このサブタイトルなんなんですかね……。
では、本編どぞっ!
◇
そして夜が明けた……!
「おはようアベルさん。早速だが、ルドマンさんからお呼びが掛かってる、急いで屋敷に向かってくれ」
「っ、あのっ! アリアがっ……僕の花嫁がいないんですけど……!」
……アベルの声は焦っていた。
あまりに焦り過ぎて、ターバンをわたわたと巻きながら、アベルは宿屋の主人に掛け合う。
今朝アベルが目を覚ました時、隣のベッドで眠っているはずのアリアがいなかったのだ。
シーツに触れてみれば冷たくなっており、ずいぶん前に姿を消したことがわかる。
手には痛みもないし、包帯を解いてみれば傷もなぜか癒えており、まるでアリアがいなくなったかのように感じられ、アベルは部屋を飛び出した――というわけだ。
……宿屋の主人を前にしたアベルの顔面は蒼白、この世の終わりかのような顔をしている。
「ああ! アリアさんね! 先に向こうで待ってるって言ってたぞ」
今にも死んでしまいそうなアベルの様子に、宿屋の主人は明るい声でサムズアップした。
「え」
「なんだっけな……一緒に行くと引き離されるかもしれないから……とかなんとか、よくわからんことを言ってたなあ……」
「あ……、なるほど……アリア考えたな……」
――昨日のように邪魔が入らないようアリアが先回りか……。
アベルはアリアの考えを理解し宿屋の主人に頷く。
「結婚式、楽しみにしてるよ」
「……はい! 祝福してくださいね……!」
……アベルは宿屋を後にし、急いでルドマンの屋敷に向かった。
全速力で走れば、ルドマンの屋敷へはあっという間だ。
“わん、わん! わんわん!! ウー……!”
ルドマンの屋敷が見えて来ると、リリアンがアリアに向かって激しく吠えている。
「っ、ごめんね。さ、触らないから……」
――この間は吠えなかったのに……、これも【原作の意志】の影響なのかな……。
リリアンの目は鋭く、鼻筋に深く皺を寄せ時折唸り声まで出している。
アリアは威嚇するように吠えるリリアンから、少しずつ遠ざかった。
丁度そこへアベルがやって来て……。
「――アリアっ!!」
「あっ、アベルっ!! おはようっ♡」
アベルの声にアリアは振り返り、駆け寄って彼に飛び付く。
……朝からずいぶんと大胆である。
「っ、おはよう……!!(ああ……アリアがいてよかった……)」
――アリアのバカ……! ホンットにこの
急にいなくならないでよね……!
アベルはアリアを受け止めると、強く抱きしめその存在を確認する。
先ほど目が覚め部屋にアリアの姿が見当たらず、自分がどれだけ肝を冷やしたと思っているのか……。
アリアが「ギブッ、ギブッ」とアベルの背中を叩くが、アベルはしばらく放してやらなかった。
「……っ、先に出て来ちゃってごめんね。一緒に歩いて行こうと思ったんだけど……、ちょっとアベルこっち来て」
しばしの抱擁の後でアリアは漸く解放してもらい、アベルに屋敷の脇へ来るようにと手を引く。
……アリアに手を取られたアベルは大人しくついて行った。
「うん……邪魔が入るかもしれないからだね?」
「うん……。あ、今は誰もいないから邪魔されないと思うよ?」
ルドマンの屋敷の脇にやって来た二人はこそこそと話し合う。
アベルの同意に、アリアは周囲を警戒するように見回してから、彼に視線を戻し微笑んだ。
「そうだね……。ね、アリア。これ、どういうことかわかる?」
アベルは頷きながら痛みのない左手を掲げる。
昨夜アリアから傷付けてもらった怪我はすっかり完治。手の甲には傷一つ残っていなかった。
「あ、回復しておいたよ」
「なんで……」
「だって、痛みだけで気付けるとは思えないから……。多分“痛いなー”くらいの認識しかできないんじゃないかなって」
「っ、けど試してもないのに」
――そんなに僕が信用できないっていうのかな……。
アリアがあっさりと回復しておいたと言うので、アベルは眉を寄せる。
彼女の言う通り確かにそうなるかもしれないが、そうならないかもしれないではないか。
なら試すだけ試してもいいはず。
あれだけ説得したのに……と、アベルは唇を噛みしめた。
……そんなアベルに、アリアは弱り目で掲げられた左手を両手で包み込む。
「ごめんねアベル、痛い思いをさせて。それよりも! 視覚情報が大事なんじゃないかなって」
「……視覚情報?」
「うん。私ね、昨日の夜ずっと考えてたの。宿屋のご主人、私達のことわかってくれたでしょ?」
昨日の夜……。
確かアベルとアリアは宿屋に二人で腕を組みながら戻って来た。
