宝箱を落としていくんですよね。
では、本編どぞー。
「っ、アベルっ!?」
アリアの声が聞こえたと同時、アベルの身体は地面に沈む。
「ぁ……、ぃ……」
――いったぁーー……!
アベルはアリアを庇う様に【あくまのツボ】の前に躍り出ると【痛恨の一撃】を喰らってしまったが、後ろに倒れながらも飛んで来た【あくまのツボ】を捕らえピエールとプックルの前に力いっぱいぶん投げた(力持ちである)。
「主殿っ!!」
「ガルルルルッ……!!」
ピエールとプックルはアベルが投げた【あくまのツボ】にそれぞれ攻撃、不意打ちで投げ付けられたからか、【あくまのツボ】は避けることができなかったようだ。
そうしてピエールとプックルの連撃により【あくまのツボ】はようやく破壊される。
“いやぁぁああああっっ!!!!”
……アベルが倒れた時点でアリアの悲鳴が洞穴に響いていたが、アベルは傍に駆け寄って来るアリアに笑顔を見せていた。
だが、彼女の瞳には大粒の涙が。
「アリア……無事……?」
――ああ……また泣かせてしまった……。
ボロボロと瞳から熱い涙を零しながらアリアは座り込み、倒れるアベルの頭を自身の膝にのせる。
「うぅっ、アベル大丈夫っ!? 私は無事だよっ!? アベルのおかげっ。うぇっ……アベルぅっ……! うぇぇっ!!」
しゃくり上げる泣き顔は鼻水を伴い少々不細工だが、アベルは“ぐしゃぐしゃ顔のアリアもカワイイ……”なんて嬉しそうに顔を綻ばせ、アリアの頬に触れていた。
「ぅ、ん……、よかった……。僕は、ちょっと……いや、めちゃくちゃ痛いぃ……(回復……して欲しい……)」
――でも、アリアの膝枕……柔らかい……気持ち良すぎ……、やっぱ回復はもう少し待ってもらってもいいかも……、けど痛いし……。
アベルが痛し痒し葛藤するも……。
「ん……? あっ! 今回復するね……! ベホマッ!」
アベルが複雑そうに眉を上げ下げするので、アリアは察したのか回復呪文を唱えアベルを回復させる。
……アベルの傷は塞がり、あっという間に全快した。
「…………んー……。もう少しこのままでもいい……?」
――アリア……察するの早過ぎ……、もうちょっと鈍感でいいのに……。
体力が回復し、痛みが消えたのは喜ばしいことだが膝枕は捨てがたい。アベルはアリアの太ももにそれとなく触れてみる。
「……っ!? ダメっ。もう全快したでしょ? ほら起きて」
アリアは一瞬身体を強張らせてすぐ、両膝を上下に動かしアベルに退くよう催促した。
「……アリアのケチ。膝枕くらい修道院でしてくれてたんだから いいじゃないか」
「あのね……お店の人が見てるでしょ?(それは二人きりのときだけでしょっ!)」
渋々アベルが半身を起こすが、彼はまだ座ったまま口を尖らせ むくれている。
アリアは駄々をこねるアベルの仕草に頬を赤く染めながら先に独り立ち上がった。
――アベルってば可愛いんだからっ、そんなの求められたら言うこと聞いてあげたくなっちゃうでしょ……!
