水のリングは花嫁の指輪ですよ。
では、本編どぞー。
「……よろしくね、ベホマン」
「わぁ……! よろしくなっ! ボクのことはベホマンって呼んでくれていいんだぜ……」
……アベルは薄っすらと目を細める。
なれどその笑みはなんだか仄暗い。
ベホマンがアリアの腕を掴んだまま、そんなアベルの肩に触手で触れようとすると、アベルは口元に開いた両手を添え すぅっと息を大きく吸い込んだ。
「モぉンスターじぃぃさぁああああんっっ……!!」
アベルの大きな声が滝の音と共に洞窟内に響きゆく。
……その瞬間、ベホマンの身体は上昇を始めていた。
「へ? あっ、アワワワ……! シャララ~……! シャララ~……! アリアちゃん……!?」
戸惑いの声を上げるベホマンの身体は空高くへと舞い上がり、滝の側を上昇していく。
……現在地は地下六階だ。
滝口のフロアの天井に陽の光が入る大きな穴が開いていたから、ベホマンはこのまま外まで出て、やがてはポートセルミのモンスターじいさんの元へ向かうのだろう。
「あはは……。大丈夫だよ~っ! アベルの仲魔達はみんな優しい子達だから! きっと仲良くしてくれるよ~!」
……アリアの元気付ける声は恐らくベホマンに聞こえてはいまい。
“シャララ~……!(アリアちゃーん! 離れたくないよぉ~~!!)”
ベホマンの嘆き声が僅かに聞こえた気もしたが、アリアは笑顔で手を振り続け見送っていた。
「……ふふっ、アベルってば、ベホマンがいた方が便利だったんじゃないの?」
アリアがベホマンを見送る中、ビアンカがアベルに訊ねる。
「……回復役がいるのは確かにありがたいけどね。けど回復ならアリアがいるし、メッキ―の方が戦いに向いてそうだから」
アベルは私怨のためベホマンを送ったわけだが、そんなことビアンカに言うはずもなし――。
冷静にもっともらしいことを並べておいた。
「なるほどね~、さすが! 旅慣れてるわね」
「ハハッ……まあね……」
ビアンカに肘で脇腹を突かれ、アベルは頭の後ろを掻く。
――ベホマン、僕のアリアに何度も抱きついた罰だ……!
アリアから抱きしめるスラりんなら許せるが、なぜだろうか……。
同じスライム族だというのに、アベルはベホマンを許せなかったのだ。
魔物仲間達にいじめられていると言っていたベホマンだったが、ベホマンにも少なからず問題があるような気もしたアベルであった――。
◇
……ベホマンをモンスターじいさんの元へ送りアベル達は、ビアンカが指輪を回収していないとのことだったので、【水のリング】のあるフロアに戻ることにした。
「……いいの?」
「いいわよ。もう番人……? は倒したんだし」
【水のリング】の眠るフロアに戻ると、【ギガガスダンゴ】の姿は綺麗さっぱり。フロア内を漂っていた不快な臭いも消えている。
フロア中央にある岩の上、【水のリング】を目の前にし、アリアは隣に立つビアンカに訊ねていた。
ビアンカは先ほどと同じようにアリアに【水のリング】を取るようにと促す。
アベルも岩を挟んだ向かい側で黙って頷いていた。
「っ、では……」
“
アリアは足もとを調べた!
なんと!
【水のリング】を見つけた!
