ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

最初から……なんですかね。

では、本編どぞ。



第五百八十一話 最初から……

 

 

 

 

 

 ……あれからどれくらい経ったのだろうか。

 時刻は真夜中過ぎ――。

 

 

「…………(サラボナに戻ったらアリアと結婚……)」

 

 

 アベルはパチパチと燃える焚き火の炎をじっと見つめる。

 

 互いの気持ちを確認し、さっきまで二人でなにを語るでもなく寄り添いながら焚き火を眺めていたのだが、やはり昼間の戦いもあってかアリアの疲れはピークに達し、アベルの腕に寄り掛かったまま彼女は眠ってしまった。

 

 そのままだと首を痛めそうだなと、アベルはアリアに膝枕をしてやる。

 

 今、アリアは焚き火の前でアベルのマントに包まり横になっている。

 

 

「アリア……」

 

 

 ……アベルも身体は疲れていたが、喜びと興奮で目は冴えていた。

 

 

『…………ん……ふぁああああ……。あれ? まだ暗いわね……?』

 

 

 アベルがアリアの髪を撫でていると、近くでビアンカの声が聞こえる。

 ……声のした方へ目をやればビアンカが半身を起こし、目を擦っていた。

 

 

「あ、ビアンカ……起きたのかい? まだ夜中だよ」

 

「ん……、目が覚めちゃったみたいね。昨日もそうだったのよね~…………」

 

 

 問われたビアンカは、アベルを見ると黙り込んでしまう。

 

 

「……ん?」

 

「…………ふふっ、アリアよく寝てるわね」

 

 

 首を傾げたアベルに、ビアンカの目元がふっと緩んだ。

 

 

「……疲れたみたいだ。体力と魔力を同時にあんなに消耗したことないから、相当無理させたんだと思う」

 

 

 ――お疲れさまアリア、朝までぐっすり眠ってね……朝にはビアンカが協力してくれるようになってるからね。

 

 

 ……アリアが朝目を覚ました時、ビアンカは二人の関係を知っていることだろう。

 アベルはアリアの髪を撫でながら優し気な瞳で見下ろし、ビアンカが起きてきたので早速話をすることにした。

 

 

「……そう……アリアの回復呪文すごかったもの。疲れて当然よね。あ、これアリアに返すわ」

 

 

 ビアンカは使っていた【安眠まくら】を差し出し、アリアを寝かせるようアベルに渡す。

 

 【安眠まくら】を渡されたアベルは、ちょっと残念に思いつつもアリアの頭をそっと枕に移動させた。

 アリアは起きることなく、すぅすぅと規則正しい寝息を立てている……。

 

 

 これからビアンカに二人の話をするのだ。アリアは覚悟を決めたと言ってくれたが、ひょっとしたら【世界の理】の力が働き、知らずのうちにアリア本人が邪魔をするかもしれない。

 

 ……彼女(アリア)には眠っておいてもらった方が都合がいいだろう。

 

 

 アベルはアリアの頭をそっと撫でてから口を開いた。

 

 

「……あ、ビアンカ、あの……、あのさ……」

 

 

 アベルの声が上擦っている。

 ここまで黙っていたのはアリアのためだったが、どうにも言い出し辛いではないか。

 

 別世界の自分が「言うな」とでも反対しているというのか……。

 

 

 ――それでも僕は言わなければならないんだ。

 

 

 アベルはもう一度……と先ずは深く深呼吸することにした。

 

 

「…………ねえ」

 

 

 すぅー、とアベルが大きく息を吸い込んでいる間に、ビアンカのはっきりとした声が掛かる。

 ……少し語気が強かったような……。

 

 

「はぁー……あっ、なに?」

 

「……いつからなの?」

 

 

 深呼吸を終えたアベルがビアンカに視線を移すと、彼女は腕組みしながら不機嫌顔だ。

 

 

「へ? いつとは?」

 

「……だから、あなた達。アベルとアリアのことよ。いつから付き合ってるの……?」

 

「え……」

 

「二人は恋人同士なんでしょ? 違うの? 今、彼女眠ってるから正直に言っちゃいなさい」

 

 

 ビアンカは眉を寄せ顎を突き出している……。

 

 まるで全部お見通しだとでもいうような、はきとしたビアンカの発言にアベルは声を失った。

 

 

「…………っ……な、なぜ……(そのことをご存知で……?)」

 

 

 アベルの顔は引き攣り、微苦笑を浮かべる。

 やっと絞り出した声は“なぜ”。

 

 ……今頃になってなぜ。

 

 

 ――まさかビアンカ気が付いて……!?

 

 

 だって、そんな素振り全然なかったじゃないか……!?

