あら ステキなお兄さん! ぱふぱふ する?
では、本編どぞ。
◇
……ラインハット城下町の道具屋は前回来た時もそうだったのだが、今回もまた、夜の訪問となってしまった。
当然店は閉店しており、カウンター向こうには誰もいない。
代わりに道具屋の客用テーブルには道具屋の店主と、以前は居なかったバニーガールが座っていた。
「あ、二人とも来たね」
「お待たせ。もうお店閉まってるみたいだけど……?」
女性二人が道具屋に着くと、アベルが軽く手を挙げ店の奥からやって来る。
ビアンカは暗くなった店内を見回していた。
「うん、けど滑り込みセーフで欲しいものが買えたから大丈夫だよ」
アベルが【ふくろ】をぽんぽんと叩き、笑顔を見せる。必要なものは買えたらしい。
なにを買ったのかはわからないが、山奥の村では買えなかったものなのだろう。
「そう、よかったわね。じゃあもう出る?」
「うん、けどその前にそこのバニーさんに挨拶したくて」
「バニーさんに……?」
ビアンカが踵を返すが、アベルはまだ用があると 店主と話をしているバニーをちらり。
……ビアンカは不思議そうな顔で首を傾げた。
「あの人、アリアの知り合いじゃないかな?」
「へ……? あ」
それまで黙ってアベルとビアンカの会話を聞いていたアリアは、アベルに言われて初めてバニーガールに目を移す。
――あれは……確か……。
アリアが誰だったかなと思い出している間に、アベルはバニーガールの元へアリアの手を引いて連れて行った。
「こんばんは」
「あら ステキなお兄さん! ぱふぱふ する?」
「ぱふっ!?(なんだって!?)」
バニーガールに話し掛けると、彼女が嫣然を微笑み、訊ねて来る。
アベルは驚きに目を剥いた。
そして、彼はそのままアリアとビアンカに目を移す。
「…………」
「ぱ、ぱふぱふって……!?」
アリアは なぜか柔和に目を細め、対してビアンカは眉を寄せていた。
「あっ、えと……、間に合ってますので……」
――アリアの【ぱふぱふ】気持ちいいし……、お姉さんアリアのより小さいし……。
アベルは ささっとバニーガールとアリアを見比べ、二度頷く。
既に【ぱふぱふ】を経験済みのアベルにはバニーガールの質量では少々物足りなさを感じた。
「ちょっ!?(今アベル、おっぱい見比べた!? なにを想像したの!?)」
アリアはアベルの視線に気付き頬を赤く染める。
「あ、でもちょっと興味はあります」
――僕も男だし! ……アリアの良さを実感するためにも別の
アベルは対照的な反応を見せる女性二人の視線を受けつつ、瞳を輝かせた。
これは決して性的な欲求ではなく、ただの探求心であるからして、別に浮気とかそういう類のものではないのであって、アリアも怒ってなさそうだし、多分大丈……
……などとアベルが独り勝手に心内で言い訳している間に。
「それじゃあ明日の昼間、お城の北の裏庭まで来てね」
アベルの返事を肯定と捉えたのだろう、バニーガールがウインクを飛ばし、チュッと口を窄める。
……そんなわけで、次の日に【ぱふぱふ】の予約を取り付け、アベル達は道具屋を後にした――。
◇
……さて、道具屋を出て道を行き、アリアとビアンカが黙り込む中アベルは口を開く。
「そろそろ宿屋で休もうか……! 明日はちょっとお城に寄ってから水のリングを取りに行こう……!」
「行くの? まあ私には止める権利はないから どうぞご自由に!」
「ふふっ、アベル行くんだ? うふふっ!」
道具屋でのアベルの選択に、ビアンカは訝しい顔で、アリアは またもなぜか楽し気に笑っていた。
「…………?」
――ビアンカが怒ってるのは解かるけど……アリアは何で笑ってるんだろう……?
アベルはアリアの態度に違和感を覚える。
そういえば、さっきアリアはバニーガールに特になにも話し掛けていなかった。
……以前ニセ太后を倒す前、道具屋の店主に“姉がオラクルベリーに出稼ぎに出ている”との話を聞いた気がする。
あの身形からしてカジノで働いていたとアベルは思っていたが、バニーガールはアリアの知り合いではなかったのだろうか。
それにしてもアリアの笑顔はいつも通り朗らかで、暗い笑みには見えなかった。
……嫉妬してくれないんだなと思うとアベルは少し不安になってしまう。
(行かない方がいいんだろうか……。)
もしかしたら、自分は間違った選択をしたのではなかろうか。
……明日あのバニーガールに【ぱふぱふ】してもらって、アリアに嫌われでもしたらどうしよう……、いや、しかし、約束をしてしまったし男に二言はないって云うし……。
アベルがそう考えている間に夜も更け、一行は宿屋の一室で身体を休めていた。
一日中歩き通しだったせいか、アリアとビアンカは同じベッドで既にスヤスヤ、気持ち良さそうに眠っている。
「…………ふむ……、どうしたもんかな……」
――行くだけ行って、断ればアリアもビアンカも許してくれるよね……!
