ビアンカちゃんとの冒険が始まりますよ~。
では、本編どぞっ!
「…………アリアはそれでいいの?」
――アリアはなにも知らないんだもんな……。
アリアが別世界の未来を知らないことはアベルも解っている。
けれど、アベルの目に映る彼女は、どうにも別世界の時間軸へと引き戻すような行動を無意識でさせられている気がするのだ。
アリアは自由に振舞っているように見えて、その実、別世界で起こり、この世界でも起こるであろうことの邪魔はしていない。
むしろ未来が変わる事柄に抵触しないよう、上手く避けている気さえする。
修道院にルドマン、ビアンカの母……とアリアの存在があることで変わったこともいくつかあるが、フローラもビアンカも多少の差異はあれど、別世界と性格も態度もそう変わらないし、指輪探しも結局はフローラのためという名目で今ここに来ているわけで。
アリアは
……アベルは弱り目で訊ねていた。
「…………いいの……って……?」
「…………僕は、早めに言った方がいいと思うよ?」
「……でも……、ビアンカちゃんは……」
やはりアリアは躊躇う様子で黙り込む。
彼女の言葉にアベルは ビアンカを想って黙っている……のが正解な気がした。
アベルは早く伝えた方がいいと思うが、アリアは黙っておくのがいいと思っている様子。
……互いの意見が二つに割れた時、どうすれば一番いいのか。
「…………ふぅ、わかった。我慢できるとこまでは黙ってる。けど、もうダメだって時はごめん。ずっと黙ってるっていう約束はできない」
アベルはこれが精一杯の折衷案だとアリアに伝える。
「そんなっ、私達 友達のままでもいいじゃない」
「アリアなに言ってんの? 僕達好き合ってるのに、友達になんて いまさら戻れるわけないでしょ。次そんなこと言うなら 僕いい加減に怒るよ?」
「っ……でもビアンカちゃんは……!」
――アベルの花嫁候補なのに……、私との関係を暴露して そのままビアンカちゃんと結婚するつもりなのっ?
そんなことをしたらビアンカを傷付ける。それに【原作の意志】が黙ってはいないだろう。
最悪、自分があっさり消されてしまうかもしれない。
……アリアはアベルの不機嫌な態度に涙目になってしまった。
「……でもでもって、さっきからアリアらしくないよ? 君は
「っ、それはダメっ!」
「…………じゃあ納得して欲しい」
「っ…………わ、わかった……」
アベルの半ば脅しともいえる口上に、アリアは眉を寄せ難しい顔で首を縦に下ろす。
「納得してない顔してるけど? …………眉間のシワ」
……つんつん。
アベルはアリアの眉間のシワを突いてやった。
「ぅ……、だ、だって……」
アベルに突かれアリアがよろめくので、アベルは彼女の腕を掴んで支える。そして彼女の頭を優しく撫でた。
「……アリア、大丈夫だよ。僕は君と結婚するんだから。笑って? ビアンカもきっと祝福してくれる。ね?」
「…………っ…………」
アベルの優しい声にアリアの瞳が涙を湛える。
――あなたはいつも優しいよね、アベル……。
穏やかに微笑むアベルにアリアは泣きそうになってしまった。
「ハハッ、なんで泣きそうな顔してるの……? 僕は笑ってって言ったよ?(泣くの我慢してるのも可愛いなぁ……)」
アベルはアリアの頭を優しく撫で続ける。
柔らかく滑らかな髪は撫でているだけで気持ちがよかった。
「…………アベル」
「ん……?」
「……すきよ」
「うん、僕も」
アリアが涙混じりに微笑むと、アベルは当然のように応える。
だが、アリアはそんなアベルの返答に今度は目を伏せてしまう……。
「ごめんね」
「なにがごめんね? ははっ、アリアっていっつも変なとこで謝るよね。ほら、行こうよ」
井戸から出ようよ、とアベルが踵を返すとアリアも彼の背を追った。
「うんっ。…………本当、ごめんねアベル」
――この世界がゲームの中である限り、あなたは私と結婚できないのよ……。
だからせめてビアンカちゃんかフローラさんと幸せになってね。
関係を複雑にしないで黙っていればきっと幸せになれるから。
井戸の底、井戸綱を掴みアリアが先に上るのを待つアベルの元へ、小さく呟きアリアは向かう。
……ビアンカと一緒に旅をすることになったのだ。
もうこれ以上アベルに触れることは許されない。
必死に井戸綱を上る自分に頭を踏まれても、幸せそうに笑っているアベルに、アリアは目を細め「アベルのえっち!」と怒り笑いしつつも……心は泣きそうだった。
◇
「水門なら私が開けられるから大丈夫よ。じゃあ行きましょう!」
ビアンカの家に戻り、居間のテーブルで待っていたビアンカに話し掛けると、旅の準備を整えた彼女が立ち上がる。
すると……。
「あ」
不意にアベルの脳内に久しぶりに天の声が降り注いだ。
“ビアンカが 仲間に 加わった!
