ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

怒っちゃイヤん。

では、本編どぞー。



第五百二話 アベル、怒鳴る

 

 

 

 

 

 さて、ビアンカの家を飛び出したアベルはといえば……。

 

 

「こら、アリア。なんでここに君がいるの?」

 

「あっ、見つかっちゃった?」

 

 

 ……現在地は山奥の村に入って西側の山の斜面に掘られた洞穴である。

 そこではよろず屋を営んでいるドワーフの男が独り。

 

 アベルはよろず屋の奥の部屋でアリアを見つけたのだった。

 

 

 

 

 ……ビアンカの家から出たアベルは果樹園へと真っ直ぐ下りて来たのだが、果樹園にアリアの姿は無かった。

 

 農夫に訊ねたところ、今日の分の収穫は既に終わっており、彼女は階段を上って行ったと言われ、入れ違いになったかと思ったアベルは来た道を戻っていた。

 ……アベルが先ほど下りてきた階段を再び上っていると、目の前に大きな荷物を抱え、前方不注意でフラフラと歩く、ややふっくらした中年の女性が目に入る。

 

 ぶつからないようにと、アベルは女性を避けてすれ違い、先へ行こうとしたのだが、丁度女性がふらつき見事ぶつかってしまった。

 

 ……ぶつかった拍子に女性の荷物がその場に散乱、荷物は斜面を転がり、アベルは慌てて拾い謝罪する。

 

 

「すみませんでした」

 

 

 頭を下げてから、中年女性の顔を真っ直ぐに捉えると“この顔どこかで……?”アベルはその顔に見覚えがある気がした。

 

 

 ……その際、女性が言ったことなのだが。

 

 

「いやいや、こっちもよそ見してたから。拾ってくれてありがとうね。さっきもぶちまけちまって……やだよう。あたしの結び方が甘かったみたいだねえ。いや、さっきもね、珍しい髪色の綺麗な娘さんに拾ってもらったんだよ。うちの娘も綺麗な娘なんだけどね。さっきの()も負けないくらいの美人でびっくりしたよ。二人が並んだらスパも繁盛するかねえ」

 

 

 アベルにそう笑顔で話す、どことなく見たことのある顔の中年女性……。

 彼女は“看板娘にスカウトしようかねえ……”と顎に親指と人差し指を当てニヤリとほくそ笑む。

 

 

「あの、さっきぶつかった女性はどこへ行くと言っていましたか?」

 

 

 ――綺麗な娘って言ったら、アリアだ……!

 

 

 中年女性の娘が誰なのかはわからないが、アベルはさっきこの女性と出会ったのがアリアだと確信し訊ねた。

 

 

「ああっ、さっきまでよろず屋で一緒だったんだよ。優しい娘でねえ、あたしの買物に付き合ってくれたのさ。まだ店に居ると思うよ。あんたあの娘の知り合いかい?」

 

「っ、ありがとうございますっ!!」

 

「あっ、ちょっと!?」

 

 

 中年女性が斜面にあるよろず屋を指差すと、アベルは踵を返して走り出し……現在に至る……というわけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……山を登ったところの一番奥の大きな家に来てって言ったよね!?!?」

 

 

 アベルはアリアを怒鳴りつける。

 

 いつもはここまで大きな声を出したりしないが、ビアンカとの再会もあって同じ時が流れることを危惧したアベルは、不安を吹き飛ばすように今日に限ってはかなりの大声でアリアを注意していた。

 

 ……アリアはアベルに怒鳴られビクリ、ショックを受けたような顔で肩を揺らす。

 

 

「っ……! …………ぇ、えと。うん、行こうと思ったんだけど……、宿屋の前で荷物が転がって困ってる人がいてね。拾うのを手伝ったの。そのあと、その人……あ、女性なんだけど、よろず屋に用があるって言うから、荷物いっぱい抱えて大変そうだなって思って付き合うことにしたんだ。そしたら よろず屋さんが、甘いものが食べたいって言うからさっき頂いたミカンをプレゼントしたの……」

 

「……で、なんでそこに座ってるわけ?」

 

 

 アリアがおずおずとアベルを上目遣いに窺うが、彼女の話を聞いている間に、アベルは腕組みをし、よろず屋、奥の部屋のテーブルでお茶を飲む彼女を不機嫌な顔で見下ろした(ちなみにピエールは向かいでミカンを食べている)。

 

 

「あ、ははは……、お茶飲んで行きなさいって言うから……? ドワーフ族のお茶なんだって、おいしいよ。アベルも飲む……?」

 

 

 ――アベルすごく怒ってない……?

 

 

 アリアはアベルの怒りを収めようと、笑ってお茶を勧め誤魔化そうとしたのだが。

 

 

 

 

「アリアっ!! 僕、すごく心配したんだよ!?」

 

 

 

 

 “バンッッ!!”

