ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

つるっつるの氷上を行く。

では、本編どうぞっ。



第五十七話 ザイル

 

「わあぁ~~っ!? 滑るぅ~っ!」

 

「きゃぁ~~!」

 

「っ……!(二人ともっ!)」

 

 

 アリアとベラの声が氷壁に覆われた屋内に響くと、アベルは咄嗟に二人の手を取る。アベル達が氷の館内部に一歩踏み出した途端、三人の足元は床を滑ったのだった。

 床を見ると壁同様、全面凍っていてつるつると。さながらスケートリンクである。

 一歩歩くと勢いがつくのか滑る仕様らしい。

 

 滑った勢いのまま、目の前に床の抜けている箇所が迫って来る。

 

 

「あっ、落とし穴よ!」

 

「えっ、あわわわっ!」

 

「アリア、大丈夫だよ! 怪我したりしないからつかまってて!」

 

 

 三人はその勢いのまま、地下へと落っこちたのだった。

 

 

 

 

 

 

 地下へと落ちたものの、地下の床も滑る氷の床である。

 見渡したところ、この部屋には特に何もなさそうだ。

 

 

「ここも……滑るね……ツルッツルだぁ……。スケート靴があればスイスイなんだけどな……」

 

「スケート靴? どんなやつ?」

 

 

 アベルは興味津々でアリアに訊ねる。

 

 

「ん? えっと、靴に刃物みたいなのが付いててね。それを履くと滑るには滑るんだけど、氷の上でも移動しやすいの。運動神経によるけど、私は割と得意な方だったな」

 

「へぇー……。天界には色んなものがあるんだね」

 

「天界って凄いところなのね」

 

「天界って…………はは。そうだね、道具はいっぱいあったかな」

 

 

 現実世界では、便利な呪文を使えない代わりに様々な便利なもの(・・)を研究、開発して暮らしているのよ。

 

 

 と、すっかり自分(アリア)をただの天界出身者だと信じ込んでいるアベル達に言うべきか言わざるべきか、アリアは逡巡するのだった。

 

 

「天界か……どんな所なんだろう……?」

 

「ふふっ、機会があったら話すよ。今は春風のフルートを取り戻さなくっちゃ」

 

「そうね。春の訪れを待ってるみんなのために!」

 

 

 三人は互いを見合って、手を取り合い深く頷いた。

 

 

 

 と、

 

 

 

 ――意気込んで床を滑りながら進んでいた三人だったが、何度も同じ場所をぐるぐると回っていた。

 

 

「……ベラ、さっきの多分東だよ……(元に戻って来ちゃった……)」

 

 

 何度目かの同じ場所に足が止まり、アベルはベラに告げる。

 

 

 ベラってこんなに方向音痴だったっけ……?

 

 知らなかった……!

 

 

 アベルはベラの方向音痴に、つい物申したくなってしまった。

 黙ってついて来てくれればいいのに、足が止まるとベラが「こっちよ!」と考えなしにすぐ踏み出すから何度も同じ場所を行ったり来たり。

 

 

「えー、西を回って北に行ってから~の東でしょ……!? 急がば回れって言うじゃない? え~っと……あそこへはああ行って、こう行くでしょ……だから……(……よしっ、行けるっ!)」

 

「ベラちゃん。アベルに任せた方がいいんじゃ……? あわわわっ、ベラちゃんっ!!(人の話は最後まで聞こうよ~!)」

 

 

 アリアが止めるも、ベラは「次はこっち!」と勝手に一歩を踏み出すのでアベルもアリアも必然的に引っ張られてしまう。

 三人は互いに手を繋いで移動しているので、一蓮托生なのだ。

 

 ベラはベラで、春風のフルートを早く取り戻したい一心で、気が逸って仕方なく、悪気はないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――そうして床を滑りながら上り階段へとやっと辿り着く。

 

 

「……ふぅ。やっと階段に来たわ。何回同じ所を行ったり来たりしたのかしら。最初に北に行っていれば良かったのね。二人共よく考えないと!」

 

 

 階段を上りながらベラがそう云うのだが、

 

 

