生足……、すね毛気になるぅっ!(なに言ってんだ)
では、本編どぞ!
「えっ、そ、そぉ? ハハッ……(水を零してしまった……)」
――ほ、褒められた……!? アリアが僕を尊敬してるって……!?
急に褒められ、アベルは動揺し水を零してしまう。
アリアはよく自分を褒めてくれるが、急に言われると照れてしまうではないか。
……胸がこそばゆい。
「それに……あなたはいつも優しい……。アベル、私なんかにいつも優しくしてくれてありがと」
――ごめんね、アベルのお嫁さんはビアンカちゃんかフローラさんなのに、ずっと私に優しくなんかさせてしまって……。
アリアはアベルに今までのお礼だけは伝えたくて、立ち止まって頭を下げた。
「私なんかって……、アリアは素敵な人だよ……? 可愛いし、賢いし、面白いし、……僕に優しい……それに可愛い……」
アベルも足を止め、アリアを褒める。
アリアは自分に自信がないのか、時々弱気な態度を見せるからアベルはそんな彼女を元気付けてやりたかった。
――君はどうしてそんなに自信がなさげなの……?
こんなに可愛いくて、非の打ち所がないというのに……。
やはり前世の影響か、それとも忘れている記憶のせいなのか。
アベルから見えるアリアはどう見ても儚げで、守りたくなる存在なのだ。
「っ、可愛いって二回も言わないで……、って、あらアベル。それは勘違いじゃない? ……私はみんなに優しいのよ?」
アベルの“可愛い”の言葉にアリアは顔を上げて眉を顰める。
そして自分は誰にでも“優しい”んだと腰に手を当て顎を突き出していた。
“アベルにだけじゃないんだからね! 勘違いしないでよね!”……ということなのか。
「そうだけどっ……君は僕に特別優しいじゃないか……」
アリアは別にツンデレじゃないからアベルには彼女の態度がよくわからない。
でも、照れているのは頬が赤いのでわかる。
――アリアって……本当、
なんだこの可愛い生きものは。
早く二人きりでいちゃいちゃしたい。
……とアベルは訳もなくツンと顎を突き出しているアリアを見下ろし吹き出しそうになってしまった。
「どうだったかなぁ……?」
アリアが今度は腕を背中に回して、アベルを下から挑発するように見上げて来る。
「……あ~……も~……君はそうやって…………って、アリアっ!」
急に近付いたアリアの甘い芳香に、一瞬で心を奪われたアベルは彼女の胸元に一時釘付けとなるも、視界の端に魔物の姿を捉えて重いバケツを手放した。
すぐさまアリアの前を陣取り、背に背負った【パパスの剣】に手を掛ける。
「っ!? 魔物っ!」
「アリア下がって、僕の後ろに……!」
「っ、はいっ!」
アベルの様子に匿われたアリアも魔物に気付き、武器を取り出した。
二人きりで戦うのは少々きついが、相手は二匹だ。
……なんとかなりそうだ。
◇
あれからアベルとアリアは現れた二匹の魔物、今回は【へびこうもり】一匹と【ホイミスライム】の上位種、赤い身体と緑の触手の【ベホマスライム】一匹……を倒し、零れた水を汲み直してビアンカ達の元に戻った。
「おかえり~。長かったね?」
「うん、魔物に捉まっちゃって。でもお水無事に持って来たよ」
キャンプ地に戻ると、焚き火の前のビアンカがプックルに腰掛け野菜を剥いたり切ったりと、下準備を終えた物から鍋に詰め込む作業をしながら戻って来た二人に声を掛ける。
焚き火の前にはビアンカの靴と靴下が干されており、ビアンカは素足を晒していた。
「そっかそっか、お疲れ様。アベルがいるから大丈夫だったでしょ?」
「え? あ、うん。ビアンカちゃん、私手伝う」
――ビアンカちゃんの脚キレイ……長い……ふつくしい……。
アリアは自分の脚を見下ろし、ビアンカに比べるとちょっと短いのは背が低いから仕方ないと目を伏せる。
背も高くナイスバディなビアンカと張り合おうなんて気はないが、アベルがあの脚にいつか頬擦りをするかもしれないと思うと、既に脚に頬擦りされたことのあるアリアはほんの少しだけ嫉妬してしまった。
