい笑顔でアリアに言われてしまい、アベルはフリーズする。

 

 

「……えっと、人前だし……?」

 

 

 アリアは塔の入口を指差しており、アベルはそちらに目を向けた。

 そこでは見張りの兵士がアベル達を見ているではないか。

 

 

「あ、そういうこと? じゃあ、船に乗ったらまたハグしていい?」

 

「船……? あ、船を借りるって言ってたものね」

 

 

 アベルが納得して訊ねるが、アリアは答えずに話題を転換する。

 

 

 ――アベルとハグも そろそろやめなきゃね……。

 

 

 つい いつも通りに受け入れてしまった……とアリアは反省し、アベルから離れた。

 

 

「ああ、ルドマンさんから船を借りたんだ。次は水のリングを探しに行くよ。町の外に泊めておいてくれるって言ってたから、そろそろ出てるかも。あっちだ、行こう」

 

「船を貸してくれるなんて……ルドマンさんて太っ腹ね」

 

「ああ、彼はどの世界でも気前がいいんだ」

 

「そうなんだ」

 

 

 アベル達は船があるという町の側の橋へとお喋りしながら向かう。

 

 

 ……旅の再開である。

 

 

「……でも、この世界のルドマンさんは少し……手強いな」

 

「そう……」

 

 

 アベルが弱り目で頭の後ろを掻くと、アリアも困ったような顔ではにかんだ。

 

 

「……あ、たぶんあの船だね……!」

 

 

 サラボナの町から少し離れた橋の近くに一隻の帆船が停泊している。

 

 アベル達が徐々に近付くにつれ、少々小振りながらもしっかりした造りの立派な船が穏やかな潮に揺られていた。

 

 船の近くには船乗りらしき人がアベル達を待っており、手を振っている。

 

 アベル達が船までやって来ると、船乗りがアベルに操作方法などを説明し「お気を付けて!」と一言残して去って行った。

 

 アベルは先に船乗りが用意してくれた歩み板を駆け上ってパトリシアを誘導、船に乗せてから乗り口でアリアを待つ。

 

 

「立派な船だね~! すご~~い! アベル運転できるの?」

 

 

 アリアは馬車を乗せ終えてから歩み板を上り、船を見上げて瞳を輝かせた。

 船の帆が風を掴んでたわんでいる。

 

 ……漕ぎ手がいないようだが、まさかエンジンでもあるのだろうか。そう思ったアリアだったが、そうではないらしい。

 

 

「……船は魔力で動いてるんだ。簡単な操作で進めるはずだよ」

 

「そうなんだ…………(ゲームの世界って便利だなぁ……)」

 

 

 乗り口でアベルが手を差し出すと、アリアはその手を取り船に乗り込む。

 

 乗り口は少し高くなっていたため、アベルの手助けが嬉しい。

 キャビンの乗り降りもよく手伝ってもらっているアリアは、アベルのちょっとした気遣いがありがたかった。

 

 

「あ、アリア今、“ゲームの世界だから”とか思ったでしょ?」

 

「っ、どうしてわかったの!?」

 

「……わかるよ、アリアのことならね!」

 

 

 アリアが船に乗り込むと、すぐ後ろにピエールとプックルも続く。

 彼女が目を丸くする姿にアベルは優しい瞳で口角を上げていた。

 

 ……全員船に乗り込むと、アベルは歩み板を仕舞い始める。

 

 

「あっ、私も手伝うよ?」

 

「重いからいいよ」

 

「……アベル……」

 

 

 アリアの申し出にアベルは首を横に振って、断る。

 彼女に重労働はさせたくない。

 

 

(アリアの手に豆でも出来たら可哀想だからね……!)

 

 




魔力って便利~。なんという万能感。
船の動力といえば、Ⅲは確か人力だったと思います。
幽霊船で漕いでたもんね……。

エンヤコラ~っと。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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