返事は? ってねえ、そりゃあ、ねえ……。
では、本編どぞ!
――靄が……晴れた……!?!?
優しく穏やかなアベルの瞳がアリアを見上げている。
……大好きな彼が自分を見上げているのがわかると、ぶわっと再びアリアの瞳に涙が溢れだした。
「あっ、アリア! な、泣かないで。ほらっ、これから僕達結婚するんだよ? 泣いてる暇なんてないよ?」
「っ……アベルっ、私っ、まだ返事してない……!」
アベルが溢れ出た涙を拭おうと慌てて手を伸ばすが、アリアは涙を零しながら首を左右に振り振り。
……この期に及んでアベルと結婚しない、などと言うつもりなのだろうか……。
「っ、……結婚するでしょ……するしかないでしょ……。君、僕がいないと生きていけないでしょうが……僕もだけど……」
――アリア、さすがに断らないよね……!?
アベルは口を尖らせながらアリアの返事を待った。
「…………っ、あはっ! うんっ、そうかもねっ」
――アベル、あなたもそう思ってくれてるのね……!
……うれしい。
アベルのちょっと拗ねたような表情にアリアは涙を拭って明るく笑う。
「――アリア。僕と結婚してくれますか、はい・いいえ?」
再びアベルがアリアを真っ直ぐ見上げて訊ねた。
アリアの答えは――。
「…………、はいっ! 私なんかで良かったらよろしくお願いします。これからもずっと一緒にいようねっ♡」
アリアはアベルの手を強く握り返す。
握り返された手を見つめ、今度はアベルの瞳が潤んだ。
……アベル達の近くでは、「おめでとう」の祝辞や、ぱちぱちと手を叩き合わせる音がいくつか聞こえる。
道行く人なのだろうか……。
「……“いいえ”って言われたら同じ質問をずっと繰り返すところだったよ……」
「えぇ……それって無限ループ…………ふふふっ♡」
アベルはくすくすと笑うアリアの手を引き、彼女を抱き寄せる。
「ぅっ、ぅっ……アリアっ……! よかった……! 本当によかった……!!」
「アベル……」
人目も憚らず跪いたまま縋る様に抱きつくアベルから、くぐもった嗚咽が聞こえ、アリアはそっと彼を抱きしめ返した。
――アベル……震えてる……、そんなに不安にさせてたのね……。
本当にごめんなさい……。
アリアを抱きしめるアベルの腕は力強いが、少し震えている。
いつも強くて頼もしい大好きな彼がこんな風になるとは――。
アリアは、まさかバグである自分がゲームの主人公にこんなにも影響を与えるとは思ってもみなかった。
……そして、逆もまたしかり。
アベルを手放したくないと思うようになったのはいつからだろう……、期間限定、仮初の恋人だったはずなのに……。
自分に縋りつくアベルが愛おしくて、アリアは改めて彼を強く抱きしめる。
胸に埋まるアベルの頭を何度も撫でて、彼を慰めた(ついでに【ベホマ】を掛けて回復もしておいた)。
「……っ……、アリア大胆だね……」
……少しすると、アリアの胸元からアベルの声がぼそぼそと聞こえる。
「へ……? なにが? って息熱っ、ちょっとくすぐったいよ……?」
「……その……、嬉しいけど……ここでぱふぱふはどうかと思うよ……」
「ぁっ、ちょ、そこで喋らないで……って、ぱふぱふ……ん?」
「……こういうのは二人きりの時の方がいいかなあ……」
アリアの胸の谷間でアベルの顔がもぞもぞと
頬がほんのりと赤く色付いたアベルが話す度、アリアの白いスライムがぷるぷると小さく揺れている。
「ン……ぇ、ぁ……。わぁああああっっ!!」
アベルに指摘され、アリアは初めて気が付いた。
――そうだ、今、ここには関係者が全員揃っているじゃないっっ……! なにぎゅってしちゃってるの……!!
私ったらなんてことを……!
……それからアリアの動きは早かった。
アリアはアベルからすぐに離れ、くるりと踵を返す。一瞬走り出そうとしたがすぐに立ち止まり、再びくるりと身体を反転させると下腹前で手を重ね直立不動。
目線を空に向け「いいお天気ですね~」とでも言おうしているのか、薄っすらと口角を上げ、澄ましたように目を細めている。
……本当は逃げ出したかったのだろうが、アベルをこれ以上不安にさせないために彼女はその場に留まったらしい。
軽く抱擁しただけよ……と、誤魔化しに掛かっているようだが、全く誤魔化せていない――。
「アリア……、なにしてるんだい……?」
目と鼻の先に立つ挙動不審なアリアに、アベルは目蓋を上下させゆっくりと立ち上がった。
「……べ、別に……、本日はお日柄もよく~って……。ほら、いいお天気だものっ♡」
「プッ……そうだね。お祝いの日だもんね」
「っ……、そ、そうだねっ」
アリアが空を指差すとアベルは見上げて笑い、彼女が空に向けた手を掴む。
逃げられては困ると、アベルはアリアの手を引きルドマン達の元へと向かった。
「私にはあんなことできないわ……(ボリューム感が違うし……)」
「だ、大胆ですわ……♡(ドキドキしますわね……!)」
……ビアンカとフローラは二人して頬を紅く染め、やって来たアベルとアリアを黙って見ていた。
「ルドマンさん。僕はアリアと結婚します」
「…………」
アベルはビアンカ、フローラの横で、彼女達の後ろに立つルドマンにはっきりと告げる。
……ルドマンは黙ったままだ。
「ビアンカも、フローラさんもごめんね……」
「いいのよ!」「いいんです!」
ビアンカとフローラにも謝っておこうと、アベルが二人に声を掛けると二人は首を左右に振って笑顔で応えてくれた。
……アリアもアベルから手を放し、両手を重ねて申し訳なさそうに頭を下げる。ビアンカとフローラはそんな
「……アリア、お前はアベルと結婚したいのかい?」
「ぁっ……はい、私……アベルとは恋人同士で――」
訊ねられ、アリアはビアンカとフローラから解放してもらい、|ルドマンに向き直る。
……隣に立つアベルを見上げれば、優しい笑顔が見守ってくれていた。
アリアも小さく頷き、ルドマンにはっきり宣言しようとしたのだ――
が――。
「……認められんなあ」
ルドマンは口をへの字にして腕組みしていた。
ルドマンさん……。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!