ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ダンカンの……?

では、本編どぞ!



第五百十話 ダンカンの……

 

 

 

 

 

 アベルが居間に戻ると、アリアが中年女性に抱きしめられ そのふくよかな身体に顔が埋まっていた。

 

 

「ありがとうねっ! 本当にありがとうねっ!! お嬢ちゃんには感謝してもしきれないよ……!」

 

『っ……いえっ、私はなにも……!(おばさんっ、苦しい……息が……!)』

 

 

 中年女性がアリアの頭にすりすりと頬を寄せるが、アリアはギブギブと手をバタつかせている。

 

 

 

 

「っ、……ダンカンさんのおかみさん!」

 

 

 

 

 隣の部屋から戻って来たアベルは自然と口にしていた。

 

 

 ――そうだ! 彼女はビアンカのお母さんだ……!

 

 

 こんなことって……あるのか……!?

 

 

 別世界で毎回亡くなっているビアンカの母親が生きている……。

 ……これまで一度も無かった奇跡にアベルの胸がドクドクと高鳴った。

 

 

(これじゃ、完全に未来が変わっているじゃないか……!!)

 

 

 アベルの呼び掛けにアリアを抱きしめていた おかみが顔を上げ、アリアを解放する。

 アリアは「ふぅ……」と一息吐いて、目を細めるビアンカに頭を撫でられていた。

 

 

「ん……? ああ! あんたが坊ちゃんだったのかい!? どうりで見たことあるなと思ってたんだよっ! アベル坊ちゃん、苦労したんだねえ……!」

 

 

 おかみはアリアから離れると、アベルに近寄り手を大きく広げ抱きついてくる。

 

 

「っ、おかみさん……」

 

「……幼なじみが集まったんだ、今夜は遅くまで語り合うといいよ。……よく頑張って来たねえ」

 

「…………っ、はい……」

 

 

 アリアと違う大きく温かな抱擁に、アベルは“母親”を感じ涙が滲む。

 

 

 

 

 “よく頑張って来たね”

 

 

 

 

 その言葉にはこれまで十数年の労いが込められていたわけだが、アベルには別の意味に聞こえた。

 

 

 

 

 “いくつもの別世界から(これまで)よく頑張って来たね”

 

 

 

 

 ビアンカの母が生きている……この奇跡に、この世界が別世界とは違う未来を進んでいるのだと確信する。

 

 アベルはずっと欲しかった確証を得た気がした。

 

 これで、アリアとの未来が確実に望める。

 ……もう不安に思う必要はない。

 

 

 ――泣いてしまいそうだ……、でも、今は泣けない。

 

 

 格好悪いから女性三人の前で泣くわけにはいかない。

 アベルは意識して口角を無理やり上げていた。

 

 

「っ、あの、レナータさんてもしかして……」

 

「ああ、あたしのことだよ。だんなが なにか用だって?」

 

 

 確認を取るためアベルがおかみに訊ねると、おかみは頷く。

 

 

「はい。ダンカンさんが、おかみさんが帰って来たら部屋に来るようにと……」

 

「まーったく、しょうがないねえ……。こっちは帰って来たばっかりだっていうのに……やっと口を利く気になったのかい」

 

 

 アベルから伝言を聞いた おかみは“は~”と深い溜息を吐いた。

 

 

「あ、お母さん、これ持って行って」

 

「ああ、悪いねビアンカ。じゃあ、坊ちゃん、お嬢ちゃんごゆっくり」

 

 

 ビアンカが買い物袋の中から小さな紙袋を取り出し、おかみに渡す。

 おかみはそれを手にアベル達に笑顔を向けてから、隣の部屋へ目線を移すとぶつぶつと不服そうに文句を垂れダンカンの元へ行ってしまった。

 

 

「……えと……?」

 

 

 おかみの態度にアベルは首を傾げる。

 

 十数年前のおかみはダンカンに対してあんな態度を取っていなかった気がするのだが、なにがあったというのか。

 

 ……アベルとアリアがぼーっと おかみを見送っていると、ビアンカが口を開いた。

 

 

「うふふ……、ごめんね。お父さんとお母さん、丁度今、喧嘩中なのよ」

 

「えっ、ダンカンさんとおかみさんが?」

 

 

 ビアンカが荷解きしながら苦笑いを浮かべると、アベルは目を瞬かせる。

 

 

「長く一緒にいたら喧嘩することだってあるわ。でも心配しないで。あの二人、なんだかんだですぐ仲直りするんだから」

 

 

 隣の部屋へと視線を送り、ビアンカはテーブルの上に買って来た酒瓶を置いた。

 

 

「夫婦喧嘩かぁ……」

 

「そ。犬も食わないってやつねっ」

 

 

 アリアが呟くとビアンカはニコニコと追加で買って来た食材等々をキッチンへと運んで行く。

 

 

「すぐご飯作っちゃうね! 二人ともお茶のおかわりを淹れるわ。ゆっくりしてて」

 

 

 ビアンカはキッチンに立つと湯を沸かし始め、振り返ったと思ったら買い物袋から野菜を手に洗い始めていた。

 

 

「あっ、私、手伝う!」

 

 

 アリアは慌ててキッチン……ビアンカの元へ。

 

 

「あらそう? アリアはお客さんなんだからいいのに」

 

「いいの! お手伝いさせて。お料理ならそこそこできると思うから」

 

「頼もしい~! じゃあ一緒に作りましょ♡」

 

 

 和気あいあい、と。

 ビアンカとアリアは楽しそうに調理を始めてしまう。

 

 ピエールもプックルも手伝いたいらしく、いつの間にか二人の側についていた。

 ピエールは早速【ジャガイモ】の皮むきを始めている。

 プックルはアリアの剥いた【トマト】の皮を咀嚼。生ごみ削減に貢献中だ。

 

 

(なに、この疎外感……。)

 

 

 独り残されたアベルもそれとなく、彼女達に近寄ってみる。

 

 

「あ、ぼ、僕もなにか手伝うよ……? 焼くのは得意なんだ、僕が焼くとすぐ焼けるよ!?」

 

「…………」

 

 

 アベルの声にアリアの手が止まった。

 

 

 ――アベルに任せると……中が……生焼け(超レア)に……! 煮込み料理ならなんとかなるけど、焼き物は……。

 

 

 いや、でもそんなこと言ったら可哀想だし……とアリアはどうしたものかと しばし考える。

 

 

 ……そんな時。

 ビアンカから救いの手が差し伸べられた。

 

 

「……ううん、アベルはお客さんだから座ってて。あ、でもそうね……なにか手伝ってくれるなら、下から薪を少し持って来て欲しいわね」

 

「わかった! どれくらい必要?」

 

「ん~と、そうねえ……」

 

 

 ビアンカが必要な分量をアベルに伝えると、彼は「了解!」と笑顔で家を出て行った。

 




なんとビアンカのかーちゃんが生きていた……ってゆー。

ビアンカのかーちゃん、レナータは、当方オリジナル名です。
復活、再生、生まれ変わりを意味するラテン語が起源の人名レナトゥスに由来します。
まあ マザーと一緒で名前あんま呼ばれないんだけども。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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