ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

見上げてごらん。

では、本編どぞー。



第五百四十話 夜空を見上げて

 

 

 

 

 

「アベル」

 

「……ぁっ、アリアっ、ど、どうしたんだい?」

 

 

 アリアが馬車の裏から出ると、操縦室の方からアベルが丁度出て来て ばったりとタイミングよく出くわす。

 アリアに声を掛けられたアベルは、なぜか慌てた様子で しどろもどろだ。

 

 ……アリアは理由(ワケ)を話すことにした。

 

 

「あ、えと、私いま、明日の朝ごはんを作ってたんだけど……アベルのふくろを貸して欲しくって。入れておいたら出してすぐ食べられるでしょ?」

 

「あ、あ~、ふくろね! うん、僕がやるよ。あっちだっけ?」

 

 

 アベルは馬車の後ろを指差す。

 

 馬車の後ろでアリアが調理していたことなどアベルは知らないはずなのだが……。

 

 

「ふくろを貸してくれるだけでいいよ? すぐ返すし」

 

「…………、僕にやらせて?」

 

 

 アリアはアベルの言葉に特に疑問は持たず【ふくろ】だけ借りたい旨を伝えたものの、アベルは一瞬悲し気に瞳を揺らした。

 

 

 ――アリア、僕をもっと頼ってよ……。

 

 

「え? ……あ、じゃ、じゃあお願いします……」

 

「うん」

 

 

 アベルの想いが通じたのか、アリアは目を瞬かせお願いする。

 お願いされたアベルは嬉しそうに顔を綻ばせ、二人はそのまま馬車の裏へ連れ立って向かった。

 

 アリアは既に視線を馬車に移しているが、アベルは彼女の横顔を見つめる。

 

 先ほどアベルは アリアをさがして馬車裏で彼女を見つけていたのだが、アリアがビアンカと楽しそうに会話をしていたため、どうやって二人の間に入ろうかと思案していた。

 

 下手に割って入ろうものならビアンカに変に思われてしまうのでは……と、慣れない気遣いをしてみたが、アリアが望む“友達作戦”というのは思いの外……でもない、とにかく面倒臭い。

 

 戦闘中はアリアが気になるし、食事中はずっとアリアを見ていたし、アリアが見えなくなればさがしてしまうし、アリアを前にしたら勝手に笑顔になってしまう。

 

 ……基本的にアベルは嘘が付けない性格である。

 

 ルドマンやフローラであればそう多く話す機会はないし、仲良し(・・・)の兄妹設定にしたからアリアと触れ合うのは問題ないわけで。

 

 だが、ビアンカにはアリアが元天空人だと知られているため、その設定が使えないのだ。

 友達として触れ合うとはどこまでが適切なのか……、アベルには まったく見当がつかない。

 

 なにせアベルはアリアと再会した瞬間、彼女に惚れてしまっている。

 いまさら子どもの頃の立ち居振る舞いなど憶えているわけもなし。

 

 “子どもの頃、彼女にどう接してたっけ……”と思い返してみても、アリアの手を強引に引っ張り、連れ回していた記憶が蘇り、情けなくて猛省するばかりだ。

 

 ……一応、アリアとは距離を取って、なるべくビアンカと話をするようにしているが、こんな状態ではバレるのは時間の問題だとアベルは思っていた。

 

 

 ――アリア……“私は たぶん会えないけど”ってどういう意味……?

 

 

 馬車裏でのアリアとビアンカ、二人の会話は丸聞こえで、その中のアリアの言葉にアベルは違和感があった。

 

 アリアの違和感はこれまでも何度か感じているのだが、それがなんなのか……もう少しでわかりそうな気がするのに、目の前の彼女に邪魔されて まだ正体が掴めていない。

 

 

(なんだろう……? なんか引っ掛かるんだよね…………クッ、横顔も可愛い……ほっぺにちゅーしたい……。)

 

 

 アベルがアリアの横顔をじっと見つめれば、滑らかな白金の髪も、神秘的な紫水晶も、白い頬も月明かりに照らされ美しく映える。

 一目惚れし、今も溺愛する彼女は横顔も惚れ惚れするほどに美麗且つ、キュートだ。

 

 アベルは彼女の青白い頬に吸い付きたい衝動に駆られた。

 

 

 ――アリアのその白い頬、赤く染めてやりたいな……。

 

 

 ……隣同士で歩いているから、手を伸ばせばすぐ触れられる距離なのに、今は触れることが敵わないなんて。

 

 

「…………(ツライ……)」

 

 

 アベルは馬車の裏に着くまでアリアをずっと見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これで あとは寝るだけね! ふぁ~~ぁ! 眠くなって来ちゃった」

