旅立つ前に準備をしましょう、そうしましょう。
てなわけで、本編どうぞっ。
「ここから北に行くと冬の国。そこには氷の館と呼ばれる城があるそうですわ。ただ、氷の館の入口はかたく鍵で閉ざされていると聞きます」
ポワンと別れ、アリアと合流したアベル達は、城の二階へと下りてシスターの話を聞いていた。
「つまり、目的地は氷の館ってことね。でも鍵がないと開かないのかな……? どうしよう、アベル」
「そうなるね。鍵か……、そういや、盗賊の鍵の技法を編み出したドワーフが村を追い出されたって宿屋に居たガイコツが云ってたよ」
「ガ、ガイコツぅ~!?」
アリアはレヌール城を思い出したのか身体をぶるっと震わせる。
「あははっ、大丈夫だよ。お風呂に浸かって気持ち良さそうにしてたから悪い魔物じゃないよ」
「そ、そっか……アベルがそう言うなら……(幽霊は怖いけどガイコツは魔物だと思えばなんとか……、うん)」
アベルが笑うので、アリアは気にしないように努めることにしたのだった。
「ねえ」
アリアとアベルが目的地の確認をする中、ベラが声を掛けるのだが、二人はそのまま一階へと下りて行ってしまうのでベラは追い掛ける。
ベラが一階に下りると、アベルとアリアは丁度外へと出て行った。
「も~。ちょっと、坊ちゃん嬢ちゃん!?」
ベラは二人を追い掛ける。
外に出ると、二人は出入口傍にいた妖精に話し掛けていた。
「ここから眺める春の景色は、とても美しいのよ」
妖精が湖を眺めながら、以前の春の景色を想いうっとりと語る。
「見てみたいなぁ……(今でさえこんなに綺麗だもの、絶対綺麗だよ……)」
アリアもうっとりと妖精の隣に並んで湖を眺める。
雪の舞う湖も悪くはない。
「春風のフルートを取り返して、見せてあげるね!」
「ありがとう、アベル! 頑張ろうねっ!」
アベルもアリアの隣に立ち、僕に任せてと胸を叩いた。
するとアリアは嬉しそうに破顔したのだった。
「ねえ」
ベラは二人に話し掛けるのだが、
「そうだ! アリアに渡したいものがあるんだけど」
「え? なになに?」
二人はベラの呼び掛けに気付かないまま話し続けていた。
「ねえ、二人とも私の話聞いてる?」
人間界に居た時みたいじゃない……ヒドイ。
ベラはサンタローズを思い出し、ちょっぴり悲しくなってしまう。
「あっ! 毛皮のフード? いいの?」
「うん、アリアに被ってて欲しいんだ。寒いし、似合うと思うよ。僕とお揃い」
アベルはアリアに防具屋で買った【毛皮のフード】を渡し、装備させたのだった。
頭から肩まで覆うタイプのそれは、首を温め熱を逃がさない。防寒には持って来いな頭部を護る防具である。
「温か~い! ありがとう、アベルっ!! 実は首がちょっと寒かったんだよね。嬉しいっ!」
「どういたしまして!」
アリアの嬉しそうな笑顔にアベルも目を細める。
「もぉーっ! 何で無視するのよっ? このたいまつどうしたらいいのっ」
「「え?」」
アベルとアリアがベラを見る。
すると、ベラの手に煌々と燃える【たいまつ】が握られていた。
ポワンに渡されたまま、ずっと持っていたらしい。
「あ、温かい。ベラちゃんのお陰で温かいよ、ありがとう!」
「本当だ、温かいや」
不意にアリアが【たいまつ】に手を向けそんなことを云うので、アベルも同じように手を
「そ、そう? 良かったわ。って、何で無視してたのよ~。淋しかったわよ」
「そんなつもりはなかったの、ごめんね」
「うんうん、ごめん」
ベラの瞳に涙がきらりと光った気がして、二人は謝ったのだった。
「ベラ、そのたいまつ私が処分しておいてあげる」
「あら、そう? 助かるわ」
さっきまで二人と話をしていた妖精がベラから【たいまつ】を引き取ると、「この城は火気厳禁よ」と湖の方へと歩いて行った。
「火気厳禁だったんだ……。まぁ、そうか……お城切り株で出来てるし、燃えちゃうと困るものね……」
「ポワン様が持って来いって言ったのになぁ……」
アリアの呟きにアベルは釈然としない様子でゴソゴソと袋に手を突っ込み何かを探す。
ベラが「城内の壁は防火加工済みだから大丈夫なんだけど、一応ね」と付け加えた。
そして、
「さあ、行きましょうか!」
ベラが二人の肩をぽんと叩いて出発を促す。
「あっ、待って。もう一個アリアに渡したいものがあって」
アベルは慌てたように、「えっとえっとー……これかな……?」と手探りで袋を漁っていた。
「アベル……?」
「…………あった! これだっ、はい、アリアこれ食べて!」
「えっ、何……?」
目当てのものが見つかったのか、アベルは
渡されたものをアリアが見下ろすと、それは緑のヘタの付いた、渦巻き状の独特な形をした種らしきものだった。
何だろうこれ……、種っぽいけど……。
【いのちのきのみ】でも【ちからのたね】でもなさそう……。
「これって……」
「まもりのたねだよ。アリア弱いでしょ? だから、それ食べて。食べたら攻撃受けた時、ダメージが少し和らぐから」
「……いいの? アベルが食べた方がいいんじゃ……」
アベルの説明にアリアは【まもりのたね】ってこんな形してたんだ、知らなかったなぁと、貴重なものだと悟り断りを入れる。
けれども、アベルは首を左右に振った。
「ううん、アリアに食べて欲しいんだ」
「……そ、そう……? じゃあ……、いただくね(齧ればいいんだよね……?)」
カリリッ。
アリアは思い切って【まもりのたね】を口に入れ齧る。
しかし、その硬さに驚いて目を丸くした。
「かったぁ~!」
アーモンドをもっと硬くしたような……?
カリカリッ、カリッと強く噛み締めるアリアの口の中で【まもりのたね】は細かく砕かれていった。
「へ?」
アリアの感想にアベルが首を傾げる。
「っ、硬いね、コレ……。味は……、んー……、何かよくわかんない味……。炒ってお塩掛けたら食べやすくなるかな……。歯も丈夫になりそう!」
「え……、ぁ…………っ、ぷぷぷっ! アリア、君って……! くくくっ……!!」
アベルは腹を抱えて笑い出した。
アリアって何でこう、思いも寄らないことを云うんだろう?
僕はただ黙って噛み砕くだけなのにっ。
アリアの反応がアベルは楽しくて仕方なかった。
「あ……、何か身体が少し強くなった気がする。何コレ、不思議~!」
アリアは自分の身体が丈夫になった気がして、目を瞬かせる。
身体の表皮に薄い膜が張ったような感じがしたのだった。
「これで、ちょっとは安心かな」
「ありがとうアベル。益々お役に立てるよう頑張らなきゃだね!」
とりあえず、【メラ】と【ホイミ】は使えることが判ったから、何も出来なかった頃よりはマシなはず……と、アリアは意気込む。
アベルは「そんなに頑張らなくてもいいんだけどな……」と心配そうにアリアを見ていた。
「よし、じゃあ二人とも準備はいいかしら?」
「「うん!」」
こうして、三人は妖精の村から旅立ったのだった……。
「がうがうっ!」
(……プックルも居るよ!)
隙あらばいちゃいちゃw
さて、春風のフルートを取り戻しに行きましょ~!
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読んでいただきありがとうございましたっ!