「はは……」

 

「ベラちゃん……」

 

 

 アベルとアリアは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 階段を上がりきるとそこは屋上で、見通しはよく、フロア中央の台座に氷で覆われた宝箱が見える。

 その前には宝箱を護るように、覆面を被った背の小さな人物が立っていた。

 ドワーフのおじさんが云っていたザイルとやらかもしれない。

 

 

「あっ! アベル、あそこの宝箱のどちらかに春風のフルートが入っているんじゃないかしら!?」

 

 

 ベラが氷漬けになった宝箱をひと目見て口を開く。

 

 

「…………、うん。多分ね」

 

 

 アベルの脳裏に、また(・・)が過る。

 

 

 あそこに辿り着くには回り道をした方がいい。

 不用意にベラが一歩出す前に僕が……。

 

 

 アベルはベラとアリアの手をしっかり握って一歩踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 ――回り道をしながら、三人は床を滑っていく。

 

 宝箱の前に居る人物は途中で三人に気付いてはいたが、自分も下手に動けば滑ってしまうのがわかっているのか、その場に留まり様子を見ていた。

 アベル達が近づいて来るにつれ、その人物は警戒心を露わに斧を構え、三人を凝視している。

 

 

「わっ、わわわっ、すごーい! アベル、もうちょっとで宝箱の所に着きそうだよっ」

 

「さすがはアベルねっ! アリアと私じゃこうは行かないわ」

 

「いやぁ……それ程でも……」

 

 

 三人は互いに手を繋ぎながらキャッキャと楽しそうに滑って、徐々にフロア中央の台座へと近づいて行く。

 それを見ていた覆面の少年、“ザイル”は目を見開いた。

 

 

「…………っ!?」

 

 

 な、何なんだあいつ、あんなに楽しそうに滑って来やがって……!

 じいちゃんのこと追い出したくせにっ……!!

 

 しかも可愛い女の子達と手なんて繋いでっ!!

 

 

 ……許せんっ!

 

 

 ザイルはアベルの両手にベラとアリアの手が繋がっていることに注視し、イライラしてしまうのだった。

 

 

 

 そして……。

 

 

 

 待つこと僅か。アベル達はフロア中央へと辿り着いた。

 

 

 

 

 

「なんだお前は!? このザイル様になんの用だ? あっ! さてはポワンに頼まれてフルートを取り戻しに来たんだなっ!? ポワンはじいちゃんを村から追い出した憎いヤツだ! フルートが欲しければ力ずくで奪ってみろっ!」

 

 

 アベルがベラとアリアを引き連れザイルの目の前までやって来ると、ザイルはアベルを睨み付け襲い掛かって来る。

 

 

「っ、アベル来るわよっ!」

 

「うんっ!」

 

「っ、ザイル君っ、それ誤解だよ。ポワン様は……っ!」

 

 

 アベルとベラが武器を構える中、アリアはザイルに呼び掛ける。

 だが、ザイルは聞く耳を持たずアベルに斧を振り下ろした。

 

 

「わっ!」

 

「アベルっ!!」「アベル危ないっ!」

 

 

 ザイルの攻撃をアベルはベラとアリアに手を引かれ、後ろに下がって何とか躱す。

 咄嗟だったので、体勢を崩し尻餅をついてしまった。

 アベルの足元、目の前の床にザイルの斧が刺さり、氷の床が割れ砕けた氷が飛び散った。

 ザイルは床に埋まった斧を抜こうと引っ張るが、中々抜けないでいる。

 

 

「あ、ありがとう……二人とも……」

 

「「どういたしまして!」」

 

 

 アベルがお礼を告げると、二人はアベルを引き起こしてくれたのだった。

 

 

「っ、くっそぉー……!! お前ばっかりぃ……!! ムンッ!!」

 

 

 ザイルは渾身の力を込めて床に刺さった斧を引き抜いた。

 

 

「許さないからなぁっ!!」

 




アベルはいつも女の子を侍らせているわけで。
リア充爆発しろ、とザイルは思ったわけです。

ザイルちっこくてカワイイよね。

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評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!
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