ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

さあ、妖精の村へと戻りま……。はははっ……。

では、本編どうぞっ。



第六十話 キメラのつばさ

 

 雪の女王との長い戦いの果て、三人は疲れていたものの気持ちは晴れやかに氷の館を後にした。

 

 

「はぁ……。歩いて帰るのは疲れるわね」

 

 

 先程までにこにこと上機嫌だったベラは歩いて帰るのが不満なのか、その足取りは重い。

 

 

「そうかなぁ……、のんびり帰るのも良くない? アリアも疲れた? キメラのつばさ使った方がいいかな?」

 

「え? あ、ふふっ、私はどっちでも。アベルの好きでいいよ」

 

 

 アベルは訊ねるが、雪の女王と戦いアリアは自分の力にすっかり自信がついたらしく堂々とした様子で歩いている(魔力は切れているはずなんだが……)。

 

 

 この世界でしばらく暮らすことになるし、歩いて帰って魔物の様子とか把握しておくのも大事だよね!

 今は頼もしいアベルも居るんだしっ。

 

 

 アリアは辺りに魔物が居ないか見渡しながら歩くのだった。

 

 

「キメラのつばさがあるなら使いましょうよ! 春の訪れをみんなが待っているのよ……!?」

 

「あ……、そういえば、そうだったね……けど……」

 

 

 アベルはちらっとアリアを窺う。

 どうしたの……? とアリアが首を傾げるので、おずおずとアベルは口を開いた。

 

 

「……村に戻ったら、アリアと、お別れ……、なんでしょ……?」

 

「え……あ。う、うん……」

 

「もう少し……一緒に冒険したいんだ。……ダメ……かな?」

 

 

 アベルは上目遣いにアリアを見つめる。

 その瞳に見られると、アリアは胸を締め付けられてしまう。

 

 

 きゅぅぅうん、と。

 

 

「っ……だ、ダメじゃないよっ!!? 手っ、手でも繋ごうかっ!?」

 

 

 アベルってば、可愛いなぁっ!!

 

 

 こんな息子が居たら溺愛するのも無理ないわね、パパスさんっ!! サンチョさんっ!!

 わかる、わかるわっ! と、アリアはアベルを自分の息子のような気持ちでつい甘やかしてしまう。

 

 アリアが手を差し出すと、アベルが一瞬照れて後ろ頭を掻いてからその手を取った。

 

 

「ふふっ、アベルの手温かいね」

 

「アリアこそ!」

 

 

 アリアの優しい笑顔に、アベルも安心して微笑んだのだった。

 

 

「ベラちゃんも繋ごーよー! 寒いから手を繋ぐと温かいよ~?」

 

「え~、私はいいわよ。そういうのは若い二人でやってちょうだい」

 

 

 アリアがベラを誘うが、ベラはいつの間にかプックルの背に跨り「プックル温かいわ……」と、運んでもらっていた。

 プックルの背に触れる脚が温かいらしい。小さな身体のプックルではあるが、意外と力持ちである。

 

 

「ベラちゃんも若いくせに~」

 

「そうだよ!」

 

 

 フフフっ。と二人は笑い合いながら、前を行くベラとプックルの後について行った。

 

 

 

 

 

 

 ……あの後、無事に村へと戻れたかというと……、

 

 

 

 実は戻れなかった。

 

 

 

「……うぅ……、だから言ったのに……」

 

「フニャァ……」

 

 

 ベラとプックルが傷だらけで、降り積もる雪原に仰向けに寝転がる。

 

 

「ごめん……。もっと早くキメラのつばさを使っていれば……」

 

「ううん……。良い教訓だよ。戻る時は早めのキメラのつばさって……」

 

 

 アベルとアリアも草臥れた様子で、ベラとプックルの傍に座り込んでいた。

 

 

 

 

 三人と一匹はあの後魔物の群れと運悪く遭遇し勝利したものの、【つちわらし】に何度も仲間を呼ばれ戦闘が長引いてしまったのだった。

 

