この親子関係なぁ……。
では、本編どぞ~。
「里帰りかあ……、たまに顔出すくらいならできるけど……」
――女子会もしたいし……。
ビアンカに視線を送られ、アリアは頷く。
「里帰りか……ふむ……」
「はい、そこで元気な顔が見られればいいじゃないですか。私達も時々女子会をしようって約束をしていますし……その時、ルドマンさんに顔を見せればいいのでは?」
「…………おおっ!! いい案だ! ビアンカさん、キミは機転が利くね!」
ビアンカの提案に、これまで苦々しかったルドマンの顔が明るさを取り戻した。
……ルドマンは想像したらしい。
アリアが旅に出てしまえば当分会えなくなると思っていたが、定期的に会いに来てくれるならそれも悪くない。
なにより“里帰り”と称してくれるなら――親子のようじゃないか、と。
「うふふっ。ルドマンさんもアリアも縁あって親子になったのだから仲良くしないとね」
「ビアンカちゃん……」
ビアンカがアリアの傍までやって来て、
そして二人に握手をさせた。
「アリア……私が強引だったようだ。すまなかったね。時々顔を見せに来てくれるかい? その時にこうしてお茶でも飲んで旅の話でも聞かせてくれないか?」
「いえお父さま、……私もわがままを言ってしまって……。はい、たまに顔を出しますね」
「そうだなあ……では、一月にいち……いや、三か月に一度……!」
「え」
アリアの眉がピクリと動く。
「あ、いやいや、半年に一度でもいい……!」
「アベルに相談しますね」
「うむ。ではアベルにそう伝えておこう。それで結婚式のことなんだが――」
ルドマンは涙目ながらメモを手に、再びアリアに式の話を持ち掛けた。
……と、そこへ一階から誰かが上がってくる足音が聞こえてくる。
「失礼致します。ルドマンさま――……」
二階にやって来たのは若い召使女性で、ルドマンに耳打ちをしていた。
……“ご来賓の方が到着されたようです”と、漏れ聞こえる。
「おお、そうか! アリア、お客様が到着したようだ。手配したのは二週間前だというのに、思ったより早かったなあ」
そうかそうか……とルドマンは召使女性の報告を受けると破顔。「ああ、キミ達はもうしばらくゆっくりしていなさい」と一言残し、彼女と共に一階へと下りて行った。
「誰が到着したんだろう……」
「さあ……」
アリアの呟きにビアンカは首を傾げる。
……ビアンカからすれば、来賓客は誰も彼も知らない人物ばかりだろう。
「……アリアお姉さまもビアンカさんも、素敵ですわ」
「「……ん?」」
階段を見ていたアリアとビアンカにフローラが声を掛け、手を合わせると、二人は互いに一瞬目を合わせ、
急に“素敵”だなんて言い出して、いったいどうしたというのか……。
「お父さまにあんなにはっきり意見されるなんて……私にはできなくて……。お父さまは、いつも私には黙っているようにと仰るから、私の話なんて聞きたくないのかと……やっぱり私が――」
「フローラさんそんなことは……」
フローラの言葉にビアンカはなんて言ってあげたらいいのかわからず、
……ルドマンとの親子関係がどうなのかは知らないが、コミュニケーションが足りていないのではとビアンカは感じていた。
ビアンカがフローラにどう声を掛けようかと悩む中、アリアはといえば――
「フローラさん、さっきはフォローしようとしてくれてありがとう! フローラさんにもきっとできると思うよ……! ルドマンさ……あ、お父さまか。お父さまはフローラさんのことが一番可愛いと思ってるんだもの。もっと自由に振る舞っていいと思うなっ。お父さまだって、フローラさんがなにを思っているのか聞きたいはずだよ?」
――さっきルドマンさんがここに来た時、フローラさんの様子を見て嬉しそうだったもの……!
