ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

結婚披露宴といえば。

では、本編どぞー。



第六百四十三話 ファーストバイト

 

「お父さまがなにか無理なことを仰られたら、お姉さま」

 

「うん! わかった。断るね!」

 

「ええ。では、私は席に戻ります」

 

 

 アリアの返事にフローラは穏やかに微笑む。

 

 

「あっ、教えに来てくれたんだね、ありがとう。フローラさん」

 

「うふふっ、どういたしまして♡」

 

 

 どうやらフローラはルドマンの企みを察知し、教えに来てくれたらしい。

 ……フローラが去ると、入れ替わりにルドマンがアベルとアリアの元へとやって来る。そして二人のテーブルの前で立ち止まり背をくるりと反転させた。

 

 

「わっはっは。やあ ゆかいゆかい! さあさあ皆さま、宴を楽しんでおりますかな? そろそろ余興が欲しくなる頃でしょう。ここらで一つ、新郎新婦に余興をお願いしようと思います」

 

「「え(余興??)」」

 

 

 ルドマンの明るく大きな声が甲板上に響き渡る。彼は来賓たちに余興を行うと宣言していた。

 後ろで聞いていたアベルとアリアは何事かと声をハモらせた。

 

 

「皆さまの後ろにご注目下さい。今日、この日のために作らせたウェディングケーキです!」

 

 

 ルドマンの声が止むと、突然派手な演奏とともにワゴンに載せられた大きなウェディングケーキが運ばれて来る。

 ……軽く三十人前はあるだろうか、いやそれ以上。ハート型の巨大なケーキには火の点いた花火が刺さっており、明るい花を咲かせていた。

 

 

『まぁ、大きなケーキですこと……!』

 

『ハッピーウェディング、アベル、アリア……だってさ! オレ達の結婚式を思い出すなあ』

 

『ハート型なのね! 可愛い!』

 

 

 マリア、ヘンリー、ビアンカが手を打ち合わせながら運ばれていくケーキを笑顔で見送る。

 

 

「カワイイ……おいしそう……」

 

「アリア……君って……。ふふっ」

 

 

 ルドマンの前までやって来たケーキを見るなり、アリアは“じゅるり”と舌なめずり。アベルはそんな彼女に目を細めた。

 

 

「さあアベル、アリア、こちらへ」

 

 

 やにわにルドマンがケーキの真正面から横へと移動する。アベルとアリア、二人でケーキの前へ来るようにと促した。

 

 

「「?」」

 

 

 二人は顔を見合わせ、呼ばれるままに立ち上がってケーキの前に位置どった。

 

 

「え~、では、二人にはケーキ入刀をしてもらいます」

 

「「えっ」」

 

 

 “はい”とウェディングケーキ用の白いリボンの付いたナイフを手渡され、アベルとアリアは驚きつつもケーキに入刀する。

 

 

「……アベル……、ふふっ、なんだか照れちゃうね♡」

 

「うん♡」

 

 

 ――ルドマンさんのことだから、なにか面倒なことをさせるのかと思ったら……大したことじゃなかったな。

 

 

 むしろちょっと楽しい……!

 

 

 隣りに立つアリアが楽しそうなので、アベルもやはり楽しい。

 

 甲板上の人々が拍手を贈る中、ケーキ入刀が滞りなく終わると、給仕の男がやって来てケーキを切り分け始めた。

 

 

「ふふっ、ケーキ入刀だなんて、前世で見た会社の人の結婚式と似てて不思議~」

 

「? そうなんだ?」

 

「うん、余興の定番なのかな?」

 

「へ~」

 

 

 ――アリアの前世の世界も似たようなことをしていたのか……。

 

 

 結婚式の余興は人それぞれだが、この世界でも規模は違えどやる人は多い。そしてそれはアリアの前世で住んでいた世界でもそうらしい。

 

 

 ……彼女の前世の話に、アベルはこの世界との共通点を見つけ嬉しくなった。

 

 

「さて、無事ケーキ入刀も済みました。新郎新婦には引き続きケーキの食べさせ合いをしてもらおうと思います」

 

「「なんと!」」

 

 

 ルドマンは切り分けられたケーキの皿を給仕から受け取ると、それをアベルに渡す。

 

 ……結婚式あるある。ファーストバイトである。

 

 

「まずは新郎から新婦へ。次は新婦から新郎へ、な?」

 

 

 ルドマンはこそっとアベルに告げると、給仕の男の隣へと移動した。

 

 

「僕からアリアへ……」

 

 

 ――よし、餌付けなら得意だ……いっぱい食べさせてあげよ。

 

 

 ……まずはアベルからアリアへ、ケーキを一口分フォークに取り、彼女に差し出す。

 

 だが、そのケーキ――。

 アリアの口に入りきるか、切らないかくらいの大きな一口分である……。

 

 

「っ……アベル、こんな大きいの入らないよ……(取り過ぎだよ……)」

 

 

 差し出されたケーキを前に、アリアは口を開けようとして躊躇(ためら)った。

 

 

「っ、アリアのエッチ!」

 

「ちょっ!?(なにが!?)」

 

 

 なにを思ったのか、アベルはそのままアリアの口目掛けフォークを持っていく。

 ……アリアは慌てて口を開いた。

 

 

 “ングッ!”

