ベホマン……。
では、本編どぞ。
「アリア待って、これっ!!」
不意にビアンカの声がして、アベルとアリアは声のした方へ顔を向けた。
そこには【どくけしそう】を大量に抱えたビアンカが、プックルと共にやって来るではないか。
「ビアンカ! プックル! それは……!?」
ビアンカの両手の【どくけしそう】にアベルは目を瞬かせる。
……いったいどこで手に入れたのだろうという顔だ。
「フフフっ! ギガガスダンゴのヤツに止めを刺したら、毒消し草を10個落としたの! アリア食べて!」
「……ぅ、ん……」
自らの前に差し出された【どくけしそう】にアリアは眉を寄せた。
【どくけしそう】は苦くて……アリアは少し苦手なのだ。
「あら、嫌そうなおカオね? 苦くても食べなきゃ」
「……うん……」
ビアンカに【どくけしそう】を一つ差し出され、アリアは仕方なく齧る。
……苦く青臭い味と芳香がアリアの口の中と鼻に抜けていった。
あまりの青臭さに鼻を抓みたくなるが、鼻を抓むと頭の中まで臭いが染みわたりそうでアリアは涙目で咀嚼する。
すると、ずっと【もうどく】状態だったアリアの身体から毒素が消えていく。
彼女の肌もいつもの真っ白な肌色へと戻っていった。
「アリア……! よかった……!」
アベルはアリアの身体が元通りの色になると思わず彼女を抱きしめる。
「ぁっ……、アベル……」
「よかった……!」
戸惑うような声のアリアを、アベルはビアンカの前だが構わず抱きしめ続けた。
――アリアも【いのりのゆびわ】も無事だった……、ビアンカとプックルのおかげだ……!
【ギガガスダンゴ】に止めを刺してくれたのはビアンカとプックルで、自分はさっきアリアを追って【水のリング】のあるフロアから出て来ている。
……ビアンカに後でお礼を言わなくては。
それと……本当のことも。
アベルは今夜ビアンカに、アリアと自分の関係を正直に話すことを決めた。
「……うん、よかったわね……」
顔を俯かせたままアベルに抱きしめられているアリアを眺めながら、ビアンカはぽつりと呟く。
……その声は滝の音に掻き消され聞こえなかった。
「……アリア! じゃあ薬草も食べようか!」
「えぇっ!? こんな大量に!? 無理だよ……! 今毒消し草食べてお腹いっぱいだよ……!」
――【どくけしそう】よりはましだけど、【やくそう】だって青臭いんだからねっ……! 実もおいしくないし……!
アリアは解毒したが、体力は削られている。
【やくそう】を早く摂取した方がいいだろう。
アベルは【やくそう】を三つ取り出しアリアに差し出していた。
……ところがアリアは首を横に振る。
「アリアぁ~、食べてよ! 僕ら今、魔力使い切ってて呪文が使えないんだよ!?」
「うぅ……薬草、青臭いしおいしくないんだもん……ドレッシングかマヨネーズがあればいけるけど……」
アベルが彼女の名を呼ぶが、アリアはイヤイヤと食べるのを拒否。
外傷なら直接患部に塗る手もあるが、毒で失われた体力なら食す一択だ。
「アリアわがまま言わないで? アリアの体力がなくなったらと思うと心配なの、食べてよ」
「ぅ……」
アベルがダメならビアンカから頼めば……と思ったが、ビアンカから【やくそう】を手渡そうとしてもアリアは首を横に振り振り、口元に手を当て顔を背けてしまった。
ついさっき【どくけしそう】と【やくそう】を食べたからか、見るだけで込み上げるものがあるのか「ぅっ、ぅっ」と吐き気を堪えている。
「……アリア……、あなたって……」
――【やくそう】が苦手だなんて変わってるのね……。
【やくそう】の使用をここまで嫌がる相手を見たのは初めてだが、嫌だという相手にあまり無理強いするのも可哀想だ。
……ビアンカは【やくそう】をアベルに返した。
「アリア……」
――気持ちはわからなくないけど……、このままじゃ……。
アベルはアリアに注目するビアンカ、プックルの後ろに【ステータスウィンドウ】を出し、アリアの体力を確認する。
(15って……、アリア瀕死なんだけど……?)
