ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

わーかっちゃったっ!

では、本編!



第五百六十四話 違和感の正体

 

 ……それからどれくらいの時が経ったのだろうか――。

 

 

 

 

「…………ん……」

 

「……ん? あ、アリア……起きたかい?」

 

 

 アリアから身動ぎを感じ、いつの間にか微睡んでいたアベルは声を掛ける。

 アベルの声が頭上から聞こえ、アリアは身体に違和感を感じ自己を見下ろした。

 

 

「ぇ……アベル……? って……ちょっ……! は、はだかっっ!?!?」

 

 

 ――私、服着てないっ!?!?

 

 

 しかも、アベルの腕が自分を包んでいる。

 アリアは驚いてハッと顔を上げた。

 

 

「ぁぃたっ! 裸じゃないよ、下着付けてる」

 

 

 アリアの頭はアベルの顎に激突してしまったらしい。

 アベルは痛みに耐えながらアリアが裸ではないと教える。

 

 

「あっ、ごめっ……そ、そうだけどっ……って、アベルがはだかっ!!」

 

 

 アリアは“確かにブラとパンツは穿いてるや”と確認した後、背後のアベルを振り返るがアベルの素肌を目の当たりに目を剥いた。

 

 

「パンツはいてるよ!」

 

「ぱ、ぱんっ……!?!? でっ、でもっ! なに? どうして!? なにがあったの!?」

 

 

 アベルが「下着は脱いでないから安心して!」と続けている間にアリアは顔を真っ赤にしてアベルの腕から逃れようとする。

 

 

「アリア逃げないで。服が全部濡れてるんだ。君の身体が冷えてたから温めてただけだよ」

 

「っ……でも……」

 

 

 岩に預けた濡れた服にアベルの目が向けられると、アリアもそちらを見やる。

 岩の上にはアベルとアリアの服が仲良く並んで干されていた。

 

 

「風邪引くよ? 僕の身体温かいから包まってれば?」

 

「ぅ…………けど、ビアンカちゃんに悪いよ……」

 

 

 アベルの腕がアリアを再び強く抱きしめると、彼女は俯いて小さく呟く。

 

 

「はぁ……ビアンカって……なんで君はそう……」

 

「……フローラさんにも悪いわ……二人に申し訳ない……」

 

 

 ため息交じりのアベルに、アリアが今度はフローラの名を出した。

 

 

「フローラさん……? なんで今フローラさん……? ていうか二人に申し訳ないって……」

 

 

 ――それどういう…………、え?

 

 

 アベルは目を瞬かせる。

 

 

 ビアンカのことはなんとなく理解していたつもりだが、なぜ今フローラの話題がここで出るのだろうか……。

 

 いや、彼女の性格的に出てもおかしくはないっちゃないのだが、滝の洞窟に入ってからフローラの名をアリアが口に出したことは一度も無かったのに突然のフローラ……。

 

 しかも、二人に申し訳ないとは……?

 

 この先自分がビアンカとフローラのどちらかと結婚する選択を迫られることなど、アリアが知っているはずはない。

 

 

 ……とアベルは今の今まで思っていたのだが。

 

 

 

 

「ア、アリア……あの、さ……。今度は逃げないで聞いて欲しいんだけどさ……」

 

 

 

 

 ――アリアがこの先に起こる、僕の人生の選択について知っているとしたら……?

 

 

 

 

 もし、前提条件が間違っていたのなら。

 

 

 ……アベルは訊ねながら、アリアの過去の発言を思い出す。

 

 

 

 

 “フローラさんとビアンカちゃんのことも……?”

 

 

 

 

 ……サラボナで感じた違和感。

 

 あの時、アリアはフローラとビアンカのことをアベルに訊ねていた。

 アベルは気まずさに言葉に詰まり、話題をすぐに変えている。

 

 

 

 

 “私はヒロインじゃないよ”

 

 

 

 

 アリアがアベルを主人公と言い、ヒロインの話をした時、彼女は自分はそういう存在じゃないと否定している。

 

 なぜ、そんなことを言うのか理解できなかったが……。

 

 

 

 

 ……アベルは彼女に感じていた違和感の正体が解った気がした。

 

 

 

 

「ん? ……うん……」

 

 

 ――こんな風に抱きしめられてたら逃げられないもの……。

 

 

 アリアは逃げられないことを悟り、大人しくアベルに包まれたまま耳を傾ける。

 

 

「…………っ、アリア、僕、水のリングをサラボナに持ち帰ったら……結婚するんだ……」

 

「…………うん、知ってる」

 

「ぁ…………十八になってなくても……」

 

「うん、そうだね」

 

 

 アベルがたどたどしくも紡ぐ言葉にアリアは静かに頷いていた。

 