 

 

 馬車裏でアベルがアリア達の作った朝食を【ふくろ】にしまい終えると、ビアンカは背伸びをする。

 ついでに欠伸(あくび)もしており眠そうだ。

 

 

「ふぁああ……、そうだね……僕も……」

 

 

 アベルも大きな あくびを一つ。ビアンカに同意した。

 

 

「……ふふっ、二人ともそろそろ休んだら? 私、まだ眠くないから しばらく見張りしてるね」

 

「あっ、アリアっ……!?」

 

 

 アリアはそう言って、アベルが引き留める前に馬車裏から立ち去ってしまう。

 

 

「あふ……、アリアは元気ねえ……絶対疲れてると思ったんだけど……。ね、アベル、馬車の中のお布団使っていいかしら? なんか寝心地良さそうなの積んでるのね」

 

 

 ビアンカがあくびを噛み殺しキャビンの中を覗くと、ふかふかのマットレスが敷かれているのが見えた。

 その上にはスラりんが乗っており、心地好さそうに睡眠中である。

 

 

「……え? あ、うん。ビアンカ連戦で疲れたよね? ゆっくり休んで」

 

 

 アベルはアリアの向かった方が気になるのか、そちらに目を向け彼女の位置を確認してからビアンカに声を掛けた。

 

 

「……うん、ありがとう。アベルはどうする?」

 

「ん?(どうするとは?)」

 

「一緒に休む?」

 

「えっ!?!? あっ、いやっ……!」

 

 

 馬車に乗り込もうとしたビアンカが振り返り、嫣然と微笑む。

 アベルは途端しどろもどろに。頬を赤く染めた。

 

 

「…………なーんてね! うふふっ 冗談よ、冗談! 明日も頑張ろうね! 何かあったら呼んで。おやすみ」

 

「お、おやすみ……」

 

 

 ビアンカは軽々と馬車に乗り込み、アベルに手を振るとキャビンの奥に消える。

 アベルは軽く手を挙げそれを見送った。

 

 

 ――ビアンカ…………ごめん、僕は……アリアのところに行かないと……!

 

 

 ビアンカを見送り、アベルはすぐさま踵を返す。

 ビアンカが寝てくれれば、アリアの傍に行けるではないか。

 

 ……アベルは眠い目を擦り、アリアの元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……アベルがアリアの向かった先、船首に辿り着くと彼女は甲板に三角座りし、夜空を見上げていた。

 

 

「アリア」

 

 

 アベルは彼女を驚かさないよう、静かに声を掛けた。

 

 

「……あ、アベルっ……!? どうしたの? 眠いんじゃなかったの?」

 

 

 静かに声を掛けたつもりだったが、アリアは目を丸くして驚く。

 

 

「ちょっと眠いけど……、君といたくて……。あ! ビアンカは馬車でもう寝てるよ?」

 

 

 ――だから二人きりになってもいいよね!?

 

 

 アリアの元に来るまでにジュエルとメッキ―が眠っているのを見たが、幸いピエールとプックルは船尾側で起きてまったり中だ。

 

 現在【せいすい】の効果で魔物達の気配はないが、例え魔物に襲われても彼等がいち早く気が付いてくれるだろう。

 

 今夜の波は穏やかで、アリアは今、ひとり――。

 

 ……アベルが彼女と二人きりで話せるチャンスを見逃すことはなかった。

 

 

「ぁ……、ぅん……そっか。えっと……、じゃあ、隣に来る……?」

 

「うんっ!」

 

 

 アベルに話し掛けられ、アリアは一瞬困ったような表情をしたが、すぐに目を細めて自分の隣の床をトントンと叩く。

 

 アベルはもとより そのつもりだったので、返事をする前に既に身体は動き、気付けばアリアの隣に腰掛けていた。

 

 

「早っ、……ふふっ……、アベルったら……」

 

「……アリア……、何してたの?」

 

 

 アベルの素早い動きにアリアは面食らって、吹き出してしまう。

 すると、アベルは隣の彼女を探るように覗き見た。

 

 

「え? ぁ~……、星を……見てたの……。とっても綺麗だから……」

 

「星を……」

 

 

 ほら……と、アリアが空を指差し仰ぎ見ると、アベルもそれに倣って視線を頭上へと移す。

 

 

「……ルラムーン草を取りに行った時のことを思い出すな……」

 

「……うん、そうだね……。この世界の空ってキレイだよね……」

 

 

 二人して空を見上げながら約一年前の出来事を思い出し目を細めた。

 

 




久しぶりにプラネタリウムに行きたくなりました。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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