アリアは【水のリング】を手に入れた。
”
少々緊張気味のアリアの手の平に【水のリング】が横たわる。
指輪は ややひんやりとしているような……そんな気がした。
「……わぁ……キレイな指輪……」
――さっき実況したけど……ふしぎね……。
アリアは手に入れた【水のリング】を抓んで掲げ、下から見上げる。
……指輪の中石の中で、透き通る海のような清水が湛えられ、小さく波立っている。
このフロアの僅かな灯りを反射させ、それは静かに光っていた。
「アリア」
「あ、これどうぞ! やったねアベルっ、おめでとう!」
アベルが傍にやって来て指輪を眺めるアリアに声を掛けると、彼女はアベルに指輪を差し出した。
アベルはそれを一度受け取り、じっと見下ろす。
「……アリアに預かってもらってていいかな?」
「え? 私が……? また責任重大なことを…………って、ちょっ!?」
アベルの手がアリアの左手を掴み、彼は彼女の左手薬指に指輪を嵌めた。
……【水のリング】はぴったりとアリアの薬指に納まっている。
その行動が素早く、アリアは止める間もなかった。
「っ……!?」
ビアンカが信じられないものでも見たように目を大きく見開く。
「ちょっとアベル! ダメだよ!」
「……なんでダメ?」
アリアが眉間に皺を寄せ抗議するが、アベルは訝しい顔で首を傾げた。
「これはフローラさんのでしょ……!」
そう言ってアリアは【水のリング】を外す。
「……外さないでよ! 一時預かりくらい いいじゃないか。君の右手にはもう指輪が嵌ってるし、だったら左手に嵌めるしかないでしょ? 失くしたら困るんだから」
「ダメに決まってるでしょっ! 誰が花嫁の指輪を花嫁じゃない別の女に嵌めるのよ……! あ、預かっておくから……」
アリアは【水のリング】を外し、どうせアベルはしつこく持っておけと食い下がるのだ、押し問答になる前にと【炎のリング】同様ネックレスに通した。
……アリアの首元のネックレスに通された【水のリング】は静かに光っている。
「まったくも~……アベルってば鈍感なんだから まいっちゃう。炎のリングだって私に持たせたんだよ?」
「……炎のリングも……!? ……そ、そうね……」
アリアが半笑いでビアンカに話し掛けると、ビアンカは再び目を丸くしてから苦笑いを浮かべた。
「サラボナでフローラさんが待ってるっていうのに……」
アリアは今度はアベルをチラッと見て口を尖らせる。
「……けど僕はっ!!」
――アリア昨日言ったこと……憶えてるよね……!?
アベルは今この場で暴露するつもりなのか、アリアの肩を掴んでいた。
「……ね、アベル。魔力も使い果たしちゃたし、私なんだか疲れちゃったよ。今日はそろそろキャンプにしよう? 魔力回復させなきゃ……。ビアンカちゃんも疲れてるよね?」
「アリアっ! 僕は……!」
アリアは申し訳なさそうに目を細め、アベルの手を避けるように肩から下ろさせる。
……アベルは訴えかけたが、アリアはアベルから離れビアンカの傍へ行ってしまった。
「え? あ、ええまあ……」
「……落とし穴のあったところまで戻るのは大変だから……昨日のところでいいかなぁ……」
アベルとアリアのやり取りをずっと見ていたビアンカは、急に振られて首を縦に下ろす。
アリアはビアンカと手を繋ぎ、頬に片手を添えてキャンプ地を思い出していた。
――昨日、アベルと私……。
あそこでまた一泊するのは恥ずかしい……と、アリアの頬が赤らむ。
だが、ビアンカとプックルが一泊した場所まで戻るのは距離もあるし怪我のリスクが高い。
「昨日……? あ」
――アベルと一緒に泊まった場所ね、近くなら安心だわ……。
アリアの話にビアンカがぴんと来て、口の両端を上げアリアを見つめた。
……どうやら異論はないようだ。
「……アベル昨日の場所、憶えてる? 案内してくれたらうれしい。お願い」
「…………わかった」
ビアンカと手を繋ぎながら自分をそっと窺うアリアに、アベルは言いたいことがいくつかあったが、好きな女に道案内を頼まれた手前、了承するしかなかった。
ベホマンはとってもお役立ちモンスターですが、アベルの不興を買いあえなくモンスターじいさん送りに……。
モンスターじいさんの所で仲魔達と仲良くやってくれるといいですね。
そして、水のリングよ……。
SFC版だとフローラを選ぶとしてもサラボナに戻るまでビアンカに装備させることができるのですよねー。
ビアンカに水のリングを装備させた後、フローラを選択。
結婚式直後(主人公の名前→???)
↓
フローラ「……???さん。この指輪、ビアンカさんが昨日していらっしゃいましたよね……?」(左手薬指を主人公に見せつけジロリ)
???「……あ、えっと……、その……」(冷や汗タラ~リ)
……みたいな空気流れるやん?
なんて気まずいのでしょうw
え?私?
私はもちろん装備させてましたよ!w
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!