ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

部外者……、そうなんですよね……。

では、本編どぞー。



第六百四話 私は部外者

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ……まだアリア起きてないよね……?」

 

 

 ルドマンの別荘から出たアベルは念のため【ステータスウィンドウ】を確認してから宿屋へ一直線――。

 

 【ステータスウィンドウ】の名前欄にはアリアの名前が記載されたままで、ビアンカの名前は消えていた。

 それを目にしてほっとしつつ、別荘と本宅の間に架かる小川の橋を越え、本宅と教会前へと続くもう一つの橋を越え、二つの橋を渡って駆け続ける。

 

 

 ――アリアが起きた時、独りきりだと思ったらあの子はまた泣いてしまうんじゃないだろうか……。

 

 

 ……アベルはアリアの悲しい泣き顔は見たくなかった。

 

 

 昼間シスターから聞いた話は奇妙な話で、小さな少女の魂を呼び戻すために、アリアは【ザオリク】を何度も掛け続け、魔力を使い切ってしまったという。

 魔力が足りずに、仕方なくあれ(・・)を使った。

 

 ……そう、婚約指輪(【いのりのゆびわ】)を――。

 

 婚約指輪(【いのりのゆびわ】)は使用した途端、音もなく崩れ去り、アリアは漸く少女を蘇生させることができた。

 だが、生き返った少女は笑顔を残してその姿を消す……。

 

 すると、アリアが大声で泣きだしてしまったという――。

 

 アベルが使わないで欲しいと伝えてから、アリアはあの指輪を使うことを躊躇うようになり、使う前にはアベルに訊いて来るように……。

 ……少し遅いのだが、アベルの意に沿うよう彼女は指輪を愛しみ、たまに見下ろしては微笑み、大切にしていたのだ。

 

 あの消耗品(【いのりのゆびわ】)を婚約指輪にしたのは間違いだったのかもしれない。

 泣き疲れて眠るほど精神を病ませてしまった。

 

 呪いの残渣がどれほど残っているかはわからないが、再び呪われてなければいいなと、アベルは心配で仕方ない――。

 

 

「はぁっ、はぁっ……、っ……ア、アリア?」

 

 

 全速力で走っていたら、宿屋へはあっという間に辿り着いた。

 アベルが宿屋の扉を開けようとすると、丁度その扉が開く。

 

 中からは、アリア……彼女が俯きながら出て来る。

 アベルが目を瞬かせ名を呼ぶと、彼女は顔を上げた……。

 

 

「ぁ……アベル……? ……っ、アベルぅっ!!」

 

「っと……、アリア……?」

 

 

 彼女はアベルの姿を見るなり抱き着いてくる。

 ……アベルはそれを瞬時に抱き留めていた。

 

 

「うぅっ……アベルっ……ごめんなさいっ、私、あなたの後ろについて行けなかったのっ……!」

 

「……うん……わかってるよ」

 

 

 ――アリア、また泣いてたんだ……声、少し掠れてる……。

 

 

 自分の腕の中で身体を震わせ泣くアリアがあまりに小さく感じて、アベルは彼女を守るように包み込んでやる。

 アベルの腕が小さな身体を包み込むと、アリアはぐすぐすと鼻を啜って縋りつき、背中に回された手に力が込められ服を強く引っ張られた。

 

 こんな風に縋りつかれたのは初めてじゃなかったかな……なんて、アリアもずいぶん自分に心を開いてくれたんだと思ったら、アベルの胸は熱くなる。

 

 ……こんな状況ではあるが、アベルはこれまで尽くした甲斐があったなと、心の中でガッツポーズをした。

 

 

「アリア、おいで」

 

「ぇ……、ぅっ……?」

 

 

 アリアが泣いているためアベルは人目を避け、彼女を町の入口側に位置する宿屋の脇へと連れて行く。

 遠目にさっき会った婦人がこちらを見ていた気がしたが、アベルは気にしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……さて、誰も居ない宿屋の脇にアリアを連れて来たわけだが、アリアはメソメソしていて、アベルは再び彼女を抱き寄せ、落ち着くまで待つことにした。

 

 

「……私っ、やっぱりあなたと結婚できなかったっ……!」

 

 

 少しして、しばらくアベルの胸でメソメソしていたアリアが、漸く顔を上げる。

 ……泣き濡れた瞳がアベルを見つめていた。

 

 

「アリア……、結婚は……ま」

 

「だって、原作の意志が私に介入するなって。私は部外者だからどこかに消えろって……!」

 

 

 “結婚はまだしていない……”、アベルがそう伝えようとするが、アリアは声を荒らげる。

 

 

「なに言ってるんだ! アリアは部外者じゃないっ! 君は僕の唯一なんだよ!?」

 

 

 アリアの物言いに、アベルは彼女の頬を両手で包み覗き込んでいた。

 

 

「っ、アベルや私の感情なんて関係ないの……! そう(・・)プログラミングされてるからそう(・・)なるだけなの……!」

 

「ぷろぐらみんぐって……」

 

「……だってこの世界はゲームの中なんだもの……! やっぱり私は外から来た部外者なんだよ……」

 

 

 アリアがわけのわからないことを口走っている……。

 

 

 “ぷろぐらみんぐ……なに……?”

