失敗……することもあるんですねえ……。
でぇわ、本編どぞー。
アリアが唱えたのは失敗することもある
確かに
……その証拠にごっそりとアリアの魔力が失われている。
【ザオラル】ならここまで魔力を消耗しない……。
「あの……先ほどの光は確かに蘇生の光でした。こんなことは初めてです。もう一度試してみてはいただけませんか? この子の魂が迷子になっているのかもしれません。何度かやっていればこの子も気が付くと思いますわ」
「っ、は、はい……! やってみます……!」
シスターの言葉にアリアはもう一度魔力を集中させる。
ただでさえレベルが追い付いていない。連続で放つには厳しい呪文だ。
それでもアリアは諦めずに【ザオリク】を唱えることにした。
……だが二度目の【ザオリク】も女児には届かなかった――。
二度目でダメなら三度目……。
三度目がダメなら、四度目。
四度目もダメなら、五度目だ。
――どうか この女の子が元気になりますように……!
アリアはどんどんと消費だけされていく魔力を惜しみなく使い続ける。
「はぁっ、はぁっ……またダメ……?(もう魔力がもたないよ……)」
「っ、い、今、少し指先が動いた気がします……! もう一度、もう一度お願いしますっ!」
女児の手を握りながら、シスターがアリアに懇願する。
アリアの魔力はもう、ほぼほぼ尽きかけていた。
「っ……わかりました……」
アリアは魔力を集中させようとしたが、【ザオリク】を唱えるには魔力が足りないことに気が付く。
――魔力が足りない……どうしよう……。
……あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。
アベル達がルドマンの屋敷に入ってから一時間は経っている気がする。
不意にアリアの集中力が途切れて、瞬時に悟る。
(ああ……、こういうこと、なんだ……。)
――ごめんね、アベル。
アリアはルドマンの屋敷に一緒に行けなかったことを、心の中で謝罪した。
これが恐らく【原作の意志】であり、アベルの言う【世界の理】のチカラ。
自然な形で、けれど
目の前の女児はゲームの中の命だ。
無視をしたとしても問題はないはず。
……エアル神父が戻ってきたら蘇生してもらえばいい。
アリアは本当はすぐにでも、アベルの元へ駆け付けたい……。
「……ぅ……、でも、目の前の小さな子を見捨てるなんてできないよっ!!」
アリアの瞳からはぽろぽろと涙が零れ落ち、彼女は左手の薬指を見下ろす。
――アベル、ごめんね。
……アリアの魔力が少しだけ戻って来る。
これならもう一度くらい【ザオリク】が唱えられそうだ。
だが――。
「ぁぅぅ……!!」
アリアの悲痛な声と共に 指輪は音もなく崩れ去った……。
……アベルがもう使わないようにと告げた、イニシャル入りの
これでもうアベルと婚約関係とは言えない。
そもそもアベルに離れるなと言われたのに離れたのは自分だ。
いい加減アベルも身勝手に動き回る自分に愛想が尽きた頃だろう……。
今頃、ビアンカかフローラの二人からどちらかを選び、結婚式を挙げる段取りでも始めているのかもしれない。
「……っ、今はっ、目の前のこの子を蘇らせなきゃねっ!(他のことはあとあと!)」
アリアは溢れ出た涙を乱暴に拭って再び手を組み祈る。
――これが、最後……お嬢ちゃん、戻って来てね……!!
“【ザオリク】!!”
アリアは心から女児の魂が戻ることを望んだ。
……アリア、彼女から発せられた白い光は女児の身体を包み込み、
そして――。
『……お姉ちゃん……、あり、がとう……』
……女児は漸く目を覚ます。
身体を起こした女児はアリアに満面の笑みを浮かべると……。
「な……」
「あぁ……」
シスターとアリアの目は大きく見開かれた。
……なんと女児は目を覚ましたが、にっこり嬉しそうに微笑むと跡形もなくその姿を消したのだ。
「あぁぁ……そう、いう、こと……なんだね……」
女児がいた長椅子にはもう誰もいない。
アリアはその長椅子に顔を伏せ、「ぅっ、ぅっ」と嗚咽を漏らした。
……女児の目的は恐らくアベルのくれた
アベルがどれだけ自分を想ってくれていても、自分がどれほどアベルを大切に想っていようとも――。
そんなもの、
……
バグである自分には
たまたま生まれた存在のくせに希望など一丁前に持つんじゃない。
命だけは助けてやるから、今までのように潔く諦め、どこへなりとも消えるがいい……、
……消えた女児の笑顔にそんな声が聞こえた気がした。
指輪を破壊したのは警告なのか……。
神とも悪魔とも、魔王とも言えない、これが【原作の意志】――。
「あ、あの……大丈夫ですか……?」
「ぅああああぁっ!!」
シスターが声を掛けると、アリアは大声で泣き出してしまった。
……この世界の神も、悪魔も魔王も所詮は作りもの。
いると言えばいるし、いないと言えばいないのかもしれない……。
所詮は役割を与えられたキャラクター達に過ぎないのだから。
……わかってはいたが、今は自分の現実で、どの人々も“キャラクター”ではなく、アリアにとっては生身の人間や魔物達なのだ。
そして、自分は本来ならこの世界に存在しないかもしれない存在――。
アベルと出逢う以前の記憶はまだ思い出せていないが、自分の存在が異質だということは重々理解している。
いっそ一思いに存在を無かったことにして消し去ればいいものを――なぜ、こんな形で自らを傷付ける必要があるのか。
バグのような存在でも、簡単に消すことができないから、自滅しろとでもいうのか。はたまた、アベルと一緒にならなければ、生きていてもいいということなのか……。
……【原作の意志】の意思など、今の現実に住む自分にはわからない。
アベルがいなければ、とっくの昔に死んでいた。
アベルがいなければ、恋なんてしなかった。
アベルがいたから、自分はずっと幸せだった。
アベルがいなければ、もう……自分は幸せになれない気がする……。
こんなことになるなら、
(……アベルが傍にいない世界を生きていく……。)
――私、あの人がいない世界をひとりで生きていくの……?
アリアはアベルがいない一人旅を想像してみる。
今まで何度も考えたことはあった。
……いずれそうなるのだろうと、思っていたから。
だが具体的に想像したことはなかった。
……なぜならアベルがいつも傍に居てくれたから。
自分と結婚したいと言ってくれたから。
「っ、ぅあああああっっ!!(イヤッ! 考えたくないっ……!!)」
……想像してみたが耐えられそうになくて、アリアの首が左右に激しく振れる。
アリアは考えることを拒否するかのように、再び大きな声を上げて泣いた。
「……っ、あの……」
火が点いたように泣きじゃくるアリアを、シスターはオロオロしながらも寄り添い、彼女の背中を擦る。
……アリアは涙が枯れるまで泣き続けたのだった。
婚約指輪が壊れちゃいましたね~。
消耗品だもの、そうなるわよ……。
さて、投稿再開です。
ストックはまだまだあるんですけど、手直しが多くて……ですね(汗)
これからもちょいちょいお休みを取って、いつか見えてくるであろう完結までがんばっていこうと思います。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!