ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

どういう……ことなんですかね。

では、本編どぞ。



第六百十八話 どういうこと?

 

「ピエール君、長い間ありがとう……あなたがいたから私、ここまで生きてこられた。あなたにはお礼をいくら言っても足りないくらい。……先ずはどこかにルーラして新しい仲間を探すよ。無茶はしないから心配しないで?」

 

 

 アリアは改めて振り返り、掴まれたピエールの手を両手で包み込む。

 そして……泣き腫らした目で優しくはにかんだ。

 

 

「アリア嬢……、未練はないというのですか……?」

 

「……んー……そうだね……心残りはピエール君の素顔が見れなかったことかなぁ? ふふっ、イケメンなんだっけ?」

 

 

 ピエールが訊ねるとアリアは楽しそうに笑う。

 

 

「……っ、そうですよ? アリア嬢が残ってくださればっ、っ、いつかお見せできたものを……くっ……残念ですねっ!」

 

 

 いつもの朗らかなアリアのその姿に、ピエールは彼女を引き留めるのは無理だと悟り、腕組みしておどけてみせた。

 

 

 ――私の言葉で彼女を引き留められるわけがない……。

 

 

 アベル殿でなければ彼女を引き留めることは無理だろう。

 

 

 ピエールはわかっていたが、もし、彼女が留まってくれたらという淡い期待と、無理であってもアリアの心が少しでも軽くなる様に、笑ってもらえたらいい――。

 

 新たな旅路のはなむけに、兜の中、頬に伝う熱い雫のせいで鼻声になってもピエールは言い切った。

 

 

「ふふっ、そうだね。それはアベルの奥さんにでも見せてあげてね」

 

 

 ピエールの様子にアリアは一瞬眉を下げたが、また朗らかに微笑みピエールの肩をぽんと優しく叩いて微笑む。

 

 

「っ……(アリア嬢……!)」

 

 

 ――独りで行かないで下さい……!

 

 

 ピエールはアリアの手が離れ、彼女がまた自身に背を向けるのを黙って見ていた。

 

 

 きっと止めても無駄だろう……。

 

 彼女は自分で決めたことは簡単には曲げない女性(ひと)だから。

 ……アベルと再会前の記憶喪失中も、今も、それは変わっていない。

 

 独りで平気だと……平気なはずはないのに強がる女性(ひと)だから。

 他人の心には敏感なのに、自分の痛みには鈍感な女性(ひと)だから。

 

 いつも笑顔で取り繕ってる孤独な女性(ひと)だから。

 

 

 

 

 ……約11年前。

 大怪我を負ったアリアはピエールに助けられた。

 

 アベルには話していなかったが、ピエールがアリアを連れて修道院に向かっている際、意識は戻らなかったものの、彼女は譫言(うわごと)を言っている。

 

 

 

 

『おとうさん、いつあえるの? わたしさみしい。ひとりはもうやだよ、おとうさん……』

 

 

 

 

 ルドマンも似たようなことを聞いたが、ピエールも聞いたことがあった。

 ……彼女が大人になり修道院から現れた時は、出逢った時のように凛としていてすっかり忘れていたが、今の彼女は笑顔なのに――淋しそうだ。

 

 

 修道院の修繕が終わり、サラボナに行くと知ってからずっとそうだった……。

 

 

 

 

「……それじゃ」

 

 

 

 

 ――どこに行こう……?

 

 

 背中にピエールの視線を感じるが、アリアは魔力を集中させ、行き先をイメージする。

 手には【ひのきのぼう】……。

 

 

 今までアベルから貰った数々の武器や防具は馬車に置いて来た。

 アベルに選ばれたビアンカかフローラが使ってくれることだろう。

 

 ただ、アベルに初めて買ってもらった武器の【ひのきのぼう】だけは金額も少額だからと貰っておくことにし、アリアは大事に握りしめる。

 

 

 そうしている所へ……。

 

 

 

 

『ア……アリア、っ、……アリアーーッ……!!』

 

 

 

 

 アリアの背中に聞き慣れた声が届き、そこへアベル達がやって来たのだ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……アリアがさっきまでの出来事を思い出しながら、アベルの元へと戻って来る。