フローラが自分の意思をはっきり伝えられるようになりますように……と願いを込めてアリアは彼女の手を握る。
……ルドマンが自分を養女にしたのは、自分のためだけではなく――フローラのために養女にしようとしたのかもしれない……、アリアはなんとなくそう思った。
修道院でフローラと過ごしていた期間は短いが、二人は姉妹のように仲が良く、フローラの笑顔が絶えなかった。
当時、フローラもアリアに釣られてルドマンにはっきりと自らの要望を伝えたことだってある。
サラボナに帰ってからのフローラがどうなのか……アリアは知らない。
だが、フローラはルドマンに対して引け目があるのか、どこか遠慮しているような気がした。
フローラは淑女だからそう見えるかと思っていたが、さっきの親子のやり取りを見ると、やはりフローラが遠慮している。
……あの頃の笑顔を、ルドマンはまた見たいと思っているのかもしれない。
「アリアお姉さま……」
「フローラさんがすぐ黙り込んじゃうから、勝手に話を進めちゃうのかもしれないし……だから諦めずがんばってね……!」
――私がお姉さんとして、してあげられることといったら、親子関係の改善……??
前世では妹の身分であったから、自分が姉……というのはなんだか変な感じだが、フローラが引け目を感じずにルドマンにぶつかっていけるよう、エールを送るくらいはできる。
アリアは養女の身分ながら、はっきり意思を伝える自分を見て、フローラにも勇気を持ってもらいたかった。
「私が……、はい……! 私、お父さまともっとじっくりお話をしてみますわ……! アリアお姉さま、ありがとうございます♡」
フローラは朗らかに微笑み、アリアの手を握り返す。
……可愛い笑顔だなぁ……なんてアリアは彼女に見惚れてぽっと頬を染めてしまった。
美しいビアンカと雰囲気こそ違うが、フローラの可愛さもまた至高――。
「あ~……なんかいいなあ~、姉妹って感じ。私も妹欲し~」
ぼそっ、とビアンカの呟きが漏れ聞こえた。
「ん? ビアンカお姉さまっ♡ 気持ち的には私、ビアンカちゃんの妹だよっ!」
「ビアンカお姉さまっ!? まあ素敵。私達、前世では姉妹だったのでしょうか? お二人とは不思議な縁を感じますわ♡」
「ちょ、ちょっとぉ……もぉ~二人ともっ! 照れちゃうでしょっっ♡(ああもう、二人とも可愛いんだからぁっっ!!)」
アリアが空いてる片手でビアンカの手を握ると、フローラの瞳が輝いて二人を交互に見やる。
ビアンカはアリアとフローラ、二人に見つめられ、照れたようにはにかみ頬を赤く染めていた。
「ふふふ……」
――前世で姉妹ではなかったけど……確かに二人とは不思議な縁を感じるよ……。
正規ヒロイン二人の笑顔に、アリアはほっこりと癒されたのだった。
◇
……一方、まさかアリア達が楽しくお茶会をしているなどと、知りもしないでヴェールを取りに行ったアベルはというと――。
「はぁ……ルーラできないのはきついな」
――ヴェールを持ってサラボナに戻る頃、結婚式の準備が終わってるって言ってたけど……最速でも明日になるんじゃ……。
サラボナの町を後にし、アベルはピエール達と共に内海を北上していた。
ルドマンに船の性能を上げておいたと言われ、確かに以前より速度は早くなっているが、高速な分、【せいすい】を使っているというのに魔物にぶつかってしまい、戦闘になること数回……(高速だから魔物が避け切れないらしい)。
……アベルは戦闘を終え【パパスの剣】を鞘に収め、ため息を吐く。
「そうですね。ですが主殿、先ほどの太刀筋 冴え渡っておりましたよ」
「ははっ、そうかい?」
ピエールが今し方の戦闘で、
現れた魔物の群れの内、【マーマン】一匹を【会心の一撃】で倒したアベルだったが、実はさっきからアベルはこの【会心の一撃】を連発している。
「サラボナを出てからずっとではありませんか。やはりアリア嬢との結婚が決まって、それが良い影響を与えているのでしょうかね?」
「ハハハッ、かなっ! いやあ~、為せば成るもんだよね~♪」
「良かったですね……!」
ピエールに指摘されたアベルの顔は終始にこやかだった。
フローラとルドマンの仲が少しずつ良くなっていくといいなと思います。
フローラに我儘を言わせてあげたい、そしてルドマンがそれを叶えてやって欲しい。
----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!