ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

温泉を独り占め♡

では、本編どぞ~。



第五百二十話 思考の整理

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔力を見分けることができる……って……あれよね……」

 

 

 ――確かにあの人に会った後から黒い靄がいつでも見えるようになったし、魔物の気配もわかるようになって来た気がするけど……。

 

 

 特殊能力開花……覚醒というやつかな……? などと、アリアは湯を掬って両手の平を見下ろす。

 

 ……これといって、身体的特徴は特に変わりなしだ。

 

 

 ただ、元々何となく聞こえていた仲魔の声がはっきりわかるようになって来たし、敵対する魔物の声も聞こえるようになった(但し、プックルの言うことはよくわからないままである)。

 

 

「……うーん……」

 

 

 ブクブクブク……。

 

 

 鼻のすぐ下まで湯に浸かって息を吐き出すと、気泡が弾ける。

 

 

 ――あの人、実体がない……ってことは、もしかして本体は別の場所にいるのかな……。

 

 

 ……あの時、最上階から落ちた男の姿は落下途中で消えていた。

 

 

 “お前の意志が固まる頃、また近いうちに出直そう。――時が来たら返事を訊きに来る。”

 

 

 男はそう云っていたのだ。

 神出鬼没だが、アベルが結婚する前にまた接触して来るつもりだろう。

 

 

 アリアは喉と、頬に引っ掻き傷を付けられてはいるが、男からの殺意は感じられなかった。

 

 また、魔力を見分けられる力が付いたのか、男の魔力もわかったが、強いとも弱いとも感じられず……どころか何も感じなかったのだ。

 

 アベルの放った【バギマ】を掻き消した際に一瞬だけ魔力を感じたが、その後はまた消えてしまった。

 

 

(実体がないから魔力を使用する時のみ、使用分の魔力を感じることができたとか……?)

 

 

 アベルと相対した男は高笑いし高圧的ではあったが、アベルに攻撃することはなかった。

 

 兵士やピエールとプックルを眠らせていたことついては驚いたが、アリアのかすり傷以外、誰も傷付いてはいないのである。

 

 

 怪しい男だということには違いはないが、ひょっとしたらちょっと性格が傲慢なだけで、そう悪い人物でもないのかもしれない。

 

 

「……って、アベルだって知らない人を元社畜OLの私がわかるはずないじゃない……!」

 

 

 ――考えれば考えるほどわけがわからないよ、お兄ちゃん……!

 

 

 謎の人物が兄そっくりの姿で現れたのは、前回のアベルの姿同様、現時点では自分の思考を読まれたからだと仮定しておく。

 

 ……アリアは兄の姿で現れた男に悪感情を抱くことができなかった。

 

 

「……あの人、天空人の偉い人なのかなぁ……(なんか偉そうだったし……)」

 

 

 ――あの人が天空人なら、落ちた城を救ってくれとかそういう話……?

 

 

 いや、そんなこと私みたいなバグっ()に言っても無理じゃない?

 主人公のアベルに助けてもらうとか、クリエちゃんに建て直してもらった方が確実でしょ……。

 

 大体、ゲームや漫画じゃあるまいし、そんな大昔の話が今に残ってるわけ……――。

 

 

 ……そこまで考えるとアリアは思考を停止する。

 

 

「ぁ……そっか……、ここ……、ゲームの中だもんね……。そういうこともあり得るのか……」

 

 

 ――なんですぐ気付かなかったんだろう……。

 

 

 ……このゲームのサブタイトルは【天空の花嫁】である。

 

 これまで天空の城についてのお伽話はいくつか聞いたことがあったが、そう多くはなかった。

 

 現在アベルが天空の勇者の武器防具を探しているわけで、天空に纏わる逸話がこれから多く出て来る可能性があるではないか。

 

 前作のドラクエⅣをクリアしていれば、多少なりとも知識を役立てることができたかもしれないが、最後までクリアしていないアリアは天空に関する知識が全くと言っていいほどないのだ……。

 

 

(天空の花嫁……、ビアンカちゃんもフローラさんも天空に関係する人物ってことよね……?)

 

 

 アリアの持つドラクエの知識は ほぼほぼⅢまで。

 この世界で役立つのは呪文くらいである。

 

 

 ――食事中に(もや)が襲って来た時、ビアンカちゃんが私に触れた途端靄は消えたよね……。

 

 

 ビアンカがアリアに付き纏う靄を掻き消してくれたおかげで再び呪われることは無かった。

 

 ビアンカ、彼女から不思議な力を感じる気がするのは、あの男が解放した力のせいなのだろう。

 

 それとは別でビアンカといると なぜだか懐かしく、心地好さも感じる。

 フローラにしてもそれは同じだった。

 

 

「……フローラさんもそうなんだよね……」

 

 

 ――ねえアリア、あなたいったい何者なの……?

