山奥の村の武器屋さん。
では、本編どぞ。
◇
……山の階段を上るとすぐ目の前に大きな
「ここって……宿屋さんだよね?」
「うん、武器屋も併設されてるんだ」
木造の外壁には宿屋の看板が掲げられており、先頭を行くアリアが指を差すとアベルも頷いて屋内へと続く階段を上がって行く。
ビアンカがかつて住んでいた平面の多いアルカパとは違い、山奥の村は山の斜面を利用した村だからか、平地が少ない。どうしても柱を組んで、板で平面を作らなければ、面積を確保出来ない建物ばかりで、レンガ造りの家は一軒もなく、全てが木造建築であった。
「へ~。そういえば宿屋の受付の人、格好良かったなぁ~」
アリアは宿屋のドアノブに手を掛けながら、昨夜 宿屋のフロントの青年に温泉の場所を訊ねた時のことを思い出していた。
「なに!?」
……アベルの眉がピクリと動く。
「なんかね、アベルみたくがっしりしたタイプじゃなくて強そうな感じではないけど……背は高くって金髪のサラサラショートヘアで、目が青くって、優し気な感じ……?」
――私はアベルの方が好みだけども……っ!
そういやアンディさんも中々のイケメンだったよね~、……などと、金髪は特にタイプではないアリアは、宿屋の青年の印象を語った。
途端後ろにいたアベルの手が扉に掛かり、“バンッ!”。
大きな音を立ててアリアが開きかけた扉は閉じられてしまう。
「わっ!? な、なになにっ!? 武器屋さんに行かないの!?(びっくりしたっ!)」
「へえー……、金髪……ねえ……、僕より優しい感じだったんだ……?」
アリアが驚きに目を見開く中、アベルはにっこり……。
平静を装い、彼女にゆっくりと静かに語り掛けた。
「っ……僕より?? ぇっと、そんなこと言ってな……わ、私はアベルの方が好みだよ……?(うわ アベル怒ってるっ!)」
アベルの目は細められているというのに、なぜか目が笑っていない気がする。
アリアはなにが気に入らなかったのかと彼を上目で見つめた。
「……そう? 本当に? 僕も金髪にしなくていい?」
「き、金髪!? アベルがどうして?」
――うぅ……アベルの目が冷たい気がするぅ……。
アベルがにこやかに伸びた前髪をつまみ見上げる様子に、アリアは微苦笑で応対する。
急になぜそんなことを言い出したのだろうか。アリアにはさっぱりわからない。
「……目の色はしょうがないにしても……アリアが金髪が好きなら染めるけど……?」
「やっ、違っ……! 私 黒髪が好きよ! ていうか、アベルがすきっ! あなたの黒い瞳も大すき! アベル なに怒ってるの……?(金髪も似合うと思うけどねっ)」
「っ……好きって……そんなことで誤魔化されると思っ…………ああもう……」
アリアが首を左右にフリフリ、アベルの服を掴んで真っ直ぐに見上げて来るので、アベルはアリアから目を逸らした。
――ああもう、そんな真っ直ぐ見つめられたら嬉しくなるに決まってるでしょ……!
こっちは自分以外の男を褒められて苛ついたというのに、……とアベルはにやけそうになる口元を手で覆い隠す。
「ん……?」
「なんだ……、僕バカみたいじゃないか……」
――アリアは僕が好きなんだから、他の男をちょっと褒めたくらい広い心で受け止めないと……!
アベルはつまらない嫉妬をしていた自分が矮小に思えて、ぽつり。
……それは知らない間に口から零れていた。
「……バカってなんで?」
「ア、アリアが他の男を褒めるから……(口に出てた……!)」
アリアに聞かれていたとは思わず、アベルは もういいやと正直に白状する。
「あ、まさかヤキモチ!? やだ、アベル。私は世間一般的な意見を述べただけだよ? アンディさんだって、結構格好良くなかった?(私は興味ないけど、世間的にウケはいいはず!)」
「……そういうの気分良くないよ……(アンディさんのこともそう思ってたの!?)」
――僕という いい男がありながら、こっちこそまさかのアンディさん褒めだよ……! 他人なんか褒めないで僕を褒めなよね……!
