ゲレゲレですよ、ゲレゲレ。
では、本編どぞ~。
◇
……ビアンカの家に向かう道すがら、山の斜面には小さな墓地があり そこに独り、金の髪の女性が手を組み祈りを捧げているのが見える。
「…………」
「あの」
黙り込んで俯き、祈り続ける女性にアベルは話し掛けてみるが、彼女はアベルに気が付かなかった。
――ビアンカだよね……? ビアンカ……、って声を掛けてもいいのかな……。
アベルが彼女の名前を呼ぼうかどうかと迷っていると、女性からなにやら呟く声が聞こえて来る。
「…………きっと上手くいくわ。だから見守っていてね…………」
女性はそれだけ言うとまた黙って祈り始めてしまった。
「…………(お祈りの邪魔をしちゃダメだな)」
アベルは先にビアンカの家を訪問することにして、その場を後にする。
「……私、あの子のためにも頑張るからね、……………………――」
“……ゲレゲレ”
……女性の声がアベルに届くことは無かった。
「がうがうっ! がうがうっ!!(主。今の女、ビアンカではなかったかっ!? 話し掛けなくて良かったのか!?)」
――ゲレゲレって誰だ!?
墓地を後にしたアベルとプックルは坂を上ってビアンカの家を目指していたが、ビアンカの呟きはプックルにはしっかり届いており、彼は何度も墓地を振り返る。
「……プックル、静かに。君、声が大きいから」
しーっ、とアベルは人差し指を立てて口元に当て、プックルを諫めてからビアンカの家を見上げた。
ビアンカの家は山の斜面を利用し、格子状に組まれた木材同士が支え合った懸崖造りで建てられており、床下が随分と高い。
平坦な土地が少ない山の中だ、なるほどこういう建て方もあるのかとクリエが見たら瞳を輝かせただろう。
床下には井戸と、薪割り作業をしている農夫が見える。
アベルの目の前には床上、ビアンカの家へと続く階段があるが……。
「…………あれ? あっち……なんだろう……?」
「がう……?」
ふと、アベルが視界の左側、ビアンカの家に向かう左奥の坂道の先に見た事のない長い階段が目に入る。
こんな階段 どの世界でも見たことは無かったはずなんだが……と、気になったアベルはビアンカの家にはこの先を確認してから行っても遅くはない。
先にそちらへ足を向けることにした。
……その先にあったのは……。
◇
“スパリゾート天空の湯、建設予定地 関係者以外立入禁止!”
「す、すぱりぞうと……?(なんだソレ!?)」
長い階段を上がった先には、アベルの背よりも高い大きな木の壁に囲まれた建設途中らしき施設がある。
中央に木の扉があり、張り紙が貼られていた。
アベルは張り紙を読み上げ、固まる。
――こんなの初めてっっ!! ドユコトーー!?!?
木の扉には鍵が掛かっており、アベルの持つ【カギの技法】では開かず、扉の先を覗くことは出来なかった。
「……これはいったい……」
疑問に思ったアベルだったが、これ以上先に進めそうにないため諦め、ビアンカの家に向かうことにする。
「がうぅ?(来た道を戻るのか? 我、階段嫌い)」
「ねえ、プックル。さっきの……どういうことなのかな。僕、こんなの初めてなんだけど……」
“我、階段踏み外しそうになるん……”と云うプックルに 話し掛けるアベルの顔は自然と綻んでいる。
――これは、もしかしたら前兆……。
……アベルの鼓動は高鳴っていた。
◇
長い階段を下り、山の斜面に建てられたビアンカの家の前まで戻って来ると、墓地が見えたが、墓地の彼女はまだ祈りの途中。
アベルは先程よりもなぜか軽い気持ちでビアンカの家の階段を上っていった。
「お邪魔します……」
ビアンカの家に入り、とりあえずは家探し……と入ってすぐの居間 左側の部屋へと足を踏み入れる。
左側の部屋にはベッドが二台とタンスと本棚、独り掛けのテーブルが置かれていた。
……本当にどうかしているが、まずは調べないと気が済まないので本能の赴くままにあちこち調べさせてもらう。
「……特になにもないな。下の段は開けない方がいいと思うからやめとくよ」
「がう……(主……あんた……)」
アベルがタンスを閉じると、プックルが呆れた目でアベルを見上げる。
タンスの下の引き出しは開けないでおいたアベルだった。
「よし、じゃあ反対側の部屋に行こうか」
……プックルの視線もなんのその。
アベルは反対側の部屋へと歩き出した。
「ゴホン ゴホン! ……ん? 誰か来たのか? よっこらしょっと」
アベルが居間の右隣の部屋に入ると、部屋の中央にはベッドが一台。そこに横になっていた男が起き上がってアベルと目を合わせる。
男の声は少々疲れているのか、元気がなかった。
「あ。こんにちは!」
――……ちょっとお歳を召してるけど、ダンカンさんだ……!