……ビアンカの作業を手伝うべく、アリアも彼女の傍に行くが、ビアンカは首を横に振って断る。
「野菜を切るまでは私がやるから味付けはアリア担当ね! もうすぐ終わるわ。それまであなたは休憩してて?」
「……わかった、ありがとう。じゃあ私も靴を乾かそうかな……」
ビアンカにお礼を告げて、アリアはぐしゃぐしゃした気持ちの悪い濡れた靴を脱ぎ脱ぎ。
生足を晒して焚き火の前に靴を置くと、地面にそのまま三角座りをして燃える焚き火を眺めた。
「で、アベル連れてって正解だったでしょ?」
「あっ、うん」
「ほらねー、独りだと危ないって言った通りだったじゃない?」
「う、うん……」
ビアンカが自分の手元を見ながらアリアに話し掛けると、
――温かい……ほっとする……。
そりゃあ、アベルと一緒だったら大丈夫だよ……いつも。
でも、もうそれも もうちょっとでお終いなんだよね……と、アリアは炎の揺らめきをぼーっと見つめ、目の奥に痛みを感じたが泣かないように努めた。
「ぁ、ビアンカ、これ水……と、や、やすらぎのローブ……」
アリアとビアンカの会話が途切れるのを待っていたのか、アベルが漸く口を開き、汲んできた水と先ほど手に入れた【やすらぎのローブ】をビアンカに差し出す。
……その声は上擦っていた。
――ちょ、二人とも生足……!?
普段見ることの無い二人の足先に、得も言われぬ興奮を覚えてしまったアベルはビアンカの前にバケツを置き、【やすらぎのローブ】をプックルの背に置いてアリアの隣に腰を下ろす。
ビアンカの脚は確かに美しく滑らかだったが、それよりも――。
(アリアの足の指も爪もちっさっ! それにめちゃくちゃ白いっ……!)
舐めたいんですけど……と、足に触ったことがあるこそすれ、アリアの小さな足を灯りの下で見る機会はそうない。
……いつも手探りで触れるか、暗がりの中頬擦りさせてもらうくらいだ。
アベルは焚き火を眺めるアリアの真っ白な足先をちらちらと二度見と言わず三度見した。
ちょっと挙動不審かもしれないが、ビアンカも手元に集中してるしバレないだろう。
「ありがとう、アベル。……ん? やすらぎのローブって、あら、どうしたのこれ」
プックルの背に置いた【やすらぎのローブ】に漸く気付いたビアンカはそれを手に取り目の前に掲げて訊ねる。
「……ついでに通路の先を探索して来た。それ使ってよ。この先は安らぎのローブが入っていた宝箱が一つあっただけで、行き止まりだったよ。明日はそこの落とし穴に落ちて指輪探しの再開かな」
アベルが水汲みついでに探索もしたことを伝え、明日の予定を告げた。
「ありがとう……、でもいいの? アリアが装備した方がいいんじゃ……?」
「私はいいの。このマントで充分だから」
アベルの話を受けてビアンカはアリアに目を向け窺う。
アリアは柔和な顔で自らのマントに触れ、首を左右に振っていた。
「そう……? なら遠慮なくいただくわね」
ビアンカは「今夜寝るのに丁度良さそう」などと言いながら早速【やすらぎのローブ】を羽織り、作業を再開する。
……鍋を火に掛け切った具材を炒め、アベル達が汲んできた水を加えてビアンカの下準備が終わると、今度はアリアが味付けをし、具だくさんスープの出来上がりだ。
今晩の食事はビアンカとアリア共同で作った具だくさんあったかスープと、ビアンカの母がくれた硬めのパンである。
調理ができる女性が二人もいるため、こんな洞窟の中でも美味い料理にあり付けるなんて……とアベルは今晩の食事も楽しみでしかたない。
……食事時になり、アリアはスープが入った皿を見るなり「ピエール君達お腹空いてないかな……」と心配していたが、アベル曰く「食材の殆どは馬車にのせたままだから、残ったピエール達も何かしら食べているよ」とのこと。
アベルの言葉にアリアは ほっとしたのか「そっか、ならよかった」と微笑んでいた。
生足、いいよね、生足♪
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!