ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

今回も案は三つ。

では、本編どぞ!



第六百七話 三つの案

 

 

 

 

 

 さて、アリアに試してみようと言われ、アベルは部屋の窓からこっそり抜け出し、サラボナの町を出ようと試みることにした。

 

 

「あ、私は大丈夫みたい」

 

 

 アリアが町の境を越え外に立ち、アベルを手招きする。

 アベルもこれならいけると彼女に続き町を出ようと歩き出した。

 

 

 ……んが。

 

 

 ピタッ、と。

 町を出ようとしたその足が止まってしまい、アベルの身体は町を一歩出ようとするところで固まっている。

 

 

 

 

 “ちゃんと花嫁を選ぶまでは旅に出るわけにはいかない!”

 

 

 

 

 突然アベルの脳内に天の声が降り注いだ……――。

 

 

 

 

「…………アリア」

 

「ん?」

 

「……ちゃんと花嫁を選ぶまでは旅に出るわけにはいかない! って言ってる……僕、ちゃんとアリアを選んでるのに……!」

 

 

 アベルはわなわなと震え、アリアに訴える。

 

 

「誰が言ってるの?」

 

「天の声が……。あ、天の声っていうのは時々聞こえる声なんだ。なんかたまに状況を説明するみたいに頭の中に響くんだよ……」

 

「ああ……、なるほど……」

 

「なるほどって……アリア、やっぱりわかっちゃうんだ……?」

 

 

 ――アリアは町の出入りが自由だ、このまま逃げられたら絶望してしまう……。

 

 

 アリアの理解の早さにアベルはちょっぴり泣きそうになり、手を伸ばした。

 

 

「へ? あ、うふふっ♡」

 

 

 ……アベルの伸ばした手をアリアは取り、サラボナの町に戻って来る。

 アリアが戻って来るとほっとしたアベルは、彼女を抱き寄せ“ふぅ”と一息吐いた。

 

 

「……とにかく、町を出るのは無理そうだ。……あ、ルーラだったらどうかな?」

 

 

 アベルはアリアを抱きしめたまま、提案してみる。

 

 “抱きしめたままルーラすれば、アリアも怖くないしいいよね!”とついでにこっちもできないか試したい。

 

 

「ルーラ……?」

 

「うん。あっ、アリアは唱えちゃダメだよ!?」

 

「ん……?」

 

「……君 独りだけいなくなっちゃいそうだからね」

 

 

 なにがあるかわからないから念のため……と、アベルは彼女に【ルーラ】を使わないようにと釘を刺しておいた。

 

 

「アベル……、私アベルの傍から離れないから大丈夫だよ?」

 

「あ……うん、そうだよね! じゃあ、試してみるね。アリアちゃんとくっついててね!」

 

「はいっ♡」

 

 

 アリアはアベルに促されると ぎゅっとアベルの身体にしがみつく。

 

 【ルーラ】の浮遊感は未だに慣れない。

 もし発動したら、またあのふわっとした感覚に襲われるのだ。

 

 けれど【ルーラ】使用時にはアベルに堂々とくっつくことができる。

 ……【ルーラ】は怖いが、アベルにくっつけるのは嬉しい。

 

 ビアンカがいた時は彼女に手を繋いでもらったアリアだったが、アベルにくっついている方が実はあまり怖くないのである。

 

 

 ……アベルはアリアの柔らかさと温もりに顔を綻ばせながら、すぅと息を吸いこんだ。

 

 

 

 

 “【ルーラ】!!(とりあえずオラクルベリーへ……!)”

 

 

 

 

 アベルはオラクルベリーを思い浮かべ【ルーラ】を唱える。

 ……しかし瞬時に不思議な力によってかき消されてしまった――。

 

 

「…………あ」

 

「……ん?」

 

「……かき消されたー……、なんで……」

 

 

 ――ゲームのバカぁあああっっ!!

 

 

 心で叫び、アベルの頭がガクンと項垂れる。

 そしてアリアの言った『町から出られない――』という言葉をアベルは今、漸く理解したのだ。

 

 

「あ……やっぱり……?」

 

 

 アリアは気落ちしたアベルの頭をヨシヨシと慰め、二人は宿屋へ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さあ、アリアとハグもできたことだし、落ち込んでいる場合じゃない。

 時間がないぞ、お次はB案だ……!

