ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

滝の眺めは最高ですね!

では、本編。



第五百五十話 絶景スポット

 

 

 

 

 

 ひんやりした陽の光が入らない薄暗い地下四階の通路を歩いていると、いつまでこの寒い中を進むのかと思ったが、行く先に明らかにこことは違う明るい光が見えてくる。

 

 ……あれは地下二階で見た天から降り注ぐ陽光ではなかろうか。

 

 明かりに誘われ足早に外へ出てみれば、通路は大きな滝が目の前に迫る絶景スポットに繋がっていた。

 

 続く道は滝の前を横切るように伸びており、先ほど出たフロアと似たような暗い横穴がぽっかり開いている。

 

 

 目的地はまだ先だ。

 通路は暗い横穴に続いている……が、今は。

 

 

「わぁ……!」

 

「わー、きれい! こんなふうに景色に見惚れるなんて何年振りかしら……」

 

 

 アリアが手を合わせて目前に広がる光景に瞳を輝かせていると、ビアンカも眩しそうに滝を眺めた。

 

 陽に照らされた滝の水飛沫が光を内包し、飛沫の一粒一粒が輝くようだ。

 頭上には虹も僅かに見える。

 そんな光の粒たちが上から降り注いでくる様はなんとも芸術的で、神秘的だった。

 

 

 ……先ほどビアンカが滝口から見た通路はこの通路なのかもしれない。

 

 

「…………アリア綺麗だ」

 

 

 アベルは滝を見上げ飛んでくる水飛沫に手を伸ばし、眩しそうにしているアリアに見惚れつい呟いてしまう。

 アリアの手に触れ弾かれた水飛沫が彼女の髪に付着すると、降り注ぐ陽の光を反射し輝いていた。

 

 ……アベルの呟いたそれは滝の流れる音が大きくて きっと誰にも聞こえない。

 ビアンカも今は滝を見上げているから気が付かないだろう。

 

 

 アベルはビアンカの向こうで瞳を輝かせるアリアをじっと見ていた。

 

 

「……ふふっ、いいところね。これはあれね……」

 

 

 ……ふとビアンカが腕組みをして片手を顎に当ててぶつぶつ。

 なにか言っているようだが、アベルにはよく聞き取れない。

 

 

「……ビアンカ? どうかしたのかい?」

 

「ううん、なんでもないの。さ、絶景も見たことだし先を急ぎましょ。アリア~! 道が濡れてるわ。足元気を付けてねっ」

 

 

 アベルが訊ねたものの、ビアンカはにっこりと微笑み首を左右に振ってアリアの傍に行ってしまう。

 

 足元を見ると滝の飛沫が飛んできているためか所々に小さな水たまりができていた。

 

 

「うんっ」

 

 

 ビアンカがアリアの手を取ると彼女(アリア)も笑顔を見せ、二人は手を繋いでアベルの元にやって来る。

 

 

「…………(なんで手を繋ぐ必要が……? 魔物が出たら出遅れないか……? ていうか僕が繋ぎたかった……)」

 

 

 アベルは二人の繋いだ手を見下ろしムッと口をへの字にした。

 

 

 ――ビアンカ、君はいったいなにを考えているんだ……?

 

 

 この世界のビアンカはどうも別世界の彼女と違うような気がする。

 

 

 ……アベルの勘でしかないのだが、数多の別世界のビアンカは自分を心配してくれていた。

 それなのに この世界のビアンカはアリアに構ってばかりで、アベルの心配は特にしていない。

 

 

 ……なぜ?

 

 

(ビアンカは僕のことが好きだったはず……。話をしていると嬉しそうだし、アリアの方が優先されてる気もするけど、僕にも優しい……。どうなってるんだ……?)

