ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

こちら、水のリングでございます。
どうぞご査収の程、宜しくお願い致します!

では、本編どぞ~!



第五百九十五話 水のリングをお納めください

 

 

 

 

 

 ……一方で時は少し遡るが、アベルとビアンカはというと――。

 

 

 

 

「いらっしゃいませ。ここはルドマンさまの屋敷でございます」

 

「なんだか私までドキドキしてきちゃった……。アベル、さあ行きましょう」

 

 

 ビアンカにルドマンが言いそうなことを、あれやこれやとレクチャーしていたらあっという間に屋敷へ到着――。

 

 アベルは早速玄関扉を開けて中へ。

 

 召使女性が応接間の前で通せんぼしていたが、アベル達がやって来たことに気が付くと扉から離れアベルを通してくれる。

 

 

「うん、ビアンカ頼んだよ」

 

「任せて!」

 

 

 アベルとビアンカは、後ろにアリアがついて来ていないことに気付かないまま応接間へと足を踏み入れた。

 

 

 ……応接間に入った途端、アベルは妙な違和感を覚える。

 

 

 これまでアベルの思考の大半を占めていた なにかがそこだけすっぽりと抜け落ちた……そんな感覚に包まれたのだ。

 

 自分はなぜこの場にやって来たのだろうか……、さっきまでなにか強い想いに駆られていたはずなのだが、それが応接間に入った瞬間、霧散した。

 

 

「…………(あれ? 僕、ビアンカになにを頼んだんだっけ……?)」

 

 

 ふと、足を止めアベルは考え込む。

 

 

 ……自分は【水のリング】を手に入れサラボナに戻って来た。

 数々の死線を潜り抜け、命懸けで二つのリングを手に入れたのだ。

 

 

 そう……すべてはフローラとの結婚のために。

 

 

 ――そうだ、僕はフローラさんと結婚するために2つのリングを手に入れたんだ……フローラさんと結婚すれば勇者の盾が手に入るし、可愛い奥さんもできる。

 

 

 だけどなぜだろう……、なにか忘れているような……。

 

 

 手元に握った【水のリング】を見下ろしてみたが、【水のリング】は淡い光を湛えているだけで、これといってなんの変化も見られなかった。

 

 

(……この指輪……、さっきまで誰かに預けていた気がするけど……。)

 

 

 ――さっきまで、誰が持ってたんだっけ……? ビアンカ……?

 

 

 ビアンカに持っててもらったのだろうか……、だが違う気がする。

 

 

 ……ならば、誰?

 

 

 アベルは思い出そうとするが、誰も浮かばない。

 

 

「…………っ?」

 

「……アベル? どうかしたの?」

 

 

 眉間に皺を寄せ訝しい顔をするアベルの肩を、ビアンカがぽんと叩いて訊ねて来る。

 ……いつもこの肩――いや、腕に触れて来るのはビアンカだっただろうか。

 

 その感触がいつもと違う気がして、アベルの眉間の皺はより深く刻まれた。

 

 

「……ビアンカ。なにか……忘れてないかな……?」

 

「忘れものしたの? 水のリングは持ってるでしょう?」

 

 

 ……ビアンカならなにか憶えているかもしれない。

 

 訊ねてみたが、彼女は首を傾げてアベルの手に持つ【水のリング】を見下ろしていた。

 

 

「あ、ああ……そう、なんだけど……。よくわからない……、僕はなにか大事なことを忘れている気がするんだ」

 

「……アベル……、……それ、実は私も……。この部屋に入った途端、あなたに頼まれたことがなんだったのか忘れちゃったの、ごめんね」

 

 

 アベルは額を抱え首を左右に振る。

 ビアンカもアベルと同じなのか、先ほどの会話の内容を憶えているはずなのに、頼まれごとがなんだったのか忘れてしまっていた。

 

 

「え? ビアンカも? ……あ、いや、いいんだ。僕も忘れたから」

 

「あら、ふふっ、そっか。私達 似た者同士ね。うふふ」

 

「ははは……」

 

 

 ビアンカに優しく微笑まれ、アベルは空笑いを返す。

 

 

「さ、早く水のリングを渡しに行きましょ」

 

「あ、ああ……」

 

 

 ――このまま【水のリング】をルドマンさんに渡してもいいのだろうか……。

 

 

 いや、そのためにあんな危険を冒して来たのだ。

 さっさと渡してフローラと結婚しなければ――。

 

 

 ……応接間を見たところ、ルドマンの姿は見当たらない。

 だが、奥のダイニングからルドマンの声が聞こえて来るので、彼はそちらにいるのだろう。

 

 アベルは再び歩き出し、話し声がしたダイニングへと向かった。

 ……そこにはルドマン、フローラ、ルドマン夫人の三人が揃っている。

 