 

 と、部屋に戻ったアベルは早速アリアにB案を説明する。

 

 

 ……B案は“アリアを連れてルドマンの屋敷へGO!作戦”だ。

 

 

「……そっか。私が着いていけばまるっと収まると……」

 

「うん、それがB案。けど、アリアはいつも大事な時にいなくなるから……」

 

 

 先ほど宿屋の主人が察してくれたように、二人の仲を見せれば関係性は一目瞭然。

 たとえビアンカかフローラかと選択を迫られたとしても、アリアが一緒なら気が付くはず。

 

 だが、昼間のようにアリアが来られない場合もある。

 

 

「B案……あ、そっか。今日行けなかったから……」

 

 

 アベルの言い分に、アリアは昼間の出来事を思い出し俯いてしまう。

 

 

 滝の洞窟で自分が操られてるかもしれないとアベルは指摘していたが、アリアは指摘されるまでなんのことか思い当たらなかった。

 しかも、自分もアベルと結婚したいと望んでる癖に、ずっとビアンカとフローラの応援をしていたのだ。

 

 アベルの幸せを願って……と、その時までなんの疑問も持っていなかった。

 ……アベルに指摘されなければ、気付きもしなかっただろう。

 

 思えば自分は自由に行動し過ぎていた気がする。

 これにももしかしたら【原作の意志】が関わっている可能性があるのかもしれないなんて――。

 

 

 アリアはよくわからないが、アベルの言う“大事な時……”というのはいったい何度あったのだろう。……その度に彼は不安な気持ちになっていたのだろうか。

 

 

 昼間のことも、アベルにどれだけ心配させてしまったのだろう……、そう思うと彼に申し訳なくて、アリアの胸は締め付けられた。

 

 

「ああ。だから、C案も考えてある!」

 

 

 ――アリア、昼間のことは気にしなくていいよ、君のせいじゃないんだから。

 

 

 落ち込む様子を見せるアリアに、アベルは笑顔で明るく告げる。

 

 アベルはさっき、昼間アリアがついて行けなかったことを嘆いた際、“わかってるよ”と彼女を抱きしめた。

 

 わかっているからこそ、アリアを責めずに別の案を提示する。

 アリアがわざとそうしているわけではないのは わかっているから、過ぎたことなどいまさら気にしなくていい。

 

 過ぎたことは終ったこと、それよりも今後の話をしたいのだ。

 

 

 ……俯くアリアにアベルの明るい声が届くと、彼女は顔を上げた。

 

 

「……C案?」

 

 

 アリアはもう一度謝罪しようと思っていたが、アベルが楽しそうに話すためどうもそういう雰囲気ではなさそうに感じ、C案について訊き返す。

 

 

「……うん、その名も“手に傷を付けておいて痛みで気付こう作戦”。手に傷を負っていれば、痛くて気が付くかなって」

 

「…………まんまだね」

 

「だね」

 

「ふふふっ♡」

 

 

 ビアンカからもらったヒントを参考に考えてみた案なのだが、ありのまま過ぎてアリアは笑い出していた。

 

 

「ハハハ……。僕、ネーミングセンスないのかも……」

 

「うふふ、わかりやすくていいじゃない! わかりやすいって大事なのよ?」

 

「そう? アリアがそう言ってくれるなら……」

 

 

 アベルは我ながら酷い作戦名だなと思ったが、アリアはそれでいいと優しく微笑み肯定してくれる。

 アリアのこういう自分を否定しないところが、アベルはいつも嬉しかった。

 

 

 ……ところがそんなアリアの眉が不意に下げられる。

 

 

「でも……その作戦は反対だなぁ。痛いんでしょ?」

 

「え、なんで? 確かに痛いと思うけど気付くためだから、仕方なくないかい? ちょっと傷付けるだけだよ? あとで回復すればいいじゃないか」

 

 

 どうやらアリアは自傷作戦には反対らしい。

 アベルは痛みがあれば気が逸れるからいいと思い、説明をするのだが――。

 

 

「アベルが痛いのとか嫌だもの。心配になっちゃう」

 

「アリア……僕 子どもじゃないんだけど……?」

 

 

 ――僕が傷付くのが嫌って……、普段怪我なんてしょっちゅうしてるのに……過保護じゃないか……?

 

 

 まるで自分の保護者かのような、アリアの物言いにアベルは眉を寄せる。

 

 彼女が時々姉のような、母親のような素振りをみせるのはアリアが年上だから多少は仕方ないとはいえ、子ども扱いはいただけない。

 

 ……なぜなら自分は女一人くらい養える一人前の男なのだ。

 

 アリアが自分を大人の男として見ていない……ということはないと思うが、舐められては困るし、彼女を(物理的に)舐めるのは自分の方でありたい。

 黙って自分を頼ってくれればそれだけでいい。

 

 

 ……アベルの唇が無意識の内にへの字を描く。

 

 

「子どもだなんて思ってないよ。大切な人が怪我するのが嫌なだけ。後で回復するったって……傷が残るかもしれないでしょ?」

 

「けど、作戦は作戦だから我慢してよ。そうしないと僕達結婚できないんだよ?」

 

 

 自分を想うアリアの言い分はわかるが、アベルが思いつく対応策はもうこれ以上はない。

 

 上手くいくかいかないかわからないが、試すしかないのだ。

 




結婚するまでサラボナから出られないという強制イベント……w

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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