ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

懐かしの……!

では、本編どぞ。



第五百十六話 処方薬

 

「あら、アベルは胃袋を掴まれてるのね」

 

「うん……えっ、ち、違っ!(そうです!)」

 

 

 ビアンカがくすくすと笑みを溢しながらアベルに目を向けると、アベルは即座にアリアをチラッと確認してから否定した。

 ……少々挙動不審である。

 

 心の内と、実際に外に出た言葉が違うため、アベルの顔は戸惑いを隠せないのか額に汗を滲ませていた。

 

 

「うふふ。私なんて大したもの作れないし、ビアンカちゃんのご飯食べたらあっという間に胃袋掴まれちゃうよ~♪ これおいし~♡」

 

 

 満面の笑みを浮かべアリアがビアンカの料理を頬張り大絶賛すると、アベルはテーブルに拳を“ドンッ!”と打ち付ける。

 

 

「アリアなに言ってんの!? そんなことあるわけっ」

 

 

 ――ビアンカの作る料理は確かにおいしいけどっ、僕は君の作る料理の方が……!

 

 

 なぜさっきからアリアはビアンカを褒めそやしているのだろうか。

 ……アベルにはわけがわからない。

 

 

 “そんなことあるわけない。”……そう言おうとしたのだが、アリアが頬杖を突いてニコニコとアベルに笑顔を向けていた。

 

 

「……う、ん? アベル君、ナニカナ~?」

 

「くっ……、そ、ソウダネ……」

 

 

 ――うぅ……、僕はアリアだけなのに……なんでわかってくれないんだ……。

 

 

 アリアの張り付いた笑顔が怖くてアベルは頷くしかできない。

 ……ちょっと泣きたくなってしまったが、目を逸らして誤魔化しておいた。

 

 

「……………………ねえ、二人って……」

 

「あっ、そういえばビアンカちゃん」

 

 

 アベルとアリアのやり取りを見ていたビアンカが口を開くなり、アリアが被せる様に訊ねる。

 

 

「ん?」

 

「ビアンカちゃんも、おかみさんも私にお礼しなきゃって言ってたけど……、なんのお礼なの……? 私……、さっき再会したばかりで別になにもしてないと思うんだけど……」

 

 

 昼間ビアンカとおかみに抱きしめられお礼を言われたアリアだったが、まだその理由をきちんと聞けていない。

 

 なにかした記憶が特にないので、アリアは話題転換も兼ねて訊ねていたのだった。

 先ほど探していた、話の種が見つかり万々歳である。

 

 アベルもこの話には興味がある様子で、“うんうん”と頷いていた。

 

 

「ああ それね! そうなの。私、アリアには感謝しても しきれないくらいの恩があるのよ」

 

「恩?」

 

「うふふ。ちょっと待ってて! 今から持って来るから。それを見たら たぶん思い出すと思うわ」

 

 

 ビアンカは恩人に おもてなしをしなきゃとばかりに気を取られ、すっかり忘れていたらしい。

 手をぱちんと合わせて立ち上がると、ダンカンとおかみの部屋とは反対の部屋……恐らくビアンカの部屋だろう。

 そちらへと行ってしまった。

 

 

「「……思い出す……?」」

 

 

 アベルとアリア、二人の声が重なる。

 

 

「あ……はは……」

 

「あ……えと……(タイミングが合っちゃった……)」

 

 

 二人同時に零れた言葉にアベルは頭の後ろを掻き、アリアは気まずそうにはにかんだ。

 

 

「……アリア、なにか忘れてることがあるのかい?」

 

「ううん……なんだろ……。細かなところまではともかく、ビアンカちゃんと一緒にいた頃の記憶はちゃんと憶えてるつもりだけど……?」

 

「だよね……、僕も……」

 

 

 ――ビアンカはなにを持って来るつもりなんだ……?