 ビアンカに引き留められ、同じ選ばれなかった者同士……ということで逃げるに逃げられず、アリアは大人しく連行され、アベルも少しずつではあるが彼女(アリア)の傍へと歩き出していた。

 

 

「……あ……アリア……」

 

「……ぉ、おめでとう……」

 

 

 アベルと、アリア……互いにそれぞれフローラとビアンカに付き添われ、町の入口までやって来ると、アベルはほっとしたような顔で彼女の名を呼ぶが、アリアは目を合わせようとはせずにぼそっと、先ほどと同じことを呟く。

 

 

「こら、アリアっ!」

 

「あぅっ……!(痛っ……!)」

 

 

 バシンッ!! と、ビアンカの平手がアリアの背中を勢いよく叩いた。

 

 

「あっ、ビアンカ、アリアをいじめちゃダメだよ!」

 

「やだ、いじめてないわよっ、アベルの過保護!」

 

 

 すかさずアベルがアリアの腕を引いて彼女を庇う。

 ……ビアンカは「ちょっと発破掛けただけよっ」と苦々しく笑った。

 

 

「っ……アベル、放して……」

 

「アリアっ……! どうして……」

 

 

 アリアが放せと、引かれた腕に掛かるアベルの手を避ける。彼は困惑の表情ながらも言われた通りに手を放した。

 

 ……アベルの手が離れ、アリアは一歩後ろへ下がって距離を取る。

 

 

「……アベル、フローラさんと結婚するのね……?」

 

 

 ――アベルの顔……(もや)が掛かっててよく見えないや……。

 

 

 アリアの目は伏せがちで、チラッとだけアベルを見上げてまた目を伏せてしまった。

 アリアから見たアベルの顔は、さっきから黒い靄が邪魔をしていてよく見えない。呪いの残渣である黒い靄は大きくなってはいないが、色は濃く、アベルの顔を丁度覆ってしまっている。

 

 ……アベルが今、どんな顔をしているのか……アリアにはわからなかった。

 

 

「し」

 

「致しません」

 

 

 “しないよ”

 

 

 ……アベルが答えようとすると、被せる様にアベルの隣にいたフローラがはっきり告げる。

 

 

「……え?」

 

「アリアお姉さま。私はアベルさんと結婚なんて致しませんよ?」

 

 

 フローラはアリアの手を取り、両手で包み込むように握っていた。

 そして優し気な瞳でアリアを見つめ、にっこりと微笑んでいる。

 

 不思議とフローラの顔ははっきりと見え、またビアンカも然り。アベルの顔だけが靄に覆われ見えないまま。

 

 ……やはりヒロイン二人には不思議な力が宿っているのかもしれない。

 

 

「じゃ、じゃあ……」

 

 

 アリアはフローラに手を取られたまま、今度は自分の横に立っているビアンカを窺う。

 

 

 ――もしかして選ばれたのはビアンカちゃん……?

 

 

 アリアは結婚式に参加して欲しくて呼び戻されたのだと気が付き、目に涙が滲んで来るのがわかった。

 

 

 

 

 だが――。

 

 

 

 

「私もしないけど?」

 

「え……? え?」

 

 

 ――どういうこと……?

 

 

 ビアンカがあっさり否定するので、アリアは目を瞬かせる。

 驚いた拍子に一粒、瞳から透明な雫が零れ落ちた。

 

 

「アリアお姉さま……♡(泣いてしまわれるなんて……なんてお可愛らしいの……!)」

 

「アリア……(嬉しくて泣いちゃうんだ……? ザ・女の子って感じね……! 私も見習わなきゃっ)」

 

 

 フローラとビアンカは、アリアの不意の涙にいじらしさを覚え萌えてしまう。

 ……フローラは握った手を上下に揺らし、ビアンカはアリアの頭を撫でて慰めていた。

 

 

「あ……えっと……どう、いうこと……??」

 

 

 状況がよく掴めていないのか、アリアは自分を慰めてくれる二人にそれぞれ目配せをする。

 

 すると、フローラもビアンカもにっこりと はにかんでアリアから離れ、二人はアベルの後ろへと移動した。

 

 




フローラもビアンカもアベルとは結婚しないのです……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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