ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

久しぶりのサブクエです。

では、本編どぞ。



第六百三十話 サブクエ:スパを守れ

 

 思わぬところで謎だった三人目の経営者が判明し、アベルは目を丸くした。

 

 ……それもそうだ。

 彼は宿屋の息子でビアンカよりも年下だと聞いている。見た目も細身だし、魔物を倒して金を稼ぐタイプには見えない。

 

 宿屋で受付をしている彼が、あの巨大な施設を建てるのにどうやって出資したというのか――。

 

 ビアンカに聞くところによると、三人目の経営者が殆ど出資したとのことだったが、ただの宿屋の息子がどうやって?

 

 この青年はいったい……?

 

 

 人は見掛けよらないというのは、これまで様々な人々を目にしてきたアベルもわかってはいるが、謎過ぎる。

 

 ……アベルはまたもじぃっと青年を見つめてしまった。

 

 

「え……? 三人目……?」

 

 

 アベルの言葉に青年は首を傾げる。

 

 

「あっ、いえ、なんでもないです。それより急ぎましょう」

 

「お願いしてもいいんですか!?」

 

「困ったときはお互い様ですよ!」

 

 

 ――ビアンカの夢が詰まった施設だ、アリアも完成を楽しみにしてる……守らなきゃ。

 

 

 アリア、待っててね。

 終わったらすぐ帰るから――。

 

 

 青年の背景は気になるが、今は一刻を争う。

 アベルは青年の申し出を快く受け、彼と共に建設現場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……建設現場に辿り着くと、建築資材があちこちに転がり散らばっていた。

 どうやら青年の言っていたように、山の上から転がって来た大きな岩達のせいで、積まれていた板や丸太が散乱してしまったようだ。

 

 まずは大きな岩を除去し、それから資材を集めて纏める……のだが。

 

 

「うわっ! 爆弾岩じゃないか……!!」

 

 

 ――あっぶな……!

 

 

 アベルが大岩に近付くと、ギロリと睨まれた。

 転がっている岩を除去している途中で、まさかの【ばくだんいわ】と遭遇してしまう。

 

 アベルはすぐさま武器を手にして【ばくだんいわ】と戦うことにした。

 

 ……【ばくだんいわ】を下手に刺激すると【メガンテ】されて、辺りが破壊されてしまう。

 

 建設途中の建物に被害が及ぶから、細心の注意を払って――と、アベルが考えている横を、なにかが通り過ぎた。

 

 

「それは戦わず、こちらに転がしてください……! ここから転がせば村の外へと勝手に転がって行きますので……!」

 

 

 青年がそう話しながらゴロゴロゴロと【ばくだんいわ】を器用に転がしている。

 そして急斜面に差し掛かったところで、彼は勢いよく【ばくだんいわ】を押し出した。

 

 

 メ、メ、メ……、メ…………――。

 

 

 【ばくだんいわ】は「メ」とだけ言葉を残し、山の麓へ転がっていく。

 

 山の急斜面は水の流れも相まって、さながらウォータースライダーである。

 【ばくだんいわ】の中には楽しんでいる者もいたかもしれない。

 

 ……アリアがここにいれば彼等の言葉を訳してくれたことだろう。

 

 

『メ、メ……、メッチャ、タノシィィ~~♡』

 

 

 とかなんとか言っていたかもしれない。

 

 

「えぇっ……!?(爆弾岩って転がせたんだ!?)」

 

 

 ――すごいなこの人……!

 

 

 青年の行動に度肝を抜かれたが、アベルも見様見真似で【ばくだんいわ】を転がす。

 【ばくだんいわ】を転がすのは初めての体験だったが、どうやら【ばくだんいわ】は雨に濡れて冷え固まり、動きが鈍くなっているようで、すぐに反応ができないらしい。

 

 ここは雨が降っていて良かったというべきか……。

 かなりスリリングな体験だ。

 

 

 ……それからアベルは黙々と岩の除去と、資材纏めを手伝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくして――。

 

 

 

 

「おつかれさまでした……! 助かりました……!」

 

 

 無事資材纏めも終わり、アベルは青年と共に完成している一部の建物内へと避難していた。

 

 ここは施設のロビーなのだろうか……。屋内にカウンタ―はあるものの、椅子がいくつか置いてあるだけで、まだ建設途中だからか至るところに資材が置かれている。

 

 青年が深々と頭を下げると、アベルは手を振り振り、盛大にくしゃみをした。

 

