ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

毛皮のマント……。

では、本編どぞ。



第五百四十九話 毛皮のマント

 

「え? なになに?」

 

 

 アベルの急な笑い声にビアンカは目をぱちくり、アベルとアリアの傍にやって来る。

 

 

「あっ、ぇっと! 私は落ちるつもりなかったけど、アベルはそういうの平気で行っちゃいそうで怖いっていうか……」

 

「落ちないよ! こんなとこから落ちたら さすがに死んじゃうよ!」

 

 

 アリアの言葉にアベルは全否定していた。

 落ちていい場所と落ちてはいけない場所くらい、わかっている。

 

 落ちていい落とし穴や場所は不思議とそう(・・)、感じることができるのだ。

 

 

 ――アリアって僕のことそんな無鉄砲な奴だと思っているのか……!?

 

 

 これまでかなり慎重に進めていると思うのだけど……と、アベルはアリアの頭を少々乱暴にぽんぽんと撫でて安心させる。

 

 

「だ、だよねぇ……。あぁ、よかった……。落ちたら大変だから気を付けてね」

 

 

 アベルの言葉にアリアは ほっと胸を撫で下ろした。

 

 

「…………あ。ふふっ、そういうこと?」

 

「……そう。アリア、さっき僕に言われたこと、そっくりそのまま言い返してきたんだよ。まったく、僕がやたらめったに飛び降りるわけないじゃないか」

 

 

 何事かとアベルとアリアの様子を見ていたビアンカが、理解したとばかりに手をポンと叩くと、アベルはアリアの頭から手を放し腕組みをして頬を膨らませてみせる。

 

 

「そんなのわかってるよ……。でも、心配だったんだもん……」

 

 

 アリアはしょんぼりと目を伏せてしまった。

 

 

「アリア……、…………っ!」

 

 

 自分の心配をしてくれるアリアにアベルの胸がきゅぅっと締め付けられ、頬も ぽっと紅く染まったが、すぐ我に返る。

 

 

 ――ああっ、アリアそんな可愛い顔見せないでよ……!

 

 

 ……抱きしめたくなるじゃないかぁっ!!

 

 

 ビアンカの目の前でアリアを抱きしめるわけにいかない。

 

 アベルはむず痒くなった胸元を鷲掴み、いつだって自分を想ってくれる彼女の愛を心に染み込ませた。

 

 ……そんな時、ふと黙って見ていたビアンカが口を開く。

 

 

「…………。……ねえ、二人ともちょっと訊きたいことがあるんだけど……」

 

「……っ!? あっ、ビアンカちゃん! しゅ、守護天使ってねっ、身の危険とかも察知するのに長けてるんだよっ、だから危ないことには近寄らせないようにしないとねっ!!」

 

 

 ビアンカの声にアリアが目を大きく見開かせると、アリアは慌てて“守護天使”を主張し始めていた。

 

 旅をしていれば危険なことだらけのため、アリアの主張は全く説得力がない。

 ……しかもアリアは友達設定をすっかり忘れていたのだろう、頬がほんのり赤かった。

 

 アリアもアベル同様、性格的に嘘を付くのは苦手らしい。

 

 

「…………ははは……(アリア、それ苦しい言い訳だよ……)」

 

 

 アベルは乾いた笑いを浮かべる。

 

 

 ――さすがにビアンカ気付いたよね……。

 

 

 ……もうばれてもいい。

 いや、いっそばれて欲しい。

 

 

 アベルは既に覚悟しており、ビアンカに謝る心積もりもできていた。

 

 

 ところが……。

 

 

「…………、ねえ……この洞窟って、宝箱はあるのかしらね?」

 

 

 ビアンカの口から出た言葉はアベルの予想したものとは違った。

 

 

「……えっ!? 宝箱!?(ビアンカ!?)」

 

 

 アベルはつい大きな声で返してしまう。

 

 

 ――今、絶対気付いたと思ったのに……!

 

 

 “ビアンカって、実は鈍感なのか……?”という考えがアベルの頭を過ぎる。

 

 ばれていないなら、それはそれでいいっちゃいいのだが、なんだか腑に落ちない。

 

 

(いっそなにもかも話して楽になりたい、僕はアリアと堂々と触れ合いたい……もう限界なんだっっ!!)