アベルはダンカンに手を軽く上げて、笑みを向けた。
「はて? どちらさまで? どこかでお会いしたことがありましたっけ?」
「ダンカンさん! 僕、アベルです。サンタローズの村長だったパパスの息子の!」
ダンカンが馴れ馴れしく挨拶してくるアベルを訝しみ首を傾げるので、アベルは自分がパパスの息子だということを伝える。
……と、すぐにダンカンの目が大きく見開かれた。
「……え? なんだって? パパスの息子っ!? どひゃー!! こりゃ驚いたよ。アベル! 生きとったのか!」
ダンカンはベッドから飛び降り、アベルに駆け寄ると顔を覗き込んでくる。
始めは怪訝な顔をしていたダンカンだったが、アベルが本人だとわかると顔を綻ばせたのだった。
「はい、なんとか……」
「いやー、大きくなったなあ! あの頃はまだ ほんの子どもでビアンカとよく遊んでたっけ」
頭の後ろを掻き掻き 照れながらアベルが返事すると、ダンカンは先程までの疲れたような声ではなく、明るい声で笑顔を見せてくれる。
「……で、父さんは? パパスも元気なのかい?」
「…………」
――
ダンカンの問いにアベルは黙り込み、俯いてしまった。
アリアのお陰でせっかく色んなことが変わっているというのに、“父さんだけは
……自分がもっと早く人生を繰り返していると気が付けていれば、父も助けられたのに。
幼い頃の自分は“また”と感じるだけで、最も重要なことに気が付けなかった。
後悔と自責を常々しているが、過ぎ去った過去はもう、どうしようもない。
古代の遺跡にはパパスの焼け跡が今も残っていて、アベルはアリアと共に花を手向けていたのだ……。
……心の痛みと苦しみをそのままに、アベルはよりよい未来を目指し 今はただ、望む未来のために突き進んでいる。
「なんと……。そうか、パパスはもう……。アベルもずいぶん苦労したろう。たった1人でよく頑張ったな」
アベルが黙り込んだことで察したのだろう、ダンカンは労うようにアベルの肩に優しく手を置いた。
「はい1人で…………ん? ……ひとり? あっ、いえ。ひとりじゃないです」
――アリアがいつも一緒にいたから、僕は独りじゃない。
ダンカンの言葉に顔を上げたアベルだったが、声が小さかったのかダンカンは聞き取れなかった様子で居間の方へと目線を移動させる。
「そういえば来る途中でビアンカを見なかったかい? ゲレゲレのお墓に参ってるはずだが……」
「え」
――ゲレゲレ……? ……は?
アベルは思わぬ話に目を白黒させた。
……そんな時、
『ただいまー!』
外扉の開く音が聞こえ女性の明るい声が居間で響く。
「お、帰って来たみたいだ。あっちへ行こうか」
「え、あ、は、はい」
――なに? どういうことだ……? ゲレゲレって……??
アベルはダンカンに連れられ、声のする居間へと向かった。
ゲレゲレ……の正体はその内!
忘れたらすみません……w
一番下の引き出しは開けちゃダメなんですヨ!
祝500話!
書いていて思うのですが、これ、いつ終わるんだろうかと……www
楽しいのでまあいいんですけど、書きたい部分(セリフ?)をまだ書けていないのでそこに行きつくまでは書きたい。
いや、最後まで走り抜きますともさ。
いうて、結婚まではもうちょっとですもんね……!
ガンバルゾー。ガルバンゾ!(あ、豆です豆ね)
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!