ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

おしゃべりなドワーフ。

では、本編どぞ。



第五百五話 それナイショ

 

 ……突然の戦闘後、いつの間にか洞穴の奥へと避難していたよろず屋の店主がアベル達の話し声が聞こえたのか、ようやく戦闘が終わったとやって来る。

 

 

「いやあ助かった、助かった!」

 

「え?」

 

 

 よろず屋の店主は朗らかな笑顔で急にアベルの手を取り、強く握ると上下に揺らした。

 

 

「……さっきの悪魔の壺なんだが、何年か前にいつの間にか住みつかれちまってな。危ないから動かそうと思ってたんだが、オレじゃ駄目だったんだ。温泉目当ての旅人が何人かそいつで亡くなってよ、何度か生き返らせに教会に連れて行ったこともある」

 

「はぁ……そんなことが……」

 

「触らぬ神に祟りなしで、置いとくだけなら害が無いってんで、そのままにしておいたんだが……、いや助かったよ。嬢ちゃんがあんたのことを強くて勇敢な若者なんだっつーから任せちまった。大正解だったな!」

 

 

 アベルが店主に“まさかこの人、旅人が来る度にツボを壊すよう言っているんじゃないよね……?”と懐疑的な目を向けるが、どうやら本当に困っていたようで、

 

 

 “ありがとうっ、ありがとうっ!”

 

 

 ……店主はアベルの手を握りしめながら感動の涙を流していた。

 

 

「っ、おじさん、でもこれは不意打ち……!(下手したらアベルが死んじゃったかもしれないのよ!?)」

 

 

 ――ツボの方から嫌な感じがしてたのよね……、まさか【あくまのツボ】なんて魔物が存在するなんて……、私がもっと注意していれば……。

 

 

 事前に教えてくれていれば、こっちだってもっといい対処法があったと思うのに ごめんねアベル……とアリアは眉を寄せた。

 

 

 そんなアリアを横目に店主はニヤニヤと愉快そうに口を歪ませ、目の前のアベルに言い放つ。

 

 

「嬢ちゃんが言ったんじゃないか。ツレは強くて勇敢で……なんだっけ? めちゃくちゃ格好いい……んだったかな?」

 

「っっ!?(えっ!?)」

 

 

 店主がアベルを見定める様に上から下まで眺めながら“うんうん”と納得したように頷くとアベルは目を見開いた。

 

 

「わぁっっ!? おじさんっ、それナイショって……!!」

 

 

 アリアは咄嗟にアベルの手を握る店主の手を取り、店主と共にアベルに背を向ける。

 

 そして“余計なこと言わないで……!”の意味を込めてキッと店主を睨み付けた。

 

 

「わはははっ! そうだったか? 戦ってる間、向こうから見てたが、確かに嬢ちゃんの男はいい男だな! 顔も良いし、あんだけ強けりゃモテるだろ? しかも、優しいんだっけか? 嬢ちゃんが心配するのも無理ないなぁ。ライバルが多くて大変なんて泣き言言ってないで がんばれよ!」

 

「ちがっ、おじさんっ、声が大きいっ……! しぃっ!(やめてっ!)」

 

 

 ――なに勝手に暴露してくれちゃってるのっ!?

 

 

 アリアは真っ赤な顔で店主の口を塞ごうと両手を押し当てるが、店主の髭はドワーフ由来の髭。その髭はごわごわと濃く分厚い。

 

 ……アリアが手を当てたところで口を塞ぐことは敵わなかった。

 

 髭の隙間を通り「わはははっ!」と店主の豪快な笑い声は筒抜けである。

 

 

「っっ……!!(アリア……、それ本当……?)」

 

 

 ――僕が強くて勇敢で、めちゃくちゃ格好いいって……? しかも優しいとか……、アリアが僕をそう言ったのか……?

 

 

 それに、他の女性に取られないか心配までしてる……?

 

 

 アリアが自分の話をしていたのはわかっていたが、アベルは内容まではわからずじまい。

 ……まさか自分を褒めてくれていたとは思わなかった。

 

 店主とアリアの話を聞いていたアベルの頬は嬉し恥ずかし、赤くなる。

 

 今までアリアから好意は何度か聞いているが、他の人からそういったことを聞かされると こんなにも心が弾むとは……。

 

 

 アリアから確かな愛情を感じたアベルは、今目の前でアリアが店主に触れていても彼を睨むことは無かった。

 

 

「……アリア、そろそろ行こうよ」

 

 

 アベルは店主を睨むことは無かったが、彼女の手を店主からさっさと退かせて指を絡めて繋ぐ。

 

 

「っ、ぁ、うん……」

 

 

 アリアは気まずそうに赤い顔のままアベルから目を逸らしていた。

 

 

