ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ずっと三人一緒に……。

では、本編どぞ。



第五百三十一話 ずっと三人一緒に……

 

「あれ……? あの、城内に入りたいのですが……」

 

「ようこそ、ラインハットのお城へ。せっかく訊ねて頂いたのに大変申し訳ありませんが、本日は終日、重要会議が行われております。王様への謁見は出来ません。ご用の方は明日以降にお越しください」

 

 

 アベルが兵士に声を掛けると、今日は一日中会議が行われており、城内には入れないとのこと。

 

 “僕達はヘンリーの友達で……”と伝えてみたが、この兵士は最近入ったばかりの新兵らしく、アベルのこともアリアのことも見覚えがないようだ。

 

 

「申し訳ありません。あなた方が たとえヘンリーさまのご友人であっても、本日はお通しすることができません。日を改めてお越しください」

 

 

 会議にはヘンリーも参加しており、昨今の異常気象に関する話し合いが行われているのだそうだ。

 

 聞けば、修道院修繕中にもラインハット国内で小さな集落が竜巻に呑まれ壊滅。魔物も以前よりじわじわと凶暴さを増し、隊商が襲われ大きな被害が出ているらしい。

 

 

 ……城の中には入れそうにないので、アベル達はまた跳ね橋を渡り、城下町へと戻った。

 

 

 去り際、兵士がアリアとビアンカを一瞥し、アベルを羨ましそうに見ていたので、そこだけはちょっと優越感に浸ることができ、アベルは相手はヘンリーではなかったが、してやったりと口角を上げる。

 

 だが、そのすぐ後でアベルはハッとした。

 

 いったいどの世界の自分がこんな行動に走らせたのだろう。友達に優越感を感じたいなどと浅ましいではないか。

 

 女性二人に囲まれた人生など一度も無かったアベルは、ちょっとそういうのもいいかな……なんて つい、悪ノリしてしまったのだ。

 

 

 ……ヘンリーに会えなくて良かったのかもしれない。

 

 

「会議かあ……ヘンリー君もデール君も忙しそうだね。アベル、新しい情報のお話、今日じゃないとダメなの?」

 

「……急ぎじゃないなら、私、まだ行きたくないわ」

 

「え……あ、うん……、わかった」

 

 

 アリアとビアンカが同時にアベルの服を指先で控えめに抓み見つめて来る。

 アベルは自分を見つめてくる左右の美女二人に ぽっと頬を染めた。

 

 

 ――ああ、二人とも可愛い……!

 

 

 ずっと三人一緒に旅が出来たらいいのに……!

 

 

 ……なんて一瞬思ったが、そういうわけにはいかないことくらい、アベルにも解っている。

 

 

「ビアンカちゃん 大丈夫だよ! もう悪いニセ太后は居ないから、この国も良くなったんだよ?」

 

 

 アベルが邪な想いを抱いている間にアリアはアベルから離れ、ビアンカの隣に移動。寄り添う様にビアンカに話し掛けていた。

 

 

「っ、アリア……、でも、あなたもアベルも辛くないの?」

 

「うん、アベルも私も平気だよ? まあ、全く気にならないわけじゃないけど、悪いことをした魔物は消えたし、命令に従った人達も反省してくれてるし。ずっと過去に縛られてたってしょうがないでしょ?」

 

 

 ビアンカが目を伏せがちに訊ねるが、アリアはにこにこと朗らかに笑ってみせる。

 

 アベルは女性二人の会話に自分が矮小に思えてちょっと恥ずかしくなりつつ、聞き耳を立てていた。

 

 

「過去に縛られ……? そうだけど……」

 

「ビアンカちゃんが私やアベルのことを想ってくれててうれしいよ、ありがとう!」

 

「アリア……、あなたって……(天使ね……)」

 

 

 明るいアリアの笑顔にビアンカは眉を寄せながらも微笑む。

 

 

 ――天使ってすごいポジティブなのね……! 私、そんな簡単に受け入れられないわよ……?

 

 

 翼を引き千切られ、呪いまで受けたのに恨んでないなんて……と、ビアンカは、天使は人間とは違う価値観を持っているのだなと不思議に思う。

 

 アベルに目を転じれば、アベルも“うんうん”と頷いていた。

 

 

「……ビアンカ、良かったら今日はこの町を歩いてみないかい?」

 

「え? 水のリングはいいの……?」

 

 

 会話のタイミングを見計らい、アベルが合いの手を入れると、ビアンカは首を傾げる。

 

 目的から離れ、脱線中なのだから当たり前なのだが、アベルは少しでも日数を稼ぎたいので問題はない。

 

 

「一年前まで ここの人達は圧政に苦しめられてきたんだ。でも今はみんな明るい顔をしているよ。町の人の話を聞いてみてよ。水のリング探しは明日からでいいからさ」

 

「アベル……。あなたもアリアと同じ考えなのね……」

 

 

 アベルに【水のリング】探しは明日に延期と伝えられ、ビアンカは気にし過ぎなのかなと押し黙る。

 