 

「っ、その……僕は……サラボナでビアンカかフローラさんの……どちらかを選ぶことになると思うんだ……」

 

 

 意を決して、アベルは別世界で起こった過去の出来事……この世界ではこれから起こる未来の話を口にする。

 

 ……声が震えていた。

 

 

「うん……わかってるよ」

 

 

 ――そっか、やっぱりサラボナでアベルは結婚するのね……。

 

 

 アリアは穏やかに目を細め小さく頷く。

 

 

「っ……! なんで!? 知ってたの!? いつから!?」

 

 

 アベルはアリアの肩口に顔を伏せるようにして縋るようにきつく彼女を抱きしめた。

 アベルの胸が ずきんと痛む。

 

 

 自分が二人の女性と何度も結婚していた事実を、まさかアリアに知られているとは思っていなかったのだ。

 

 この世界で結婚する彼女にはできれば知られたくなかった。

 

 

 ――だって いい気はしないじゃないか。

 

 

 “ビアンカとフローラさんと、どちらとも結婚した記憶があるんだ、しかも一度や二度じゃない”……なんて、自分が逆の立場なら嫌過ぎる。

 

 アリアが前世で男と付き合っていたことがあるのは聞いていたが、過去何度も結婚した男が二人もいると聞いたら鬱になりそうだ。

 

 あらぬ妄想が掻き立てられて、いけない属性に目覚めてしまうかもしれないじゃないか。

 

 

 ……未来が変わらないかもしれないという恐怖心はまだ少しある……あるにはあるが、この世界は既に別世界とは逸脱している。

 

 そんなことよりアリアが悲しむ方がアベルにとっては恐怖なのだ。

 

 

 ……アリアには傷付いて欲しくない。

 

 

「ぁっ、くすぐった…………ふふっ……、私ね、記憶が戻った時にはもう、アベルのことが好きだったの……」

 

 

 ――だから手遅れだったんだよね……。

 

 

 アベルがすりすりとアリアの耳元に顔を寄せると、彼女はくすぐったさに身を捩る。

 

 ……アリアはアベルの頭をそっと優しく撫でていた。

 

 

「ぇ……それ、どういう……? まさか は、始めから……知ってたの……?」

 

「……うん、知ってたよ。アベルがビアンカちゃんかフローラさんと結婚するって。だから、付き合うの嫌だったんだー……、でも、好きって気持ち止められなくて……一年間だけでも付き合えたらいいかなって」

 

 

 アベルの質問にアリアは素直に答える。

 

 ……やはりアベルがキーなのだろう。

 

 アベルが未来の話に触れたことで、息苦しさに襲われる心配がなくなりスラスラと話すことができた。

 

 

「な……なんで言ってくれなかったんだよぉっ!」

 

「ちょっ……苦しいっ、……言えなかったんだよ……。原作の意志のせいで……」

 

 

 自身を包む腕に力が込められ、アリアはアベルの腕をぺちぺち。

 言えなかった理由を告げる。

 

 

「そ、そっか……。けど、原作の意志……? なに?」

 

「んと……アベルが言うところの、基本的には別世界と同じ時を刻むっていう規定事項っていうか……」

 

 

 アベルが訊ねるとアリアは説明をしてくれた。

 

 アリアが知っているのは、アベルがビアンカかフローラと結婚するという事実だけ。

 ……それを打ち明けられたなら、もう他に憂うことはない。

 

 

「世界の(ことわり)のこと……?」

 

 

 ――【原作の意志】……か、アリアはなんで知ってたんだろう……。

 

 

 アリアに訊けば「ゲームの中だから……」の一言で片付けられてしまいそうだ。

 だがアリアはこの世界で起きる出来事を全て知っている風でもなかった気がする。

 

 

 ……だからこそ、アベルはアリアが自分の結婚について知らないと思い、独りでどうにかしようとしていたのだから。

 

 

「世界の理……アベルはそう呼んでいるのね……。そう、それ。アベルはこの先ビアンカちゃんかフローラさんを選ぶことになる。これは多分変わらない未来なんだと思う。結婚って現実世界でも大きなイベントだしね」

 

 

 ……アリアがはっきりと言い切る。

 あまりにもさっぱりした言い方だ……。

 

 アリアのその口振りから、アベルとの結婚などはなから望んでいないことが窺えた。

 

 

 変わらない未来……、そう。

 基本的にこの世界は別世界と同じ流れを辿っているから――。

 




アベル、何百万回も結婚してたんだ……世界が違うけど。
アリア、ビアンカと出会った時に気付いて知ってたけどな。

さて、今回で世界の理=原作の意志という存在(?)を二人は情報共有することができましたとさ。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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