湧き上がる好奇心を抑えるのは容易ではないが、アリアに嫌われるよりはマシか、ビアンカにも冷たい目で見られたくないしな……などと、とりあえず顔だけ出して断ろうとアベルは決めたのだった。
◇
そして、夜が明けた……!
「え? 行かないって……、なんで……?」
「いやよ、私はここでのんびりしてるわ。ひとりで行って来たら? 終わったらさっさと戻って来て(アベルがバニーガールに ぱふぱふされてるところなんて見たくないわ)」
朝起きてアベルが身支度をしていると、ビアンカがベッドに腰掛け城の裏庭には行かないと拒否をする。
アリアはまだ目覚めておらず、気持ち良さそうに眠っていた。
「けど、僕 断りに行こうかと思ってたんだけど……」
「ふーん? 私はアリアと一階のロビーでのんびりしてるから、断ってくればいいんじゃないかしら?」
疑いの眼でアベルを見つめるビアンカは昨晩からずっと不機嫌だ。
「っ……、アリア」
アベルは眠るアリアを揺すり起こす。
「…………ん……、……ぅ~ん……? アベルなぁに……?」
起こされたアリアは、モゾモゾ。
ゆっくりと半身を起こしてアベルに微笑み掛けていた。
……その目はまだ開いていない。
「アリアは僕について来てくれるよね?」
「ふわぁああ……、よく寝たぁ~……ついて行くってどこへ……?」
アベルの声にアリアは薄っすら目蓋を開くと、あくびを噛み殺してから背伸びをした。
それから目を擦り、少しはねた髪を手櫛で撫で付けている。
その仕草はさながら猫のようで、アベルはついアリアに触れたくなったが、ビアンカの手前、手を伸ばそうとして止めた。
「アベルが昨日のバニーガールに会いに行くんですって。アリアここで私と一緒に待ってましょ?」
アベルの代わりにビアンカが説明してくれる。
「アリア、僕と一緒に行こうよ。帰りにフルーツパイ買ってあげる」
「ふぇ……フルーツパイ……おいしそう……、あ、うん。わかった……、じゃあ ちょっと顔洗ってくるね~……(フルーツパイ~♡)」
ビアンカが宿屋に残ろうとアリアを誘うが、アベルの方が一枚上手である。
アリアは寝ぼけたまま【フルーツパイ】に釣られて、フラフラ~っと顔を洗いに部屋を出て行った。
「アリアっ!? やだ、あの子簡単に釣られるのね!? ……んもうっ! アベルったら ずるいわっ!」
「じゃあ、ビアンカも一緒に行こうよ」
「イ・ヤ!」
アベルが再び誘っても、ビアンカは首を縦には下ろさなかった。
「…………はぁ、わかったよ……。じゃあピエールを残していくね」
「どうして?」
「ビアンカに何かあったら困るからね」
「アベル……(こういうとこ……優しいのね……)」
――なんだか複雑な気分だわ……。
ビアンカは眉を寄せながらなんとも言えない顔で、部屋を出て行くアベルを見送る。
アベルは顔を洗いに行ったアリアとそのまま城の裏庭に行くらしい。
「ピエール、ぱふぱふですって。断るなんて言ってたけど、あれは絶対やるわよ。女の子二人に目撃させようなんてアベルったら なにを考えてるのかしらね? アリアもアリアよ……あの子、平気なのかしら……(天使って変わってるわね……)」
「ははは……、さ、さあ……。私には解り兼ねますね……、ビアンカ嬢、よろしければ私と朝食はどうですか?」
――アベル殿は時折別世界の主殿に意識を引っ張られるので致し方ないのですよ……しかし、アリア嬢は平気そうでしたね……なぜ……。
頬を膨らまし ぷりぷりするビアンカにピエールは乾いた笑いを浮かべて彼女を朝食に誘った。
アベルの精神が時々おかしくなるのは今に始まったことではない。
とはいえ、アリアは昨晩から不機嫌になることもなく、ずっと楽しそうにしていたのが気に掛かる。
……相変わらず謎の多い女性だ。
「ええ、喜んで!」
ビアンカはピエールの誘いに乗って、朝食を摂りに一階へと下りた……。
ぱふぱふ娘とはちゃんと会っておかないとなと思いまして……へへっw
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!