アベルがいない間にルドマンはさくさくと話を進めて……?
では、本編どぞ。
「やあやあ、賑やかだね。女の子同士は華やかでいいね」
「あ、お父さま。今女子会をしていたのですわ」
ルドマンがやって来てテーブルを覗くと、アリアとビアンカは軽く会釈をし、フローラが説明をした。
……フローラは嬉しそうにはにかんでいる。
「そうか……、楽しそうで何よりだ」
ルドマンは笑顔のフローラを横目に目を細め、空いている椅子に腰かけた。
「さあさあ、アリア。あまり時間もないのだが……準備に入る前に皆でお茶でも飲もうと思ってな。一席設けさせてもらったのだよ」
召使女性がやって来ると、ルドマンの席の空のカップに紅茶を淹れる。
……と、彼は優雅にその香りを楽しんでから少しだけカップを傾けた。
さすがは大富豪、所作は流麗である。
「あ、はあ……でも、アベルは……?」
「ああ、アベルなら心配いらない。彼には花嫁のヴェールを取りに行ってもらった。じきに戻るだろう。とはいえ、距離があるからな。今日中には戻れまい。せっかくだからアリアがどんな結婚式をしたいのか訊いてみたくてな。アチチ」
……父親の顔で話すルドマンだったが、最後にカップをまた傾け――紅茶が熱かったらしい、彼は舌をペロッと出して苦々しい顔をした。
「どんな結婚式って……私別になにも……」
「あちち……そこで、だ」
「そ、そこ……??」
アリアが特に希望なんてなにもありませんが……と言おうとしたものの、ルドマンはなにか思うところがあるのかメモを取り出す。
「……アリア。お前を娘にしたのだ。父親として初めての仕事が結婚式を手配することになるとは夢にも思わなかったが……、どうせならお前の心に残る式にしてやりたい。なんでも希望を言いなさい」
「ルドマ……いえ、お父さま……」
――私の希望を訊いてくれる人がアベルの他にもいたなんて……、これが父親……?
メモを片手に話すルドマンの言葉に、アリアの胸がじんわりと温かくなった。
前世の父とはかなりかけ離れた対応だ。
……あまりの違いにアリアは戸惑ってしまう。
だが、しかし。
この後のルドマンの話に、アリアの眉間にはじわじわと皺が寄せられた。
「……アベルは旅人だ。結婚後は離れ離れになるだろうからな。二人の想い出を作っておくといい」
ルドマンは朗らかに笑い、なにか思いついたのか、メモを勝手にカキカキ。
「ん? どういうことですか?」
アリアはすぐさま訊き返す。
「アリアは、私やフローラと一緒にアベルの帰りを待つのだよ? 毎日おいしい菓子を用意しよう」
「ンン? え、いや私、アベルと旅を続けますけど?」
首を横に傾けルドマンが告げると、アリアも同じように首を横に傾けた。
取って付けたように続けた“毎日おいしい菓子を”というのはビアンカにでもアリアの好みを聞いたのだろう。
餌付けするつもりなのか――。
「わっはっは。やあ ゆかいゆかい! アリアはか弱い女の子だぞ? なにを言っているのか わからんなあ……」
……やにわにルドマンは高らかに笑い出す。
「いや、なにを言ってるのか わからないのはルドマンさんの方ですよ!?」
「ルドマンさんって他人行儀な! お父さんと呼びなさい!」
娘になったのだから当然同居するだろう。
しばらくはフローラの部屋で一緒に過ごしてもらい、屋敷を増築してアリアの部屋を……と思っていたが、アリアが再び他人行儀に名前で呼んで来るので、ルドマンは目を大きく見開き立ち上がった。
「お、お父さま……、そうヒートアップしないで下さいませ。アリアお姉さまはアベルさんと一緒にいたいだけで……」
「フローラは黙っていなさい」
「あ……はい……(アリアお姉さまごめんなさい……)」
フローラがここは私がお父さまを止めましょう――と、立ち上がったルドマンを諫めようとしたが、ルドマンに強く言われて俯いてしまう。