 

 

 ……アリアの言うことがアベルにはさっぱりわからなかった。

 恐らく【世界の理】に関することなのだとは思うが、そのぷろぐらみんぐ(・・・・・・・)とやらはいったいなにを意味するのだろうか……。

 

 

 アリアは部外者……。

 本当にそうなのだろうか……?

 

 

(彼女は別世界にも存在しているのに……――?)

 

 

 アベルは疑問に思いながら彼女を見下ろす。

 

 アベルの親指に彼女の熱い雫が触れている。

 ……アリアはさっきからずっと、悲しみに囚われているようだ。

 

 

「アリア……、違うよ……」

 

 

 こんな時こそ冷静に……と、アベルは静かに語り掛ける。

 

 

「違わないよっ……! みんな私のことなんかその内忘れるの。バグが修正されたらきっと私も消えちゃう」

 

 

 アベルが優しく目を細めるとアリアの眉が寄せられ、彼女が訴えてくる。

 

 

「……アリアは消えないよ?」

 

 

 ――アリアが消えることはないと思う……。

 

 

 アリアを亡き者に……というのならわかるが、「消えちゃう(・・・・・)」という彼女の言い方は、その存在自体を消し去るという意味に聞こえる。

 

 【世界の理】の力は強力だ。アリアを消せるのなら、既に消しているだろう。

 そう簡単にアリアを消すことができないから、あの手段に出たのでは――。

 

 

 ……今、アリアがこうしてここにいるのが証拠だ。

 

 

 アベルはこれまで別世界とは、違う流れになるため行動をして来た。

 変わらなかった部分の方が多いが、それによって別世界では命を落とし、未来に存在しなかった者が、この世界では生きている。

 

 ……別世界で出逢いすらしなかった者達との出逢いもあった。

 

 ラインハットの求婚事件はあれど、あれはアリアだけが狙われたものではない。

 これまでアリア目的で魔物が襲ってくるということが、特別にあったわけでもなし、存在しているものを消すというのはそう容易いことではないはず。

 

 まして、アリアは関わって来た人が多い。

 

 これまでも要所要所で細かく修正してきたのかもしれないが、【世界の理】が別世界と同じ時へ導くには、あまりに歪みが大きい気がする。

 

 だからこそ、これ以上世界を歪ませないために、ルドマンの屋敷内部だけで(エリアを絞って)強硬手段に出た……?

 

 

 ……アベルはそう推測しながら、アリアの瞳から零れ落ちる涙を拭ってやった。

 

 

「なんでそんなことが言えるの? アベルもう結婚しちゃったんでしょう? どっちを選んだのっ?」

 

「僕はアリアを選んだよ?」

 

 

 アリアがまた訴えて来る。

 アベルは穏やかに微笑んでみせた。

 

 

 ……そしてアリアを再び抱きしめる。

 

 

「ウソ……! 私が気を失ったお昼からもう真夜中だよ? どうしてこんなところにアベルがいるの? なんであなた……――私を……抱きしめて、るの……? なに? どうなってるの……?」

 

 

 アリアの声は掠れていて、少し混乱しているようだ……。

 アベルとは目を合わさず、当惑した様子で身体を強張らせていた。

 

 

「僕はアリアを選んだんだよ。結婚式は明日(あす)明日(あした)……別世界では選択の日なんだ……。でも僕はもうアリアを選んでるから……」

 

「……明日……、明日、なんだ……。そ、そか……。そっか……ぁぁ、ぅあ……」

 

「アリア、泣かないで……」

 

 

 アリアの頭上に向け、アベルはゆっくりと言葉を紡いでいく。

 すると、アリアは納得したものの……、

 

 

「ぁぁああああっ……! アベルぅ……っ!! イヤだ。離れたくないよぉっ!! 私、もうひとりはイヤだよぉっ!!」

 

 

 ……アリアはアベルに再び縋りつき、取り乱したように泣き出してしまった。

 アベルの背に爪を立て、痛みが伴う。

 

 

「……アリア……」

 

 

 ――錯乱してる……、これ以上泣いたら萎れちゃうんじゃ……。

 

 

 宿屋を出る前に見た眠っていたアリアの唇はカサカサに乾いていて、身体の水分が全部、涙に奪われたかのようだった。

 

 自分と離れるのが嫌だと言ってくれるのは嬉しいし、背中に食い込む爪も実はちょっと嬉しい。

 

 だが、アリアを泣かせるのは今じゃない。

 彼女を泣かせるのも声を掠れさせるのも、明日の夜でいい――。

 

 

 ……アベルはアリアを宥めるため、今度は頭を撫でることにした。

 




ま、実際部外者ですよね(はっきり書いてしまっては身も蓋もないw)

結婚式は明日とか言ってるけど、明日は結婚しないんですけどね……(ぇ)

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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