ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

結婚式って色々あるよね。

では、本編どぞ。



第六百四十一話 子世代と小休止

 

 ……一方で、いち早くルドマン達から逃げ出したフローラは――。

 

 

「あ、フローラさん」

 

「ビアンカさん! 私も入れていただいていいですか?」

 

「え? どうぞどうぞ!」

 

 

 ビアンカとヘンリー、マリア夫妻が話しているところへフローラは駆け寄る。

 

 

「あはは、どうしたんですか? なにかあったん…………??」

 

 

 ――うわ、なんかあそこ吹雪いてない……!? この辺結構暑かったはずなのに……?

 

 

 ヘンリーがフローラの元居た場所へ目を向けると、ルドマン達の姿が見え、その周りを漂う空気が冷たく感じた。

 

 

「……マザーは、確か……ルドマンさまと旧知の仲だとか……」

 

「へ、へえ……」

 

 

 ――えぇ……なになに、親世代で訳ありとかか……!?

 

 

 マリアの話にヘンリーは、こんな晴れの日に険悪にならんでくれよ……と苦笑いを浮かべる。

 

 

「へ~……あれは昔、なんかあったわね。……あ、ルドマンさん逃げた」

 

「ビ、ビアンカさんたら、そんなじっと見てはいけませんわ……」

 

 

 ビアンカがルドマン達を見やって、にやっと口角を上げた。

 フローラは戸惑うようにビアンカを(たしな)めるも、興味津々で同じように親たちを眺める。

 

 

「ははは……、まあ、親も人間だしな。長く生きてりゃ色々あるさ」

 

「……ヘンリーさんて、大人ね~」

 

「はっはっはっ、そうかい? まあ、オレは苦労してるからな~。苦労した分、大人になったというかなんというか……」

 

「私の旦那くんも年下だけど、結構大人なのよね。男の人ってある日突然大人になっちゃうんだもん、置いてかれたみたいで悔しくなっちゃう」

 

「ははは、そうかなぁ。オレは男より女の人の方が、早く大人になってると思うけどな」

 

「え~――」

 

 

 ヘンリーとビアンカの会話を、マリアとフローラが「うんうん」「なるほどなるほど」と傾聴しながら首を何度も縦に下ろしていた。

 

 ルドマンたち親世代はどうにもぎこちない空気を醸し出していたが、子世代のフローラたちはみな仲が良く、明るい話題でもちきりである。

 

 そもそも今日はアベルとアリアの晴れの日だ。

 そんな日に不穏な空気など作るものではない。

 

 子世代の方が空気を読めているではないか。

 

 

 ……特にヘンリーは美女たちに囲まれ嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、特別室に戻ったアベルとアリアはといえば――。

 

 

「アリア……(僕の花嫁……♡)」

 

「アベル! 式が終わったら披露宴だよっ」

 

 

 特別室に入り、アベルが穏やかな瞳を向け、早速アリアに触れようとするも、彼女は先ほどの恥ずかしそうな はにかみから、打って変わって明るく弾けるような笑みを見せた。

 

 

「え(披露宴?)」

 

 

 アベルは首を傾げる。

 そういえば、結婚式の後には宴があったっけ……と、思い出した。

 

 ……となると、このままサラボナに戻るのだろうか。

 

 【ルーラ】で戻れば、自分は再び倒れてしまう気がするのだが――。

 

 

 ――いやだ! ここでアリアと一泊したい……!!

 

 

 カジノ船の特別室のベッドは豪華でふかふか。大きさも二人で寝るのになんら問題ない。

 部屋も広く、風呂まで付いているのだから、この部屋に泊まれば夢だったアリアと一緒に混浴ができるではないか。

 

 しかもここは海の上だ。多少アリアの声が漏れても波音に掻き消されるから彼女も安心して泊まることができるというもの。

 アリアがカジノで遊びたいというならすぐ遊びにだって行ける。

 

 つまりこの部屋にはアベルの夢が詰まっているのだ――。

 

 

 ……アベルはまだサラボナに戻りたくなかった。

 

 

「結婚式といえば、披露宴! 披露宴といえば、パーティーだよ!」

 

 

 アベルは“いやだ”の「い」まで言葉が出掛かったが、アリアがブーケを振り振り話し出したので黙り込んだ。

 

 

「パ、パーティー……、僕、サラボナに戻ったら多分また倒れるけど……?」

 

「アベルなに言ってるの? サラボナに戻るのはパーティーが終わってからだよ? それに、帰りは私も協力するから大丈夫だよ!」

 

「えっ」

 

 

 ――サラボナに戻らないでパーティー……??

