ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

世界の理……なんじゃそりゃ。

では、本編どぞ。



第五百五十四話 世界の理

 

「……アリア、それ、結び直そう?」

 

「あっ、うん。でもここじゃ恥ずかしい……、って……わあっ! アベルっ!?」

 

 

 アベルの提案にアリアは頷くが、ここからではマスク男の姿もまだ見え、スカートを捲って直すのは恥ずかしいとモジモジ。

 

 ……そんなアリアをアベルは強引に肩に担ぐ。

 

 

「……じゃあ、向こうで」

 

 

 アベルはギロッとマスク男に鋭い視線を送ってから辺りを見回し、岩場の陰を探した。

 

 

「っ……、アベル、こんなことしちゃダメだよ……ビアンカちゃんが誤解しちゃう……」

 

 

 急に担がれたアリアはアベルのマントに掴まりながらも申し訳なさそうにか細い声を出す。

 

 

「っ、いいからっ! 脱げちゃうよりいいでしょ!」

 

 

 ――誤解上等! アリアのぱんつは僕が守る……!

 

 

 アリアの太ももを それとなくさわさわしつつ、アベルは見つけた岩場の陰にアリアを連れ込み、彼女をそっと下ろしてやった。

 

 

「……アベルあっち向いてて」

 

「ぇー…………はい(別に見せてくれてもいいのに……)」

 

 

 アリアの命令に従い、アベルは彼女に背を向ける。

 すると、衣擦れの音がアベルの背後で聞こえた。

 

 

 ――今、アリアはスカートを捲ってヒモを結んでいるのか……! アリアの白い太もも……!

 

 

 見たい……!

 

 

 ……が、そこはアリアに嫌われたくないため、アベルは早々に諦め目を閉じ、妄想するだけに留める。

 

 

「……もういいよ。ありがとうアベル」

 

「……すぐ言ってくれればよかったのに。他に何もされてない?」

 

 

 アリアの声にアベルは振り向き、彼女を見下ろした。

 

 ……こんなに近い距離で見つめ合うのは何日振りだろうか。

 確かまだ数日なのだが、もう何年振りと言ってもいいくらいだ。

 

 それほどに彼女が愛おしい。

 

 

 ――アリアの匂い……もっと嗅ぎたい……。

 

 

 ここなら岩場の陰だからビアンカに気付かれることもないはず……と。つい無意識の内にアベルはアリアに近付いてしまう。

 

 

「うん……。だって……、邪魔しちゃ悪いかなって……」

 

「邪魔ってなんの……」

 

 

 アリアは鼻をひくつかせながら近付くアベルの顔面を既に両手で押えていた。

 

 顔を手で覆われてしまったアベルだったが、それならと構わずアリアの手の平や手首に“ちゅ、ちゅっ”と口付けをする。

 

 

 ――アリアの抵抗など、抵抗にあらず……! キスまでならアリアは絶対怒らない……!

 

 

 ……アリアに触れられるならどこでもいいらしい。

 アベルはどこまでならアリアの許容範囲なのかを心得ているのだ。

 

 自分の欲求を満たし、尚且つアリアも困らない程度に触れる……これぞWin-Winのスキンシップではなかろうか。

 

 

「っ、……えと……ふふっ。私、お邪魔かな~って」

 

 

 ――アベルは なんで手にキスしてくるのっ……!? くすぐったいっ……!

 

 

 アリアは思わぬアベルの唇撃に手を引っ込める。

 その後でアベルをじっと見上げた。

 

 

「……はぁ。アリアあのさ、何度も言ってると思うけど僕は……」

 

 

 アリアに上目遣いで睨まれてしまい、アベルは仕方なく顔を離したものの、なぜ伝わらないのか ため息を吐く。

 

 

 ――ったく、可愛い顔して……。

 

 

 何度アリアに「僕は君だけだよ」と言っても、彼女は「わかった」……そう言うくせに、その場では理解してもすぐに忘れてしまう。

 

 

 ……そんな彼女の態度がずっとおかしいと思っていたが、アベルには一つ思い当たることがあった。

 

 

 

 

 アリアが真に理解してくれないのは【世界の(ことわり)】のせいだとしか考えられない。

 

 

 

 

 アリアは、【世界の理】によってなにかしらの制約をかけられ、アベル(自分)の言動を意図的に理解できないようにさせられている(・・・・・・・)のでは……?

