タ、タイトルだけでもふざけさせてください……。
では、本編どぞ!
「おいしい……!」
洞窟内の冷気で冷えた身体が外は焚き火で、中はスープの温かさで熱が戻って来る。
アベルは舌鼓を打ちつつ、時折舌を火傷しながらも何度もおかわりをした。
「ふふっ、アベルお腹空いてたのね。がっついちゃって……」
アベルに「おかわり!」と言われたアリアはアベルの皿にスープを入れてやる。
「アリアの作ったご飯は世界一美味しいよ」
「っ……、なに言ってるの。ビアンカちゃんと合作なんだけど……?」
アリアがおかわりを入れた皿をアベルに渡すと、アベルは蕩けるような笑顔を見せた。
するとアリアの顔が瞬時に引き攣る。
ビアンカの目の前でなんてことを言うのかこの人は……という顔だ。
そんなアリアを前にしても、アベルはにこにこと
……アベルはもう隠せなかったのだ。
「…………」
アベルは黙り込み、装われたスープを口にしながらアリアを見続ける。
――ねえ アリア、ビアンカには悪いけど、友達の振りを演技し続けるのはやっぱり無理だよ……。
君の前ではいつでも素直でいたいんだ。
アリアが目を伏せ、黙ってスープを飲み始めてもアベルは
アベルの視線にアリアは居心地が悪そうに大人しく黙々と食べ続ける。
……そんな時、ビアンカの「ふふふっ!」と吹き出す声が聞こえた。
「ふふふっ。アベルってやっぱり胃袋を掴まれてるのね」
「えっ、いやっ、そんなわけないよ!? 私が作る料理なんて誰でも出来るもので……」
ビアンカがアベルに訊ねると、アリアが顔を上げて首を左右にふりふり。
――とんでもない……! ビアンカちゃんの方がウマァですよ……!
……アリアは否定していた。
ところがビアンカは穏やかに目を細めて美しく微笑む。
「アリアの料理、おいしいわよ。あなたの味付けはとっても優しい味がする。守護天使って何でもできるのね~、すごいわ♡」
「ビアンカちゃん……、あっ、ありがとう……」
――はわわっ……! ビアンカちゃんの笑顔が眩しいっ、尊い……!
ビアンカの手がアリアの頭に伸びて、ビアンカ、彼女はアリアの頭を優しく撫でた。
……アリアは頬を ぽっと赤らめ照れ臭そうに微笑み返している。
アベルの態度にバレやしないか気になっていたアリアだったが、ビアンカの美しさの前ではそんなもの、どうでも良くなってしまったようだ。
「……ムゥ……」
アベルは独りむくれて、スープを咀嚼する。
――アリア! ビアンカのことそんな目で見ないで僕を見てよね……!
アリアとビアンカの仲が良いことは何よりだが、距離が近すぎるのはやっぱり面白くない。
……ビアンカもちっとも気付いてくれないし、彼女がこんなに鈍感だとは思わなかった。
さっさと二人の仲を白状して楽になりたいアベルは【水のリング】が手に入ったらすぐにでもビアンカに告げてやる……と、たった今心に決め――、
「アリア、おかわり!」
空になった皿をアリアに突き出す。
「あらアベル子どもじゃないんだから自分で装ったら? アリアは今私と仲良くお話し中よ? ね~?」
「……ぁ、うん……ビアンカちゃん……♡」
「くっ……!」
ビアンカに涼しい目を向けられ、アリアがビアンカに見惚れる中アベルは悔しさに眉を寄せていた。
◇
……食事を終え身体も温まった頃、フロア出入口の方では月明かりが差し込んでいるのが見える。
今夜は満月なのだろうか、日が暮れたというのに随分と明るく感じた。
「ふぁあああ……お腹いっぱい。私はそろそろ休もうかしら」
「あ、ビアンカ良かったらこれ使ってよ」
焚き火を囲い他愛のない話をしていると、ビアンカが口元に手を当て
アベルは【ふくろ】から【安眠まくら】を取り出し、彼女に差し出した。
「ん……? あら、この枕は……?」
「安眠枕っていうんだ。ぐっすり眠れる快眠グッズだよ。アリアのお気に入りなんだ。ね?」
アベルがチラッとアリアを窺うと、アリアは温かいお茶を飲み飲み黙って首を縦に下ろしていた。
「へ~、そうなんだ~……どれどれ…………ぐぅ」
【安眠まくら】を手渡され、ビアンカが早速それに頭を預けると三秒も経たない内に眠り始める。
