ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

海を北上します。

では、本編。



第五百四十三話 海を北上中

 

「ぁっ、えと……、ふふっ、私 がんばるね。もっと強くなって……ストロングマッチョアリアになれるよう筋トレを始め……」

 

「しなくていいっ!(ムキムキのアリアは見たくないっ!)」

 

 

 アリアが筋トレを申し出たが、アベルから即ツッコミを受ける。

 

 

 ――ストロングマッチョアリアってなに!? ったく、アリアは変なことばっかり言うなあ……。

 

 

 アベルは弱り目をした後で苦笑してしまう。

 ……そのままのふわふわしたアリアでいて欲しいものだ。

 

 

「……にしても、水のリングの眠る洞窟はいったいどこにあるのかしら? まさか海の真ん中だなんて、そんなことないわよね?」

 

 

 海に目を転じたビアンカが辺りを見渡すが、小さな小島が見えても そこに洞窟らしきものは見受けられない。

 

 ビアンカもここまで来たのは初めてだからか、洞窟がある場所を知らないようだ。

 

 

「ああ、地図を見ると内海を北上して河を上った先。滝の中にあるみたいなんだ」

 

 

 アベルは地図を広げ【水のリング】の眠る洞窟の場所を指で示す。

 アベルの指はルラフェンの西に位置する巨大な滝の下方を指していた。

 

 

「へえ……すごい、アベルいつの間にそんな情報を……?」

 

「ハハッ、僕は旅のプロだから、それくらいの情報は知ってるんだよ」

 

 

 ――別世界の記憶……なんてビアンカに言ってもわからないもんな……、アリアがわかってくれてるから……。

 

 

 ビアンカに感心されたアベルは頭の後ろを掻き掻き、きまりが悪そうに笑う。

 

 

「……ふふっ、アベルはすごいもんね?」

 

「ははは……」

 

 

 アリアがわかっている癖に優しく微笑むので、アベルは照れ臭くなって軽く頭を下げた。

 

 

「アベルったら ずいぶんチカラをつけたのね。もう私なんて敵わないわ。身体もがっしりしてきて、なんだかパパスさんに似てきたみたい」

 

 

 アベルに感心していたビアンカが目を細め、アベルを優しく見つめる。

 背も伸び、声変わりをし、体躯もしっかりした彼は確かにパパスの面影が浮かぶほどだ。

 

 

「……そう?」

 

「ええ、頼もしいわよ。アベルがいたら危険なんてなさそうだもの」

 

「……ははは……」

 

 

 心なしかうっとりしたような目のビアンカに褒められ、アベルはまた気まずそうに苦笑する。

 

 アリアの様子をちらりと見やるが、彼女(アリア)は「確かに……」とウンウン頷いているだけで、特になにも感じていないように見えた。

 

 相変わらずアリアは妬いてくれないが、彼女がなにも感じてないなら、それでいい。

 

 

 ――アリア、ビアンカと僕はただの友達だから安心してね……!

 

 

 幼なじみに褒められて嬉しいのは嬉しいが、この世界のビアンカに好意を向けられてもアリアと結婚すると決めた今のアベルには、ただ気まずいだけである。

 

 ……とはいえ、美しいビアンカに冷たい態度など取れようものか。

 

 別世界の意識(自分)がそれを許すはずもなし。

 別世界の自分達が勝手に表情筋を動かし、目を細めようと、唇に弧を描かせようと、さっきからアベルの顔は複雑な動きをみせていた。

 

 今のアベルの意思と、別世界の自分達の意思は別物であるが、アリアが目の前にいなければフローラの例もある……、別世界の自分達に引っ張られ、ビアンカに心から微笑み掛けてしまったかもしれない。

 

 ……そうすれば恐らくアリアを悲しませることになる。

 

 細心の注意を払っているつもりだが、もし、彼女(アリア)が時々悲しそうにする理由が、別世界の自分達による無意識下の行動によるものならば、気を付けなければ。

 

 ……この世界ではビアンカは友達だ。

 

 友人として無下にはできないし、大事にしたいとも思っている。

 けれどもビアンカにあまり好かれてもいけない。

 

 ……それはアリアのためでもある。

 

 アリアには、自分が別世界ではビアンカとフローラのどちらかを選び続けてきたということを気付かれてはならない。

 

 別世界と大筋が変わらない未来の出来事を言ってしまえば、何事にも潔いアリアはあっさりと自分を諦めてしまうだろう。

 

 

(僕は、アリアがいい。)

 

 

 ……アベルはアリアを諦めるつもりはなかった。

 

 