こうなったら、口移しで……、なんてアベルが【やくそう】を口に入れようとした時だった。
「シャララ~……! ボクはベホマン! アリアちゃん!」
アベルが拳で黙らせ、浅瀬に沈めた【ベホマスライム】ことベホマンが元気に復活――。
つぶらな瞳の横辺りに触手を一本持って来て、元気に挨拶をする。
「っ!? ベホマン! すごい、復活したぁ☆」
アリアは驚いたが、手を合わせて嬉しそうに破顔した。
“
ベホマンから回復呪文が放たれ、アリアの身体を癒す。
「ありがとうベホマンっ♡ ……さあ、勇気を出してアベルに言ってみて?」
体力が全快したアリアは、ベホマンの後頭部を撫でてからアベルの方へそっと押した。
「っ……君、しゃべれたのか!?(ずっと“シャララ~”としか言ってなかったよね!?)」
アリア同様に驚いていたアベルだったが、驚いたのはベホマンが復活したからではなく、ベホマンが喋っていたことにであった。
「あ、あの……ボク……、あなたの拳で目が覚めました。どうか仲間にしてもらえませんか……? ボク……この洞窟にいると いじめられるので環境を変えたいんです……」
「…………」
ベホマンは触手の左右二本を、まるで人差し指同士をくっつけるようにツンツン。
おどおどした様子でアベルの前に浮いている。
……アベルは黙り込み不服そうな顔でベホマンを見下ろしていた。
「……
ベホマンの【ベホマ】がアベル、ビアンカ、プックルに掛けられる。
傷付いていたアベル達の身体は全快した。
「シャララ~! フフン、これくらいお礼は要りませんよ!」
「…………」
ベホマンが触手で腕組み、胸は無いがある体で胸を張るような仕草を見せる。
……アベルはこれも無言で今度は眉を寄せベホマンを見下ろしていた。
「……あ、ボ、ボク、ベホマは得意なんです。きっとお役に立ってみせますからどうか……!」
ベホマンの性格がいまいち掴めないが、ちょっと調子に乗りやすい性格なのだろうか……。
アベルの冷視にベホマンは再びおどおどした様子で下手に出る。
「…………で、アリアには謝った?」
「へ? あっ……」
不機嫌なアベルに指摘され、ベホマンはアリアに視線を移した。
「ん? 私、別になにもされてないよ……?」
アリアは憶えていないのか、首を傾げている。
「キラーピアスで刺されたよね!?」
「っ……!? ぁ、っ、そ、そうだったっけ……」
アベルの大きな声にアリアは目を丸くした。
――アベル、私のために怒ってくれてるの……?
アベルの表情は怒りよりも悲しみの顔で、これではビアンカにばれてしまわないか心配になる。
……アリアは気まずそうに頬を掻いてアベルから目を逸らした。
「……仲間にするの?」
「がう(我は構わんぞ)」
これまで黙って様子を見ていたビアンカとプックルから問われ、アベルは眉を寄せながら腕を組む。
「……アリアちゃん、ごめんなさい……、ボク脅されてあんなことを……シャララ~……」
アベルが黙って見下ろす中、ベホマンはアリアに頭を下げた。
「気にしてないからいいよ~!」
「アリアちゃんっ♡ じゃあボク仲間になってもいいですよねっ!?」
謝罪を受けたアリアがあっさりと許しベホマンの触手を握ると、ベホマンはアリアの手に触手を絡めながらアベルを見上げる。
「…………」
――ベホマンもアリアを……、いや、今に始まったことじゃないか……。
アベルが無表情でベホマンを見下ろすと、ベホマンは「アハハ……」と気まずそうに笑っていた。
アリア「回復させるためとはいえ、こんな草ばっかり食べたくなーい!!(昔を思い出しちゃった……)」
アベル「はっはっは、アリアはわがままだなあ♡ 口移しで食べさせてあげようか?」
アベル、やくそうモグモグ。
アリアに近付く。
アリア「イーヤー!!」
アリア、逃げる。
……アリアは「やくそう」も「どくけしそう」もあんまり好きじゃないのですよ。
草だからね……。
昔その辺に生えていた草を食べてたとかいう過去があったりして……w
呪文で回復の方が好みらしい。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!