 

 

 アリアの申し出にアベルは面食らって目を瞬かせる。

 いつも自分は結婚式が終われば、すぐにサラボナへとんぼ返りしていたはずなのだが……。

 

 

「ふふっ。昨日お父さまと相談して、船上パーティーにしようって、伝書鳩を飛ばしてくれていたの。今頃甲板で準備が進んでると思うよ」

 

 

 アベルの瞬きを余所に、アリアはニコニコと楽しそうに告げた。

 

 

「なんと!」

 

「ふふっ、おいしいものい~っぱい用意してくれるって言ってたから、たくさん食べようね! あ、特別なケーキもあるって言ってたよ。ピエール君達も参加していいって言ってたし。プックルもスラりんも喜んでくれると思うな♡ 楽しみだね♡」

 

「アリア……、君って()は……」

 

 

 手を合わせながらアベルを上目遣いに見上げるアリアに、アベルの目元が緩む。

 

 

「ん……?」

 

「っ、最高だっ!!」

 

 

 刹那、ガバッ! と、アベルはアリアを抱きしめた。

 

 

 ――二人で手分けして【ルーラ】で戻れば、そう疲れることはないじゃないか……! しかも船上パーティーだって!?

 

 

 なにそれ、すごく楽しそう……!

 

 

「わぁっ……! ちょっ、アベル、そんなにくっついたらお化粧があなたの服に付いちゃうよ……!?」

 

「いいよ、別に。洗濯なら得意だし!」

 

「も~……アベルってば……」

 

 

 服を汚してしまうのが嫌なのか、アリアが離れようとするが、アベルは彼女を離そうとはしない。

 

 

 ……船上パーティーはアベルが留守の間に、アリアが言い出したもの――正確には、同意したものだ。

 

 昨日サラボナに着いたヘンリーから、アベルが【ルーラ】を使えるという話を聞いたルドマンは、まずは今回の結婚式を町の教会ではなく、カジノ船ですることに決めた。

 

 その際、アリアが良い顔をしなかったのでルドマンは焦り、アリアになにかしたいことはないかと、訊ねていた。

 アリアは始め“特に何もない”と断ったのだが、「なんでもいいから言ってみなさい」と言いつつ、あれやこれやとルドマンが提案した内の一つが、船上パーティーだったというわけだ。

 

 

 ……アベルはアリアを連れて窓に近寄り、甲板を見下ろす。

 

 

「あ、もうお料理が並んでる~(おいしそう♡)」

 

 

 甲板ではアリアの言う通りテーブルが用意され、料理が運ばれ始めていた。

 

 参列者たちは、祭壇の近くで給仕たちにドリンクを勧められ、それを飲み飲み歓談中である。

 

 

「……こんなの初めてだ……」

 

「ん……? あ。別世界では披露宴しなかったの?」

 

 

 窓に手をつき、瞳をキラキラさせて甲板を眺めるアベルに、アリアはなんとなく訊ねてみる。

 

 

「あ、いや……宴はしたけど、いつもサラボナに戻ってからだったから……」

 

 

 問われたアベルは別世界の記憶を手繰り寄せた。

 

 

 別世界でフローラと結婚した時は、サラボナにとんぼ返りし、別世界の自分はフラフラしたまま宴に参加、酒を飲まされ次の日の夕方までダウンしていた。

 ……ビアンカの時はサラボナで式を挙げたが、やっぱり酒を飲まされ、次の日の昼までダウン。

 

 

 ――アリアの場合はどうなるんだろう……。

 

 

 この世界でも酒を大量に飲まされるのだろうか。

 ……記憶を思い出し、アベルは今から戦々恐々である。

 

 別世界ではルドマンを始め、町の人たちが めでたさに酔い潰そうと飲めや飲めやと酒を注ぎにきたのだから。

 

 

 今日は特別な日。

 特別な夜――、アリアと二人きりで過ごしたい。

 

 

 ……アベルは酒は飲めど、呑まれないよう気を付けることにした。

 

 

「そうなんだ? うふふっ、じゃあ一緒に初体験だね♡」

 

「初体験…………っ、あっ、あのさ、アリア!」

 

 

 ぎゅっと、アベルはアリアの片手を取り、両手で包み込むとそっと持ち上げる。

 

 

「ん? ぁ……っ……」

 

 

 持ち上げた白い手袋の指先にアベルの唇が触れると、そのままじっと彼女を見つめた。

 

 

「……今日、僕ね――」

 

 

 サラボナに戻ってから何度も伝えようと思っていたのに、中々言えなかった。

 今二人きりだから、今伝えればいいではないか。

 

 【世界の理】の力か、自分の思ったようにことが運ばないのは常。

 何度でも挑戦し続けてやるさと、アベルは口を開く。

 

 

 だが、アベルが口を開いたその時――。

 




ゲーム中だとサラボナにすぐ戻るんだけど、カジノ船で船上パーティーしてもいいじゃない?

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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