ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

初恋……?

では、本編どぞ。



第五百八十二話 初恋

 

「ぁっ……そ、その……」

 

 

 アベルの顔を覗き込む様に、ビアンカが上目遣いでじっと見つめてくる。

 アイスブルーの大きな瞳に射抜かれ、アベルはたじろいだ。

 

 

「…………ウフフッ♡ やっぱそうなんだ? やだ、アリアったらおバカさんなんだから……!」

 

 

 ――それでずっと元気がなかったのね……!

 

 

 たじろぐアベルを見つめ続け、ビアンカは笑う。

 眠るアリアの鼻尖を“つん”と人差し指で優しく小突いていた。

 

 

「ビ、ビアンカ……、僕は……」

 

 

 ――ビアンカが僕を好きでも……今の僕はアリアが……。

 

 

 ……きちんと伝えなければならない。

 

 例えビアンカを傷付けることになっても、例え別世界の自分がビアンカに惹かれていたとしても今の僕はアリアを手に入れたいから。

 

 

 アベルは意を決して告げようとした――だが。

 

 

「アベル、勘違いしないで。過去形なの」

 

「ん?」

 

 

 ――過去形とは……?

 

 

 ビアンカの言葉にアベルの首は横に倒れていた。

 

 

「……私、あなたが好きだったよ。初恋だったの。アリアにも“好きだった(・・・)”って言ったんだけどなぁ……、この子勘違いしてたのね……」

 

「か、過去形……?」

 

 

 ――どういう、こと……?

 

 

 不意の告白にアベルは首を傾げたまま瞬きを繰り返すが、ビアンカが恥ずかしがっている様子はない。

 やにわに彼女は“ふっ”と吹き出し、穏やかに睫毛を伏せた。

 

 

 

 

「ふふっ、だって私ね……――――」

 

 

 

 

 ……ビアンカの形の良い唇が弧を描き、彼女は静かに語り出す。

 

 ビアンカの語った内容は、いくつもの別世界を渡り歩いた自分としても初めての話だったのだが、寝耳に水で。

 

 

 ビアンカ、彼女の話を聞いたアベルは驚きに目が飛び出そうだった……――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ビアンカのとんでも話を聞いたアベルはその後、自分とアリアの関係とフローラとの結婚について素直に白状した。

 

 

 一つ、自分とアリアは一年ほど前に再会し、付き合い始めたこと。

 二つ、フローラには大変申し訳ないが、自分はフローラと結婚する気はなく、唯一無二の指輪が欲しくてここまでやって来たこと。

 三つ、指輪を手に入れるため、フローラ達には自分とアリアは兄と妹だと偽っていること。

 四つ、勇者の盾を譲って欲しいとは言わないが、いつか借りたいと思っていること。

 

 五つ、自分が十八歳になるまでは、アリアとの約束で結婚できないからサラボナに戻りたくないということ。

 

 

 ……殆どがアベルにとっては都合の良い話だった。

 

 

 五つ目の年齢に関してはもしかしたら大丈夫かもしれないが、一度約束したことだしアベルはできれば守りたい(昨夜もアリアとの行為をなんとか踏み止まったわけだし……)。

 

 狡くて自分でもどうかと思うが、アベルはアリアを手に入れるには聖人君子のような真人間では無理だと思っていた。

 

 

(アリアが手に入るなら、僕は悪に手を染めたって構わない……。)

 

 

 アベルが話す中、ビアンカの眉は何度も寄せられ難しい顔をしていたが、それでも最後まで真剣に話を聞いてくれ、協力をするからには……と、彼女はある条件を提示してくる。

 

 ビアンカに出された条件はいくつかあり、中にはアリアには秘密でと言われた事柄もあった。

 アリアに秘密を作りたくないアベルは譲歩を頼んだが、ビアンカは手強く条件を呑めないなら協力はしないとはっきり断られ、苦渋の決断だが、最終的にはそれを呑み込む。

 

 

 ……そうしてアベルは出された条件を呑むことを引き換えに、アリアと結婚するためにビアンカに協力してもらうことになった。

 

 

 ビアンカに協力してもらいたいことは、主にルドマンへの説得だ――。

 

 フローラは別世界と同じく優しい女性ではあったが、この世界のルドマンはただの気の良い貴族の男ではなく、どうにも手強い。

 

