ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

過去に“いいえ”を選択してしまったがために。

では、本編どぞ。



第六百九話 “いいえ”と答えた先

 

「…………はい、これでいいかな……?」

 

「うん完璧……! ありがとうアリア!(ちょっと痛い……)」

 

 

 さて、血が止まった頃――アリアがアベルの患部を包帯で巻き巻き、手当てをしてくれた。

 アベルは手に巻かれた包帯を眺め、にっこりと微笑む。

 

 

「……そろそろ休もっか。……アベル痛いけど眠れそう?」

 

「たぶん……」

 

 

 せっかくだから……と、テーブルに置いていた宿屋の主人に貰ったロウソクに火を灯すと、ラベンダーの香りが部屋に漂う。

 ロウソクから香るふわりと柔らかく甘い匂いに、アベルの手は痛かったが多少気が紛れた。

 

 いい香りね……なんてアリアが目を細めれば、アベルもそれに倣う。

 

 二人は部屋の明かりを落としてそれぞれのベッドに向かい、身体を横たえ布団に包まって向かい合った。

 

 

「……ね、アベル。一緒に寝る……?」

 

 

 ……お誘いは突然に。

 

 

 アリアが大胆にも掛け布団を捲って、アベルに婀娜(あだ)っぽく微笑み掛けてくる。

 

 マントを脱いだ剥き出しの肩と、重なる二匹の白いスライムと……白い滑らかな太ももの間にアリアの片手が挟まり、スカートが引っ張られて下肢部を強調させる。

 部屋の明かりを落とした部屋では月明かりが差し込み、アリアの肌を青白く照らしていた。

 

 

「あっ……寝たぃ……、っ……でもそれは……明日にする……」

 

 

 あまりに扇情的な光景に、アベルの目はチカチカとして、息を呑む。

 

 

 ――したいーー……! でもっ、まだダメだ……!!

 

 

 アベルの頬も身体も瞬時に熱くなり、身体が動きかけたがグッと堪えた。

 

 まだ結婚前だ。

 それに自分は十八になっていない。

 

 ……というのは建前で、したいのは山々だが今夜はダメだ。

 下手に手を出したら朝まで掛かってしまいそうで、寝不足のまま明日を迎えるわけにはいかない――アベルは自重する。

 

 

「そっか……。あ、じゃあ今夜はアベルが安眠枕を使って?」

 

 

 アリアは少しつまらなそうな顔をしてすぐに布団を元に戻し、半身を起こすと、ベッド脇に置いていた自分の荷物の中から【安眠まくら】を取り出しアベルに差し出した。

 

 

「僕は大丈夫だよ?」

 

「痛くて眠れないんじゃ、明日立ち向かえないよ? 私もベッドなら眠れるから」

 

「……わかった、じゃあ借りるね」

 

「ふふっ♡ それアベルのなのに」

 

 

 アベルはアリアから【安眠まくら】を受け取り、宿屋の枕と入れ替える。

 すると――。

 

 

「アリア……明日……けこん……てね……」

 

 

 “明日結婚してね……。”

 

 

 アベルはアリアに笑顔を向けながら眠りに落ちていった。

 

 

 ……疲れていたのだろう。

 早速ぐぅぐぅというイビキが聞こえてくる。

 

 

「……はぁ、やっぱ安眠枕ってすごいなぁ……。さあ、私も寝なくっちゃ……明日……」

 

 

 アリアも再び身体を倒し、枕に頭を預け暗い天井を眺める。

 

 

 明日はアベルが花嫁を選択し、結婚する日――。

 アベルは既に自分を選んでいると言っていた。

 

 

「アベルと結婚……できるのね……」

 

 

 ――でも、昼間みたいに邪魔されるんだろうな……。

 

 

 アベルの作戦が上手くいくことを願ってはいるが、自分でもなにかできないだろうかと、アリアは眠くなるまで昼間の出来事を整理し、解決方法を模索してみる。

 

 

 ……昼間はずいぶん取り乱し、先ほどもアベルに泣き縋りついてしまったアリアだが、冷静に考えるとあまりに不自然な出来事だった。

 

 あのまま、恋人との別れを受け入れるしかないと諦めさせるために、【原作の意志】は幼い少女を作り、アリアをアベルから遠ざけたわけだが……彼は彼女を思い出し戻って来た。

 

 【原作の意志】は詰めが甘いのではなかろうか――。

 

 

(実はアベルによってストーリーが歪み過ぎて、修正が上手くできていない……とか?)

