ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ひとりにならないとゆっくり考える暇もありません。

では、本編どぞ~。



第五百十九話 回想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……時は遡り、見はらしの塔――。

 

 

 それはアベルがルドマンの屋敷へ向かっている間の出来事だった。

 

 

 ……スラりんが一匹で見はらしの塔に上って来たとアリアは思い、出迎えのために階段の近くに移動していた。

 

 だが、スラりんは最上階に着くなり出迎えたアリアを素通り。そのまま見張りの兵士に話し掛けに向かう。

 

 すると話し掛けられた兵士の目蓋が虚ろに伏せられ、終いには閉じてその場に彼は昏倒……。

 

 まさか兵士を殺したのかと思いきや、そうではなかった。

 アリアが驚く中、兵士が すうすうと静かに寝息を立て始めたのだ。

 

 

 ――兵士さんが眠っちゃった……!?

 

 

 突然の出来事にアリアは、兵士を眠らせ自らの傍にやって来るスラりんを警戒しながら見下ろす。

 

 

「…………アリア」

 

「っ……あなた、誰なの? ……っ、スラりん……、……じゃない、あなたはいったい……」

 

 

 アリアの目の前には スラりんと同じように ぴょんぴょんと弾むスライム。

 だが、スラりんは自分のことを“アリアちゃん”と親しみを込めて呼んでくれる。

 

 呼び捨てには決してしない……。

 

 

「私か……? まだわからないのか……? おかしいな……」

 

 

 地上で駆けて来る時は気が付かなかったが、声がスラりんと違い、このスライムの声はあまりにも低く冷ややかで驚いた。

 

 

「わからないって……、なにが……」

 

「…………ふむ、そうだな、では姿を変えればわかるか……?」

 

「姿を変える……?」

 

 

 聞いたことのあるような口調にアリアは身を竦める。

 スライムは左右に身体を揺らし、器用に片方の口端だけ吊り上げニヤリ。

 

 

「前回はお前の最も愛しい者だったが、今回は趣向を変えてみようか」

 

「えっ、それって……、……あなたプックルの洞窟にいた……?」

 

 

 今の姿はスライムゆえに、恐怖はない。

 スライムの話に、一年近く前プックルの居た洞窟で出会ったアベル似の男の姿が思い起こされた。

 

 

 ――そうだ……、なんか聞いたことあるなって思った……! 私に逢いたかったって言った人……!

 

 

 思い出したアリアはスライムに問い掛ける。

 するとスライムは突如白く発光し、静かにその姿を人間の姿へと変えていった。

 

 

「っ、まぶしぃっ!!」

 

 

 アリアは咄嗟に腕で光を遮ったが、眩し過ぎて目がくらんでしまう。

 

 

「…………アリア。お前、まだ思い出さないつもりか……?」

 

「っ……うそ……、その姿……、どうして……」

 

 

 先ほどまで足元で聞こえていた男の声が、今はアリアの頭上で響く。

 漸く目が慣れて来たアリアは、目の前の男の姿に信じられないものでも見たかのように、眼球が飛び出るのではというほどに見開かれ、固まってしまった。

 

 

 ――お、にい、ちゃん……? なんで、お兄ちゃんがここに……?

 

 

 ってか、なぜロン毛……!?

 

 

 アリアの前に立つ男の姿は髪型、色こそ違えど、アリアの前世の兄の姿にそっくりだったのだ。

 ……前世の兄は確か髪を長く伸ばしたことなど無かったはずだが、目の前の兄似の男はなぜか超ロングヘアである。

 

 いったいどういうことなのか、アリアにはわけがわからない。

 

 

「この姿は仮の姿……、私には実体がない。……お前の近しい者に似ているか?」

 

「っ……似ているなんてものじゃ……」

 

「フ、そうか……。だが、お前は何も思い出していないようだ……なぜだ?」

 

 

 男はほくそ笑み、訝し気に首を軽く傾げる。

 

 

「? あのっ、あなたは私の幼少期を知ってるんですか……? あっ、私 幼少期の記憶がなくて」

 

「…………」

 

 

 アリアが問い掛けるが、男は無言でアリアを見下ろしていた。

 その表情は冷めていたが、怒りは感じられない……どころか全くの無反応である。

 

 

「あの?」

 

「……ゆっくり目覚めれば良いと言ったのは私か……、仕方ない……。記憶は似た環境で戻るだろう。また、風が運ぶこともある。そして力は徐々に解放されていくはず」

 

 

 アリアが再度訊ねるも、男は一瞬、額を片手で抱えるように俯いたがすぐに顔を上げ一方的に喋り続ける。

 

 ……アリアの質問に、男は答える気がないようだった。

 そもそもアリアの問い掛けすら聞いていなかった様子。

 

 

「似た環境……? 風……? チカラって……(なによ……、意味わかんない……)」

 

 

 男の言葉にアリアが困惑して呟くが、男は構わず話を続けた。

 

 

「……私を助けて欲しい。私を救うことが出来るのは、アリア。お前だけなのだ。助けてくれると約束するならば、お前の望みを一つ叶えてやろう。お前に救いを請うためだけに、私は今ここに存在している」

 

 

 言い終えた男がアリアに手を差し出す。

 

 

 “助けて欲しい”

 

 

 ……男の望みは救い……、らしい。

 

 この手を取れということなのか……、アリアは差し出された男の手を見下ろした。

 

 

(助けて欲しいって言われても……、私に何ができるっていうの……?)

