ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

滝が見えて来たよ~。

では、本編どぞー。



第五百四十四話 滝が見えて来たよ

 

「……私もお化け苦手……。あの時は叫んでばかりでアベルに泣きついてたなぁ……」

 

「ふふっ、そうなんだ? 怖かったのによくがんばったわね」

 

 

 ビアンカは過去を振り返り、弱り目のアリアの頭を撫でて褒めそやす。

 

 

「いや……全然なんにもしてないよ……? むしろ迷子になって迷惑を掛けただけっていう……」

 

「そんな顔しないで? アリアは居てくれるだけで頼もしかったんだから」

 

「ビアンカちゃん……」

 

「だって、アベルがアリアのことばっかり気にするから、途中からアリアさがしになっちゃって、お化けの怖さなんて二の次になっちゃったもの!」

 

 

 申し訳なさそうに零すアリアをビアンカは励まし、明るく笑い飛ばした。

 

 

「あ、ははは……、お世話おかけしました……」

 

 

 アリアが恐縮したように深々と頭を下げると、ビアンカはアリアを抱きしめる。

 

 

「……ねえ、アリア。ずっと、ずぅ~っと一緒にいられたらいいのにねっ。……ずっと、子どもの頃のままで いられたらよかったのに……」

 

「ビアンカちゃん……?」

 

 

 ……ビアンカに頭を撫でられながらアリアは耳元で囁かれる言葉の意味を考えた。

 

 

 ――子どもの頃のままでいられたら……、そりゃそうだよね……、あのままいられたら……私はアベルに恋なんかしてなかった……。

 

 

 フローラさんとアベルが幸せになったとしても、ビアンカちゃんとアベルが幸せになったとしても、こんな苦しい想いはしなかったと思う。

 

 子どもの頃のままなら、嫉妬なんか……しなかったよ。

 あの頃のアベルはただの可愛い男の子だったんだもの。

 

 

 ……アリアの目は伏せられ、ビアンカを静かに抱き留めていた。

 

 

「……大人になるって……、辛いことよね」

 

「ビアンカちゃん……」

 

「……私、後悔しているのかもしれない。でも……、私にとってはチャンスだし……」

 

「ぁ……、ぇと、うん。応援するよ?」

 

 

 ビアンカの言う“後悔”がなんのことか、アリアはよくわからないが、“チャンス”はなんとなくわかる。

 

 

 ――アベルと……結婚できるかも知れないっていう……チャンスのことよね……?

 

 

 今回、ビアンカが冒険について行きたいと申し出たのは、きっとアベルと一緒にいたいからなのだろうとアリアは察し、応援を買って出ていた。

 

 

「本当?」

 

「……うん。きっと、アベルもそれを望んでいると思うし……」

 

 

 ビアンカが窺い見てくるのでアリアは首を縦に下ろす。

 

 

 ――たぶん、アベルは最終的にはビアンカちゃんと結婚したいはず。

 

 

 フローラさんには悪いけど、ビアンカちゃんが望むなら私は……。

 

 

(けど、フローラさんも可愛いのよね……ううむ……、悩むぅぅ……。)

 

 

 ……アリアは頭を抱えてしまう。

 ビアンカとフローラどっちがいいかなんて、選べない。

 

 

 結局アリアはどっちつかずなのだ。

 

 

「アベルがどうして……? 私の気持ちなんてまだ言ってないから知るわけないのに……」

 

 

 ビアンカはアリアから離れ、不思議そうに首を傾げる。

 

 

「へ……? あっ、私、別にビアンカちゃんの気持ちアベルに言ったりしてないよっ?」

 

「え…………、あっ、ふふっ、そうよねっ。恥ずかしいから内緒にしててねっ」

 

 

 ビアンカの様子にアリアは首を横に振り振り。

 ……一昨日の夜、二人で語り合った話はアベルには秘密だ。

 

 私とアリアの秘密ね♡ ……と、ビアンカが口元に人差し指を当てて美しく微笑んでいた。

 

 

「っ……ぅ、ぅんっ!」

 

 

 ――任せてビアンカちゃん……、私、口は堅いし……言わないよ。

 

 

 それに……ごめん、アベルにはまだ言いたくないの。

 

 

 ビアンカの気持ちをアベルに伝えてしまえば、二人はきっと急接近することになるだろう。

 

 ……なんてったってここはゲームの中の世界。

 

 ゲームの強制力(原作の意志)が働き二人を結び付けるはず……。

 

 アリアは、いつかアベルの自分への想いが強制的に心変わりをするとしても、今はまだ……彼に愛されていたかった。

 

 

