山道を行きます。
では、本編どぞ。
穏やかな海を眺めつつ釣りを楽しんでいたアリアだったが、アベルが望むなら仕方ない。
アリアは釣り竿を片付け始めた。
「今度また釣りに連れて行くよ。よく釣れる場所にね」
アベルは“それ貸して”とアリアから釣り竿を奪うと、馬車へと向かう。
アリアも朝食の準備のため後ろについて行った。
「え……? そんなところがあるの? 古代の遺跡じゃなくて?」
「ああ、別の場所。とっておきの場所があるんだ」
アリアの問いに、アベルが穏やかに微笑む。
――サンタローズの洞窟の奥……、昔父さんが言っていた穴場。
そこの水は澄んでおり、川魚が多く生息していた。
修道院生活中、アリアと休み時間が合わない時にアベルは一度行ったことがある。
釣りと言えば古代の遺跡に皆で釣りに行ったことがあるのだが、あそこの魚は種類が少なかった。
しかも古代の遺跡に生息する魚は全体的に大きめの個体が多く、力のないアリアは釣り上げるのが大変で、すぐに釣りを諦めアベル達が楽しんでいるのを見て応援する側に回り、あまり楽しんでもらえていない。
サンタローズに流れる川には古代の遺跡で見た大きな魚とは違う小振りな魚も多く、洞窟奥までは村人も滅多に入らないから魚も擦れていない。
彼女にも楽しんでもらえることだろう。
今度アリアと行こうと思っていた矢先、クリエ達のお陰で修繕作業があっという間に終わってしまい誘えないままだった。
「へ~そうなんだ。アベルって色んなところを知っているのね」
「まあね」
「すごーい!」
「ハハハッ。そう?」
――アリア、もっと褒めてくれていいよ……!
アリアに褒められ、アベルは鼻高々である。
その後、アベル達はありもので朝食を摂り終えると山奥の村へと向かい歩き始めた。
◇
連なる山々を越え、谷を越え。
日も傾きかけた、そんな時……――。
「アリア、山奥の村が見えて来たよ」
アベルは行く先に開けた土地が見え指を差す。
近付くにつれ、山の斜面にいくつかの民家が建っているのが確認出来た。
「はぁ、はぁ……、どこ……? はぁ……温泉……! 温泉が私を待ってる……!」
アリアからはまだ山奥の村は確認出来ないらしい。
彼女は駆け出し、見える位置まで緩やかな登坂を上った。
「お、急に元気になったね? 足はもう痛くないのかい?」
「うん、だって、温泉入れるしっ♡」
さっきまで上り下りを繰り返し辛そうにしていたアリアだったが、もう少しで温泉に入れると思った途端元気をみせる。
アベルは“無邪気によろこんじゃって可愛いなぁ♡”とわかりやすい彼女に目を細めていた。
「昨日はお腹が痛いって言ってたし、もう少しで着くから馬車に乗ってたら? それか、足のマッサージでもしようか?」
「ううん、平気。これも鍛錬だと思ってがんばるよ」
もう何度目だろうか、アベルは今日山道で何度もアリアを馬車に乗せようと声を掛けている。
それだけでなく、ここに至るまでの間、アリアの足が度々遅くなったので何度か休憩を入れアベルが足のマッサージを申し出ていたが、アリアは頑なにどちらの提案も断っていた。
「鍛錬……?」
「私、体力ないし、筋肉も付きにくい体質みたいで……アベルみたいに筋肉を付けたいなって思ってるの。あっ、腹筋はそこそこあると思うんだけどねっ」
――あなたと別れたあと、独りでも生きて行けるように。
アリアが両腕に力
彼女の腹筋が確かに薄っすらあることは、アベルも死の火山で一目して知っている。
どれどれとアリアの力瘤に触れてみたが、気持ち硬いような気もしたが柔らかかった。
「柔らかい……。アリアが僕みたいな筋肉を……?」
アベルはムキムキになったアリアを想像してみる。
……小さい身体にムキムキの筋肉と浅黒くなった肌の彼女……、想像してみると悪くは無いが今の彼女とは ずいぶんイメージが違う。
――悪くないけど……アリアから柔らかさを取ったら なにが残るんだろうか……。
自分基準で考えると、アリアがずいぶんマッチョになってしまった。
アリアの柔らかさに癒されているアベルは、硬い彼女を抱きしめた時の抱き心地が気になる。
「……アリアはそのままがいいと思う……」
――まあ、アリアが望むんだったら……それでもいいけどね……。
一応現状のままを希望しておきつつ、アリアが望むなら筋トレにでも付き合ってやろうかとアベルは思った。
「そう……? ふふっ、ありがと。まあ、どれだけ鍛錬しても多少筋肉が付くくらいで、アベルみたいな身体にはなれないと思うんだけどね」
本当中々筋肉が付かないんだよね……とアリアが腕をモミモミしながらアベルの腕を見る。
彼女は“アベルの腕 格好いいな”と、はち切れそうな上腕を見ながら頬を赤らめていた。
「そ、そっか。ならよかった! はぁ……」
――そうか、アリアは別に僕と同じになろうとしているわけじゃないのか……。
アベルはアリアが筋肉モリモリを目指しているわけではなかったことに ほっと息を吐く。
「ん?」
「ハハハ……。さ アリア、じゃあラストスパート頑張ろうか」
「はーい! ……あっ! 村が見えたっ。おんせ~ん♪」
アリアにもようやく山奥の村が視認できたようだ。
彼女が喜び勇んで足取り軽く駆け出す。
「あっ、アリア、独りで行っちゃダメだよ!」
アベル達は急いでアリアを追ったのだった。
体力を付けるのって大事ですね。
運動不足に気を付けなければ……。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!