ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

破邪の剣を買いました!

では、本編どぞー。



第五百二十七話 はじゃのつるぎ

 

「じゃあ また来てくれよな!」

 

 

 武器屋店主の明るい声が聞こえ、アベル達は軽く会釈する。

 アベル達の接客を終えた店主は早々にカウンター向こうで武器の手入れを始めていた。

 

 

「アベルって仲間にも優しいよね……。そういうとこ 素敵よ」

 

「あ。フフ……、それほどでも……」

 

 

 ――おお、まさかアリアに褒めてもらえるとは……!

 

 

 意図せずアリアに褒められアベルはデレデレして頭の後ろを掻く。

 彼女に褒められたアベルの顔はだらしなく綻んでいた。

 

 

「ピエール君よかったね」

 

「はい、アリア嬢。これからも剣技に磨きをかけ、あなたをお守り致しましょう」

 

「ありがとう! 私もがんばるね!」

 

 

 ピエールが今し方買ってもらった剣を掲げ見上げる中、アリアはカウンターに置かれた【はじゃのつるぎ】について書かれた説明文をちらり。

 

 

 ――なになに……【はじゃのつるぎ】は道具としても使えます……だって、良いものを買ってくれたのね……!

 

 

 ピエールの表情は兜を被っているため わからないが、彼の肩が左右に揺れて嬉しそうだ。アンドレも頭上を見上げ「よかったね」と声を掛けていた。

 

 

 ……悪を討ち滅ぼすために作られたという剣【はじゃのつるぎ】は、武器としても強力ながら、火炎の魔法が封じられているため、振りかざして使用することもできるという優れもの。

 使用すると【ギラ】の効果があるため、【イオ】を使うピエールとは相性が良さそうだ。

 

 アリアは嬉しそうなピエールに【はじゃのつるぎ】を見せてもらい、今まで使用していた【はがねのつるぎ】の思い出なんかを訊ねていた。

 

 

 アリアとピエールの二人はアベルと再会前の話に花を咲かせており、アベルは入れない雰囲気である。

 ……無理やり入ってもいいのだが、二人があまりに楽しそうなので話の腰を折るのも違うかと遠慮しておいた。

 

 修道院を出てからというもの、アリアは自分とばかり話すことが多い。彼女もたまにはピエールと話がしたいことだろう。

 

 

 愛する彼女に理解ある彼氏だとわかってもらうのも良きかな良きかな。

 

 

「…………うん。うんうん……(ピエールはしょうがない……しょうがないんだ……)」

 

 

 アリアとピエールの仲睦まじいやり取りに、アベルはメラメラと燃え上がる嫉妬心を抑え込むよう努めた。

 

 

 ――僕は【メラ】は使えないんだ、こんな嫉妬の炎は早く鎮火させねば。

 

 

 アリアとピエールは親子のような関係……、そう思えばイライラも収まるというものである。

 

 ……アベルは必死にそう思い込むよう努力する。

 

 

「アベル……?」

 

「ピエールはしょうがない……」

 

「は? アベル~? なにがしょうがないのー?」

 

「……がない……ハッ!? な、なにアリア?」

 

 

 ブツブツと“しょうがない”を連呼していたアベルの腕にアリアが触れて、アベルは漸く気が付いた。

 

 

「まだお買い物するの?」

 

「あ、ううん。買い物はこれで終わり。けど……」

 

 

 ――よかった、ピエールとの話が終わって……。

 

 

 いつの間にかピエールとアリアのお喋りは終っていたらしい。アベルはこの建物の奥へと目を転じる。

 

 ……目線の先には温泉へと続く扉があった。

 

 

「う、ん?」

 

「アリア、温泉に入りたいって言ってなかった?」

 

「温泉なら入ったよ」

 

「えっ!? いつの間に!?」

 

 

 アリアの答えにアベルは目を剥いた。

 

 

「昨日……、アベルが寝てる時に入って来たの」

 

「な、なんだってぇっ!?!?」

 

 

 あはは……とアリアが頬を掻き悪びれなく微笑むと、アベルは声を上げる。

 思いも寄らずかなり大きな声が出てしまった。

 

 

「っ!? そ、そんな驚くこと??」

 

 

 アリアはアベルの声に驚いて目を瞬かせている。

 

 

「っ、僕と一緒に入るって言ったよね!?」

 

「あ。…………えへへ……、ごめ~ん……。アベル寝てたからつい……?」

 

 

 アベルがアリアの両肩を掴み訴えかけると、彼女は気まずそうに目を逸らした。

 

 

 ――ごめんね、アベル……昨日はわざと たくさん飲ませちゃって……。

 

 

 昨日アベルが寝落ちしたのはアリアに酒を勧められたせいなのだが、アベルはそんなことは知らない……。

 

 

「ごめんて……、約束したのに酷い……。僕 楽しみにしてたのに……」

 

「んと、我慢しきれなくて……。ごめんね……? 許して……?」

 

「……アリア酷い……ヒドイ……………………」

 

 