せっかくスキンシップを減らそう、減らそうと努力中だというのに、この男はすぐにくっつこうとして来る……。
そうは思うがアベルからの要求が嬉しいアリアは、マントに付いた土を払いながらこれ以上なにか求められる前にとピエール達の傍へ行くことにした。
「アリア嬢。ご無事で」
「うん。アベルが守ってくれて……、あ。それ……小さなメダル……?」
アリアがピエール達の元へ行くと、消えかけた【あくまのツボ】の残骸を眺めるピエールの手元で【小さなメダル】が光り輝いている。
「はい、悪魔の壺が落としたものです。主殿にお渡し下さい」
「あ、うん?」
ピエールに【小さなメダル】を手渡され、アリアは手の平にのった【小さなメダル】を見下ろした。
……【小さなメダル】からは何も聞こえない。
自分が記憶喪失の頃、アベルが【小さなメダル】が語り掛けて来ると言っていたが、やはりアベルだけが聞こえる声なのか……。
「なになに、どした?」
「あ、アベルこれどうぞ。悪魔の壺が落としたんだって」
アベルが後ろからやって来てアリアの手の平を覗き込むので、彼女は彼に【小さなメダル】を差し出した。
「あ、ラッキー。これはメダル王の元に送れないみたいだから、いつかメダル王に会った時、忘れないように渡さないとね」
アベルはアリアから【小さなメダル】を受け取り、メダルから特になにか語り掛けて来る様子はないため そのまま【ふくろ】に仕舞う。
「そうなんだ? いつも語り掛けて来るわけじゃないのね」
「ん? うん、そうだね。あれ? アリアもしかして僕が前に言ったこと憶えてる?」
――アリアが僕の言ったことを憶えている……!?
アリアの言葉にアベルの心は弾んだ。
“あれは、確か……アルカパの地下室だったかな……?”などと、当時は記憶喪失中の初々しい彼女を思い出すと頬が勝手に緩んでしまう。
あの頃の彼女は世間知らずで旅先で起こる なにもかもに驚き 破顔し、くるくると表情を変えて自分を楽しませてくれた。
今の彼女も なにかに驚く様は変わらないものの、あの頃に比べると理解が早い様に思う。
「え? あ、うん。メダル王様が集めてるんでしょ? あれって……記憶が戻る前だったっけ……。見つけたメダルをすぐ送れるなんて便利なシステムよね。あ、でも魔物から手に入れたものはシステム外なわけね……なるほど……」
「ははは……システムって……?」
「ゲーム内のシステムならありかなって」
「はは……、そうなんだ……?」
――ゲーム……だから……か。
アリアが腕組みして独り納得すると、アベルは空笑いを浮かべた。
理解が早くてなによりだが、アベルもなぜメダルを送れるのかは理解していない。
そしてアリアは“全てはゲームだから”で簡単に納得してしまう。
なぜ それで納得できるのかアベルには色々理解し難いところではあるが、記憶を取り戻した彼女は可愛いだけの存在じゃないということだ。
少し淋しい想いも感じつつ、アベルはアリアの中にはまだまだ未知の部分が多い……もっと彼女を知りたい、……全く飽きることがない。と探求心を疼かせたのだった。
「アベルはいつかメダル王様に会うんだね……(いいなぁ……)」
――その頃には私……、アベルともう一緒にいないんだなぁ……。
そう思い、鼻の奥がツンとしつつもアベルのことは置いておいて、独りで行けばいいかとアリアはなんとなく考えてみる。
それには先ず仲間の存在が不可欠なわけだが、それよりも今のアリアには、謎の男の存在にビアンカとの再会、アベルの結婚、幼少期の記憶について……と考えることが山積みだ。
……今はまだ、時期尚早か……。
アリアはリアルメダル王に会うのは楽しみとしてとっておき、今は考えないことにした。
「そうそう。たぶん そのうち会えると思うんだよね」
――アリアが僕の言ったことを憶えててくれてるなんて……、嬉しい……。
僕もアリアが言ったことはたくさん憶えてるよ……!
……アリアの考えていることなど知る由もないアベルは彼女を優し気に見つめる。
「ふふふっ、楽しみだね?」
「会えたらアリアの好きなものと交換してあげるからね」
「ぁ。ありがと……」
アベルの優しい笑顔にアリアは目を伏せながら笑みを崩さなかった。
小さなメダルの謎……。
転送システムは宝箱や引き出し、ツボ自体に掛けられていて、魔物の隠し持った宝箱には掛けられていない……的な?
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!