ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

火起こしって大変。

では、本編どぞ。



第五百七十八話 火起こし

 

 

 

 

 

 ……【水のリング】をなんとか無事手に入れることができたアベル達は、全員魔力が枯渇している状態で少なくない戦闘を繰り返し、昨夜アベルとアリアの過ごした地下八階へとどうにかやって来た。

 

 

「はぁー……、毒消し草のおかげでガスダンゴも怖くなかったわね」

 

 

 今夜のキャンプ地とする場所に辿り着き、ビアンカは早速【せいすい】の散布を始める。

 仕事が早いのは経営者ゆえなのか……。

 

 

「あのニクダンゴ嫌な敵だよね」

 

「ホントホント、あ、ガスダンゴよ。あいつの名前はガスダンゴ! アリア、肉団子は食べ物だってば」

 

「あははっ、ガスダンゴ! そうだったね!」

 

 

 アリアもアベルが組み上げる薪の側で火起こしを始め、【せいすい】を振り撒くビアンカと楽し気に会話していた。

 

 その内ビアンカはアリアから離れ、アベルが地面に置いた【ふくろ】から道具を色々と取り出し始める。

 

 ……アリアは火を中々点けられず奮闘中だ。

 

 

「アリア、火起こし代わろうか?」

 

「ん? 大丈夫、もうちょっと……」

 

 

 アベルは薪を組み終え、アリアに火起こしの交代を申し出る。

 

 

 ……火起こし。

 

 

 一口に言うと簡単そうに思える単語であるが、実際はそうではない。

 

 木の板に小さな穴を開け、そこに棒を差し込み摩擦熱を起こし火を点ける……最も原始的な火起こし方法である。

 

 アリアは板の下に薪から出た おがくずを敷いて棒を回転させていた。

 昨夜アベルもやったが、これが中々難しい。

 

 ……棒を回す手が赤くなったことを思い出し、アベルは交代を申し出たわけだが、アリアは懸命に手を前後に擦り合わせるようにこすこす。

 

 板に開いた穴から僅かに煙が出ているような……出ていないような……。

 

 

 ――キャンプと言ったら火起こしだけど……、ずっと火炎呪文(【メラ】)に頼り切りだったから こんな時は困っちゃうな……。

 

 

 修道院では種火を常備しているから火起こしをする機会はそうない。

 ……アリアは久しぶりの火起こしに四苦八苦していた。

 

 

「……アリア。手、痛くないかい?」

 

「ちょっとだけ……」

 

「でしょ? 代わるよ。こういうのは僕に任せて」

 

 

 アベルがアリアから火起こし棒を取り上げ、場所を交代するようにと彼女の隣に腰掛ける。

 

 

「ぁっ……ありがと……。本当は結構 痛かったの……」

 

 

 そう言ってアベルに見せたアリアの手の平は赤くなっていた。

 ……あのまま擦り続けていたら手の皮が剥けていたかもしれない。

 

 

「うん。アリアこそいつも火をありがとう。これまで呪文に頼り切りだったから昨夜の火起こしも実は大変だったんだ。アリアのありがたみを感じたよ」

 

「あ、そうだったんだ……、そう言ってもらえると私でもお役に立てたみたいでうれしいなっ」

 

 

 火起こし棒を回しながらアベルが隣のアリアを眺めて口角を上げると、彼女は嬉しそうに照れ笑いを浮かべる。

 

 

「……アリアはいつも役立ってくれてるよ……?」

 

「アベル……」

 

 

 ……アベルの優しい瞳に見つめられたアリアの頬が ぽっと赤く染まった。

 

 

「……アリア、今夜さ……」

 

 

 頬を赤らめるアリアを前にアベルが再び口を開いたその時……――。

 

 

 

 

『アリア~! お水汲みに行きましょ~!』

 

 

 

 

 ビアンカのアリアを呼ぶ声が二人の背後で聞こえた。

 二人が声に振り返るとビアンカ、彼女はバケツを手にし、アリアに手を振って待っている。

 