 

 

 

 

 アベルは大きな声を発すると同時、手の平をテーブルに勢いよく叩き付けていた。

 

 テーブルの上にあった茶器がガチャンッと音を立て、カップに入っていた茶が零れると、険しいアベルの瞳がアリアを射抜く。

 

 

「ひゃっ!? っ……っっ、ご……、ごめんなさい……。む、村の外に、で、出てないからいい……かなって思ってたんだけど……ぁ、いや、たんですけど……」

 

 

 アリアはアベルの大きな声と立てた音に驚き、瞬時に身を竦めた。

 

 

 ――っ……アベル、コワイ……!! なんでこんなに怒ってるの……!?

 

 

 私、なにもしてないよね……?

 

 

 アリアの身体が小刻みに震え、彼女は涙目でアベルを見上げる。

 今のアベルはアリアから見ると恐怖の対象に見えたようだ。

 

 

「っ……あっ、えと、そ、そんな怯えなくても……、ごめ」

 

 

 ――あ、マズイ……、アリア怯えてる……!?

 

 

 彼女が怯えた様子に気が付きアベルは謝ろうとしたが、それより早くアリアが頭を下げた。

 

 

「っ……ごめんなさいっ……!!」

 

「っっ!?」

 

 

 アリアは身体を震わせ縮こまるように深々と頭を下げている。

 

 ……アベルは彼女のその態度に息を呑んだ。

 

 

「……わ、私、アベルの言うことちゃんと、き、きく、聞くから。これ、すぐ片付けるっ、あっ、あの、五分待ってくださいっ。す、すぐ……!」

 

「っ、アリアっ! いいよっ、ゆっくり……、で……」

 

 

 震える手でアリアが ガチャガチャと茶器を鳴らしながら慌てて片付け始める。

 

 彼女は茶器を手に、よろず屋の店主の元へと走って行った。

 

 二人のやり取りを黙って見ていたピエールも、急なアリアの態度の変化に驚きを隠せない様子で剥いたミカンを床に落としている。

 

 プックルも目を見開いていた。

 

 

 ――ああっ……!! よくわかんないけど、やらかしてしまった気がする……!!

 

 

 アリアの怯えた顔がアベルの脳裏にこびり付き、その顔が以前ルラフェンで見た顔を思い出させる。

 

 

(アリア……今の……ルラフェンで見た顔と同じ……?)

 

 

 自分が怯えさせてしまったのだろうか。

 なにか、トラウマを思い出させてしまったのか……。

 

 

 ……アベルはアリアを宥めなければと、彼女の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 アベルがよろず屋の店主の元へと行くと、アリアが店主に深々と頭を下げている。「ごめんなさい、ごめんなさい」と何度も謝っていた。

 

 店主は「いいっていいって!」とアリアから茶器を奪うと片付けるために外へと出て行ってしまう。

 

 アリアは独りその場に残り、ほっと胸を撫でおろしていた。

 ……その背後からアベルは声を掛ける。

 

 

「……っ、アリア大丈夫かい? 僕なにか君を刺激……」

 

「っ! ぁ……ア、アベル、ご、ごめんね。私、さっきはびっくりし過ぎちゃって……気が動転して。あの、私、男の人の大きな怒鳴り声とか、机を叩く音とか苦手で……。たぶん、幼少期か前世のトラウマだと思うの。平気になったと思ってたんだけど、違ったみたい。アベル、いつも穏やかであんまり怒鳴ったりしないから忘れてたの……、ごめんね」

 

 

 アベルが彼女の背後に近付くとアリアはすぐさま身体を反転、身を縮こまらせ、アベルを警戒するように見上げていた。

 

 ……その瞳がやはり怯えているように見える。

 

 

「…………っ、うん、こちらこそ……。もう、しないよ」

 

 

 ――なんで、こんなに怯えて……。

 

 

 さっきまでアリアを責めていたアベルだったが、彼女の様子にこれ以上問い詰めるわけにいかず、白金の髪に手を伸ばした。

 

 

「っ!?」

 

 

 アリアはアベルの行動にフイッと顔を背ける。

 

 

「あっ……、僕はアリアに危害を加えたりしないよっ?」

 

 

 ――アリアに避けられた……!?

 

 

 アベルの心臓がドクンと強く脈打ち、ショックを受けるが彼はなるべく笑顔を作ってもう一度アリアの髪に触れようと手を伸ばした。

 

 すると彼女は一瞬肩を揺らすが、アベルを見上げて自分の髪に触れるのを今度は許してくれる。

 

 

「ん……、うん。ごめんねっ、まだ震えが止まらなくて……」

 

 

 アベルがアリアの髪に触れ、優しく撫でるが アリアの手は震えたままだ。

 

 

「うん……。僕が君のトラウマを呼び起こしちゃったんだね……。申し訳ない……」

 

「ううんっ、私の方こそごめんなさい。アベルは早く来てねって言ってたのに……ごめんなさい……」

 

 

 アベルが髪を撫でながら静かにアリアを抱き寄せると、彼女の瞳からボロボロと透明な雫が零れ落ちていった。

 




アベルも不安なんです。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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