 

 

 始めはすぐに気付かれるだろうと思っていたアベルだったが、ビアンカはこれまで特に何も言わず、二人の関係に気付いていない様子だった。

 

 ビアンカに限って鈍感なわけがないとは思っていたのに、あまりにも鈍すぎてビアンカは鈍感な人だと認識を改め、もどかしくて堪らなかったというのに。

 

 

「……いつ言い出すのかな~って待ってたんだけど、二人ともちーーっとも教えてくれないんだもの……! 二人の様子を見ていていい加減やきもきしちゃったわよ」

 

「え、気付いてたの? いつから!?」

 

 

 ビアンカがぷぅっと頬を膨らましてアベルを睨み付けてくるので、アベルは微苦笑のまま訊ねていた。

 

 

 ……ビアンカの口から出た答えは、驚くべきもので……。

 

 

「ん~、最初から……かな? アベルのアリアを見つめる瞳でわかったわよ♡」

 

「なっ!? なんで言ってくれなかったんだ……!?」

 

 

 なんとビアンカは始めから気付いていたらしい……。

 

 ビアンカの口角が上がり、ニッと白い歯が見える可愛い笑顔の返答に、アベルの瞳は困惑の色を映す。

 

 

 ――ビアンカが最初から知ってたってわかってたら、これからの相談も細かくできたのに……!

 

 

 ……なによりアリアが苦しい想いをせずに済んだのに。

 いや、自分がアリアの言いなりになってしまったからの結果か。

 

 

 アリアがもしかしたら【世界の理】によって操られてるかもしれないという疑念が湧いた今、アベルはビアンカの協力をどうしても仰ぎたかった。

 そうすることで、たとえビアンカを傷付けてしまうことになっても……。

 

 ……それでもアベルは迷っていた。

 

 アベルは自らも【世界の理】にある程度は縛られている自覚がある。

 

 アリアを手に入れたいという今の自分を阻む様に、ビアンカのことが好きだという別世界の自分達が“ビアンカを傷付けるな”と警告しているのか、胸がズキズキと痛むのだから。

 

 

 ……そんな思い迷うアベルに、ビアンカの表情が陰りを見せた。

 

 

「……あのね。アベルがフローラさんと結婚するって聞いたから、二人はそれまでのお付き合いなのかなって始めは思ってたのよ。フローラさんは富豪の娘だし、勇者の盾のこともある。アベルは旅をバックアップしてくれる人を求めているのかなって。だから、二人が別れたら私がアリアの面倒をみようと思ってたの」

 

「僕はそんな非情な男じゃない!」

 

 

 ビアンカの話にアベルは声を荒らげる。

 

 アリアを捨ててフローラと結婚する……ビアンカはそう思っていたから黙っていたというのか。

 

 

 ――僕がアリアを捨てるなんてありえない……!!

 

 

 ……酷く侮辱された気分だ。

 

 

 アベルはいつの間にか拳を握りしめ、憤りに爪が手の平に食い込んでいた。

 

 

「うん、アベル わかってるわ。……フローラさんとあなたが結婚するっていう話はアリアからしか聞いてなかった。だって、あなたアリアしか見てないんだもの。これでフローラさんと結婚するの? って……疑問が湧いたわけ」

 

「ビアンカ……」

 

 

 ビアンカがアベルを宥めるように肩をぽんぽんと優しく叩く。

 話の続きを聞いたアベルは込み上げた怒りをすぐに手放した。

 

 ……ビアンカはアベルを侮辱したわけではなく、一般論を述べただけである。

 恋人がいても金や地位に目がくらんで別の相手に乗り換えるなんて、男女共によくある話だ。

 

 ましてルドマンほどの大富豪。娘は可愛らしくお淑やかだというではないか。

 婿になればアベルが求める勇者の盾もくれるというのだから、結婚の話を受けても不思議ではない。

 

 だがビアンカが旅の間見ていたアベルの態度は、アリアしか見えていないような態度ばかりで……。

 

 

 ……そう、アベルはビアンカの前で一言も【フローラ】の名を口にしていなかったのだ。

 

 

「寝てたから よく憶えてないけど……アリアが二人の関係を私に黙っておくようにって言ってたんでしょ? どうしてそんなこと考えたのかしらね? 幼なじみなのに ひとりだけ仲間外れにされた気分だわ」

 

「あ、アリアはその……」

 

 

 ビアンカが再び腕を組み、今度は怪訝な顔で首を傾げている。

 

 

 ――君に気を遣って言えなかったんだよ……。

 

 

 アベルには思い当たることがあったが、どう言えばいいのか躊躇ってしまった。

 その様子にビアンカがぽろっと――。

 

 

「……あ、まさか私がアベルのことを好きって言ったから……?」

 




ビアンカは勘の良い娘である。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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