アベルは愛する彼氏の前で別の男を褒める彼女に、苛立ちを覚え口を尖らせた。
「っ……アベルは素直ね……。って、私はアベルが一番なんだから、気にしなきゃいいのに」
「っ、……わかってるよ……」
アリアの眉がハの字を描くと、アベルも眉を寄せ頷く。
「ふふっ、でもありがと。妬いてくれてうれしいなっ」
刹那、愛おし過ぎる……とアリアはアベルに抱きつき、彼の背中に手を回した。
――アベルのこういうところ、可愛い……! すき……♡
スキンシップを控えなければ いけないというのに、アベルが可愛すぎて衝動的に抱きついてしまった。
“今回はいいよね?”とアリアは抱きしめる腕に力を込める。
「っ…………、こ、こういうことしたって誤魔化されないんだからね……!?」
ぎゅうぅぅぅ……と、アリアに強く抱きしめられたアベルは反射的にアリアを抱きしめ返していた。
「そうなの~? 残念ね。私はこんなにアベルのこと想ってるのになあ~」
「……はぁ……、アリアには敵わないなあ……」
――くっ、可愛い顔してからに……! そんな顔見せられたら怒れないじゃないか……!
……はぁ、好きだ……。
アリアが腕の力を緩めてアベルを見上げ、柔和に微笑む。
そんな彼女の笑顔を目の当たりにしたアベルはこの
◇
……さて、仕切り直してアベルが先頭に立つことにし、武器屋へと向かう。
武器屋向かいの宿屋ではアリアの言った通り、背の高い見目の良い男がフロントに立っていた。
現在宿屋の彼は別の客の接客中で、アリアに話し掛けて来ることはないだろう。
アベルは背後を警戒しながらアリアの肩を引き寄せ、武器屋のカウンターに注目させる。
「ここは武器の店だ。どんな用だね?」
黄色いフルフェイスマスクの店主が扱っている武器を一つ一つ紹介してくれるが……。
「……うーん……、破邪の剣か……まだ父さんの剣でも大丈夫かな……。アリア、武器を新調するかい? なにか欲しければ買うよ?」
「え? 私はこの魔封じの杖でいいよ? キラーピアスも毒針もあるもの。しばらく武器は要らないかな」
「そっか、アリアは
――助かるけど……なにか ねだってくれていいのに……。
アベルは【まふうじのつえ】を取り出し見せて来るアリアの頭を撫でて目を細めた。
そろそろ武器を新調しようかとやって来たアベルだったが、並んでる武器の数々の性能が現在装備中のものと さほど変わらない気がして悩む。
武器屋のラインナップは、【どくがのナイフ】・【おおかなづち】・【はがねのつるぎ】・【スネークソード】・【バトルアックス】・【はじゃのつるぎ】の六種類。
それぞれの武器の値札には、その武器の
アリアが今装備中の【まふうじのつえ】は攻撃力が40。
アベルが現在装備中の【パパスの剣】も攻撃力は40。
ピエールが現在装備中の【はがねのつるぎ】は33。
プックルはラインハットの洞窟で手に入れた【はがねのキバ】で、35。
売っている【バトルアックス】・【はじゃのつるぎ】の攻撃力は共に45。
アベルは【パパスの剣】より強い武器を……と始めは思ったのだが、ラインナップを見る限り値も張ることだし、急いで新調しなくても良さそうな気がした。
……この四人の中で武器を新調するとしたらピエールだろう。
「ピエール、そろそろ武器を新調するかい?」
「よろしいのですか?」
アベルがアリアの隣にいるピエールに声を掛けると、ピエール、彼がアベルを見上げる。
「うん、構わないよ。君にはまだまだ頑張ってもらわないとだし、よく鋼の剣一本で頑張って来たよね。君はすごい」
――ピエールなら【はじゃのつるぎ】かな? 4400ゴールドか……、うん、問題ない彼に相応しい。
そういえば、ピエールにはまだ一度も何も買ってやっていなかったな……と、アベルはここまで【はがねのつるぎ】のみで戦い続けた彼に称賛を送った。
「あ、ありがとうございます……。主殿のお心遣い、痛み入ります」
「ハハッ、そんなかしこまらなくていいよ、仲間でしょ?」
アベルから褒められたピエールは、照れながら胸に拳を当て丁寧に頭を下げる。
ピエールのそんな様子にアベルは朗らかに笑って、【はじゃのつるぎ】を注文し、代金を支払うと店主はピエールに手渡してくれた。
パパスの剣の攻撃力が40なので、破邪の剣(攻撃力45)を買うとちょっと勿体ないんですよね。
もうしばらくアベルにはパパスの剣を装備していてもらいます。
基本、その地域のモンスターよりレベルが高めなので問題ないでしょう。
まふうじの杖が不気味で結構お気に入りです。
可愛い女の子に不気味な杖というアンバランスさがよきよき。
今更なのですが、まふうじの杖のビジュアルがガイコツっぽいんだけど、描写してなかった気がします。
……そういやアリアよく平気だな。
まあいいか、いまさら……。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!