ビアンカからは疲れていたのだろう「ぐうぐう」とイビキが聞こえた。
「すごい……! 最速かも。ね、アリア。ビアンカもう眠っちゃったよ」
「グルルル……」
アベルが眠るビアンカの鼻先に、傍で横になって寛いでいたプックルの前足を近付け嗅がせてみるがビアンカは起きず、アリアにいたずらっ子のような笑みを向ける。
プックルはアベルのすることには完全服従だ。なぜ急に前足を引っ張られたのかは理解できなかったが放っておいた。
“我の足今日は綺麗だぞ……! んこ踏んでないから安心しろ!”と、歩いていればうっかり魔物のフンを踏んでしまうことだってたまにはあるのだ。
……今日は水の中を歩いていたからすっかり綺麗なもふもふの足である。
「もぅ……アベルってば……なにやってるの……ふふっ」
アリアが呆れて、微苦笑を浮かべている。
アベルはビアンカが眠ったことを確認すると、プックルの前足を解放しアリアに向き直った。
「……アリア、話をしよう……?」
「話って……」
今、アベルとアリアの間には焚き火があり、距離がある。
ぱちぱち、と。
薪が爆ぜる音がやけに大きく聞こえた。
アベルの問い掛けにアリアは言葉少なに黙り込んでしまう。
……プックルはいつの間にか眠ってしまったらしい。ビアンカに寄り添うように丸くなっている。
さっきまで三人で賑やかに話をしていたのに、二人だけになった途端の静寂――。
ぱちぱち、ぱちぱち、と。
焚き火の音と熱がアベルとアリア、二人の間を隔てていた。
「……そっち行って良い……?」
「ダメ……」
「……あんまり大きな声で話すとビアンカが起きるよ? バレてもいいの?」
「っ……、わかった。来て」
アベルがアリアの隣に行きたいと訊ね、アリアは一度は断るも、脅しのような一言に観念したのか小さく頷く。
「うん行く!」
「しぃ~っ、アベル声が大きいよっ」
アベルは破顔し、喜び勇んでアリアの隣に座った。
アリアは人差し指を口元に当てて困り顔だ。
「ははっ……ごめんごめん、つい嬉しくて」
――アリアの隣はやっぱり僕だよね……!
アベルは眉を下げるアリアに軽く謝罪して、彼女の手を握る。
アリアは嫌がらずに握らせてくれたが、握り返してはくれなかった。
彼女の手は驚くほどに小さくて細く、滑らかで柔らかい。
ちょっとでも力を入れたら骨が折れてしまうのではと心配してしまうほどだ。
「……そっか……」
アリアは浮かない顔でアベルの握った手を見ていた。
「……アリア。僕さ……」
――今夜、アリアと話をしておきたい。
……今後のこと。
これからなにが起こるのか……、アリアには教えておいた方がいいのかもしれない。
……別世界の過去の話、それはこの世界ではこれから起こる未来の話だ。
その話を聞いたら彼女は戸惑うかもしれないけれど、この世界の未来は変えることができるということを伝えたい。
例えアリアやピエールの云うように
だが、その前にアリアの不安を解消させなければ。
アリアが時々悲しそうな顔をする原因と、違和感……。
……アベルはもう少しでなにかを掴めそうなのだ。
気付いた気もするのだが、まだ確信が持てない。
これはもう、アリアに訊ねるしか手立てが無い気がしていた。
だが、ずばり確信に触れないと彼女はいつものように はぐらかしてしまうだろう。
アリアは普段は柔らかい姿勢でなんでも受け入れてくれているようで、その実警戒心が強く、頑固な面がある。
アベルからは彼女が未だ自分を全面的に信頼してくれていないように見えていた。
……だからアベルは少しずつアリアの頑なな心を解きほぐしたいのだ。
最近アリアがうじうじしているため、ギャグ回があまりなくてショボン……。
タイトルだけでもふざけてみました。(良いタイトルが思い浮かばなかったんだっ)
プックルは時々んこ踏んでるけど、実はアリアがケアしていたりします。
早くまったりイチャイチャ平穏(?)な旅に戻りたいなぁ。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!