 アリアの話題を出すだけで目の色が変わるほどだ。

 ……サラボナに戻ったら絶対アリアを養女にするつもりだろう。

 “はい”としか言わせない威圧感はそれはもう凄まじいものがあった。

 

 あれではもし運よくアリアと結婚できたとしても、強引に自分と引き離し彼女(アリア)を軟禁したくらいだ、家から出してはくれまい。

 

 ……それに、あの勢いでは自分とアリアだけでは言い負かされてしまう。

 ルドマンの強引さは、数々の死線を潜り抜けてきたアベルでも突破が難しい。

 

 なんというか……ルドマンとアベルの圧倒的人生経験値の差とでもいうのか――かなりの数の人生を繰り返しているアベルだったが、ルドマンもかつては世界中を渡り歩き様々な経験を積んだ猛者だ。

 様々な人々を見て、また自らも辛い経験を体験してきているのだろう、幼いアリアを保護したくなった理由もそこにあるのかもしれない。

 だからこそ、アリアを諦めることはない……。

 

 だが、それでは困るのだ。

 

 ビアンカが加勢してくれれば説得できるかもしれないし、最悪交渉決裂でアリアと逃げることになったらルドマンを引き留めてもらえる。

 ルドマンもさすがに武力行使はしないだろうから、ビアンカは後で山奥の村に帰ることができるはず。

 

 

 ……アベルがビアンカに協力して欲しい事柄を説明すると、ビアンカは「ルドマンさんと一度会ってみたかったし、任せて!」と快諾してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして夜が明けた……――!

 

 

 

 

「アリア~、こら、お寝坊さん。聞いたわよ~!」

 

「……んぅ……えっ?」

 

 

 キュッ。

 

 

 ビアンカに鼻を抓まれ、眠っていたアリアは身を捩り目を覚ます。

 アリアの目に飛び込んできたビアンカは今日も笑顔で美しかった。

 

 

 ――ビアンカちゃん今日もキレイ……けど、なんか怒ってる……?

 

 

「アベルともう一年も付き合ってるんですって!? なんで言わなかったのよ~!」

 

「うぅ……へっ……? あっ……!」

 

 

 鼻先をぐりぐりと抓られ、アリアはハッと身体を起こしアベルをさがす。

 

 アベルは焚き火で鍋を混ぜていて、アリアが身体を起こすと苦笑いを浮かべ軽く手を振っていた。

 

 

「…………(アリアおはよう……)」

 

 

 ……アベルのその姿がなんだか元気がなさそうに見えるのはどうしてなのだろうか。

 

 なにがあったのだろうとアリアが瞬きをすると、ビアンカの両手がアベルから自分(ビアンカ)に注目するようにと頬を挟み、無理やりそちらへ向かされる。

 

 

「私達友達でしょ!? どうして教えてくれなかったのよっ!」

 

「っ、ご、ごめんなさい……、あの、アベルはフローラさんのために指輪を取りに来てるから、言う必要はないと思っていたの……」

 

 

 ビアンカに怒鳴られ、アリアは頭を下げた。

 

 頭を下げてから再びアベルをちらりと見やれば、アベルは今度は優し気な瞳で深く頷いている。

 

 

 ――アベルもう話しちゃったんだ……。

 

 

 アベルの頷きにアリアは察して目を伏せてしまった。

 

 

「……まあまあ! 見え透いたウソなんか吐いちゃってー♡ 全部アベルから聞いたんだからねっ」

 

「ぁっ……、ごめんなさ……」

 

 

 ……ビアンカはさっきからずっと笑顔だ。

 張り付いたような笑みにアリアは頭をまた深々と下げる。

 

 

「謝らなくていいわ。けど、私すごく怒ってるのよね……」

 

「ぁ……うん、本当にごめんなさい……、ビアンカちゃんを騙そうとかそういう気持ちは無かったの……」

 

「だから謝らなくていいってば。アリア、あなたそんなに消極的でいいの……?」

 

 

 ブニュッ、とビアンカはアリアの頬を両手で挟み、俯いた顔を強制的に上げさせた。

 

 

「え?(ビアンカちゃん……頬っぺた痛い……)」

 

 

 口を強制的に窄まされ、ぶちゃかわとなったアリアを射抜く様にビアンカは真っ直ぐにアリアを見つめる。

 

 

「アベルと結婚したいんでしょ?」

 




ビアンカの秘密はいずれ判明する予定です。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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