 

「ハハッ。過去は変えられないからね、気にしてもしょうがないよ。大事なのは今だよ、ね、アリア?」

 

「へっ? あ、うん(なんで私に振って来るの……?)」

 

 

 突然アベルに振られてアリアは首を縦に下ろした。

 

 

「うん……、そうよね。過去は変えられないよね…………」

 

 

 ……ビアンカはなにかを考え込む様に再び黙り込んでしまった。

 

 

「ビアンカ……?」

 

「…………あっ、うん、じゃあ、町を歩いてみましょうか」

 

 

 アベルが様子を窺うと、ビアンカが微笑む。

 

 そうして一行はラインハットの城下町を歩くことにし、ビアンカは町の人々の話を聞きながら少しずつラインハットの事情を把握し、納得したようで次第にリラックスし笑顔を見せてくれるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 町を散策し続けていたら、気付けば夕方である。

 ……もうすぐ日が暮れる。

 

 

「は~……! 楽しかった~! 私、アベル達と別れて割とすぐに山奥の村に引っ越しちゃったから、こんな風に城下町を歩いたのって初めてよ。アベル、連れて来てくれてありがとね」

 

「どういたしまして。楽しんでもらえたようで良かったよ。アリア、それ僕にも一口ちょうだい」

 

 

 ビアンカが串に刺さった【団子】を手にアベルにお礼を告げると、アベルはアリアの持っていた二本の【団子】の内、一本に齧り付いた。

 

 先ほど城下町の露店で売られていた串に刺さった【団子】を人数分購入したのだが、アベルは自分は要らないからとアリアに譲っている。

 

 

「……っ!? んぐ……ちょ、もぉっ! アベルそれ私の……!」

 

「んむ……、うん、うまいっ!」

 

 

 ビアンカとアベルの話を聞きながら、アリアが機嫌よく もきゅもきゅと三つ刺さった【団子】の内、一つ目を咀嚼していたわけだが、アベルが二つ目を食べてしまい、アリア(彼女)は ぷぅっと頬を膨らませた。

 

 

「アベルさっき要らないって言ったよね……?」

 

「一口くらい くれてもいいでしょ?」

 

「やだよ」

 

「アリアのケチー」

 

 

 不機嫌そうにアリアが口を尖らせるが、アベルは楽しそうに彼女(アリア)をからかっている。

 

 

「要らないって言ったじゃない。ていうか食べるならこっちをあげるのに……はい」

 

 

 ――なにも私が齧った方食べなくてもよくない……?

 

 

 アリアはまだ口を付けていない方の【団子】を譲ってあげるよとアベルに差し出した。

 だが、アベルは首を横にフリフリ。

 

 

「要らないよ? もう甘いものはいいかな。あ、道具屋に寄って行かないかい?」

 

 

 薄暗がりの中、アベルは目と鼻の先に道具屋を見つけ、ピエールを引き連れ行ってしまう。

 

 

「はぁ……もう、なんなの……。…………もぐもぐ。団子ウマァ……☆」

 

 

 ――アベルったら急に子どもみたいなことしちゃって……食べたいならあげたのに……。

 

 

 アリアはさっさと行ってしまったアベルを見送り【団子】を頬張った。

 

 【イネ】と【キビ】の優しい甘さが口いっぱいに広がり、さっきまで不機嫌だったアリアの表情は一転、幸福そうに目を細めている。

 

 そうして一本目を早々に平らげ、アリアは二本目を食べ始めた。

 

 ……甘くて柔らかい【団子】はいくつでもいけそうだ。

 

 

「……ふふふっ! アベルとアリアっていつもあんな感じなの……?」

 

「え? あ、どうかな……? た、たま~に……?」

 

 

 ビアンカも【団子】をカミカミ。くすくすと笑って訊ねて来るので、アリアは頬を掻き掻き目を泳がせた。

 

 ……二人は【団子】を食べながら道具屋へと向かう。

 

 

「……へえ……、あんな感じで楽しく旅してたんだね……、いいわね……」

 

 

 【団子】を食べ終えたビアンカが、串を口に銜えたまま唇を尖らせると、つまらなそうに串を上下に動かしていた。

 

 ビアンカの目線はアリアに注がれ、ほんの少し冷ややかな気がする。

 

 

「あっ、…………っ、えと…………、そのぉ…………」

 

 

 ゴクリ……。

 

 

 ――ちょ……、なに、この空気……気まずいんですけど……!?

 

 

 アリアはビアンカの冷視に“なぜ そんな眼を……?”と上目遣いで窺った。

 

 

「……私も早く再会したかったなあ~~。そしたら……私だって…………――――」

 

「え……?」

 

 

 ビアンカがなにか呟いていたが、彼女は先に道具屋に入ってしまい、よく聞き取れない。

 

 アリアもすぐ追い掛け道具屋の扉を開けた。

 




アリア最近食べ過ぎじゃない? 太るぞ……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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