ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

操られてる?

では、本編どぞ。



第五百七十九話 操られてるみたいだ

 

 

 

 

 

 ……それからは昨夜と同じく夕食を作り、洞窟の最奥だがアベル達は和やかな時間を過ごしていた。

 

 

「……ふ~……食べた食べた。あ~あ、明日になったら三人で冒険もおしまいかあ~」

 

 

 食事を摂り終えたビアンカは、三角座りの膝につまらなそうに両肘をついて口をへの字にする。

 

 

「ははは、なんだかあっという間だったね」

 

「そうね……、なんだかんだでもう何日も経ってるけど……、それでもあっという間だったわ……ふぁ……」

 

 

 アベルがカチャカチャと音を立てながら皆の使った食器を回収し(片付け)ていると、ビアンカは話し途中で大きなあくびを噛み殺した。

 

 

「……ビアンカちゃん眠いの?」

 

「うん……今日はよく戦ったもの。あんな強い魔物、初めて……。私先に休ませてもらうね。昨夜は大丈夫だったけど……魔物が現れたら起こして」

 

 

 ビアンカの隣でお茶を飲んでいたアリアに問われ、ビアンカは持ち物の中から【安眠まくら】を取り出し、さっさと横になってしまう。

 

 ……そういえば、昨夜ビアンカに【安眠まくら】を渡したままだったのを忘れていたな――と考えたところでアベルはハッとした。

 

 

「あっ、ビアンカ待って、僕、ちょっと話が……!」

 

「ん……あし……た…………ぐぅ……」

 

 

 アベルは止めに入ったが、時すでに遅し。

 ビアンカは【安眠まくら】効果で夢の世界へ旅立ってしまっていた。

 

 

「もう寝ちゃった……、すごいよね……安眠まくら……」

 

「……本当にね……。はぁ……」

 

 

 前世にもあったら不眠症の人達が救われるのに……なんて考えながらビアンカに自分のマントを掛けてやるアリアの前で、アベルは眠ったビアンカを見下ろし、ため息を吐く。

 

 

 ――今夜 正直に話そうと思ったのに上手くいかないな……。

 

 

 アベルの行動はいつもなにかに阻まれているかのようだ。

 思うように事が運んで行かないのがもどかしい。

 

 

 ……それでもアベルは行動を止めるつもりはなかった。

 

 

「アベル? なんだか残念そうだね……?」

 

 

 アベルが残念そうに見え、アリアは首を傾げる。

 

 

「……まあ、いいや。しばらくは起きないだろうし、僕これを洗ってくるよ。アリアも休んでて」

 

 

 ――アリアに先に教えておいた方がいいかな……。

 

 

 アベルは気を取り直し、集めた食器を洗ってくるとアリアに伝えると、地底湖に足を向けた。

 

 さっさと片付けを済ませてアリアに先に伝えよう。

 

 

 ……自分とアリアの結婚をビアンカに協力してもらおうと思っている、と。

 

 

「アベル、私も手伝う」

 

「……そう?」

 

「うん、お手伝いさせて?」

 

 

 地底湖に向かおうとしているアベルを追うように、アリアは立ち上がると自らの傍に寄って来る。

 

 

「…………、……じゃあ、プックル。ビアンカをよろしくね」

 

 

 ――二人きりだ……、嬉しい……。

 

 

 アベルはやって来たアリアを見下ろし、薄っすら笑みを浮かべてプックルにビアンカを託した。

 なにもないとは思うが、警戒はしておくに越したことはない。

 

 

「がう!(任せろ!)」

 

 

 プックルから快い返事をもらい、アベルは片手に食器、片手で【ふくろ】の中から【せいすい】を取り出し小瓶の蓋を歯で挟んで取り去ると自分とアリアに振り掛ける。

 

 ……これで恐らく魔物達も寄って来ないだろう。

 

 

 【ギガガスダンゴ】はかなり強かったが、勝利してからレベルも上がり、他の魔物達も【せいすい】効果で近寄れはしまい。

 

 ビアンカが先ほど“昨夜は大丈夫だったけど”と言っていたこともある。

 そもそもレベルが上がる前ですら、魔物に襲われることはなかったのだ。

 

 ……【せいすい】一振りで魔物が近寄れないほどアベル達は強い。

 

 

「アリア、ついておいで」

 

「あ、食器半分持つよ?」

 

 

 アベルが歩き出すと、アリアが追い掛けて来る。

 

 

「いいからいいから」

 

 

 アリアに食器を半分寄こせと言われたアベルは笑顔でこれを断った。

 

 

 ――子猫(アリア)が僕を追い掛けて来ている……! 可愛い……!