それを目撃した宿屋の主人は一瞬固まっていたが、すぐに二人の仲を理解してくれたのだ。
「あ! 確かに……!」
思い出し、アベルは目を瞬かせる。
「アベルの手でも足でもどこでもいいんだけど、なんとなく目に入る場所に私のものを身に付けておいたら、気付けるんじゃないかなって」
「ほぉ……」
……アリアの言い分は、こうだ。
痛みなどではなく、なによりも視覚的効果が大事なのでは――という。
――確かにそれなら気が付けるかもしれない……。
なにより痛みもないから思い出した時、すぐに動くことができる。
「それで身に付けるものなんだけど……、このマントとかどうかな?」
アリアはマントの留め金に手を掛け、外そうとしていた。
「え……、マントは身に付けたらいちいち見ないよ……?」
それにアリアのマントは彼女に合うように作られているから、アベルには似合わない。
伸縮性がある素材とはいえ、
「そっか……じゃあ……、ちょっと恥ずかしいけど……脱ぎたてぱんつは……?」
「ぱんつっ!?(脱ぎたて!?)」
――はいっ!? なに言ってんのこの
アリアがぽっと頬を紅く染めてスカートに手を掛けると、アベルの目は見開き、彼女の手元をガン見した。
「……手に持っていく? 臭いけど……」
「それは是非欲しいけどダメでしょ!!(ニオイを嗅ぎたい……!)」
おずおずとアリアは上目遣いでアベルを窺ってくる。
アベルは素で答えたが、今は駄目に決まっている。欲求を抑えてツッコミをいれておいた。
「だよね……って、欲しいんだ……、アベルのえっち……」
「っっ、コホンッ! アリア!? ふざけてる時間はないよ!?」
――どっちがエッチなんですかっっ……!
……アリアのぱんつなら欲しいに決まってる……!
赤い頬のアリアの紫水晶がじぃっとアベルを見つめて来るので、アベルは口元に拳を当てて咳払いし、眉を顰める。
そして彼女に近付くと小声で諫めた。
こんなことでもなければアリアの下着を手に入れるチャンスはないだろう。
……ちょっと残念だが、ふざけている場合ではない。
さて、アリアはふざけているのだろうか……。
「っ、そうだよね。じゃあブラジャー……、大きいから多分私のだって気付くと思う……」
彼女が今度は胸元に指を引っ掛け、下げようとする。
深い谷間からむわっと熱い空気が漏れて、目前まで近付いていたアベルの鼻先に甘酸っぱい匂いが香った。
「ぁふっ♡ ブラって……それも欲しいけどさっ! そんなの持って屋敷に入ったら僕の人生が終わる」
――ああもうっ! なんなのこの
朝っぱらからアリアの色気に
アベルはこれから大事な選択の時だということすら忘れそうになって、彼女を小脇に抱えて宿屋に舞い戻りたくなってしまう。
……が、そんなわけにいかないので、自制した。
一年という長い間、我慢に我慢を重ね、自分の忍耐力をこれでもかと試してきた彼女は自覚があるのかないのか、とにかく男の欲を煽ってくる。
特に、ここ数日はよくくっ付いてくるし、今までの態度とかなり違う。
どう考えても自分を欲しがってるとしかアベルには思えなかった。
……だが結婚するまでは最後までしないと、決めている。
我慢できるのは今日の夜までだ。
今日の夜まではなんとしてでも我慢してやる。
(結婚したら憶えておいてよね……! 僕は自制の効くいい男なんだよ!?)
……と、アベルはアリアのブラジャーも欲しかったが、それを持って行ってはさすがに不味い。
いつでも冷静さを忘れないということは、とても大事なことなのだと、アリアの誘惑をなんとか躱したアベルは自分で自分をこっそり褒めた。
▼ぱんつ持ってビアンカにプロポーズ……。
アベル「ビアンカ! 結婚して!」
ビアンカ「アベル、その手に持っているのはなに?」
アベル「え……」
ピラッ、広げてみる。
アベル「あっ……! アリアのヒモパン♡♡」
ビアンカ「うわ」ドン引き
▼ブラ持ってフローラにプロポーズ……。
アベル「フローラさん! 結婚して下さい」
フローラ「ア、アベルさん、その手に持っているのはなんですか?」
アベル「え……」
ピラッ、広げてみる。
アベル「あっ……! アリアのブラジャー♡♡」
フローラ「うわヘンタイ」ドン引き
……うーん……どっちも気付ける気がするな……。
それでも良かった気がしますね。
いやでも、せっかくのシリアス展開ですし……。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!