 

「いえぇ~っくしょんっ!!」

 

『ブシュ! クシュッ! クシュンッ!!(さ、寒い……我、濡れるの嫌い……)』

 

 

 ……アベルの後ろでプックルもくしゃみを連発する。

 

 

「ああ大変だ……! 奥に内風呂がありますから、良かったら浸かって下さい。布団はご用意できていないので、今日はここには泊まれませんが、宿屋まで来て下されば今晩は無料でお泊めします」

 

「あ……ども……」

 

「あなたも温泉が嫌でなければどうぞ」

 

 

 アベルが軽く会釈している間に青年はプックルに近付き、濡れた目の周りにそっとタオルを押し当てた。

 

 

「がうぅ……?」

 

 

 プックルは驚いた顔をしていたが、目蓋に掛かった水滴が拭き取られ、視界が開けたため威嚇することはない。

 

 普段プックルはアベルやアリア、ビアンカ以外には恐れられて誰も近付かないのに、この青年は平気なようだ。

 

 【ばくだんいわ】も転がしていたし……と、アベルは益々男の背景が気になってしまう。

 

 

「え……、あなたキラーパンサーが平気なんですか……?」

 

「あ……はい。昔、仲良くしていたキラーパンサーがいたのです。もう……亡くなってしまったんですけど……」

 

 

 話しながら青年が、カウンタ―上に置いてあったタオルをアベルに手渡す。

 

 

「そうですか……」

 

「ボクの婚約者が飼っていたのですが、ある日病で……」

 

「え……あ……」

 

 

 ――その【キラーパンサー】……もしかしてゲレゲレって言いません……?

 

 

 アベルは喉から出掛かってやめた。

 

 その頃からこの青年はビアンカと知り合いだったというのか。

 いや、でもお見合いだったって言っていたような……?

 

 

(サラボナに戻らないといけないのに……ああ、もう気になってしょうがない……!!)

 

 

 アベルはずぶ濡れのターバンを取り去り、青年をチラチラしながら手渡されたタオルで頭と顔を拭った。

 

 ……青年もずぶ濡れになった服を脱いで絞っている。

 

 青年は白く細い身体ながら、程よく筋肉がついており、先ほど【ばくだんいわ】を涼しい顔で転がしていたし、有事があってもビアンカを守ってくれそうだ。

 アベルが心配することではないのだが、命懸けでビアンカの夢を守った男を見ると認めざるを得ない。

 

 ……彼は良い男である。

 

 ぐうの音も出ずに黙り込んだアベルをよそに、青年は屋内にあった暖炉に火を点けると、近くにあった椅子を持ってきて、背もたれに服を掛け乾かし始めた。

 

 

「ハックション!!」

 

「大丈夫ですか?」

 

 

 再びアベルが盛大にくしゃみをすると、青年が訊ねてくる。

 

 

「ぅぅ……明日は結婚式なのに……(ていうか、本当は今日だったんじゃ……?)」

 

 

 ズズズッとアベルは鼻を啜った。

 

 

 ……別世界の結婚式は自分が戻り次第行われていた。

 ならば今戻るとそうなる可能性が高い。

 

 

「……えっ!? そうだったんですか!? 風邪でも引いたら大変です、服は乾かしておきますから、早く湯に浸かって来てください!!」

 

「あ、じゃあそうさせてもらいます……」

 

 

 ――寒っ……!! よし、温泉に浸かって行こう……!

 

 

 慌てたように青年が内湯のある場所を指差すと、アベルはピエール達を伴い温泉に浸かりに行くことにした。

 

 このまま戻ったら体調不良でアリアに心配を掛けてしまう。

 温まって体調を万全にした方がいいだろう。

 

 外は相変わらず雨風が酷いが、新しい建物は頑丈でびくともしていない。

 

 

 ……スパがオープンしたら、いつかアリアと一緒に遊びに来よう――。

 




ばくだんいわ転がし……スリル満点のミニゲームがあっても面白いんじゃないかな~、なんて思って書いてみました。

ばくだんいわが、なぜかお茶目キャラ扱いになってしまっていますが、気に入ってます。
このお話のばくだんいわさん達は「メ」から始まる言葉は喋れるのです。

そうそう、宿屋の息子、実はある特技がございまして。
それで稼いでビアンカに貢い――否、投資したっていう……ね。
その内外伝か後の女子会で判明させようかと思います。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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