 

「おお アベル。なんと、水のリングを手に入れたと申すかっ!」

 

 

 ルドマン一家三人はテーブルを囲み一家団欒中だったようだが、やって来たアベルに気が付くと、ルドマン一人が立ち上がって駆け寄って来た。

 

 ……フローラは恥ずかしいのか、アベルに背中を向け着席したまま俯いている。

 

 

「よくやった! アベルこそフローラの夫に相応しい男じゃ! 約束通りフローラとの結婚を認めよう! 実はもう結婚式の準備を始めとったのだよ。わっはっはっ」

 

 

 ルドマンは気の良さそうな顔をして、アベルの腕をぱんぱんと(はた)く。

 これで娘の結婚も無事決まったし安心だ……とでもいう顔だ。

 

 

「そうそう。水のリングも預かっておかなくては」

 

「あ、はい、これ……」

 

 

 ルドマンが手の平を差し出すので、アベルは素直に【水のリング】を手渡した。

 

 

 ――これで……、よかったのか……?

 

 

 ルドマンの手に渡った【水のリング】が泣いてるような気がしたのは気のせいだろう。

 

 ……アベルはなぜだかわからないが、素直に指輪を渡してしまったことに罪悪感を覚えた。

 

 

「2つのリングは結婚式の時に神父さまから手渡されるからな。フローラ! お前もアベルが相手なら文句はないだろう?」

 

「ええ。お父さま……」

 

 

 ルドマンがフローラに声を掛けると、フローラは立ち上がってアベルに振り返り、もじもじと恥ずかしそうに首を縦に下ろしたが、アベルの隣にいたビアンカに気が付き、目を瞬かせる。

 

 

「……でもそちらの女性は?」

 

「っ! え? 私? 私はビアンカ。アベルとはただの幼なじみで……」

 

 

 フローラに問われたビアンカは、まさか自分のことに言及されるとは思わず、名乗るだけ名乗っておいたが――さて、どう説明したものか……。

 

 ……フローラはじっとビアンカを真っ直ぐに見据えている。

 睨まれているわけではないが……、

 

 

 “あなたはアベルさんのなんですか?”

 

 

 フローラの宝石(サファイア)のような青い瞳がビアンカを射抜いていた。

 

 

「さあてと! 用も済んだことだし私はこの辺で……」

 

 

 ――私がここにいたら気まずいわね、もう行かなくちゃ。

 

 

 フローラの視線に居た堪れなくなり、ビアンカは踵を返す。

 ……ビアンカがこの場から立ち去ろうと一歩、二歩と足を踏み出すと、

 

 

「お待ちください!」

 

 

 フローラの声でビアンカの足は止まった。

 

 

「もしや ビアンカさんはアベルさんをお好きなのでは……? それにアベルさんもビアンカさんのことを……。そのことに気付かず私と結婚してアベルさんが後悔することになっては……」

 

 

 アベルとビアンカを交互に見ながら話し、伝え終えるとフローラは俯いてしまう。

 

 ……泣いているのだろうか、フローラの声はか細く悲し気だった。

 

 

「あのね、フローラさん。そんなことは……」

 

「まあ落ちつきなさいフローラ」

 

 

 背中越しに告げられたビアンカは振り返り、フローラを宥めようとしたのだが、ルドマンが先に彼女(フローラ)の肩に手を置いて声を掛ける。

 

 

「今夜一晩アベルによく考えてもらってフローラかビアンカさんか 選んでもらうのだ。うむ。それがいい!」

 

「えっ」

 

 

 ルドマンの話にアベルは目をぱちくり。

 

 

 ――二人の内、どちらかを選べと……!? ……それがいいとは、どういうことだ!?

 

 

 勝手に話を進めるルドマンに、アベルはなにも話せないまま ただポカンと間抜けのように口を開けた。

 

 

「今夜は宿屋に部屋を用意するからアベルはそこに泊まりなさい。ビアンカさんは私の別荘に泊まるといい。いいかね? わかったかねアベル?」

 

「あ、は、はい……」

 

 

 ルドマンの勢いに負け、アベルは素直に頷く。

 ……どうもルドマン、彼には有無を言わせないオーラみたいなものがあり、アベルは逆らえないようだ。

 

 本当はもっと色々物申したかったはずなのだが、アベルの口からは何も出て来なかった。

 

 

「よろしい! アベルよ、じっくりと考えるようになっ!」

 

 

 ルドマンに両肩を力強く叩かれ、アベルは「はは……」と乾いた笑いを浮かべる。

 

 

 

 

 ……ビアンカはルドマン家の者が別荘に案内するというので、アベルは独りでルドマンの屋敷を出ることにした――。

 

 




原作を忠実に(?)表現してみましたが、いかがでしたでしょうかね。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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