さて、水のリングを求めて探索再開です。
では、本編。
「……はぁ……よく生きてたなぁ……」
通路を行くと昨夜落ちたであろう滝の内側に差し掛かり、それを眺める。怒涛の流れを見上げたアリアからため息が漏れた。
下手に落ちれば身体を強く打ち付け死んでいたことだろう。
……助けに来てくれたアベルが無事でよかった。
アリアがそう考えていると、同じように隣で滝を見上げていたアベルが「アリアが生きててよかった……」と呟く。
二人は互いに目を合わせ、笑みを交わした。
アベルとアリアはそのまま滝の内側の通路を抜け、ビアンカ達が来るであろうフロアに続く横穴へと入る。
「あっ、アベルっ、魔物が来るよっ」
「っ、ごめん! 気付かれたみたいだね……!」
横穴に入り、通路を歩いていると不意にアリアが前方を指差した。
まだ魔物の姿は見えなかったが、数秒後にはアリアの言う通り奥から魔物の群れがどこからともなく現れる。
今回現れた魔物は【オーク】二匹、【オクトリーチ】二匹、【ベホマスライム】二匹……と数が多い。
こちらの方がレベルは上だとはいえ、二人だと少々苦戦するかもしれない。
……そんな中でアリアはアベルに声を掛けた。
「アベル! ビアンカちゃんたちも近くまで来てるよ。がんばろう!」
「ああ!」
アリアが【まふうじのつえ】を構え魔力を集中し始める。
……アベルも背中の【パパスの剣】を引き抜き駆け出していた……――。
「……ふぅ……」
ビアンカは息を吐き、装備していた【モーニングスター】を仕舞う。
その隣ではプックルが前足に付いた魔物の血を舐め取っていた。
……戦いに入る前、アリアの云った“ビアンカちゃんたちも近くまで来てる”という発言は、文字通りすぐ近くまで来ているということだったらしい。
魔物の群れと戦っているアベルとアリアの元に駆け付け加勢してくれたのだ。
四人で戦うとあっという間に倒し終えてしまった。
「頼もしい~♡ ビアンカちゃ~ん♡」
「アリアぁああっ!! ああもうっ、無事でよかったぁっっ!!」
各々武器を仕舞い終え、アリアはビアンカに駆け寄る。
……ビアンカは駆け寄って来たアリアをガバッと抱きしめた。
「あぅ……お姉さま……」
「大丈夫だった? ねえ、アリア顔を見せて。アベルは助けてくれたの?」
「うん、うん……」
「あなたが滝に落ちたって聞いたからびっくりしたわ。いったい何があったっていうの……?」
ビアンカの抱擁を受けたアリアは頬を紅く染め、大人しくなってしまう。
アリアの頬を両手で包み込むビアンカに、アリアはぽ~っと惚けた顔で魅了されたように ただ頷いていた。
アベルが二人の後ろで眉を寄せているが、ビアンカとアリアは構わず見つめ合い、背景には百合の花が見え……るような。
「……ビアンカ。その話は後にして水のリングを探しに行こうよ」
「それもそうね……、ここじゃまた魔物が来そうだもの」
アベルは口角を上げつつ、強張った表情で【水のリング】探しの再開をと踵を返す。
……ビアンカも同意し、アリアを解放した。
「アリア、後で教えてね」
「うん」
ビアンカがそっと手を差し出し……――手を繋ごうの意なのだろう。アリアはその手を握る。
「…………プックル、後衛よろしくね」
「がうがう!(主! 昨日は楽しんだみたいだな! ニオイでわかるぞ!)」
アベルはビアンカとアリアを後目に、独り先頭を歩き始めた。
……プックルの言葉は伝わっていないようだ。
「ブッ……! べ、別に楽しんでなんか……なぃ……ょ?」
なぜかアリアには伝っていたらしい。
アリアは吹き出し、プックルが後ろに付くと恥ずかしそうに口ごもっていた。
「ん? なにかあったの? あらアリア顔が赤いわ、熱でもあるんじゃ……」
「ううんっ!? なんにもないよっ!」
――ヤダ……プックルの嗅覚スゴスギナイ……?
ビアンカに顔を覗き込まれ、アリアは慌てて首を横にフリフリ。
不思議顔でアリア達を待つアベルの元へと急いだ。
(私……魔物の気配も声も……かなりわかるようになってる……!)
アリアは“これが特殊能力ね……!”と謎の人物が言うように力とやらが戻ってきているのだと実感する。
自分が何者なのかは知らないが、チート能力が得られるならありがたい。
アベルの役に立てる能力ならなおさら。
「フニャァ……がうぅ(昨夜はアリアがいなかったからよく眠れなかったな……、ビアンカもよく眠れていなかったみたいだしな……。まったく、不思議な女だ……心配ばかりさせおって……)」
――忌々しい……やっぱり食うか。
アリアの後ろでプックルが大きな
「プックル……あなた……」
――私を食べるってあれは嘘だったのね……!
思わず本音を聞けてしまい、アリアはプックルをちらっ。きゅんと胸をときめかせる。
プックルがまさか自分を心配してくれていたとは。
まあ、最後は聞き取れなかったが、概ね合っているから良しとしよう。
……まだプックルに食われるかもしれないという危機は去っていなかった。
「この洞窟で何度も遭遇してるけど、ベホマスライムって厄介よね」
通路を行きながら、ビアンカがアリアに話し掛ける。
……アベルは先頭で辺りを注視しているため、会話には参加できず、耳だけそばだてていた。
「ん?」
「さっき一匹逃げたでしょ。あいつ、仲間を回復して逃げてったじゃない?」
「うん……、ベホマを掛けられると困るよね」
――けど、さっきの【ベホマスライム】……あの群れで脅されてたみたいだったけど……。
ビアンカの話にアリアは先ほどの戦いを思い返した。
……戦闘中のことである。
アリアの云うように、二匹の【ベホマスライム】の内、一匹が【オーク】二匹に槍の柄で小突かれ、回復をするよう迫られていたのだ。
戦いが始まると【ベホマスライム】はすぐにでも逃げたそうにしていたが、触手を強く握られ涙目で【ベホマ】を仲間達に掛け続けていた。
“
【ベホマスライム】の触手は一部が握り潰されたように変色しており、痛々しい。
泣き言を云いながら戦う【ベホマスライム】に、他の魔物達が倒れるとアリアはアベルから攻撃するよう言い渡され、【まふうじのつえ】で殴りかかろうとした。
……だが、【ベホマスライム】が怯えたように震えるので可哀想に思えて逃がしてやったのだ。
(魔物にも、心があるんだよね……。)
普段から仲魔達と過ごしているアリアには魔物の気持ちが痛いほどよくわかる。
ロッキーみたいな なにを考えているのかわからな……否、思考が読み取りにくい魔物もいるが、魔物達もそれぞれに性格も違い、色んな想いを抱えているのだ。
……そこは人間と大差がない。
――あの子が別の群れに見つからず平和に暮らせますように……。
敵ではあるが、出遭わなければ戦うこともない。
……アリアは二度と遭遇することないがありませんようにと願った。
ベホマスライム~。仲間にでっきるかなぁ~♪
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!