ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

念願叶って、温泉へ♪

では、本編どぞ。



第五百十八話 念願の温泉

 

「なるほどね~、そういうことなら明日、村の人に相談してみるわ。水門のことは私に任せて。今夜はたくさん食べて飲んで、楽しみましょ?」

 

 

 ビアンカが納得したように首を縦に下ろす。

 そうしてアベルとアリアの取り皿にそれぞれ【ポテトサラダ】をのせると朗らかな笑顔を見せた。

 

 

「うん。ありがとう、ビアンカちゃん! アベル、水門がなんとかなりそうでよかったね♪」

 

「…………ぁ、……うん……」

 

 

 アリアはテーブル上の酒瓶を手に、アベルのグラスに酒を注ぐ。

 慌ててアベルがグラスを手にしたものの、彼の表情は悲し気だった。

 

 

「ほらほら、たくさん飲んで? 明日からまた移動しなきゃだもの。飲むなら今日のうちだよ?」

 

「…………アリア…………」

 

 

 ――君はどうして……? 僕と結婚したいんじゃなかったのかい……?

 

 

 酒瓶を抱えながら、アベルがグラスを空にするのを待っているのだろう、アリアはニコニコとアベルを見つめている。

 

 その美しい笑顔がアベルは好きだったが、今夜ばかりは悲しくて堪らなかった……。

 

 

「あら? アベル、泣きそうね。どうかしたの?」

 

「……アベルは泣き上戸なの」

 

「あら そうなの? うふふ(可愛いわね)」

 

 

 ビアンカとアリアがそう話す中、アベルは注がれた酒を一気に飲み干していく。

 

 ……一杯くらいでは酔ったりしない。

 アベルは無言でアリアの前に空のグラスを突き出す。

 

 と、アリアは「はい、どうぞ~♡」といつもの愛らしい笑顔でお酌をしてくれた。

 

 いつもなら嬉しいアリアからの施しだが、今夜は違う。

 アベルは酔い潰れるまで飲んで、先程のアリアの言葉は聞かなかったことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくして……――。

 

 

 

 

 “ぐがー、ぐごー。”

 

 

 

 

 ……ビアンカの部屋にあった二台のベットの内、一つにアベルが大の字で眠っている。

 酒を飲んだせいでずいぶんと大きなイビキを掻いていた。

 

 

「アベル寝ちゃったね」

 

「ふふっ、かなり飲んでたもの、無理もないわ」

 

 

 アリアとビアンカは眠るアベルを見下ろし笑みを浮かべていた。

 長い会食と片付けが終わると、居間からここまで二人で酔い潰れたアベルを運んできたのである。

 

 

「…………あ、マントとターバンを取っておかないと苦しいよね」

 

 

 “う~ん……ギリギリギリ……。”

 

 

 眠るアベルの眉が寄せられ、寝苦しそうに唸り 歯軋りの音が聞こえる。

 と、アリアは彼のターバンと首元からマントを抜き去った。

 

 ターバンとマントを外してやると、アベルの顔が ふっと和らぐ。

 先ほどよりはイビキの音が小さくなった気がした。

 

 

「……アリアって面倒見いいのね」

 

「え? あ、そうかな? 守護天使だから……、かな?」

 

 

 ――いっけない……、つい いつもの癖で……。

 

 

 ビアンカに指摘され、アリアは気まずそうに頬を掻く。

 

 

 ……旅の間アベルが眠っているとつい、アリアは世話を焼きたくなって自然と身体が動いていた。

 

 キャンプ中は時折襲われることもあるため、アベルはターバンもマントも外さず眠ることが多い。

 火の番で座って眠ることが多いため あまり問題はないのだが、こうして横になると頭や首が寝苦しそうなのだ。

 

 イビキを掻いたり、歯軋りをしたり……。アリアは苦しそうに見えて、見つけた時は外してあげていた。

 

 

「……ふふっ、守護天使ってこんな面倒までみるの? 大変ね」

 

「あ……あはは……。まあ……、気付いた時は……かな」

 

「そうなんだ?」

 

 

 くかーくかー、と寝息を立てるアベルを見下ろし、ビアンカはくすくすと笑う。

 

 

「……ね、ビアンカちゃん……」

 

「う、ん?」

 

「温泉て……、夜も入れたりする?」

 

「え? あっ、村の温泉?」

 

「うん」

 

 

 アリアはターバンとマントを畳み眠るアベルの枕元に置くと、村の温泉について訊ねた。

 

 ビアンカの答えはイエス。

 夜も温泉に入れるらしい。

 

 それを聞いたアリアは「じゃあ私、温泉に入って来る~!」と元気に告げて家を出て行く。

 ピエール(&アンドレ)とプックルは既に夢の中だ。アベルの傍で眠っていたため、置いて行った。

 