プックルは 馬車に 戻っていった!
しかし 馬車は いっぱいだった!
誰を モンスターじいさんのところへ
送りますか?”
「うーん……(久しぶりに聞いたな……)」
「アベル? プックルが急に出て行っちゃったけど……なんで?」
アベルが頭の後ろを掻き掻き唸ると、アリアには天の声が聞こえないのだろう。不思議そうに無言で去って行くプックルを見送っていた。
「あ。プックルはあんまり ぞろぞろ歩くのもどうかなって遠慮したんだよ」
「ふーん……?」
「あら、そうなの? 気を遣わせちゃったみたいね」
アベルの説明にアリアは顎に指を当て首を傾げ、ビアンカは「後で首を掻いてあげよーっと」と微笑む。
「……アリア、馬車がいっぱいみたいだよ」
「へっ? そうだっけ!?(なんで判るの!? って、あ、そっか八人までしかダメなんだっけ)」
ビアンカが仲間に加わったことで、アベル達の馬車は定員オーバーとなった。
アベルは“さて、誰を送ろう?”とアリアに相談したわけだが……。
「んー……そうだねぇ……、誰がいいかなぁ……」
アリアは腕組みして考えてみる。
現在の旅の仲魔はピエール、プックル、スラりん、ロッキー、ジュエル、メッキ―の六匹。
ピエールとプックル、スラりんは外せない。
とすると……残る三匹の内の誰か……となるわけだが。
「なんだか悪いことしちゃったわね」
「ううんっ! 馬車はいつも大体飽和状態なの。随時モンスターじいさんに送って預かってもらってるから気にしないでね! ビアンカちゃんと一緒に冒険できるのうれしいなっ♡」
ビアンカが申し訳なさそうに耳に後れ毛を掛けると、アリアはビアンカの手を取りそっと握った。
「アリア~♡♡♡ ありがと~♡ 私もうれしいわ!」
「ふふっ♪」
アリアの歓迎の言葉に嬉しくなったビアンカは
……アリアも嬉しそうだった。
「…………(アリアとビアンカは距離が近いな……)」
――しかし、女の子二人と歩くのか……。
アベルは目の前で抱き合う女の子二人に幼き頃を思い出してみるが、あの頃と今は同じじゃない。
まさか、美女二人を連れて歩けるようになるとは……、とアベルは何となく今の状況をヘンリーに自慢したくなった。
「……かな? ……ベル……アベル~?」
「っあっ!? な、なに!? ごめんアリア、聞いてなかった!」
アベルがヘンリーに羨ましがられている自分の姿を想像している間に、アリアの声が掛かる。
アベルは慌てて断りを入れていた。
――先にラインハットに寄って行こう……。
【ルーラ】で行って帰ってくればすぐだからと、ラインハット行きを決めつつ、アベルはアリアの話に耳を傾ける。
「ロッキーを送ったらどうかなって」
「ロッキーを? ジュエルと離れたがらないんじゃ……?」
「ん~、でも、ロッキーすぐ弾けちゃうから心配で。メッキ―は回復呪文が使えるし、ジュエルも次に送ってあげれば淋しくないと思うんだけど……どうかな?」
「……うん、いい案だね。そうしようか」
アリアの意見に特に異論はなく、アベルはモンスターじいさんにロッキーを送ることにした。
天の声~。久しぶりだな……。
アベル、美女二人侍らせて、ラインハットにいくつもりらしいですwww
相変わらず まっすぐ攻略せずスミマセン……。
ロッキーは予告の通り、モンスターじいさん送りと相成りました。
----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!