「嬢ちゃん、ミカンありがとな! またいつでも茶を飲みに来な。買物でもいいぞ! 今度は最愛の彼氏も一緒にな~!」

 

 

 洞穴から出る際、店主がアリアに大声で手を振って見送るので、アリアは縮こまって振り返らない。

 

 

「うぅ……(余計なことを……!)」

 

「はいっ、明日買い物にまた来ますね~……!」

 

 

 “いい人じゃないか……!”とアベルは赤い顔のアリアを横目に後ろを振り返り手を振って洞穴から出たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 洞穴から出たアベル達はというと……。

 

 

 ……手を繋ぎながら山の斜面を登っていた。

 

 

「アベル」

 

「んー?」

 

「あの……、さっきのは、その……誤解っていうか……」

 

「なに? 僕が格好良いって話? アリア僕のこと大好きだよね~……、いや~僕、愛されてるなぁ……」

 

 

 よろず屋でアリアを見つけた時はご機嫌斜めだったアベルも、今はすっかり上機嫌である。

 

 

「っ……べ、別に!? 私はアベルのことなんか……す、すき……だけどもっ……」

 

 

 ――て、なんで素直に言っちゃうの、私……!

 

 

 そこは“好きじゃないんだからねっ!”でしょ……! と、ツンデレ属性の無いアリアには嘘が吐けなかった。

 

 

「ハハッ! だよね~! アリアは素直で可愛いね! 僕も好きだよー」

 

「っっ……、も~……やだ……あのドワーフのおじさん おしゃべり過ぎる……」

 

 

 ご機嫌なアベルとは裏腹にアリアは手を引かれながら片手で赤い顔を覆い「身から出た錆、口は(わざわい)の元……」とぶつぶつ。

 

 ……なにやら反省している様子である。

 

 照れているアリアに顔を綻ばせながら、アベルはビアンカの家の前まで再びやって来ると足を止めた。

 

 

「アリア。これからビアンカに会うよ。って、僕はさっき一度会ったんだけどね」

 

「えっ、あっ……! っ、ビアンカちゃん!? あっ、会ったの??(もう!?)」

 

 

 アベルの言葉にアリアは目を丸くする。

 いつの間に……という顔だ。

 

 その彼女の表情に、やはりアリアがわざと居なくなっているわけではないのだとアベルは確信した。

 

 

「うん。水門を開けてくれる人をさがしている時にビアンカに再会したんだ。ビアンカも君に会いたがってたよ。僕らのことを応援してもらおうと思ってさ」

 

 

 この階段を上ればビアンカの家だよ、とアベルが歩き出そうとするがアリアはアベルの手を引き、その場に留める。

 

 

「っ、アベルっ、あのっ、待って……!」

 

「え?」

 

「ビアンカちゃんに私たちのこと……話したの?」

 

「私たちのことって……?」

 

 

 アリアの問いにアベルは首を傾げる。

 すると、アリアは躊躇うようにおずおずとアベルを上目遣いに窺った。

 

 

「こ、恋人同士ってこと……」

 

「いや、まだだけど……」

 

「ほっ……よかった。あのっ……、私たちのこと、ビアンカちゃんには秘密にしておいて欲しいの」

 

「なんで?」

 

 

 アリアの話にアベルは目を瞬かせる。

 

 

 ――なぜ、ビアンカに秘密にする必要が……? ビアンカなら解ってくれると思うのに意味が解らない……。

 

 

 アベルはアリアが なぜそんなことを言うのか理解できず彼女の返答を待った。

 

 

 ……彼女の返答はこうだ。

 

 

「……フローラさんのために水のリングを探してるんだよ? 船はルドマンさんのものなのに、おかしいでしょ……」

 

 

 アリアの言い分は船にはルドマンの刻印が入っていて、フローラのために借りたものだから、それ以外の用途で使うのはいけない……という……。

 

 真面目か……とアベルは、アリアってこういう()だったと眉を寄せる。

 

 

「……けど、僕はフローラさんと結婚しないよ?」

 

「っ……そんなこと今すぐ決めなくてもっ! フローラさんは素敵な人だし、ビアンカちゃんだってきっと……」

 

「なに言ってるんだいアリア? 僕いつも言ってるよね? 僕は君と……――――」

 

 

 ――アリアなんで……? まだ伝わってないのか……?

 

 

 アリアの物言いが妙でアベルは何度でも言ってやる……と、再び“僕は君と結婚するんだ”宣言をしたのだ、が。

 

 

「っ! ……………………アベル……お願い。私から話すまでビアンカちゃんには何も言わないで……?」

 

 

 突然の耳鳴りにアベルの発言が一部聞き取れなかったアリアは、一瞬眉間に皺を寄せると、手を合わせてアベルに懇願していた。

 




アリア、アベル好き過ぎでしょ……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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