 

 制約といえば、町でたまに会う 意思など持たないかのように“言わなければならない台詞”を延々繰り返す(かせ)を持つ人々に似ていやしないだろうか。

 

 この世界で初めて出逢った いつも自由だと思っていたアリアは、実はどの世界にも存在していたが 今まで出逢えていなかっただけで、たまたま今回運良く出逢えたのだとしたら、知らない内にアリアにもそれが課せられているのでは。

 

 そうすると、アリアがビアンカに遠慮する理由が解る気がする。

 

 

 ……この世界は基本的に別世界と同じ時を刻むのだから。

 

 

 

 

(僕は、アリアとしか結婚するつもりはないけど、今はフローラさんとビアンカのどちらかを選ぶ道を進んでいる……。)

 

 

 

 

 アベルは強い意志でもってアリアのために【水のリング】を探しに来ているが、彼女は相変わらずの態度で、しかも今はなぜかビアンカにまで遠慮してしまっている始末。

 

 アベルがフローラとビアンカのどちらかを選び結婚することをアリアが知るわけがないのにも関わらず……。

 

 

 ――これはもう……そうとしか思えない……。

 

 

 つまり、アリアは【世界の理】によって自分の意思を捻じ曲げられている可能性がある……――。

 アベルは“それなら”と何度でも伝えようとした。

 

 

 ……そんなアベルにアリアがぽつり。

 

 

「アベルはさ、主人公なんだよ」

 

「う、ん……?」

 

 

 ――主人公……って、アリアがよく言う“ゲーム”の……?

 

 

 アリアの言葉にアベルは首を傾げる。

 

 

 ……自分はこの世界の中心……らしいが、その感覚はあまりない。

 

 アリアの言うことは真理なのかもしれない。

 だがアベルにとってはそんなことどうでもいいのだ。

 

 

(僕はただ、君と未来を歩きたいだけなんだよ。)

 

 

 ――このままアリアと二人で一緒に幸せになりたい。

 

 

 そう思うアベルにアリアは続けた。

 

 

「……主人公にヒロインはつきものなの」

 

「……うん? ヒロインって……本に出てくる主人公の傍にいる女の子のことかい?」

 

「うんうん」

 

 

 アベルの問い掛けにアリアは頷く。

 

 

「……僕にはアリアがいるよね?」

 

「……私はヒロインじゃないよ……?」

 

 

 ……アリアは今度は俯いてしまった。

 

 

「アリア? なに言ってるんだい?」

 

「ぁ……なに……言ってるんだろうねえ……、あはは……」

 

 

 アベルがアリアの頬を両手で包み込み、顔を上げさせると彼女の瞳が揺れている。

 ……アリアはアベルから目を逸らして苦笑した。

 

 

「アリア……?(なんでそんな悲しそうな目をするんだ……?)」

 

「ふふっ、ほらっ、早くビアンカちゃんのところに行こっ!」

 

 

 アベルが目を瞬かせると、アリアはアベルの手を自らの顔から離させビアンカ達のいる岩場の陰へと走り出す。

 

 

「っ、待ってアリア!」

 

「えっ、あっ」

 

 

 アベルは咄嗟にアリアの手首を捉えると引き寄せ唇を重ねた。

 

 

 “バシャッ!”

 

 

 水の跳ねる音に加え、「ンンッ!」とアリアの抗議の声が塞がれくぐもった音が僅かに漏れる。

 手首を掴まれたアリアはすぐさま抵抗していたが時すでに遅し、彼女が手を出し押し剥がす前にアベルは離れていた。

 

 

「っ、はぁ……、アベル キスしちゃだめ。私たちは友だちなんだよ……?」

 

 

 ――もうこれ以上キスしないで欲しいの……もっとしたくなっちゃうから……。

 

 

 アリアは胸が痛くなりアベルに訴えかける。

 ……だがアベルはアリアの言うことには答えなかった。

 

 

「…………」

 

 

 ――友達とか知らないよ……っ! そんな顔して嫌なわけないでしょーが……! 大好きな彼女が目の前にいたら、キスくらいするわっ!

 

 

 アリアの頬は真っ赤に染まり、瞳を潤ませ少し開いた唇が震えている。

 もっとして欲しそうなのは気のせいじゃないはず。

 

 

 ……だが、今そんな時間はない。

 

 

「……はぁ……。ねえアリア、今夜話がしたい。君に訊きたいことがあるんだ」

 

「……訊きたいこと……?」

 

「うん……とりあえず今は先に進もう」

 

「うん……」

 

 

 アベルはこれ以上アリアに触れると際限なく触ってしまいそうで、ここはグッと堪えてビアンカ達の元へと向かった。

 




アベルの言う世界の理とはアリアの言う原作の意志のことです。
呼び名が違うけど同じ存在。

さて、アベルの仮説は当たっているのかいないのか。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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