 

 

 原作をプレイしていないアリアには、この世界の時の流れが原作とどう違っているのか さっぱりわからない。

 ただ、ストーリーの歪みのせいで修正が追い付かないのなら、綻びが生まれることもあるかもしれない。

 

 

(それかもしくは……誰かが【原作の意志】の邪魔をしている……?)

 

 

 もしそんな人がいるのなら、アベルとアリアにとっては味方となる頼もしい存在だ。

 ……考えられなくはない理由だが、では、それはいったい誰――である。

 

 ルドマンもフローラも、ビアンカも。アベルと一緒に意識を乗っ取られていた。

 ならば、その四人ではない。

 もちろん仲魔たちも馬車に戻っていたから違うだろう。

 

 

 では、“他には……?”

 

 

 ……そう考え至った時、アリアの頭に浮かんだ人物が一人だけいる。

 

 

「……あ。……はは……、まさかあの感じの悪い人が……?」

 

 

 ――いや、いまさらもう断っちゃったし、あれから私のところに来てないもの……諦めたのよね……?

 

 

 プックルの居た洞窟、見はらしの塔、滝の洞窟……三度の邂逅で、切れた縁。

 面倒そうだからと、はっきり断ってしまったのは間違っていたのだろうか……。

 

 

「いや、だって、あの人私に助けを求めてたんだよ……?」

 

 

 ……もし。

 

 もし、その人物が実は【原作の意志】に触れることのできる人物ならば、あの不自然な出来事が起きてもおかしくはないのかもしれない。

 

 アリアはそんな可能性を探ってみるが、だとしたら、あの人物はいったい……と、今度はそちらに疑問を持ってしまう。

 

 

「ぅーん……あの人は実はデバッカーで……なんてないか……」

 

 

 デバッカー……ゲーム中のバグを探して修正する人のことだが、あの人物は手違いでアリアをつい溺れさせたが、殺そうとはしていない。

 

 

「でも、その人しか思い当たらない……。他にもいるのかな……。けど、その人がそうなら助けてくれないかな……」

 

 

 

 

 “アベルと結婚したい……。”

 

 

 

 

 見返りが怖いが、アベルと一緒になれるなら。

 そう強く思うと――。

 

 

 

 

『お前はアベルとかいう男と結婚したいのだろう? その願い、私が叶えよう』

 

 

 

 

 ……不意に謎の人物の言葉が思い出された。

 

 

「あ……、あの人……! こうなることを知ってたっていうの……!?」

 

 

 ――確定じゃない!? ああっ、私のバカッ! 断っちゃったよ!!

 

 

 アリアは過去の選択を後悔する。

 未だアベルのところにも現れていないようだし、あの人物が誰かはわからないが、諦めて別の人に助けを求めに行ってしまったのだろう。

 

 

「ぁぁ……、でもダメ。悲観なんてしてられないの。私は私のできることをやるしかない……。最後まで諦めないって決めたんだから……」

 

 

 ――ね、アベル。

 

 

 アリアは隣のベッドで眠るアベルを見つめる。

 アベルはアリアに身体を向けて眠っており、包帯が巻かれた左手が痛々しかった。

 

 

「……アベル、愛してるよ」

 

 

 

 

 “【ベホイミ】!!”

 

 

 

 

 アリアはアベルに回復呪文を唱える。

 恐らく痛みなど【原作の意志】は簡単に認識を歪めてしまうだろう。

 

 自分にできることとえば、アベルが出した案の内の一つ、B案――。

 

 

 

 

 ――明日は、なにがなんでもルドマンさんの屋敷に一緒に行くんだから。

 

 

 

 

 アリアの意志は固い。

 

 

 ……いつの間にか窓の外は白み、もうすぐ夜が明ける。

 

 昼から夜まで何時間も眠っていたアリアは全く眠くならず、アベルの寝顔をずっと見守っていた。

 




アベルに頼るのもありですが、頼りきるのは好きではない。アリアにも女の意地ってものがあるのです。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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