 

 

 これまで毎日していた朝のキスもスキンシップもしなくなって、丸二日が経った。

 

 一昨日の夜の膝枕でアリアとのラブラブタイムは終了。

 今朝は朝食時にアリアとたまに目が合ったくらいで、当たり障りのない言葉を交わす程度の交流だけで終わっている。

 

 手を繋ぐこともないなど……こんなことは付き合い始めてから初めてである。

 

 一日に一回……ではなく、何度でも。

 アベルはアリアを愛でなければ気が済まないほどに彼女を溺愛しているのだ。

 

 つい、無意識下でアリアに触れてしまっても致し方なし。

 

 常に傍にいるというのに、キスもハグもできないのがこんなにきついとは。

 

 

 ――ビアンカお願いだ……! 早く気付いて……!

 

 

 自然にばれたならアリアもしょうがないと諦めてくれるだろう。

 

 

 ……本当はばれて欲しかったアベルであった。

 

 

「宝箱……、うん、きっとあるよ、洞窟だもの!」

 

「そうよねっ! うわ~、それは楽しみねっ! 宝箱っていえば冒険の醍醐味だものっ」

 

「うんっ」

 

 

 アベルの代わりにアリアが答えると、ビアンカはアリアの手を取りぎゅっと両手で握って微笑む。

 

 

 洞窟といえば……宝箱……。

 

 

 アベルが眉を寄せる中、アリアはビアンカの笑顔に目を細めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから一行は滝口のフロアから階段を下りて行き、洞窟内を進む。

 ……現在地は地下三階……。

 

 アベル達の目の前には地下四階に続く下り階段が見える。

 

 

「ちょっと寒いね……」

 

「そうね……」

 

 

 アリアとビアンカは洞窟内の冷気に身体を震わせていた。

 

 灼熱の死の火山と打って変わり、滝の洞窟は年中水に囲まれているせいか、洞窟内全体がひんやりとしている。

 

 凍り付くほどではないが、空気も冷たく長居すれば体温を奪われることだろう。

 

 ……階下から吹きあがって来る風も冷たく、続く地下四階も寒そうだ。

 

 

「二人とも、寒そうだけど大丈夫かい?」

 

「私は平気よ、アリアは?」

 

「私も平気~!」

 

 

 アベルが問い掛けると、ビアンカとアリアは互いに身を寄せ合いながら歩いており、アリアの肩は寒さに震えていた。

 

 

「……やだアリア。唇が紫になってるわよ……」

 

「え? あっ、あははは……そう?」

 

 

 ――このフロアすごく冷える……、陽の光が届かないから……?

 

 

 普段は薄桃色のアリアの唇が、今は薄っすら紫がかっている。

 ビアンカの指摘にアリアははにかんでみせていた。

 

 

「アリア……、……あ、そういえば、昔……」

 

 

 ――その恰好じゃ冷えるよね……!

 

 

 常に体温高めのアベルは特に寒いと感じておらず、寒そうなアリアを抱きしめてやりたかったが、ビアンカの手前自重する。

 

 アリアはマントがあるとはいえ、中はチューブトップにミニスカート。

 冷えもするだろう。

 

 ビアンカの恰好もアリアのスカート丈よりは長めだが、似たような服装……寒そうだ。

 

 アベルは、【ふくろ】から【毛皮のマント】を二着取り出し、二人の前に差し出した。

 

 ……それは十年以上前にラインハットで購入したもので、以前プックルとアリアが装備していたものである。

 

 不思議なことに古代の遺跡でアリアが装備していた【毛皮のマント】はいつの間にかアベルの【ふくろ】に戻っていたのだ。

 

 

「あら、アベルこんないいものを持っていたのね……!」

 

「え……これ……?(温かそう……)」

 

「二人とも寒そうだから、羽織ってよ」

 

 

 ビアンカとアリアは手渡された【毛皮のマント】をそれぞれ見下ろす。

 

 ビアンカは早速羽織り「温かいわ」なんて云いながら目を細め、アリアは【毛皮のマント】に既視感があるのか、手触りを確かめながらそれを羽織った。

 

 そして。

 

 

「「ありがとう♡」」

 

 

 ビアンカとアリアはアベルに笑顔を向ける。

 二人に笑顔でお礼を言われたアベルは照れてポッ。頬をほんのりと赤くして頭の後ろを掻いた。

 

 

「…………っ、二人とも風邪引かないようにね」

 

「ええ!」「うんっ」

 

 

 ビアンカとアリアは【毛皮のマント】の温かさにほっこりしながらアベルに明るい声で返事をした。

 

 

 光の当たらないフロアはかなり冷える。

 さっさと通り抜けたいところだ。

 

 

 アベル達は再び魔物の群れと戦いながら、下の階へ歩みを進めた。

 




何気に毛皮のマントは少年期でしか買えない代物だったり。
そして丁度現在地、滝の洞窟に出るオークが落としたりします。

アリア昔装備してたんすよ。
いつの間にかアベルのふくろにin。

洞窟内寒いよねってことで。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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