 アベルの眉が顰められる中、アリアは申し訳なさそうに手を合わせ首を傾げる。

 天然なのか、わざとなのか……あざとく可愛らしく謝る仕草に いつもならすぐ許してやっているところだが、そんな彼女を見下ろしたアベルはガクンと頭を垂れて、しょんぼり……不覚にも涙を湛えてしまった。

 

 

「そ、そんなに落ち込まなくても……。ほ、ほら、これから水のリングを取りに行かなきゃだし、戻って来たら一緒に入ろ? ね?」

 

 

 ――アベル……どんだけ一緒に入りたかったのよ……。

 

 

 アベルのあまりの落ち込み様にアリアは彼の手を取り握る。

 

 ……ただでさえ最近では素肌に直接触れて来るというのに、一緒に温泉など浸かろうものなら、なにをされるか容易に想像ができてしまう。

 

 アベルのためにも、自分のためにも、もうこれ以上彼に触れられるわけにはいかない……。

 

 

「…………、う……、その約束って絶対?」

 

 

 アリアの説得にアベルが懐疑的な目を向けていた。

 

 

「ぜ、絶対……! 私、約束を破ったことなんてことあった?」

 

 

 アリアは“初めて約束を破ることになっちゃうけど、お互いのためだから許してね……”なんてアベルに心の中で謝罪しながら穏やかに笑ってみせていた。

 

 そんな態度の彼女に対してアベルはといえば――。

 

 

「……………………アリアは、時々嘘を吐くけど、約束破りはまだない……かな?」

 

 

 ……昨日から勘が冴えているのではなかろうか、アベル、彼は疑いの眼を崩さないままに冷静に告げる。

 

 

「まだって……ウソも吐いてないよ……」

 

「……………………どうだったかな…………」

 

 

 今日は素直に聞いてくれないのね……とアリアが弱り目をするが、アベルはジト目でアリアを見下ろしていた。

 

 

「う……、なにその疑いの目……。アベルって私のこと、本当信用してないよね……」

 

 

 アリアはぷくっと頬を膨らませる。

 

 

「そんなことはないよ。でも……アリアは笑って誤魔化すとこがあるからね~、いくら僕が鈍くても嘘吐いてるときって なんか解るんだよね」

 

「っ…………そんなことないよ~?」

 

「…………ハハ、それそれ」

 

 

 指摘されたアリアの顔が瞬時に綻ぶと、アベルは彼女の頬を軽く突いて微笑してやった。

 

 

 ――僕は君を信用してないんじゃないよ、心配してるだけだよ。

 

 

 アリアが嘘を吐いたり、約束を違えたらもちろん悲しいけれど、彼女は自分以上に真面目な子だから、そのことで罪悪感に苛まなければそれでいい。

 自分の要求にいつも応えてくれるのは嬉しいが、嫌なら嫌だとはっきり言ってくれていいのだ。

 

 

 ……アベルはなんだかんだと彼女に無理にスキンシップをしている自覚があった。

 

 アリアが“僕達は友達作戦”の対価に提案した混浴。

 ……そんなもの提案せずとも、アベルはアリアがそれを望むなら従っただろう。

 

 だが、アリアの性格的に彼女は自らを犠牲にするのを厭わないから、彼女からいつかは自分好みの対価を出してくるだろうと踏んで、アベルは黙っていたのだ。

 

 まんまと乗せられたアリアだったわけだが、どうしても嫌というなら今は断られてもいい(まあ悔しいには悔しいが)。どうせ結婚してから入ればいいのだから問題なし。

 

 

 目の前の彼女はアベル(自分)を釣ったと思っているのだろうが、釣られたのは逆だと気付いていない。

 

 ……アベルはそんな純粋なアリアが可愛くてしょうがなかった。

 

 

「むぅ……」

 

 

 彼女(アリア)の頬がリスのように膨らんでいる。

 

 

「……今日は温泉で一泊……と思ってたけど……良かったのかい?」

 

「うん、ビアンカちゃんが待ってるから また今度だね」

 

 

 つんつん、とアリアの頬をアベルが優しく突きつつ訊ねると彼女はあっさりと了承した。

 

 

 ……あんなに温泉に入りたがっていたのに、昨夜一度入っただけで もういいだなんて、アリアの温泉に対する愛とはそんなものだったのか……なんてアベルは思ったが、彼女がいいと言うなら仕方ない。

 

 

(僕は別に急いでなんかいないんだよ……?)

 

 

 アベルは目の前で柔和な顔をしている彼女にもう少し好きなものに執着してもいいのでは……と、自分と重ねたのかモヤっとする。

 

 

「…………アリア。ビアンカのところに戻る前にちょっといい?」

 

「え? あ、うん いいよ」

 

 

 買い物は終えたがモヤッとしたままビアンカの元に戻りたくないアベルはアリアの手を取り、ある場所へと彼女を連れて行くことにした。

 




温泉はいずれ一緒に入る予定だから、アベル待っとれよ、っと。

破邪の剣、なんか好きですね。
形はそうでもないけど、名前が好きだわ。

あ、次回ちゅーの回です。(なんだちゅーの回って……)
要ちゅー意ってことでw

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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