……ビアンカは静観中だ。
「っ、私はアベルとずっと一緒にいるって決めたの! ルドマンさんの屋敷に閉じ込められるなんて絶っ対嫌です!」
「閉じ込めるって……ぐ……。アリアぁ……お父さんと呼んでおくれよ……」
アリアも立ち上がってはっきり意思を示した。
……ルドマンの顔はショックを受けたように歪み、半泣きに。
「こんなことなら式なんてしなくていいです。マザーにもちゃんと説明します! あっ! こんなところでお茶してる場合じゃない。アベルを呼び戻しに行かなくちゃ……!」
アリアは慌てて席から離れ、歩き出す。
「ぅぅっ……、やはりダメなのか……。アリアは私の傍に居てくれないのだな……せっかく親子になったというのに……。私は悲しい……うっうっ」
背中でルドマンの泣き言が聞こえ、アリアの身体は反転した。
「……すみません……、アベルと離れるのが嫌なので……」
「っ……ああっ、なんて親不孝な娘なのだ……! 父親である私の気持ちを汲もうとなんて全くしない……!!」
アリアが軽く会釈して謝罪するとルドマンは俯き、悲劇のヒーローよろしく顔を両手で覆って大声で叫ぶ。
「不出来な娘でなんかすみません……。勘当してもらってもいいですよ?」
ルドマンの態度にアリアは声のトーンを変えずにあっさりと言い返した。
「できるわけがなかろうっ!! 酷いっ!! うっうっ」
アリアに言い返され、ルドマンは顔を上げる。
嘘泣きかと思われたが、彼の瞳には涙が光っていた。
「ルドマンさん……」
――いや、アベルと離れたくないし、どうしろと……。
そもそもルドマンの娘になど、なるつもりはさらさらなかったのだ。
マザーが怖くて流れでついなってしまったわけだが、ルドマンにどう接すればいいのか……。
前世の父ともどう接していいのかわからなかったアリアは、この状況をどうすればいいのだろうと困り果てる。
「お父さま……アリアお姉さまは昔からこうではありませんか……今に始まったことでは……」
「フローラは黙っていなさい」
「……あ、はい……」
――ごめんなさいアリアお姉さま……、私ではお父さまをお止めできそうにありません……。
フローラが再び意見するが、ルドマンはフローラには強気のようだ。
……フローラはしょんぼり顔で俯いてしまった。
ルドマンとアリアが無言で睨み合う……否、見合う中、それまで静観していたビアンカが静かに挙手をする。
「……あの~……、ルドマンさん。親子の話に口を挟むのもどうかと思うのですが、私から一言いいでしょうか?」
「……なんだね?」
「最愛の人と離れ離れって辛いことですよ。だから数か月に一度、顔を出すとかしてもらえばいいんじゃないですか……?」
ビアンカはゆっくりと立ち上がり、ルドマンに訊ねた。
「!?」
数か月に一度……という話にルドマンがハッとする。
それはつまり――。
「ルドマンさんはアリアの様子が気になるんですよね?」
「あ、ああ……。娘だからな。元気でやっているか、辛い想いはしていないか気になるな」
「では、定期的に里帰りしてもらえばいいのでは? ね、アリアどうかな? できそう?」
……そう、“里帰り”だ。
頭に浮かんだ言葉がビアンカの口から零れ、ルドマンの思考と合致した。
アリア警戒心MAX。
ルドマンは命の恩人だから、もう少し優しい対応を取ってもいいと思うのですけどね……。
一度軟禁されてますから、しょうがないといえばしょうがないかもです。
フローラちゃんが一生懸命ルドマンに意見しようとしているのが可愛くて好きな回です。
その内親子関係をもう少し良くしてあげたい。
三人の女子会、またいつかしたいです☆
女子トークw
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!