 

 

 自分のすぐ後ろをアリアが歩くことは少ない。

 体力(HP)の関係で、洞窟内だとアリアは大体後方を歩かせているからだ。

 

 二人きりの時だけ見られる光景だが、自分の歩く速度に合わせようと少し小走りになるのが愛らしく、愛おしい。

 

 外や町なら歩幅を合わせてやれるが、【せいすい】が効いているとはいえ洞窟内は早く移動し、さっさと用事を済ませたいから仕方ないのである。

 

 決して、一生懸命ついてくる彼女が可愛いから見ていたい……というわけではない。

 

 ……それでもアベルは背後から伝わる彼女の気配が心地好く、顔を自然と綻ばせていた。

 

 

「も~、アベルってば優しいんだから……」

 

 

 アリアも走るのは然程苦ではないのだろう、アベルの背中に彼女の嬉しそうな呟きが聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……これでおしまい」

 

「おつかれさま。洗ってくれてありがと」

 

 

 食器を洗い終えたアベルにアリアはタオルを差し出す。

 

 アベルはそれを受け取ると手を拭き拭き。

 幸せそうに目尻に皺を寄せた。

 

 

「こちらこそ、料理を作ってくれてありがとう。今日もおいしかったよ」

 

「ふふっ♡ お口に合ったようでよかった♡」

 

 

 アベルのご機嫌な様子に、アリアも愉しげに破顔している。

 ……アベルは洗った食器を回収し、キャンプ地に戻ることにした。

 

 互いに微笑み歩きながら二人は話を続ける。

 

 

「ねえ、アリア」

 

「ん?」

 

「……夜中か、明日……僕達のこと、ビアンカに言うよ」

 

「あ……」

 

 

 アベルの言葉にアリアは小さく声を発すると、足を止めた。

 

 ……アベルも立ち止まる。

 

 

「アリアはどうも……世界の理に操られてるみたいだ。何度言っても忘れてしまう……」

 

 

 ――今朝、覚悟を決めてくれたはずだよね……?

 

 

 アベルはひょっとしたら……という考えの下、アリアにそれとなく告げてみた。

 

 

「私が操られてる……? そんなことっ! 私ちゃんと憶えてるよ!?」

 

 

 アベルの言葉にアリアは一瞬ぽかんとした顔をするも、ハッと我に返って首を横に振る。

 ……その様子をチラッと見て、アベルが再び歩き出すのでアリアも追い掛けた。

 

 

 ――私はバグみたいな異質な存在なんだよ……? 誰かに操られてるなんてことあるわけない……!

 

 

 自分は自分の意思で動いているのであって、誰かから指示を受けているわけでもないのに……。

 

 

 ……アリアは“違う”とアベルに訴えかける。

 

 

 今朝アベルが言ったことも、アリアはもちろん憶えている。

 ただ、アベルを好きなビアンカを思うと どうしていいかまだ踏ん切りがついていないのだ。

 

 

 もし、アベルの言う【世界の理】の力で未来が変わらなかったら?

 

 フローラを選んだ場合はいいかもしれないが……もし、【世界の理】の力でアベルがビアンカを選んだら……?

 

 今二人に余計な不和を生ませてはいけないのでは…………

 

 

 そこまで考えると、

 

 

 

 

 “【世界の理】に操られてるみたいだ――”

 

 

 

 

 アベルの言葉がアリアの頭にふっと浮かんでいた。

 

 

(……ん? あれ……? ……そう思うのはどうしてなの……?)

 

 

 誰を選んでもアベルは幸せになれるから、アベルが幸せになるならそれでいい。

 ……確かにアリアはそう思っているが、アベルは一途に自分を求めてくれているではないか。

 

 

 ――誰を選んでもアベルが幸せになれるなら、私はダメなの?

 

 

 アベルは自分と一緒になりたいと何度も言ってくれている。

 アベルを信じているのだから、素直に手を取ればそれでいいのに……。

 

 なのに自分は――。

 

 

 ――どうして私、ビアンカちゃんとフローラさんを応援したくなるんだろう……。

 

 

(私だって……アベルと結婚したいのに……)

 

 

 ……アリアは自分の考えがよくわからなくなって唇を噛みしめた。

 

 

「そんなことないって言い切れる? ……だから僕はビアンカにも協力してもらおうと思ってるんだ」

 

 

 キャンプ地に戻りアベルは焚き火の前に腰を下ろすと、時折アリアの様子を見ながら食器を【ふくろ】に片付けていく。

 

 

「アベル……。でも、それは……」

 

 

 アリアはまだ躊躇っているようだ……。

 

 

「アリア。今朝言ったこと忘れてないなら覚悟を決めて。僕はもう戻れない」

 

 

 ――僕ひとりが頑張ったところで、君が受け入れてくれなければ未来は変わらない気がするんだ……。

 

 

 食器を片付け終えたアベルは、傍で独り立ち尽くしているアリアの手を引いて座らせ、隣り同士で焚き火に当たる。

 

 

 アベルの話を聞いたアリアは黙り込んでしまい、しばらく黙ったままだった。

 

 あまり追い打ちを掛けても彼女を追い詰めてしまいそうで、アベルはそれ以上なにも言わず、アリアの返事を待つ。

 

 

 ……どうか今朝のように首を縦に下ろしてくれますようにと願って。

 




アリアは操られているのかいないのか……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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