滝の洞窟に到着です。
では本編どぞ~。
第五百四十五話 滝の洞窟
◇
……船は滝へ、ゆっくりと洞窟の入口へと接近していく。
「……アリアっ!」
「えっ?」
大瀑布が船の目前に迫ったその時、不意にアベルの声がしたと思ったらグイッとアリアは手首を引かれた。
……アベルはマントを翻し彼女を庇う様に覆い被さる。
アリアが何事かと面食らうが、すぐにその行動の意味を理解した。
(うわぁああっ! 滝の中にそのまま突っ込むのね……!)
“ザァァアアアア……!!!!”
船の航路は迫りくる瀑布の真下へ一直線。止まる気配がない。
……滝の中に突っ込んで洞窟に侵入するらしい。ずいぶんとダイナミックである。
船が滝の中へ侵入すると、アベル達はずぶ濡れとなった。
滝の下を通過中、甲板に出ていた仲間達は大量の流水に「痛い痛い!」と思わぬ大自然の洗礼に悲鳴を上げる。
ダメージというほどダメージを受けたわけではないが、痛いものは痛い。
だが、さすがはルドマンの船。
船に注ぎ込まれた水は直ちに
「……ふぅ……。大丈夫だったかい?」
「ぁ……ありがとアベル……船の操縦してたんじゃ……?」
――あぅ……水も滴るイイ男……。
無事滝を通過し終えると、アベルがアリアの上から退いてずぶ濡れの前髪を掻き上げる。
ターバンは水の勢いで床に落ちてしまっていた。
水の流れの合間を縫って注ぐ陽の光がアベルを照らし、キラキラと輝いているように見え、アリアは見惚れてしまう。
「ビアンカに代わってもらった。……アリア、ちょっと濡れちゃったね、ほらタオル」
「…………ぁ、アベルの方がずぶ濡れだよ……」
アベルが【ふくろ】からタオルを取り出し、僅かに濡れたアリアの腕を拭くとタオルを手渡した。
アリアはそれを受け取ると、ずぶ濡れのアベルの顔を拭いてやる。
「……ハハッ、僕は平気さ。アリアが濡れると色々大変だからね」
「色々大変て……? このマント防水仕様だから水に強いんだよ……?」
甲斐甲斐しく自分の顔を拭いてくれるアリアに、アベルは笑顔で身を屈めされるがままだ。
「……マントはともかく、アリアの中の服は水に透けちゃうからね、僕が興奮しちゃうとまずいよね?」
アリアの耳元で濡れ鼠のアベルがこっそり囁く。
……ビアンカがいるのに発情するわけにはいかない。
「なっ」
アベルの囁きに驚いたアリアの耳に、彼は“フゥ”と息を吹き掛け踵を返すと操縦室へ戻って行った。
……アリアの身体は硬直し、顔は瞬時に茹蛸だ。
それでも――。
「……あっ、アベルっ、これっ、タオルっ……! あとターバンも……!」
アリアは慌ててアベルを追い掛ける。
途中で甲板に落ちていたアベルのターバンを拾い ぎゅっと絞った。
……その様子を操縦室から顔を出したビアンカが見ているではないか――。
「ん? ありがとうアリアっ! 気が利くね!」
「あっ、うん……? でもこのタオルあなたが出してくれたもので……」
アリアからタオルを渡されたアベルは蕩けたような笑みを浮かべて頭をがしがし拭き始める。
「へへっ、嬉しいなぁ……う、ん? アリアは優しいね」
アベルは頭を拭き終えるとアリアからターバンを受け取った。
「……アベル……?」
アベルの行動が何だか妙だが、そうしている間に滝の音が遠ざかって行く。
……船は洞窟の入口へと侵入していた。
「洞窟の中にも滝が多いんだ。濡れないように注意しないとね」
「あ、私、馬車に乗ってようか?」
「…………」
アリアの馬車に乗る宣言にアベルは黙り込んでしまう。
「アベル……?」
「……アリア、馬車に残るつもりなのかい?」
アベルは眉を寄せ、距離を詰めると彼女を見下ろす。
――この先、通路が狭くて馬車は連れて行けない……アリアを船に残してなんて行けるわけがない。
いつもは疲れたって馬車に乗ろうとしないくせに、なぜ急にそんなことを……?
……アベルはアリアの発言の意図がわからなかった。
「え、あ、うん……、邪魔かなと思って……」
「なんの邪魔? アリアが邪魔したことなんかないよね?」
「え? えと……?」
――なんだかアベル怒ってるみたい……、私なにかしたっけ……?
ビアンカと二人で行った方が楽しいのではないか……と、アリアは思っていたのだが、アベルの不機嫌そうな物言いにアリアはどう説明すればいいのか戸惑ってしまう。
「炎のリング同様、水のリングを君に取りに行かせるのは心苦しいけど……、一緒に来てもらうよ」
アベルは無表情でアリアに告げていた。
――君は僕と一緒にいないと、きっとどこかに行ってしまう。
謎の男のこともあるし……と。
予感なのか、直感なのか、アベルはアリアと離れたくなかった。
(それに……ラインハットを出てから、ここ数日……アリアと全然触れ合えてない気がするんだけど……!? 気のせいかな……!?)
ビアンカが同行するようになってから、アリアが妙によそよそしい。
……友達作戦中だから多少は仕方ないのはわかっているが、それでもアベルはアリアと手を繋ぎたいし、髪を触りたいし、キスもしたい。
それだけじゃない。
彼女の白いスライムだって両手で鷲掴みしたいし、しっとりした柔らかく熱い小さな蕾だって愛でてやりたい。……アリアの喜ぶ泣き顔だって見たいのだ。
だがビアンカの目があるから【ぱふぱふ】どころか、単純なスキンシップさえもままならないとは……――。
――このままでは結婚するまでに済ませておきたいことができないじゃないか……!
……アベルには、結婚までにアリアとしたいことがいくつかあるらしい。
それを実行するためにはアリアと二人きりになる必要があるのだ。
だからアリアが馬車に残ることなど許容できない。
「ぁ…………うん、わかった……。足手まといにならないように がんばるね」
アベルは残酷だね……などとアリアは目を伏せ“これも主人公に恋した罰なのかも”と諦め受け入れる。
すると黒い
……アリアが落ち込みを見せる度に濃くなる黒い靄。
以前よりその量は減ったが、呪いの残渣である黒い靄がさっきからアリアの周りを漂っていた――。
滝の下を行くと船やばそうなんですけど、魔法の船ってすごいな……。
Theご都合主義ってヤツですw
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!