「ふふっ、うん、アベルは頼もしいよねっ」

 

「アリア……」

 

 

 アリアはビアンカの隣で穏やかに笑っている。

 ……これ以上ビアンカと会話を膨らませると余計なことを口走りそうだ……。

 

 

 こうなったら……と、アベルは独り逃げるように操縦室へ戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……アベルが操縦室に戻ると戦闘のため停泊していた船は再び北上を始める。

 

 

「滝の中か…………、じゃあ滝の洞窟ってことね!」

 

「滝の洞窟かぁ……、ちょっと楽しみだな~」

 

 

 ビアンカがなにやら腕組みしながら考え込んだ後で、閃いたようにこれから向かう洞窟の名前を命名する。

 

 アリアはどんな洞窟なのだろうかとわくわく。あの異常に暑かった死の火山よりはましだろう、マイナスイオンに当たってリフレッシュできるといいな……なんて期待した。

 

 

「洞窟か……、私 初めてだわ。ちょっと緊張するわね」

 

 

 滝の洞窟を楽しみにするアリアに対して、ビアンカはなんとなく不安そうだ。

 

 

「ふふっ、大丈夫だよビアンカちゃん。ビアンカちゃんがいたら百人力なんだから。幼なじみ同士、冒険を楽しもうよ」

 

「アリア……、ウフフ。そうよねっ。せっかくの冒険だもの、楽しまなきゃ。……この冒険が最初で最後になるかもしれないし……」

 

 

 アリアが笑顔で励ますと、ビアンカの顔がパッと明るくなり彼女は嬉しそうに目を細める。

 その笑顔はとても美しく、眩しかった。

 

 

「え……? あ……」

 

 

 ――私……、とは最初で最後ってことかな……?

 

 

 ビアンカちゃんはアベルと結婚するから……??

 

 

 アリアはビアンカの笑顔を美しいと思いつつも、ちくり。胸の痛みを覚えぎこちなく口角を上げる。

 

 

 ……それでも。

 

 

「……最初で最後だなんて……淋しいなっ」

 

 

 アリアはビアンカの手を取り握ると、無理やりに笑顔を作ってみせていた。

 

 

「……私もよアリアっ!」

 

「わぁっ!?!?」

 

 

 笑顔のアリアにビアンカは抱きつく。

 

 

「水のリングを探すだけならレヌール城のお化け退治よりずっと簡単よね。……実はあの時、怖くて泣きそうだったのよ。私、暗いところもお化けも苦手なの」

 

「そうだったの!? めちゃくちゃ頼もしかったよ……!?」

 

 

 ――アベルと二人でお化けを圧倒してたような……?

 

 

 ビアンカの話にアリアは昔を思い出し、あの頃の自分は“ポンコツオブポンコツ”だった……、改めてアベルとビアンカがいてくれて良かったと思った。

 

 

「うふふ。だって、三人の中じゃ私が一番年上でしょ? がんばらなきゃーってねっ!」

 

 

 本当は怖かったが、私はお姉さんだから……そうビアンカ、彼女はサムズアップしてウインクしてみせる。

 

 

「ビアンカちゃん……」

 

「まあ……あの時のアベルすごく楽しそうだったから、最初は確かに怖かったんだけど、途中から恐怖心なんて吹き飛んじゃったのよね~……、そういえばアベルってばあの頃から頼もしかったわね……」

 

 

 ビアンカは腕組みしながら何度も深く頷く。

 

 レヌール城に行った時の幼いアベルはどこか大人びていて、とても頼りがいのある子どもだった。

 レベル上げに長々と付き合わされ、少々ぐったりもしたがお化け退治自体はスムーズに行えたと思う。

 

 

 ――苦労した分、更に大人になったと思ったけれど……今の方が年相応って感じかしらね……?

 

 

 ビアンカが操縦室に視線を投げれば、窓からアベルが前方を見ていた。

 ビアンカと目が合うと、彼は目をぱちぱち。首を傾げる。

 

 ……その後急に優し気に目を細めた。

 

 

(っ、なに……? あの嬉しそうな顔……。まさか私に笑い掛けたの……?? 可愛い……。)

 

 

 ビアンカは ぽっと頬を紅く染めてしまう。

 ビアンカの後ろでアリアがアベルと目を合わせていたのだが、さて、アベルはどちらに微笑み掛けたのか……。

 

 アベルの優し気な瞳は今も昔も変わっていないなと、ビアンカは応じるように目を細めていた。

 




ビアンカの台詞は一部ゲームからの引用ですが、アベルではなく、アリアと喋っております。

この三角関係ね……!

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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