 

 

 アベルに無理やり口にケーキを突っ込まれ、アリアの口の周りはクリーム塗れになってしまう。

 

 

「おいしい……?」

 

「……おいひぃ……♡(濃厚なのにさっぱりしてて甘~い♡)」

 

 

 もくもくと、アリアは口の周りは汚れてしまっているが、少しずつ咀嚼していく。

 

 

「……ちゃんと入るじゃないか……」

 

「もぐもぐ……もうちょっと小さくしてくれても良かったのに……」

 

 

 なぜか赤い顔をしたアベルに見下ろされながら、彼女は大きな一口分を平らげた。

 

 

「大きい方が好きでしょ?」

 

「そりゃたくさん食べたいけど……(一口は小さくていいというか……)」

 

「だよね、大きい方がいいよね!」

 

「ん? あ、次は私の番だね」

 

 

 アベルはいったいなにを言っているのだろう――アリアはよくわからないままアベルが口元を拭ってくれるので素直に答える。

 

 さて、今度は自分の番だ。

 

 

 ――ええい、お返ししてやるんだからっ。

 

 

 アリアもアベルにお返しすべく、大きな一口分をフォークに突き刺しアベルに差し出した。

 

 

「……アリア、これお返しのつもり?」

 

「ん~? ンフフ♡ 早く食べて?」

 

 

 ちょっと無理があったかなと思うほどに、突き刺した一口分のケーキは大きかった。

 ……アベルが早く食べてくれないと崩れ落ちてしまいそうだ。

 

 

「っ、私を食べてって、そんな可愛い顔で言っちゃダメでしょ……。こんなところで言わなくても……夜でいいのに……」

 

「へ? アベルなに言って…………わぁっ!」

 

 

 アベルはアリアの手ごと食べる勢いでケーキにがっつく。

 ケーキは無事食べられたが、アリアの手がクリームで汚れてしまった。

 

 

「あぁ、手にクリームが付いちゃった。すみません、お手拭きを……ってぇっ!?」

 

 

 ――アベルっ、指舐めちゃダメーーっっ!!

 

 

 アリアが手拭きを貰おうとするとが、その前にアベルが彼女の指に付いたクリームを舐め取っていた。

 

 

「……うん、取れた。ケーキって甘いよね」

 

 

 アベルは最後にペロっと舌を出し、指を舐めニヤッとしてからアリアをじっと見つめる。

 ……アリアは固まってしまった。

 

 

 アベルの突飛な行動に来賓たちは“ぽっ”と頬を赤らめ、誰もツッコむことはなく、甲板はしんと静まり返る。

 海から穏やかな波音がザザーン、ザザーンと聞こえ、頭上では「ピーヒョロロロ」と、式でも聞いたトンビの声が聞こえた。

 

 

「っ……、お、お手拭きをくださぁーいっ……!」

 

 

 ――アベル色っぽ……じゃないっ、なんてことしてくれたの……!?

 

 

 アリアの顔も来賓たち同様、真っ赤に染まっており、一呼吸おいてから話題を変えるべくお手拭きを要求する。

 

 

「……わ、わっはっは! 若い二人の食べっぷりは見事でしたな! では皆さまにもケーキをお分けして参りましょう!」

 

 

 ルドマンの頬もほんのり赤く色付き、給仕にお手拭きをアリアに渡すよう指示を出した。

 

 給仕はアリアにお手拭きを渡してから、ルドマンから指示された通りケーキを切り分けていく。

 そうしてケーキは幸せのお裾分け……と、甲板にいる人々全員に配られ、皆で食べることになった。

 

 ……本日カジノ船は結婚式で貸し切りなのだが、スタッフ自体は出勤している。客の居ない間にできることも多いため、スタッフ総出でスロットマシンの点検や、景品の在庫確認、船内の清掃等々をしていた。

 

 そんなスタッフたちにもケーキのお裾分けが行われ、仕事合間の良いお茶請けとなったことだろう。

 

 

 ……こうして船上パーティーは温かな空気の中続く。

 

 

 その内に有志で歌を披露する者や、楽器を演奏する者、踊り出す者……皆思い思いのパフォーマンスを見せ、来賓客だけでなくアベルとアリアもそれを楽しんだ。

 




ケーキの食べさせ合いっこなんてあるんですよ。
結婚式長いな……w スミマセン(汗・汗)

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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