 

「あまり遅くならないようにね……!」

 

 

 ビアンカは玄関を開けておくからね、とアリアを見送り部屋に戻るとベッドに潜り込む。

 

 

「……アベル……、結婚するんだ……。そうなんだ……」

 

 

 隣で気持ち良さそうに眠るアベルの横顔をビアンカはしばらく眺めていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……さて、独りで温泉に向かったアリアはというと……。

 

 

「はぁ……、いいお湯~……」

 

 

 ――おんっ、せんっ! サイコ~♡♡

 

 

 タオルを身体に巻き付けた彼女は、少々熱めの無色透明の温泉に身体を浸す。

 

 

 ……なんとか独りで温泉に辿り着けたようだ。

 

 ビアンカの家を出て階段を下りる際、山の斜面右手を見ると白い湯気が立ち昇っている岩場が見えて温泉だと目星を付け、迷うことなく辿り着くことができた……と思っていたが、実際はそうではない。

 

 ……アリアは筋金入りのド方向音痴だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ようこそ旅の宿に。夜道を歩かれて さぞやお疲れでしょう。ひと晩8ゴールドですがお泊まりになりますか?』

 

『あ、いえ、私 温泉に入りに来たんです。あの、温泉はどこに行けば……』

 

 

 ……つい先ほどのことである。アリアは湯煙を頼りに宿屋に入ると、温泉がどこにあるのかフロントの青年に訊ねていた。

 

 さすがに屋内で迷子になることはないが、夜遅い時間に間違えて泊まり客の部屋に入るわけにもいかない。

 主人公のアベルと一緒ならまだしも、独りで他人の部屋を覗くことなどアリアにはできなかった。

 自身が方向音痴だということを自覚しているアリアは失敗しないための対策を講じたのである。

 

 フロントの青年は金の髪に青い瞳の優し気な面差し、中肉中背、中々の好青年だ。

 歳はアリアよりも少々上な気がする。

 

 少し頼りなさそうにも見えるが穏やかそうな印象を受けた。

 

 

『ああ、温泉なら奥の扉を出た所にございますよ。今は誰もいらっしゃらないようです』

 

 

 青年はわざわざフロントカウンタ―から出て来てアリアに温泉へ続く扉の場所を教えてくれる。

 ……親切な男性(ひと)だ。

 

 

『あ、あの扉ですね! ありがとうございますっ』

 

『山奥の村自慢の温泉です。ごゆっくりお寛ぎください』

 

 

 青年は優しい笑みを浮かべて軽く会釈するとフロントカウンタ―に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そんなことがあり、青年に温泉の場所を教わったアリアは漸く温泉に辿り着いたというわけだ。

 

 

 温かい湯に浸かると、身も心も解れてホッと一息。

 真夜中近くだからか、青年が言った通り今は温泉には誰も居ない。

 

 ……貸し切り露天風呂といったところか。

 

 

「……温泉があるなんて……、しあわせ過ぎる……ほえ~~……(貸し切り~♡)」

 

 

 アリアには考えるべき課題が山積みなのだが、先ずは身体を温めてから。

 ……それからゆっくり考えることにした。

 

 

「ん~……アベルはビアンカちゃんと良い感じだったから……、ビアンカちゃんとくっつくのかなぁ……」

 

 

 身体がほかほかして来ると、アリアは暗闇の空を見上げて無数の星々を眺める。

 綺麗な星空だなと思うが、今は景色を楽しむような心の余裕はなかった。

 

 

 ――私は、どっちもいいと思うな……、うんっ!

 

 

 ……主人公(アベル)が選ぶのはフローラかビアンカか。

 現時点ではわからないため、アリアはアベルがどちらを選んでも応援してやろうと拳をぐっと握り締める。

 

 

「アベルがしあわせになってくれたら……それでいいや……、っ、ふふっ……」

 

 

 湯気の立つお湯に頬からいつの間にか伝っていた雫が数滴落ちると、バシャバシャ。

 アリアは慌てて顔にお湯を引っ被せた。

 

 

 ――泣いたってどうしようもないでしょ、アリア。

 

 

 アベルはこの世界の主人公なんだから……!

 

 

 ボタボタボタッと顔に掛けた湯が滴り、水面に波紋を広げる。

 気を抜くと悲しくなりそうだから、アリアは別のことを考えることにした。

 

 

「…………ふぅ……。あの人、いったい誰なんだろう……」

 

 

 さて、思考を切り替え、次の議題はサラボナで会った謎の男のことである。

 

 

 

 

 あの時……――。

 

 

 

 

 フード付きの白いロングマントを纏った男は数々の預言めいたことをアリアに言い残していたのだ。

 




アベルと入れなかったのはちょっと残念でしたが、その内入れるといいね!

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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