 

 

 アリアに訊ねてみたが、彼女も心当たりがない様子。

 ビアンカが戻って来ないことには謎が解けないとして、アベルはビアンカが戻るのを待つことにした。

 

 

「お待たせ~。はい、これっ! 憶えてるっ?」

 

 

 ……少しして、ビアンカが隣の部屋から戻って来る。

 

 古くてちょっとボロボロになっちゃったけど、と、ビアンカは赤茶けてヨレヨレになった両手の平大の……、元は白かったであろう紙袋をアリアに差し出した。

 

 

「っ、こ、これ……」

 

「それって……! アリアの持ってた……!?」

 

 

 差し出された紙袋にアリアとアベルは目を見開く。

 その紙袋は、二人ともに見覚えがあった。

 

 アリアが「のみぐすり……外来、患者番号――……」と消えかけの印字をなんとか読み上げると、アベルは“そんなことが書いてあったのか……”などと感心してしまう。

 

 ……アベルには紙袋の文字を読むことができず、得体のしれない消えかけの文字を読むアリアをじっと見つめていた。

 

 

「……処方してもらった風邪薬……」

 

 

 ――そういえば……パパスさんに飲ませて、私要らないからって、ダンカンさんにあげたんだっけ……。

 

 

 アリアは十数年振りに見た、日本語の文字列に懐かしさを感じつつ、現実世界の処方薬の存在に、やはり自分は異質な存在なのだなと思ってしまう。

 

 アベルとは住む世界が違う人間……、ゲームの世界の住人と結婚などできようもないではないか……と。

 

 どこかで、前世の記憶は自分の勝手な思い込みなのではと思ったりもした。

 だが、こうして物的証拠があるのを見ると、これは逃れられない事実。

 

 

(私、やっぱり異世界に転生……もしくは転移したのね……。)

 

 

 わかってはいたが、記憶喪失中の約十年はこの世界の住人だとばかり思っていたから戸惑ってしまう。

 アリアはわかっていたつもり(・・・)だったのだ。

 

 ……それに気付いた今、孤独感が急に襲ってくる気がする。

 

 

(私……、この世界でも独りぼっちなんだね……、……まあ……いまさらかぁ……。)

 

 

 目の前のアベルも、ビアンカも所詮はゲーム世界の住人。

 隣で既に酒に呑まれ転寝をするピエールも、床で眠るプックルも同様。

 

 ……そう思うと、アリアの周りを黒い靄が浮遊しているのが見えた。

 

 その靄は最初は薄っすらと拳大の大きさをしていたが、たちどころに自分よりも大きくなり、アリアの身体へと入り込もうと近付いて来るではないか。

 

 間近に迫った黒い靄に視界が闇に染まっていく。向かいに座っているアベルの顔が視認できなくなり、アリアの瞳が思い迷うように揺れた。

 

 

 ――あ、これ……マズイ……?

 

 

 ……振り払わなければ。

 

 

 わかってはいるが、突然大きな靄に囲まれ咄嗟には動けない。

 

 このままでは呑まれてしまうかも……、また呪われてしまうのかと思うと解き方を知っているアリアは億劫に感じる。

 

 せっかくアベルに協力してもらって解けたのにアベルが結婚したら、独りで世界を回らなければ ならないではないか。

 

 

 ……ところが。

 

 

「そうなのっ! アリアにもらったすっごい薬!!」

 

 

 ビアンカの明るい声がした途端、黒い靄は跡形もなく霧散した。

 

 

「ぁ、ビアンカちゃん……(すごい……靄が消えた……)」

 

 

 アリアは目を何度も瞬かせる。

 気が付くとビアンカの手がアリアの肩に触れていた。

 

 

 ――さすがは正ヒロイン……、なにか不思議な力を持っているのね……。

 

 

 ありがとう、ビアンカちゃん。

 

 

 なぜ靄が晴れたのかはわからないが、ビアンカが助けてくれたことだけは解る。

 ビアンカに感謝したアリアだった。

 

 

 

 

 ……もう何年も前になるんだけど……、と、ビアンカはそのまま話を続けた――。

 

 




憶えてらっしゃる方いますか……?

ここに持って来るまでにかなりの時間を要してしまいましたが、予定通り書けたので満足です。ウフフ。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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