 

 

 それよりもこの男は自分の過去を知っているのではなかろうか。

 ……なのに、答える気がないのでは。

 

 

 アリアは二度も幼少期のことを訊ねたのに無視され唇を噛む。

 目の前の男はこちらの質問に答えないくせに、要求だけしてくるのだ。そんな輩を助ける義理などないではないか。

 

 

 ――そっちが教えてくれないなら、私だって助けてあげない。

 

 

 ……よくよく考えたら、男の話し方は高圧的で失礼だ。

 上からの物言いは、前世の父や元カレに似たものを感じる。

 

 アベルなら決してそんな言い方はしないし、いつも自分の話を聞いてくれる。

 

 誰だか知らないが、やはり断ろう。

 ……助け方も知らないし、と。

 

 もしかしたら自分の過去を知っている人物なのかもしれないが、胡散臭さ満載な男に関わるのは止めておいた方がいい気がして、アリアは断ろうとした。

 

 

 ……だが、それは出来なかった。

 

 

 

 

「お前はアベルとかいう男と結婚したいのだろう? その願い、私が叶えよう」

 

 

 

 

 男の唇が薄っすらと歪み、開いた口からアリアの願いを叶えるとの甘言が零れ落ちる。

 

 

「っ!? そんなことできるわけ……!」

 

 

 ――なに? どうしてこの人、私の願いを知っているの……!?

 

 

 決して叶うことはない、誰にも言ったことのないアリアの秘かな願い。

 諦めているはずなのに諦めきれていない矛盾した想い。

 

 ピエールならもしかしたら気付いているのかもしれないが、まだ二度しか顔を合わせていないというのに、なぜこの男は自分の願いを当てたのか。

 前回逢った時はアベルのことすら知らなかったはず。

 

 

 ……アリアの瞳は揺れていた。

 

 

「私ならばそれも可能だ。この手を取り、私を救ってくれないか?」

 

 

 男は自信満々に“アベルと結婚させてやるから手を取れ”と要求してくる。

 アリアは言葉を失い、身体を強張らせた。

 

 そこに急な突風が吹き煽られ、マントが風を受け アリアの身体が揺れる。

 

 

「あっ……!(すごい風……っ!)」

 

 

 足元がふらつき、アリアはバランスを崩して思わず男の手を取ってしまった。

 男はアリアの手を力強く握り、支える。

 

 風は強く、アリアのマントを煽って水平に浮かぶほどで、身体は飛ばされないまでも男が支えてくれなければ転んでいただろう。

 男のマントもかなりの風を捉まえ膨らんでいた。

 

 

「…………この手は取った(・・・)とは言わないな……。お前の意志がなければ私は救われない。……お前の意志が固まる頃、また近いうちに出直そう……、何、待つのは慣れている。お前のチカラを少々解放しておいてやろう」

 

 

 風が止むと、男は繋いでいない方の手でアリアの頬にそっと触れる。

 

 

「私のチカラ……?(目にゴミが入っちゃった……痛い……)」

 

「……お前の中には底知れないチカラが眠っているのだ。時が来たら返事を訊きに来る。ただし……これは私とお前、二人だけの秘密だ。誰にも言うんじゃないぞ。もちろん、アベルという男にも、だ」

 

 

 吹いた風に運ばれた砂埃が目に入り、少々涙目になったアリアに男が冷ややかな笑みを向けた。

 

 すると、アリアの身体がカッと火が点ったように熱くなっていく。

 

 

「あぅっ……!?(背中が……身体が熱い……!?)」

 

 

 ――なにこれぇ……? 身体がぽかぽかして……?

 

 

 内から滲み出る熱にアリアは眉を顰めた。

 

 

「……これであらゆる魔力を見分けることができるだろう。仕様もない魔族の残り香など寄せ付けるんじゃないぞ」

 

「残り香……??」

 

「そうだ。お前は私の……」

 

 

 男が触れていたアリアの頬から、頭に手を移動させようとしたところで……。

 

 

 

 

『はぁっはぁっ、アリアっ!!』

 

 

 

 

 ……息せき切ったアベルが最上階へとやって来たのだ。

 




アリアの兄ちゃん、イケメンという設定ですw
イケメンが好きなんだ!

アリアの願いが叶うといいけど、男さん、胡散臭いからなぁ。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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