 当然、全員疲労困憊である。

 

 

「……ふふっ、……まあ、この雪も今年の分は見納めってことで、いいんじゃないかしらね?」

 

「え…………? あ……キレー……。アベル、見て。雪が……」

 

「本当だ…………」

 

 

 ベラが両手両足を投げ出し、空を見上げて云うものだから、二人も空を見上げた。

 羽毛みたいだねと、アベルが呟く。

 粉雪が次から次へふわふわと舞い降りて来る様子に、アベルとアリアは暫し目を奪われた。

 

 

「ね、アリア」

 

「んー?」

 

「アリアの羽も上の方ふわふわだよね。この雪みたいだ」

 

 

 空を見上げるアリアの翼上部付近に、アベルはそっと毛の流れに逆らい触れる。

 滑らかに揃っていた毛の流れが乱れた。

 

 

「っ、アベル、くすぐったいよっ?」

 

 

 アリアは身を捩って避けようと翼を動かす。

 

 

 すると、

 

 

 ヒラリ。

 

 

 羽根が地面に一枚抜け落ちた。

 

 

「……あ、抜けた。痛かった……?」

 

「あら……。ううん、平気。大きいし、アベルの触ってたところの羽じゃなさそう。元々抜ける羽根だったんじゃないかな」

 

「……貰ってもいい?」

 

 

 アベルは抜けた羽根を拾い上げ、アリアに訊ねる。

 

 

「ん? うん、どうぞ? 何の役にも立たないただの羽根だけど……」

 

「ううん。天使の羽根だから、きっと何かの役に立つんじゃないかな?」

 

「そうかなぁ……」

 

 

 アベルは嬉しそうに自分の袋に羽根を仕舞う。

 アリアは、どう見てもただの羽根だよね……と、ふと、サンタローズの青年を思い出す。

 

 

 あのお兄さんも羽根を嬉しそうに袋に仕舞っていたよね……?

 白い羽根って……ひょっとして珍しいんだろうか……。

 

 

 ま、いっか。とアリアはアベルが嬉しそうなので良しとした。

 

 

 

 

 

「……ホーント、綺麗…………だけどっ、へっくしょんっ!!」

 

 

 ぼーっと空を見上げていたベラは「このままじゃ埋まっちゃう!」と身体を起こし、肩を震わせる。

 

 

「っ、そろそろ、戻りましょ! ポワン様が待っているわ」

 

「うん……、キメラのつばさを使うね。村に戻ってみんな回復しなきゃ」

 

 

 ベラの声掛けで、アベルは【キメラのつばさ】を手にする。

 

 

「はは……そう、だね」

 

 

 アリアが自分の身体を見下ろし、苦笑した。

 擦り傷多数に、【つちわらし】に散々舐められ、服も腕もどろどろの、べちょべちょである。

 

 それを見ていたベラが口を開く。

 

 

「ふふっ、私達ぼろぼろだものね」

 

「はは……、今度からは早めに判断するよ」

 

 

 ベラがアリアの傍にやって来て【毛皮のフード】に降り積もった雪を払ってやると、アベルも自分の頭に付いた雪を払い落した。

 三人は苦笑いしながら、互いに傍に寄る。プックルも同じようにしてアリアにぴったりとくっつく。

 

 皆が集まると、アベルは【キメラのつばさ】を放り投げたのだった。

 放り投げた【キメラのつばさ】の周りに風が巻き起こり、三人と一匹の身体を宙に持ち上げる。

 

 

「うわっ! 浮いたっ!」

 

 

 初、【キメラのつばさ】~!

 私今飛んでないのに、身体が浮いてる~!

 

 

 驚き瞬くアリアをそのままに、全員の身体が空高く舞い上がったかと思うと妖精の村へとみんなを運ぶのだった。

 




雪を見納め、次回春がやって来ます。
現実でも春が来ているかな……?
これ書いてるの、3/6だけどUPするのは約一ヶ月先か……。

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感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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