 

 

 ダンカンのおかみさん……、ビアンカの母親が生きていたことによって何か変わったのだろうか……。

 

 

 アベルは そうならいいのにと思いながら、アリアと手を繋いだビアンカを羨ましそうに眺めてから先に進むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……陽の降り注ぐ絶景スポットから横穴へ入った先には巨大な地底湖が広がっていた。

 

 

「ぅ、ここも寒いわね……。アリア、くっついてましょ」

 

 

 陽の当たらないここは、先ほど滝を眺めた通路よりも寒く、底冷えする。

 ビアンカはアリアの腕に掴まった。

 

 

「うん……、あ。行き止まり……どうしよう?」

 

「いや、大丈夫だよ」

 

 

 アリアが行く先を見つめて広い地底湖に戸惑いの声を発すると、アベルは振り返って微笑む。

 

 

 ……ここで行き止まりかと思われたが、どうやら先は続いているらしい。

 

 奥に歩いて行くと水深が浅いのか、地底湖の中に人影が見えた。

 その人物は頭に角の付いた黄色いマスクを被っており、身体はマッチョ。地底湖のせいで かなりひんやりしたフロアだというのに、上半身裸スタイルである。

 

 

(うわ……、あの人寒くないのかな……って、水の中に立ってる……、あっ!)

 

 

 アリアはなぜ上着を着ていないのだろう……と疑問に思いつつ、目のやり場に困るのでビアンカの後ろにそっと隠れた。

 

 湖の近くまで行くと、男が水の中にいた理由がわかる。

 ……水の中に通路が沈んでいるのだ。

 

 足が濡れてしまうが、くるぶし程度の深さの浅瀬である。

 なんとか進めそうだ。

 

 所々水深の深い場所もあるが、足を踏み外さなければ問題ないだろう。

 

 

「ね、アベル。あの人も水のリングを探しに来たのかしら?」

 

「そうかもね、訊いてみようか」

 

 

 ビアンカが浅瀬の通路でウロウロしているマスク男のことを こそこそアベルに耳打ちする。

 

 アベルは柔和な顔で軽く頷いていた。

 

 

「……ぁ……」

 

 

 アベルとビアンカの後ろで二人を見ていたアリアは顔を俯かせる。

 アベルとビアンカは身長差も程よく二人が並ぶと絵になる。

 

 

 ――もぅ……お似合いなんだから……。

 

 

 アリアは目の奥が痛む気がして足元だけ見てアベル達について行った。

 

 

「あの」

 

「この洞窟には すごい指輪が隠されているらしいぜ。もっとも、このオレにさえ見つけられないのに女連れの色男などに探せるとは思えないがな。わっはっはっ」

 

 

 アベルが話し掛けるやいなや、マスク男が嘲るように笑う。

 ……途端ビアンカの眉が吊り上がり、後ろのアリアもプクゥッと頬を膨らませた。

 

 

「…………はは……色男って……」

 

 

 ――褒め言葉かな? まあ、美女二人引き連れてたらそう思うよね……!

 

 

 マスク男に嗤われてしまったが、【水のリング】を手に入れた記憶のあるアベルには別にどうということはない。

 むしろ、二人も美女を連れ歩いて見せびらかしてしまい、マスク男には申し訳なさを感じたぐらいだ。

 

 ……のだったが、女性二人は違ったらしい。

 

 

「……っ、行こっ♡ ア~ベルっ♡」

 

「あふんっ! えっ、アリア!?(あぁっ、それすきっ♡)」

 

 

 不意にアリアがアベルの隣にやって来て、太く逞しい腕をぎゅっと抱きしめ、先に進もうとグイグイ引っ張ってくる。

 アリアの重量感のある柔らかな締め付けに、アベルの目元も口元も緩みそうになってしまった。

 

 

「そうね、行きましょ♡」

 

「えっ? ビアンカ!?(っ、こっちも柔らかっ!)」

 

 

 ビアンカもアベルの隣に移動し反対の腕を抱きしめ、通路の奥へと誘う。

 アベルは美女二人に挟まれるようにしてざぶざぶ。両腕から伝わる質量の違う柔らかい感触に赤面しつつ浅瀬を進んだ。

 

 ……美女二人に挟まれたアベルを目撃したマスク男はしばし固まっていた。

 

 

 

 

『……な……、クッソォォオオッッ……!! こんの色男めぇぇええっっ!! 見せつけやがってぇ……憶えてやがれこんちくしょーーーー!! おめえみてえな羨ましい奴に指輪は渡さねえからなあっ!!』

 

 

 

 

 アベル達の後ろでマスク男の悔しがる怒り声が聞こえた……。

 

 




ヘンリーに見せびらかそうと思っていた両手に花は、図らずもマスク男で解消されましたとさ。

恨み買っちゃいましたかね?

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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