 

「あ、私 行って来るね」

 

「…………うん、プックル。二人について行ってやって」

 

 

 アリアが立ち上がると、アベルは目を細めて近くで寛ぎ中のプックルについて行くよう告げた。

 

 プックルは断る理由がないため、アベルに指示されるままアリアの後ろにつき、ビアンカの元へ行くと三人は水を汲みに奥の地底湖へ歩き出す。

 

 

 

 

「……アリア。僕は今夜 ビアンカに言うよ」

 

 

 

 

 アベルはビアンカと楽し気に歩くアリアの背中を見送りながら呟き、火起こし作業を続けた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……さて、奥の地底湖までやってきたビアンカとアリアは……。

 

 

「近くに地底湖はあるし、滝はないからさほど寒くない……キャンプするにはいい場所ね!」

 

 

 ビアンカは水を汲みながら辺りを見回す。

 目の前に広がる地底湖の奥は暗くてよく見えないが、今のところ魔物の気配もなく、辺りはしんと静まり返っていた。

 

 

「ふふっ、だね。けどここまで来るのが結構大変だよね」

 

「確かにそうね……、これじゃ……かん――は難しいかしらね……」

 

 

 アリアの手にした鍋に、ビアンカが地底湖から汲んだ水を注ぐと眉を寄せる。

 ビアンカの声は小さくなにを言ったのか……、アリアにははっきり聞き取れなかった。

 

 

「……かん? なあに?」

 

「あっ、ウフフ♡ まだヒミツ♡ その内教えてあげるね。戻りましょ♡」

 

 

 ビアンカに訊ねてみたが、彼女はニコニコと笑顔を見せるだけでアリアの質問には答えてくれない。

 ビアンカはそのままアベルのいるキャンプ地に戻り出した。

 

 ……その内とやらを待つしかなさそうだ。

 

 

「……ビアンカちゃんてミステリアスだね……」

 

「あら、うふふ♡ 秘密があると気になっちゃう?」

 

 

 女二人、隣同士で歩きつつ、アリアが興味津々で話し掛けると、ビアンカは艶っぽい微笑みを浮かべてアリアを一瞥してから前を向く。

 

 

「うん、気になっちゃう(ビアンカちゃんは本当、綺麗だなぁ……)」

 

 

 ビアンカに弱いアリアはつい素直に答えてしまった。

 

 

 ――私……美人に弱いんだな……、ビアンカちゃん好いニオイするし……。

 

 

 ……例え同性であろうとも関係ない。

 アリアの鼻が、ビアンカの芳しい花のような香りを探ろうとひくひく動いていた。

 

 

「……アリアもいっぱい秘密があるよね~?」

 

「えっ」

 

 

 不意に前を向いていたビアンカがアリアに振り向く。

 ビアンカの匂いを探ろうとしていたアリアはハッとして目を見開いた。

 

 

 ――秘密って……まさか……。

 

 

 ……アベルとのことだろうか。

 ばれてしまったらどう謝れば……。

 

 

 アリアの額に汗粒が滲む。

 

 

「自分でも憶えてないんだものね……しょうがないわよ。……記憶が戻ったら、教えてちょうだいね。なにか困ったことがあったら言って? 私、あなたのチカラになりたいわ」

 

「ビアンカちゃん……」

 

「……私になにが出来るかは わからないけれど……、なにか出来ればと思ってるの」

 

「……ありがとう……」

 

 

 アリアが危惧したアベルとの関係に気付かれたわけではなかったらしい。

 ビアンカはアリアの記憶が戻った時に力になりたいだけのようだ。

 

 

 ……アリアは ほっと胸を撫で下ろし、アベルの待つキャンプ地に戻った。

 




メラに頼り切ると、魔力が切れた時は悲惨である。

火起こしは色んな方法がありますが、今回のは「きりもみ式」を採用しました。
もっとも原始的な火起こし方法なんだそう。
私はやったことないけど。

いやぁ、チャッカマンありがたいわぁ。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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