 ……ビアンカの美しい笑顔を見るのが心苦しくて、アリアの目は自然と余所へと泳いでしまう。

 

 

「…………アリア? どうかしたの……? 魔物でも見えるの……?」

 

「っぁ、ううんっ!? なんでもないよっ、ビアンカちゃんの笑顔が眩しくって、つい。ふふっ♡」

 

「あら、ふふふっ、アリアの笑顔も眩しいわっ」

 

「ビアンカちゃん……」

 

 

 再びアリアはビアンカに抱きしめられ、小さく「ごめんなさい……」と溢した――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アベルは別世界の記憶もあってか、迷うことなく広い海を北上、ルラフェンの西に位置する大瀑布を目指し、河を遡上して行く。

 

 船での移動は陸上よりも早いとはいえ、広い海だ。

 河に差し掛かるまでにアベル達はもう一晩海上で過ごしてからの遡上となった。

 

 ……夜が明けてしばらく河を上っていくと、

 

 

 “ザァァアアア”

 

 

 大量の水が落下する音が進行方向、北の方角から聞こえて来る。

 かなりの爆音量だ。

 

 

「アベルー! たき~! 滝が見えて来たよ~! ……――――!」

 

『……んー? なに~?』

 

 

 アリアが前方を指差しながらアベルに滝が見えたことを教えるが、勢いのある大きな水音により、彼女の声がアベルに届くことはなかった。

 

 アベルは操縦室から顔を出し、首を傾げている。

 

 

「アリア! アベル聞こえていないみたい。私が伝えて来るわ!」

 

「あっ、うん! お願いしますっ」

 

 

 甲板、船首側で前方を見ていたアリア達だったが、アベルに滝の中央に洞窟が見えたことを伝えたものの、滝の流れる音により伝わらず、ビアンカが伝えに行ってくれることになった。

 

 ……航路が少々ずれているため、伝えた方がいいだろう。

 

 

「……ぁ…………」

 

 

 アリアがなんとはなしにビアンカの背を目で追っていると、操縦室に着いたビアンカとアベルが楽しそうに話しているのが見えてしまう。

 

 洞窟について話しているのだろうとは思うが、二人は笑顔でビアンカが時折アベルの腕に触れたり、アベルが照れたように頭の後ろを掻いたり……、アリアからは似合いのカップルに見えた。

 

 

「……ふふっ。二人はお似合いねっ」

 

 

 アリアはアベルとビアンカの様子に目を細める。

 ……やはり二人は結ばれるべき相手なのかも……と、ちくちく痛む胸を押さえ、迫りくる滝の洞窟の入口へ目を転じた。

 

 大瀑布の中央付近、流れる滝の向こうに暗く大きな穴が空いているのが薄っすらと見える。

 

 そこが恐らく【滝の洞窟】……。

 

 ビアンカからアベルにきちんと伝わったのだろう、さっきまで少々東にずれていた舵が洞窟の入口に向けられていた。

 

 

 ――滝の洞窟……私が行ったら邪魔じゃないかな……。

 

 

 アベルとビアンカの邪魔をしたくない……のもあるが、二人が仲良くしているのを見るのが少し辛い。

 

 アリアはアベルとの最後の洞窟探検とはいえ、ビアンカがいるのならもう自分は必要ない、馬車で待機するのもいいかなと考えていた。

 

 

「……アリア嬢。大丈夫ですよ、私がおります。私は貴女の味方ですよ」

 

 

 すぐ傍にいたピエールがアリアのマントを軽く引く。

 

 

「……ピエール君……、ありがとう……私、馬車に乗ってようかなぁ?(馬車の中にいたら二人を見なくてすむもんね……)」

 

 

 ――ビアンカちゃんがいるんだもの、もうアベルと一緒に歩くのは終わりにしなきゃね。

 

 

 サラボナで終わりだと思っていた旅がここまで長引いたのだ。

 心の整理も大分できている。

 

 あとはアベルが結婚する際に隙を見てこっそり抜ければいいだけ。

 

 

(アイタタタ……、胸がちくちくするや……。)

 

 

 痛む胸に拳を当てて……。アリアはできれば今すぐ逃げ出したかった。

 

 

「…………そうですね、……お辛いのであればそれもいいかと」

 

「……ははっ、ヘタレでごめんね」

 

「いえ! そんなことは!」

 

 

 ピエールの慰めにアリアは弱り目で微笑む。

 

 

「がう……」

 

 

 アリアとピエールのすぐ側でプックルがジッと見ていたが二人はその視線には気が付かなかった。

 




アベルとビアンカカポーもよきよき。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!

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