 

 

 アリアは自らに問い掛けしばらく考えていたが、段々と身体が熱くなって頭がぼーっとしてくる。

 

 

「あの人のこと……アベルに相談してみる……?」

 

 

 ――でもアベルとはもうすぐお別れだし、余計なこと言って心配掛けたくないし……あの人も黙っておけと言ってたし……。

 

 

 もう一度謎の男が接触して来たら話すとアベルには伝えてあるが、アリアは(アベル)に相談する気はなかった。

 

 

 ……アベルにはアベルの人生がある。

 

 

 アベルのいない時を見計らったように現れる人物は恐らくはアリア(・・・)の関係者だ。

 この先、自分とは違う道を行く者に自己の問題を打ち明けることは、一緒に解決して欲しいというのと同義。

 

 アリアはアベルに自らの問題を背負わせることはしたくない。

 ……これは独りで解決しなければならないことで、アベルとは何の関係もない問題である。

 

 

 だがアベルのことだ。きっと教えろと言って来るだろう。

 

 

 その時は……――

 

 

「…………はぁ……あつ……」

 

 

 思考の整理をしている間にアリアの身体は真っ赤に茹ってしまった。

 このままでは逆上せてしまいそうだ……。

 

 ……アリアは逆上せる前に温泉から上がることにした。

 

 

 

 

「ふぅー……(……まあ、考えが整理できただけでもいいか……)」

 

 

 

 

 ザバァッ! とアリアが勢いよく立ち上がり湯が揺れ、雫がボタボタと落ちていく。

 全身真っ赤になったアリアは近くの岩に腰掛け、外気に当たり少しだけ身体を冷やしてからビアンカの家に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……温泉を後にして、ほかほかと身体に湯気を纏わせ、アリアは来た道を上って行く。

 

 ビアンカの家が一番奥の家でよかった。無事に迷わず帰ることができたのだから(ちなみに帰り道も念のためフロントの青年に訊ねている)。

 

 

「おかえり、アリア」

 

「あ、ただいま。まだ起きてたの? 先に寝ててくれてよかったのに」

 

 

 ビアンカの部屋に入ると、奥のベッドでアベルは相変わらずイビキを掻いて眠っており、手前のベッドではビアンカがランタンの小さな灯りの下、上半身を起こしたまま本を読んでいた。

 

 アリアが戻るなり、ビアンカは掛布団を捲ってアリアを手招きする。

 部屋には二つしかベッドがないため、ビアンカとアリアは今夜は共寝だ。

 

 

「うふふっ、なんだか眠れなくて」

 

「そっか……」

 

 

 アリアがビアンカの隣に腰掛けると、ビアンカは枕元に置いていたブラシを手にして白金の髪を梳いてやった。

 

 アリアの髪は風呂で濡れてまだ乾いておらず少々湿っていたが、ブラッシングすると次第に乾いていく。

 

 

「温泉はどうだった?(綺麗な髪~……指通りもいいし、ツヤツヤね……!)」

 

「いいお湯だった~♡ 誰もいなかったから貸し切りだったよ」

 

 

 ビアンカがアリアの髪を結ってやろうと、丁寧にブラシを掛け二つに分けて耳の下、肩口辺りで緩めのツインテールに結ぶ。

 

 

「そう……、よかったわね。半年後にできるスパも貸し切りができるのよ」

 

 

 ――うん、カワイイ……! これは天使だわ……!

 

 

 可愛くリボンを結んだアリアを真正面から捉えると、ビアンカが満足そうに頷いた。

 ……ビアンカは妹ができたみたいな心地なのか、かなり嬉しそうである。

 

 

「え~、素敵~! いいなぁ~、行きた~い♪」

 

「是非来て欲しいわ。宿泊もできるのよ。お部屋にお風呂も付いてるんだから!」

 

「ヤダなにそれ、もう高級温泉宿じゃない!?」

 

「うふふ。大浴場には子どもたちが遊べる すべり台なんかもあるんだけど、もちろん大人もゆっくりできるお風呂もあるわ。料金設定はあまり高くないから高級ではないけど、快適に過ごせる宿になる予定よ」

 

 

 アリアが身体を横たえビアンカを見上げて瞳を輝かせていると、ビアンカは穏やかに目を細めて建設中のスパについて語った。

 

 

「すごっ! 私、ルーラ使えるから通っちゃう!」

 

「ふふっ、ありがと。アリアが来てくれるのを待ってるわね。今でも月に一度だけ完成してるお風呂を解放してるんだけど、結構な人気でね。ウワサを聞きつけた旅人なんかが来てくれるの。オープンしたらきっと流行ると思うのよね~」

 

 

 ――ルドマンさんには遠く及ばないけど、千里の道も一歩からっていうもの、頑張らなきゃね。

 

 

 アリアに称賛され、ビアンカはオープン後の展望を想像する。

 

 アルカパの宿をあそこまで大きくしたのはダンカンだが、その娘である自分にも経営の才があるのではと目下模索中なのだ。

 

 富豪ルドマンに追いつけ……とまでは思っていないが、アルカパの宿以上の規模にはするつもりである。

 

 

「は~……ビアンカちゃんすごいねぇ……」

 

「うふふ。お父さんが元気だったらお父さんがやってたんだろうけどね。なぜかお母さんと私でやることになっちゃったのよ。お父さんには経営ノウハウを教わってるわ。憶えることがいっぱいでやんなっちゃう時もあるんだけどっ」

 

「ふふっ、大変そうだけど、ビアンカちゃん楽しそうだねっ」

 

「ええ、やりがいはあるわね! でも……」

 

 

 それまで楽し気に話していたビアンカだったが、急に目を伏せてしまった。

 

 

「……でも?」

 

「…………ふふっ、アベルとアリアに再会できるなんて思わなかったから。ちょっと考えてしまって」

 

「あ、えと……」

 

 

 ――その考えるって……ひょっとして……アベルのことですか……?

 

 

 ビアンカの表情が曇った理由をなんとなく察したアリアは、隣りに横になるビアンカの様子を窺った。

 

 




思考を整理して、アベルに相談……するかどうかは保留みたいです。

あ、そういえば、ビアンカのお部屋のベッドはゲーム内では一台ですけどこのお話では二台となっております。
理由はダンカンのイビキが酷いのでおかみさんはビアンカと寝ているっていう……無駄設定w

※投稿時加筆したため今回ちょっと長めです。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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